この講座は、「経済指標と為替の関係」についてです。ファンダメンタル分析を考える投資家は、そのほとんどが「ファンダメンタル=経済指標」と考えています。しかし、この関係は思ったほど強く結びついていません。このあたりについて、本稿では解説します。
初稿 2023/7/29
経済指標=ファンダメンタル?
FXにはじめて取り組んだ時、はじめて為替相場の予想を学んだ時、どんな手法でやろうか考えた時を思い出してみてください。ファンダメンタル分析について、何と説明されていたでしょうか?
たいていの場合、次のような説明になります。
みんかぶFX「初心者入門」より引用
ファンダメンタルは、経済情勢、経済指標などが大事という理解になるでしょう。
もちろん、この解説は正しいです。経済指標データから経済情勢を分析し、将来の通貨価値が求まりますから。そのうえで、「雇用統計が良ければドルは買われる」という風な説明が続きます。
しかしながら、経済指標が良ければ、その国の通貨が必ず上昇するかと問われれば、
答えはNO!です。アメリカで良い指標がでてドル売り、悪い指標がでてドル買いという現象は、日常茶飯事に見られます。
こちらをご覧ください。
2020年5月8日 米雇用統計(コロナショック時)
史上最悪の雇用統計と呼ばれた時のデータです。
極めて悪いデータだったにもかかわらず、発表後にドルは買われました。コロナでパニック状態にあり、予想値は参考になりません。経済が壊滅的であったことが伝わって、投資家心理は非常に悪いにもかかわらず、指標はドル買いに作用しました。
こういう事が起こり得るのです。
経済指標と為替相場は不一致
つまり、経済指標と為替相場には非連動性(不一致)があります。
もちろん、指標データが良くて為替も伸びるケースも多々あります。しかし、経済指標の良し悪しでFXトレードに臨み、勝ち残れるほどの信頼性はありません。ファンダメンタル分析の基礎知識になります。
逆に一致するケースもあります。
経済指標と為替相場が一致するのは、数カ月から1年くらいの長期である場合です。アメリカの雇用統計やインフレがアップトレンドを描いている場合、ドルはほぼ確実に上昇傾向を描きます。長期投資(スワップ投資)を志す場合には、非常に役立つ考えとなります。
では、経済指標が良いのに売られる。またその逆が生じるのでしょう。
理由は複数ありますが、代表的なものを1つ紹介します。
織り込みという相場現象があります。これについて少し説明します。
まず、経済指標を見てFXトレードをするには、主に2つの考え方があります。
1. 経済指標の結果を見てからトレードする方法
2. 経済指標の結果を見越して事前にトレードする方法
1つめは、結果を確認した後にポジションを取る方法です。これは、事前の判断材料が少ない時などに、このような方法が取られます。
2つはめ、経済指標の結果を予測し織り込まれる過程で利益を挙げる方法です。
たとえばFOMCが有名ですね。FOMCが利上げをする時、その何週間も前からドルは買われています。そしてFOMCで利上げが行われた後にドルが売られる現象が見られます。これは「利上げが行われる予想からドルを買う」ことが行われ、「利上げ実現すれば、目的達成から利益確定」されます。
利益確定(決済)はこの場合、ドルを売る行為なので、利上げをした結果にドル売りが生じるわけです。
この辺をよく知らずに見ていると、「利上げされたらドル高、と習ったのに…( ノД`)」となりますね。
あとがき
原則、経済指標が良ければ景気が良く、景気が良ければ為替レートは上昇します。建前としてこれが正しいのは確実です。しかし、投資家は利益を求めて行動しますから、皆が買う前に買いたいという投資心理が作用し、それが織り込みという現象へ繋がります。経済指標の結果が良ければ、必ずしも為替が上昇するとは言えません。また、逆に為替相場と為替が連動する場面もあります。
お読みいただき、誠にありがとうございました。
ファンダメンタル分析について、有償にてノウハウ提供も承っています。
時間を買って、早々に投資水準を上げることも、1つの選択肢ではないで
しょうか。
Fundalia(ファンダリア)
蝦夷守