🍋 LEMON_SLICE (目次)
slice 5、カコは振り返らない

 

 

 
 
今日はサキちゃんと食事に行った。
サキちゃんの肌の色は小麦色でうらやましい。身長も高いし、顔も雰囲気もエキゾチック。外国の血が混ざっているのかもしれない。

お互い長いので、一番話すし、話しやすい。お互い無休。そんでもってタフ。無限に本数入れてる。体、いったいどうなってるの。疲れて事務所戻ってサキちゃんがいると安心する。

それなのに、たぶんだけれど、私の感は、ここの経営者の女だと言っている。間違いないだろう。なぜなのだ。それだけが私は悲しいよ。
 

 

 

 ココは、よくお店の女の子を連れてきた。
 一番一緒にいたのはサキだったと思う。サキはお店で働きながら、モデルをしたり女優もしたりしていた。さっぱりとした気持ちのいい性格をしていた。耳心地のいい掠れた声で、歌もうまかった。
 

 私のいつもの興味本位が疼き、「なんでこの仕事してるの?」と聞いた。だいたい嬢にははぐらかされるんだけれども。
 

 サキは初め「趣味」と答えた。二度目は「使命」、三度目は「監視」だった。彼氏が同じ業界の人だから、浮気しないように監視してるらしい。
「一番は、ココ。あいつ絶対ココを狙ってる。だから私休めないよ」と笑う。
「業界の男なんて、女の子のことまともに扱わないんだから。気に入ったら食って飽きたらぽい。講習って名目で、新人の子には丁寧に教えてさ。こんなことしちゃだめだからねって、入れてくるやつもいる。最低だよ。ほんと。
 うちらは大事にされない商品なんだよね。女の子はこういう仕事しちゃだめ、ほんと人生狂っちゃうから。あ、君は大丈夫か」
 サキは私が恋愛に興味がないことと、恋愛をするなら女性ということを知っている。
「わかんないよ?」と答えた私に「ないでしょう」とさきは一掃して聞いてきた。
「ねえ経験あるの。女の子と」
「ないよ」
「ホテル行かない?」
 またからかわれてるなと思いながら、
「風俗嬢を呼ぶ趣味ないもん」
 と返事する。
「違う、プライベート。お金は全部私が出す」
 黙っていると、サキは近づいてハスキーな声で囁いた。
 

「私じゃだめ?」
 

 私は、女になれないと、自覚したのがサキだった。
 サキはその後、女優として活躍した。引退してからは、資産家と結婚したと聞いている。
 サキとの思い出は、甘酸っぱいレモンとか可愛くは言い表せなくて、刺激の強いエナジードリンクなのだ。