「一体どの国のニュース番組か」
。TV映像に絶え間なく流れる英
国女王の葬儀イベントは連日トッ
プ扱い。見るたびに番組制作者の
思考停止ぶりに疑念が募り、暗然
とする。どの局も見知らぬ「英国
王室ジャーナリスト」らを起用、
「いかに女王が愛されていたか」
というコメントばかりが長時間語
られる。どの局も過剰で画一的だ
。1週間も続けられると、辟易し
「市民生活に何の影響があるのか
」「もっと大事なニュースがある
」と口に出したくなる。同じ国葬
でも安倍元首相の国葬は反対が断
然多くなったことや自民党の統一
教会調査のずさんさが際立ってき
たのに、十分に報じられない。こ
の過剰・画一報道は政権批判がで
きない放送メディアの劣化と惨状
を一段と視聴者に知らしめている。
それにしても自民党調査は発表後
、次々と統一教会との関係隠しを
していた議員が判明、関係議員を
少なく見せたい意図があったこと
が隠せなくなった。岸田文雄首相
、茂木敏充幹事長らの不都合なこ
とを隠し通す悪辣ぶりを一段と示
している。とりわけ「マザームー
ン」と言って韓鶴子総裁に何度も
すり寄り賛辞を述べた山本朋広元
副防衛相、岸田首相最側近の木原
官房副長官は自分が教団の関連団
体に出席しておきながら、隠し続
けていた。ネパールまで行って教
団関連イベントに参加した山際経
済再生相は当初否定していたのに
、調査では認めざるをえなくなっ
たが、教団信者のビラ配りやポス
ター張りを報告せず「確認できな
い」と嘘をついていた。名称変更
を認めた張本人である下村博文元
文科相は選挙での教団の推薦状ま
でもらい、写真におさまっていた
。それでも、「直前に渡されただ
け」と居直り、党の選挙公約に教
団の要望を反映した疑いが浮上し
た。
岸田首相は本人任せのアンケート
調査だけで幕引きを狙っているだ
ろう。誰一人責任をとらない出鱈
目さに有権者の怒りは増すばかり
だ。時事通信の世論調査では、内
閣支持率がそれまで最低だった毎
日新聞の38%をさらに下回り32・
3%になったのは必然だった。も
う内閣総辞職か解散を決断しなけ
ればならない、危険水域に近づい
てきた。安倍元首相の国葬につい
て、反対が51・9%と賛成の25・
3%をダブルスコアで上回ってい
た。このまま国葬を強行すれば、
30%割れは必至ではないか。
統一教会問題は日本国民の巨額の富
が韓国の邪教の信者らによって、収
奪されているという国家間に横たわ
る大がかりな詐欺事件である。被害
者救済に取り組む全国霊感商法対策
弁護士連絡会によれば、刑事事件化
した2009年以降だけでも全国で
正体隠しの勧誘による被害総額は21
億円にのぼっている。消費者庁への
被害相談件数は開設以来1000件
にのぼる深刻さである。保守政治家
なら率先して、再発防止に取り組み
なければならない事案のはずだ。
活字メディアは継続的に報道してい
るが、放送メディアは一部を除いて
早くも政府に忖度してか、ニュース
量が急激に少なくなった。この問題
を決着させるには新たな法整備しか
ない。しかし、自民党は「今の法令
で何ができるか最大限追及したうえ
で議論を進める」(岸田首相)とや
る気のなさを見せつけた。今後も教
団との関係を断ち切れないことは明
白な消極姿勢だ。
野党は好機である。立憲民主は「カ
ルト被害防止・救済法」(仮称)を
立案中と言うが、臨時国会で他の野
党を引き込み、何の手も打てない自
民党との違いを際立たせる戦略が求
められる。
10月の臨時国会では安倍元首相と教
団の深い関係や下村元文科相による
教団の名称変更に焦点をあて、その
経緯を問いただす必要がある。この
過程で「教団の宗教法人解散命令」
も目指すべきだ。そのためには報道
に頼らない、有志議員による調査チ
ームを編成、追及材料を収集するこ
とが求められる。ありきたりの質疑
では与党の多数に押し切られ、実が
ある結果は得られない。「モリ・カ
ケ・サクラ」以上の覚悟が問われて
いる。
【2022・9・17】