<艶が~る、二次小説>
私なりの沖田さん花エンド後も、9話目になりました
※沖田さんを攻略されていない方や、花エンドを攻略されていない方には、ネタバレになりますので、ご注意ください!
現代版ですし、私の勝手な妄想ではありますが…よかったらまた読んでやってください
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【沖田総司~花end後~】第9話
──翌朝。
AM:9:23
予定の時間よりも早く着いてしまった私は、携帯画面を見つめながら苦笑した。
「10時までどうしよう…」
と、その時。沖田さんからのメールを受信して間もなく、
「もう着いていたのですか?」
爽やかな声に振り返ると、こちらへやってくる沖田さんの優しい視線と目が合う。
「沖田さん…」
「早く着き過ぎてしまったからメールしたのですが…必要なかったな」
「ふふ、ですね…」
「それと……素敵ですね」
「えっ?」
「…私服姿も…」
照れ笑いを浮かべながらそう言ってくれた沖田さんも、白いTシャツの上に黒いフード付きジャンバーの、ネイビーデニムに黒いショートブーツ姿で格好良く決めていた。
「沖田さんのほうこそ…その格好、似合ってます」
「着物姿の貴女が印象に残っているので…なんだか、新鮮っていうか…」
お互いに俯き合い、その視線の先に握られたままのスマートフォンを目にして。
「あ、沖田さんはスマホだったんですね…」
「つい最近、替えたばかりなんでまだ使いづらいんですけど」
慣れない手つきでスクロールさせる沖田さんの指先を見つめる。
「ねぇ、沖田さん。まず先にこの近辺にあるお寺とか資料館へ行きませんか?」
「そうですね、源さんが眠る宝泉寺や、八坂神社などもあるし。この近辺には私や土方さん、源さんの家もあったんですよ」
「えっ、そうだったんですか?!」
「はい。じゃあ、順番にご案内しましょう」
そう言って差し出された沖田さんの大きな手にそっと指を絡めながら小さく頷くと、心地よい空気と太陽の温かい日差しに包まれながらゆっくりと歩みを始めた。
日野駅には改札が一つしか無く、駅の壁際には観光案内などが丁寧に書かれたボードがあり、それを元に順番に回れるようになっている。駅近辺にはファストフードやレストランなどが結構あって、お昼と夜はこの近辺で済まそうなどと話しながら、駅を出て右へ真っ直ぐ行った右手に八坂神社を発見する。
「え、こんな近くに…」
「早速、お参りして行きましょうか」
まず、鳥居をくぐってすぐ右側に本堂が顔を出し始める。土曜日のわりには、まだ時間が早いからなのか人はまだ疎らで。すぐに私達は、二人並んで参拝を済ませることが出来た。
(…これからもずっと、沖田さんと一緒に生きていけますように…)
ふと、隣を見ると丁度お参りを終えてこちらを見やる沖田さんの優しい瞳と目が合う。
「二人で神社に来るの、二回目ですね」
「そうですね、またこうして一緒に来られるとは…」
本堂を後にしながら、私達は幕末時代での楽しい思い出を話しながら来た道へと戻り、しばらくまた歩いていると、日野本町二丁目と書かれたポイントに辿り着く。
「ここを真っ直ぐ行けば、本陣で。ここを右に曲がれば、宝泉寺がある」
スマホの画面を確認する為に離されてしまった手の代わりに、今度はそっと彼の腕に寄り添ってみる。
「腕組んでも……いいですか?」
「えっ…」
沖田さんは、少し吃驚したような表情を浮かべた後、すぐに照れたように私から視線を逸らし。
「もう、組んでいるじゃないですか…」
「ふふ、ですねっ」
照れ笑いをする沖田さんを見上げながら、私も微笑んで日野のゆったりとした道を歩き続け、やがて宝泉寺へと辿り着いた。
「…ここに眠っているんですね。井上さんが…」
「そのようですね…」
二人で手を繋いだまま、広い敷地内へゆっくりと足を運んでいくと、誠の旗が掲げられているのが目に飛び込んで来た。
「…一目瞭然だ」
そう言いながら、沖田さんが苦笑する。
(あそこに、井上源三郎さんが眠っているんだ…)
誠の旗の下。墓前の前で私達は静かに手を合わせた後、隣で感慨深げに墓前を見つめていた沖田さんが静かに口を開いた。
「源さんは、壬生浪士組が結成される前からの同志でした」
「井上さんも…」
「はい。さっきも言いましたけど、私達の家はここらへんにあったし、天然理心流の道場があった本陣で、いつも顔を合わせていましたから…」
沖田さんの話では、井上さんは普段からとても真面目で正義感が強く、間違ったことが大嫌いなとても厳しい人だったらしい。
私が屯所にお邪魔した時には、にこやかな笑顔をくれる優しい人に見えたのだけれど、きっと、常に命懸けの戦いに全身全霊を尽くしていたのだろう。
数人、同じように墓前の前で手を合わせたり、新選組などについて話し出す人達から避けるように少し離れてたところで、私達はしばらくの間、井上さんとの楽しかった思い出を振り返っていた。
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その後、宝泉寺を後にした私達は、土方さんの資料館へ向かう前に間近にある日野宿本陣の前に辿り着いた。
「ここが、日野宿本陣ですね」
「はい。懐かしいなぁ…」
感嘆の息を漏らす沖田さんの横顔を見つめながら、私の知らない沖田さんや土方さん達を知ることが出来るのだと思うと、胸が勝手にドキドキと高鳴り始める。
「…同じ目的で集まった者同士、私達はここで厳しい稽古に明け暮れながらも…とても楽しい日々を過ごしていました。今、考えてみれば…出会うべくして出会ったような気もします」
「出会うべくして…?」
「私が、姉の嫁ぎ先であるこの地を訪れなければ、土方さんや近藤先生達とは出会っていなかったでしょうし、京へ上洛することも無かったかもしれない…」
「そうだったんですね…」
白川藩士である沖田勝次郎さんの嫡男(ちゃくなん)として、江戸麻布の白川藩下屋敷で生まれた沖田さんは、十歳の頃からここへ通っていたらしい。
近藤周助(近藤勇の養父)さんと共にここを訪れていた近藤さんと、ここの創設者である佐藤彦五郎(土方歳三の姉婿)さんと親戚関係にあった土方さんがここに集い、沖田さんも井上さんも、山南さんも出稽古に訪れていた場所。
「いつの日か武士になってみせる。それだけを思って、日々厳しい稽古に励んでいた…」
「10歳の頃からもう、土方さん達と肩を並べていたってことですか?」
「はい。当時、天然理心流はここだけでしたからね。それも、私達が顔を合わせることになった大きな要因かもしれません」
「すごい…」
改めて、天才剣士と呼ばれていた沖田さんの凄さを再確認する。
門に触れながら、昔を懐かしむようにゆっくりと瞬きをする沖田さんの横顔は何故か寂しげに見えた。
「沖田…さん?」
「え、あ…ここでの思い出話はまた後ほど。先に、土方さんの元へ行きましょう」
「はいっ」
何となく、時々見せる寂しげな表情が気になりつつも、私達は土方歳三資料館へと向かった。
そこには、当たり前だけれど土方さんについての資料が沢山あった。
農家の四男坊として、ここ日野の地に生まれた土方さんは、実家の農業を手伝いつつ、丁稚奉公に出るなどしながら生活していたらしい。
そして、壬生浪士として京へと赴き。新選組の副長となり…。
「大政奉還後、王政復古により徳川幕府の終わりを告げられ…その後、私達は貴女を伴い江戸へと戻った」
「あの後、土方さんは最期まで武士として戦っていたんですね…」
「……やっぱり凄いなぁ、土方さんは…」
その視線の先に、あの薄らと微笑む土方さんの凛々しい写真がある。そんな土方さんの写真を見つめる沖田さんの泣き笑いのような顔が、やっぱり寂しげで…
「あの、沖田さん…」
「はい?」
「…大丈夫ですか?」
微笑む沖田さんに問いかけると、沖田さんは少し困ったような表情で答えてくれた。
「はい。ただ、思い出したくも無い記憶までもが怒涛のように思い出されて…」
「…沖田さん」
「でも、これらは全て前世での記憶。この時代に生きる僕自身が……貴女と共に生きることを選んで生まれてきた今が全てだ。辛い記憶を思い出したとしても、貴女さえ傍にいてくれれば…」
繋いだままの手が更に強く握られ、私はそれに答えるようにその腕に寄り添いながら、ずっと傍にいることを告げた。
すると、沖田さんは一瞬、泣き笑いのような表情を見せた後、いつものように微笑んでくれたのだった。
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資料館を出た後、いったん駅近辺に戻り簡単に昼食を済ませ、土方さんの家があったとされる跡地へ行き、沖田さんのお姉さまの家があったとされる跡地を訪れた。
さっきまでとは違い、いつもの無邪気な笑顔で話す沖田さんに安心しながら、彼らの幼少時代の話で盛り上がり。まだ夕飯には早いけれど、昼と同じように今度はファストフード店で簡単に食事を済ませ、いよいよ、最終目的地である日野宿本陣へと向かった。
PM:4:16
門をくぐってすぐ式台が見え、道なりに砂利道を歩いて行った先にある受付でチケットを頂いた後。私達はまず、左奥にある部屋へと案内された。
そこでは、すでに日野宿本陣と新選組についての紹介映像が始まっていて、二組の老夫婦が静かに観覧していた。
人形劇に使われるようなカエルのパペットが、落語風に新選組のことを説明すると共に、数名の新選組に扮した役者の方々が、ドキュメンタリー番組の再現ドラマ風に斬り合いなどをしている。
「…なんだか、変な感じですね」
沖田さんは、苦笑しながら私に内緒話をするように呟いた。
(そうだよなぁ…自分達のことを紹介されているのだから…)
誠の意味や、局中法度の説明。そして、沖田さん達が壬生浪士として上洛してから徳川幕府の下、新選組として結成されてから起こった池田屋事件や、その後の大政奉還により新選組は伏見へと下り、鳥羽伏見の戦いに負けたこと、
そして、徳川幕府の終わりにより、新選組は官軍から賊軍へと変わって行ったことなどを簡潔に説明した後──
可愛らしいカエルのパペットは、その後の沖田さん達のことも語りだした。
沖田総司は、江戸で病死。近藤勇は、板橋にて斬首の刑。そして…土方歳三は五稜郭にて腹部に銃弾を浴び、戦死したのだと。
「えっ…」
(…土方さんは銃弾に倒れ…近藤さんは斬首されていた??)
沖田さんを見やった次の瞬間、彼の冷たい手が私の手の上に重なった。
「…こうしていてもいいですか?」
「……っ…」
沖田さんが今どんな想いでいるのか、震える手からひしひしと伝わって来る。
(…沖田さんは、知っていたのだろうか?このことを…)
甲陽鎮撫隊から離脱した沖田さんは、土方さん達と離れたままその後間もなくして息を引き取り。そんな沖田さんに最期まで付き添っていた私は、二人の死を知らなかった。
だから、沖田さんも知らなかったはず。
やがて、紹介映像がエンドロールを流し始め、一緒に観ていた老夫婦達がその部屋を後にして間もなく、二幕目が放送され始めた。
次に始まったのは、CGによる軍服姿の土方さんが直に語るというものだった。
「知っていたんですか?お二人のこと…」
「いえ、そのことは私も知りませんでした。でも、修学旅行最終日に壬生寺で偶然、近藤先生が斬首されたという話を聞いて…」
私の手を包み込んでいる沖田さんの手をそっと握りしめる。
「家に戻ってから知らべてみたのですが…残念ながら、事実でした」
私達は、またCGアニメーションによる斬り合いシーンなどを見ながら、ずっと語り続けている土方さんの話に耳を傾けた。
偶然だろうけれど、その声は土方さんの声にそっくりで。まるで、画面の中で土方さんが話してくれているようだった。
「…声も似ていますね」
苦笑しながら呟く沖田さんを見やり、また土方さんの話に耳を傾ける。
土方さんはここでの事や、さっき沖田さんが私に話してくれたように、近藤さんと沖田さんと井上さんと出会い、日々剣術に励みながら同じ夢を持ち始めたことを語り出した。
第14代将軍、徳川家茂を守るべく立ち上がったのが近藤さん達壬生浪士だったこと。また池田屋事件の事や大政奉還の事、鳥羽伏見の戦いに負けて以来、刀の時代は終わってしまったのだということを語り…
次いで、画面の中の土方さんは刀を鞘にしまい込み、「総司、襖を開けておいてくれよ…」と、哀しげに呟いた。
「……っ…」
その映像もエンドロールを迎える中。哀しそうに土方さんの名を呟いた沖田さんの肩をそっと抱きしめる。
今の私には、そんなことしか出来ないから…。
「沖田さん、ごめんなさい…」
「どうして謝るんです…」
「だって、ここへ来なければ…こんな思いをしなくて済んだのに…」
今にも泣きそうに見えたのだろうか、沖田さんはそんな私にいつものように微笑み言った。
「いつかは、乗り越えなければいけないことでした。それにさっきも言いましたが、これはもう過去のことです」
「…………」
「無力だったあの頃の自分を悔いる時もありますが、貴女が居てくれるから私は…」
大丈夫なんですと言って、逆に私の手を取りゆっくりと立ち上がる沖田さんを見上げ、精一杯の笑顔を返す。
二人一緒ならどんな困難でも乗り越えて行ける。
そう、告げられたことが嬉しくて。
その優しい手に包まれながら、“これからもずっと沖田さんに寄り添って生きて行きたい…。”と、改めてそう思っていた。
~あとがき~
お粗末様でした
例のごとく沖田さんの私服姿なのですがいろいろ考えた結果…↓こげな感じにしてみました
最初は、もっと紳士的な格好を…と、思ってたんだけど、高校生だということを思い出して
でもって今回は、実際に日野宿本陣へ行って体感し、ガイドさんからいろんな話を聞いて来たことを参考に書いてみました写真は逆光が多くて困った
しかも、デジカメ忘れたから携帯カメラだし
まるで、新聞記者のようにメモしとりました(笑)残念ながら、土方さんの資料館や源さんの眠る宝泉寺へは行けなかったのだけれど本陣ではかなり収穫がありました
道場はもう無いようでしたが、例の土方さんらが昼寝したと言われている部屋や、土方さんが可愛がっていた小姓、市村鉄之助が訪れた部屋とか、彼らを見守って来た大黒柱など…。見どころ満載でした
そして、こっからが楽しくなってくるお話!なのですが、それは次回にまたじっくりと。今回は、辛い記憶ばかりでしたが、次回はいよいよ、本陣での彼らをお伝えしますですそして、沖田さんとのお月見
今回も、遊びに来て下さってありがとうございました