#2
ラッパッパ部員を一蹴したジュリナは、階段を一段、また一段と踏みしめるように、のぼった。
吹奏楽部と書かれた部室の入り口に、4人の人影があった。
2年に進級した、アニメ、昭和、ジャンボ、ライスの4人だった。
ジュリナが、身構える。
しかし、4人からは、戦う意思が伝わってこない。4人は、ジュリナを部室に招き入れるかのように、道を開けた。
不思議に思いながら、ジュリナが部室の中に歩を進める。
部室には、ひとり、制服を着た生徒が、ジュリナに背を向け、窓から校庭を眺めていた。
「来たか」
ラッパッパ前副部長のサドだった。
「卒業したけど、まだ制服いけるよなー?きのう、おばさんとか言われちまってよー」
サドは、愚痴るように言った。顔には、昨日の激戦を物語るキズが残っていた。
「なんで、お前がここに…」
「ギラついてるなー」
「え?」
サドは、ジュリナの目を見て、語り出す。
「おまえを見てると、昔のわたしを思い出すよ。まるで、抜き身のナイフのようだったあの頃のわたしを」
ふっと自嘲気味に口元をゆるめる。
「ジュリナ、過去に何があったのかは知らないが、いま、マジ女のなかで争っていても意味はない。マジ女同士が争い、傷つけあって喜ぶのは誰だ?」
「矢場久根か」
「そうだ。新総長のもと、体制が変わったやつらは手強い。まずは、やつらの侵略から、この学園を守るのが、先だろ?マジ女のてっぺんを決めるのは、それからでも遅くはない」
ジュリナは、逡巡した。
「ちっ、けが人を相手にしてもつまんないからな。ケガが治ったら、お前も、そして、前田もぶったおして、てっぺんとってやる」
「いつでも、相手になるぜ、ジュリナ」
ジュリナは、踵を返し、部室を飛び出していった。
残されたサドは、窓外の空に目をやった。
「あいつにも、わたしにとっての優子さんがあらわれればな。あのときのように」
吹奏楽部と書かれた部室の入り口に、4人の人影があった。
2年に進級した、アニメ、昭和、ジャンボ、ライスの4人だった。
ジュリナが、身構える。
しかし、4人からは、戦う意思が伝わってこない。4人は、ジュリナを部室に招き入れるかのように、道を開けた。
不思議に思いながら、ジュリナが部室の中に歩を進める。
部室には、ひとり、制服を着た生徒が、ジュリナに背を向け、窓から校庭を眺めていた。
「来たか」
ラッパッパ前副部長のサドだった。
「卒業したけど、まだ制服いけるよなー?きのう、おばさんとか言われちまってよー」
サドは、愚痴るように言った。顔には、昨日の激戦を物語るキズが残っていた。
「なんで、お前がここに…」
「ギラついてるなー」
「え?」
サドは、ジュリナの目を見て、語り出す。
「おまえを見てると、昔のわたしを思い出すよ。まるで、抜き身のナイフのようだったあの頃のわたしを」
ふっと自嘲気味に口元をゆるめる。
「ジュリナ、過去に何があったのかは知らないが、いま、マジ女のなかで争っていても意味はない。マジ女同士が争い、傷つけあって喜ぶのは誰だ?」
「矢場久根か」
「そうだ。新総長のもと、体制が変わったやつらは手強い。まずは、やつらの侵略から、この学園を守るのが、先だろ?マジ女のてっぺんを決めるのは、それからでも遅くはない」
ジュリナは、逡巡した。
「ちっ、けが人を相手にしてもつまんないからな。ケガが治ったら、お前も、そして、前田もぶったおして、てっぺんとってやる」
「いつでも、相手になるぜ、ジュリナ」
ジュリナは、踵を返し、部室を飛び出していった。
残されたサドは、窓外の空に目をやった。
「あいつにも、わたしにとっての優子さんがあらわれればな。あのときのように」
#2
ジュリナは、放課後、単身ラッパッパ部室を目指し、階段に足をかけた。
すると、眼前に、ラッパッパ部員が10人立ちふさがる。
「どいつも弱そうだな。かかってきな」
ジュリナは言うやいなや、手近な部員の頭を右手でつかむと、そのまま集団に投げつけた。
「くそっ」
「おらー」
「やっちまえ」
口々に叫びながら、襲いかかってくる部員たち。
ジュリナは身軽に体をかわしながら、突き進む。
「ははははは!楽しいぜ」
多人数に囲まれているにもかかわらず、嬉しそうに笑いながら殴り続けるジュリナ。
足場の悪い階段の途中でも、まるで踊ってるかのように、殴るのは止まらない。
あっという間に、ラッパッパ部員全員が地に伏した。
「やっぱりね」
まだまだ、物足りないとでもいうように、部室に向け、階段をのぼりはじめた。
すると、眼前に、ラッパッパ部員が10人立ちふさがる。
「どいつも弱そうだな。かかってきな」
ジュリナは言うやいなや、手近な部員の頭を右手でつかむと、そのまま集団に投げつけた。
「くそっ」
「おらー」
「やっちまえ」
口々に叫びながら、襲いかかってくる部員たち。
ジュリナは身軽に体をかわしながら、突き進む。
「ははははは!楽しいぜ」
多人数に囲まれているにもかかわらず、嬉しそうに笑いながら殴り続けるジュリナ。
足場の悪い階段の途中でも、まるで踊ってるかのように、殴るのは止まらない。
あっという間に、ラッパッパ部員全員が地に伏した。
「やっぱりね」
まだまだ、物足りないとでもいうように、部室に向け、階段をのぼりはじめた。
#2
2年B組の教室では、ネズミがジュリナに昨日の報告をしているところだった。
「やっぱり、サドが狙われたっすよ。そいつがまた、動きを見切るいい目をしてましてねー。結局は、サドのあびせ回し蹴りで倒されましたが、紙一重だったと思うんすよ」
「ふーん」
ジュリナがつまらなそうに、机に頬杖をついて聞いていた。
「矢場久根新総長の下に、死天王が4人。全員が、新総長と一緒に、転校してきたらしいっす。ホワイトは負けちまったんで、おそらく、もう前の高校に戻されてると思うんす。負け犬には容赦ない総長らしくて、本人や側近は負け知らずらしいっす」
「おもしれー」
ジュリナの瞳が妖しく光る。
「現在、マジ女は、最強軍団だったラッパッパ部長大島優子の名代で、前田がマジ女のてっぺんってことになってるっす。でも、ラッパッパ部長になるわけでも、前田軍団を結成するわけでもないみたいっす。ラッパッパは、サドさんたちが卒業したとはいえ、まだまだ、マジ女最強軍団を名乗り、金眉会や寒風愚連隊、その他のグループも手が出せないみたいっす」
「はははははは」
ジュリナが教室中にひびく大声で笑った。
「どうしたんっすか?」
「そろそろ、階段、のぼらせてもらおうか」
ジュリナが、すっくと立ち上がった。
「やっぱり、サドが狙われたっすよ。そいつがまた、動きを見切るいい目をしてましてねー。結局は、サドのあびせ回し蹴りで倒されましたが、紙一重だったと思うんすよ」
「ふーん」
ジュリナがつまらなそうに、机に頬杖をついて聞いていた。
「矢場久根新総長の下に、死天王が4人。全員が、新総長と一緒に、転校してきたらしいっす。ホワイトは負けちまったんで、おそらく、もう前の高校に戻されてると思うんす。負け犬には容赦ない総長らしくて、本人や側近は負け知らずらしいっす」
「おもしれー」
ジュリナの瞳が妖しく光る。
「現在、マジ女は、最強軍団だったラッパッパ部長大島優子の名代で、前田がマジ女のてっぺんってことになってるっす。でも、ラッパッパ部長になるわけでも、前田軍団を結成するわけでもないみたいっす。ラッパッパは、サドさんたちが卒業したとはいえ、まだまだ、マジ女最強軍団を名乗り、金眉会や寒風愚連隊、その他のグループも手が出せないみたいっす」
「はははははは」
ジュリナが教室中にひびく大声で笑った。
「どうしたんっすか?」
「そろそろ、階段、のぼらせてもらおうか」
ジュリナが、すっくと立ち上がった。