#2
「ともみ!あすか!」
大歌舞伎、小歌舞伎と呼ばれる歌舞伎シスターズの二人が、駆けつけてきたのだ。
「前田!大丈夫かよ?3年になって、クラスは一緒になれなかったけど、あたしら前田四天王だぜ」
「あとはまかせてよねー」
二人は、そう言うと、アンダーガールズの残党に向き直る。大歌舞伎が仕掛ける。彼女の得意技である掌底が、ものの見事にアンダーガールズの顎に決まり、次々と倒れていく。
「とうとう出ちまったか。姉貴の必殺技。掌底突き。拳ではなく、手のひらの下部、その硬い部分で相手に打撃を与えることにより…」
「おい、解説はいらねーよ」
小歌舞伎のいつもの解説が終わる前に、前田と歌舞伎シスターズ以外、この場に立っている者はいなくなっていた。
「さすが姉貴」
「ありがとう。二人とも」
礼を言う前田。
「だるまから連絡があってね。心配で来てみたら、この有り様。おっと、だるまは大丈夫かよ?」
「姉貴ー。大丈夫みたいっす。分厚い脂肪のおかげで。一応、病院連れていきますかー」
「タフさ加減は四天王一だな」
二人のやりとりを聞き、前田は、ほっと胸をなで下ろした。
小歌舞伎が、だるまを持ち上げようとしていた。
「こいつ、重っ」
そこへ、前田が近づく。
「わたしに…わたしに担がせて」
そう言って、前田は、だるまの巨体を背に負い歩き始めた。
「すんまへん…敦ねえ」
だるまが意識を取り戻した。
「大丈夫ですよ」
微笑む前田。
「あ、そうや。ひとつ忘れてましたわー」
だるまは、前田の背中で何やらごそごそしたかと思うと、胸元から何かをとりだした。
前田の肩越しに、手羽先が差し出される。前田は、苦笑しつつもその手羽先に口を近づけ、一口食べた。
そして、だるまも手羽先にかじりつき言った。
「勝利の手羽先やあ」
後ろからついてきている歌舞伎シスターズの二人も苦笑しつつ、その光景を眺めていた。
大歌舞伎、小歌舞伎と呼ばれる歌舞伎シスターズの二人が、駆けつけてきたのだ。
「前田!大丈夫かよ?3年になって、クラスは一緒になれなかったけど、あたしら前田四天王だぜ」
「あとはまかせてよねー」
二人は、そう言うと、アンダーガールズの残党に向き直る。大歌舞伎が仕掛ける。彼女の得意技である掌底が、ものの見事にアンダーガールズの顎に決まり、次々と倒れていく。
「とうとう出ちまったか。姉貴の必殺技。掌底突き。拳ではなく、手のひらの下部、その硬い部分で相手に打撃を与えることにより…」
「おい、解説はいらねーよ」
小歌舞伎のいつもの解説が終わる前に、前田と歌舞伎シスターズ以外、この場に立っている者はいなくなっていた。
「さすが姉貴」
「ありがとう。二人とも」
礼を言う前田。
「だるまから連絡があってね。心配で来てみたら、この有り様。おっと、だるまは大丈夫かよ?」
「姉貴ー。大丈夫みたいっす。分厚い脂肪のおかげで。一応、病院連れていきますかー」
「タフさ加減は四天王一だな」
二人のやりとりを聞き、前田は、ほっと胸をなで下ろした。
小歌舞伎が、だるまを持ち上げようとしていた。
「こいつ、重っ」
そこへ、前田が近づく。
「わたしに…わたしに担がせて」
そう言って、前田は、だるまの巨体を背に負い歩き始めた。
「すんまへん…敦ねえ」
だるまが意識を取り戻した。
「大丈夫ですよ」
微笑む前田。
「あ、そうや。ひとつ忘れてましたわー」
だるまは、前田の背中で何やらごそごそしたかと思うと、胸元から何かをとりだした。
前田の肩越しに、手羽先が差し出される。前田は、苦笑しつつもその手羽先に口を近づけ、一口食べた。
そして、だるまも手羽先にかじりつき言った。
「勝利の手羽先やあ」
後ろからついてきている歌舞伎シスターズの二人も苦笑しつつ、その光景を眺めていた。
#2
アンダーガールズの特攻隊のなかでも、精鋭のメンバーが、手に手に武器を携え、前田とだるまに襲いかかる。巨大な波に飲み込まれる小舟さながら、二人の姿は一瞬で見えなくなる。その波は次から次と荒れ狂い、休まることを知らない。
「だるまー!」
木刀や鉄パイプを否応なく、からだに数十回うちつけられ、仁王立ちのだるまの姿はボロ雑巾のような有り様だった。だるまが盾となり、無傷の前田が悲痛な叫びをあげた。
「あ、敦ねえ、だ、大丈夫でっか?」
それだけ、言うとだるまは、崩れ落ちた。よかった、とひとこと残し。
「ああああああああ!」
怒りに震える前田。
そして、だるまを横にすると、眼鏡に手をかけた。
「てめーら、ゆるせねえ」
まわりの敵を目で威圧する。
「マジにならなきゃ…マジにならなきゃ、仲間を支えられねーんだよ!」
眼鏡をはずし、リミッター解除された前田が、集団に突っ込む。
怒りの拳は、次々に紫の特攻服を倒していく。
ひとり、またひとり。
アンダーガールズも決して弱いわけではなかったが、火のついた前田にはかなわなかった。
30人は、いたであろうアンダーガールズも、ものの数分で、あと5人となった。
さすがの前田にも、疲労の色が見える。きのうの今日だ。
「おらー」
残った敵が一斉に、木刀を振り上げた瞬間だった。間に割って入る、二人の少女の姿があった。
その二人を見て、前田の顔に驚きが走った。
二人は、前田のその顔を見て、言った。
「あれあれーまさかお忘れじゃないでしょうねー」
「歌舞伎シスターズ参上」
「だるまー!」
木刀や鉄パイプを否応なく、からだに数十回うちつけられ、仁王立ちのだるまの姿はボロ雑巾のような有り様だった。だるまが盾となり、無傷の前田が悲痛な叫びをあげた。
「あ、敦ねえ、だ、大丈夫でっか?」
それだけ、言うとだるまは、崩れ落ちた。よかった、とひとこと残し。
「ああああああああ!」
怒りに震える前田。
そして、だるまを横にすると、眼鏡に手をかけた。
「てめーら、ゆるせねえ」
まわりの敵を目で威圧する。
「マジにならなきゃ…マジにならなきゃ、仲間を支えられねーんだよ!」
眼鏡をはずし、リミッター解除された前田が、集団に突っ込む。
怒りの拳は、次々に紫の特攻服を倒していく。
ひとり、またひとり。
アンダーガールズも決して弱いわけではなかったが、火のついた前田にはかなわなかった。
30人は、いたであろうアンダーガールズも、ものの数分で、あと5人となった。
さすがの前田にも、疲労の色が見える。きのうの今日だ。
「おらー」
残った敵が一斉に、木刀を振り上げた瞬間だった。間に割って入る、二人の少女の姿があった。
その二人を見て、前田の顔に驚きが走った。
二人は、前田のその顔を見て、言った。
「あれあれーまさかお忘れじゃないでしょうねー」
「歌舞伎シスターズ参上」
#2
学ランのマンションを後にした二人。
前田は、ずっと歩きながら考えていた。最近起きた出来事が、すべてつながっているのではないか、そう思えてならないのだ。
「敦ねえ、いったいどういうことなんですかねー?」
マンションからずっと、前田に話しかけているが、まったく、反応されないにも関わらず、だるまは話し続けていた。
「学ランどこ行ったんでっしゃろ?矢場久根のやつらなんですかねー?また、だれか狙われるんやろかー?」
それでもなお考え続ける前田。
「敦ねえ」
ピタッと、前田の足が止まった。
二人の行く手をふさぐように、
30人はいるであろう、紫の特攻服を着たレディースが、全員、前田を鋭く睨みつけていた。いわずとしれたアンダーガールズである。それぞれの手には、木刀や鉄パイプが握られていた。
前田も、臆することなく、眼鏡の奥から、睨み返す。
「ア、アンダーガールズ…」
だるまは、体の震えをおさえることが精一杯であった。
アンダーガールズ…
都内、最大勢力の暴走レディース。総員1000名を超えるといわれ、最狂最悪の名をほしいままにしているチームである。平均年齢17歳。悪逆非道の限りをつくし、警察も手をやいている。
「あなたが前田さんですか?」
長い黒髪の端正な顔立ちの少女がひとり、前に進み出た。
「わたしは、アンダーガールズ特攻隊長、向田マナツ」
「前田…敦子」
前田は、だるまを手で制し、マナツの前に立った。
マナツは朗々と話し始めた。
「マジ女は、今後、我々アンダーガールズの支配下に入ってもらいます。従わなければ、マジ女の生徒がどうなってもしりません。まあ、もうすでに…」
くくっと、笑いがもれた。
「な、なんで笑っとるんやー?」
だるまが、前田の制止を振り切ろうと、いきりたった。
「理由?知らなーい」
小ばかにした笑みを浮かべ、マナツは、前田に背を向けた。
「じゃ、あとはよろしく」
そのまま、30人のメンバーを残し、マナツは去っていった。
そして、とり残されたメンバーは、いきなり、前田とだるまに容赦なく襲いかかってきた。
前田は、ずっと歩きながら考えていた。最近起きた出来事が、すべてつながっているのではないか、そう思えてならないのだ。
「敦ねえ、いったいどういうことなんですかねー?」
マンションからずっと、前田に話しかけているが、まったく、反応されないにも関わらず、だるまは話し続けていた。
「学ランどこ行ったんでっしゃろ?矢場久根のやつらなんですかねー?また、だれか狙われるんやろかー?」
それでもなお考え続ける前田。
「敦ねえ」
ピタッと、前田の足が止まった。
二人の行く手をふさぐように、
30人はいるであろう、紫の特攻服を着たレディースが、全員、前田を鋭く睨みつけていた。いわずとしれたアンダーガールズである。それぞれの手には、木刀や鉄パイプが握られていた。
前田も、臆することなく、眼鏡の奥から、睨み返す。
「ア、アンダーガールズ…」
だるまは、体の震えをおさえることが精一杯であった。
アンダーガールズ…
都内、最大勢力の暴走レディース。総員1000名を超えるといわれ、最狂最悪の名をほしいままにしているチームである。平均年齢17歳。悪逆非道の限りをつくし、警察も手をやいている。
「あなたが前田さんですか?」
長い黒髪の端正な顔立ちの少女がひとり、前に進み出た。
「わたしは、アンダーガールズ特攻隊長、向田マナツ」
「前田…敦子」
前田は、だるまを手で制し、マナツの前に立った。
マナツは朗々と話し始めた。
「マジ女は、今後、我々アンダーガールズの支配下に入ってもらいます。従わなければ、マジ女の生徒がどうなってもしりません。まあ、もうすでに…」
くくっと、笑いがもれた。
「な、なんで笑っとるんやー?」
だるまが、前田の制止を振り切ろうと、いきりたった。
「理由?知らなーい」
小ばかにした笑みを浮かべ、マナツは、前田に背を向けた。
「じゃ、あとはよろしく」
そのまま、30人のメンバーを残し、マナツは去っていった。
そして、とり残されたメンバーは、いきなり、前田とだるまに容赦なく襲いかかってきた。