質問コメントへの返事を順次、書いています。順番に記事に起こしていきますので、ややご返答速度が遅くなると思います。簡略系のお返事で、記事にするほどではない、という場合は、「コメント欄での返信で可」と記載いただければコメントの方から先にご回答できるかと思います。
また、「記事リクエスト・質問・その他」にいただいた各ご質問の内容によっては、私の回答できる範疇外の物事であったり、コメント文字数内でお返事が書けるという場合については、こちらの判断で記事へ書き起こさず、コメント欄でのお返事とする場合も今後あろうかと思いますのでご了承いただけますと助かります。
では、質問コメント3のyurinoharaさんへの回答を書いていこうと思います。
ご質問の内容:
・お子さんは小学校6年生
・通級と普通級の両方を利用中
・担任、通級の先生、教育委員会の巡回指導などのサポートを利用中
・学校との連絡は多々した一方、大きなトラブルはなし、いじめなし
・学力から鑑みて私立は受験しない方針
・公立中学へ進学予定
・進学先公立中学に通級なし、普通級に在籍+巡回指導となる
親側で心配な点:
「自分自身中学校の勉強はたくさんの先生や課題をこなしながら思春期の子供たちとかかわっていかなければならず正直しんどかったので、親として何か事前に手を打てる事はないだろうか」という点。
以下、回答です:
全体的にまとめると、小学校から中学校という「組織形態が変わる」時期に、子供がどう対応していけるだろうか、おそらく今までのように課題・問題に遭遇した時に、小学校時代にはあった通級や担任の先生の全体視できる状態でのサポートが、中学になるとはずれる状態で、そこに不安要素があり、「今までのように」一つ一つ、対応して事なきを得る、平穏な学校生活が送れるかどうか。
という部分が大きく心配なのだろうと思います。
書き出すとお分かりかもしれませんが、「組織形態が変わる」ときに、形式として「支援システムがない組織」に入っていく、ということが、そもそものこの不安の要因です。そして今後、この不安となる「場所の変化」はよく起こります。これは今後、高校、大学、就職先と場所を変わるたびに経験する、節目としての「変化」です。
お子さんはまだ小学6年生ですので、小学校から中学生に上がる「大人になり切らない年ごろで、完全自立はまだ少し難しいかも」という時期ですよね。その部分を考えると「小学校ほどではないけれど、対応準備がゼロ、という状態にもしない」というケースのちょうど真ん中、の「手厚くもない、でも薄すぎない支援体制」を学校との交渉と、学校外の場所で作れたらいいわけです。特に外の世界に場所を作るというのが、今後の10代の時期には「世界を広げていく」「親と対立しがちな思春期になる」という意味でも重要になってきていると思います。
まず、不安であることは正しくそのまま受け入れて、不安が現実化してしまったときの予防策、または受け皿・リセットする間の逃げ道を少し用意して、「失敗しても大丈夫」なようにしておく、というのが一番、具体的に「気持ちが落ち着く」落としどころかなと思います。そのためには「学校の支援だけに限定しない、学校という場所だけに限定しない」イレギュラーな支援を用意することがポイントかもしれません。
一つ、親族が良く取る公立中学への支援の打診例を書いておきます。田舎のような小規模な中学でも、多数の小学校から子供たちが集いますので、中学は結構な規模となります。知らない人も大勢、先生の数も急に増えます。すると、小学校時代は落ち着いていた親族の子でも、時には入学初期の頃に、隠れてマイルドになっていた特性が一気に強く、濃くなる時期もあります。これを親が客観的にみると
「パニックしている」
「混乱している」
「荒れている」
「中学生活が全くまともに過ごせていない」
「中学の勉強が全くついていけない・わかっていない」
「中学のシステムにのれていない」
という風に見て、親側もとても不安になると思いますが、場所が変わりすぎているため、発達凸凹の子の初期反応としては「よくあること」であり、その後のサポートで、また「慣れる」という過程をふめば、以前と同じように「強く・濃くなった特性」がマイルドに、隠れていくことも多いです。
入学後に上記のような状態になった子を見れば「失敗したように見える」かもしれませんが、まだ10代前半の未熟な子ですので、まずは「大きな、人生の節目という変化への経験不足である」と捉える方が自然です。幼稚園から小学校への変化より、小学校から「科目担任制」になり、「学習科目が増える」状態で、「部活が本格的になる」というエキストラも出てくるうえ、「落ち着いてきた同級生と渡り合う」というよりティーン的なコミュニケーション、対人関係も上乗せされる中学への移動の方が、ずっとずっと、初めて経験する大変な変化なのです。
定型のお子さん方でも、この山盛りの変化にはそうそう、気楽に波にのるというこは難しいようですので、発達凸凹の子が難しいのは当然です。よって、初期に荒れたとしても、今までの経験を活かして、「一つ一つのことを丁寧に対応していく」ということができるように、そういう状態にまで持って行けるような環境調整、学校内の場所、学校外の場所という「親が用意できる場所的なもの」を中心に準備していかれることをおすすめします。
小学校との違いは、中学では「親ができることは、ほぼ学校内ではない」ということです。担任の先生と子供の対応時間数も少なく、担当科目の先生方それぞれと丁寧に時間をかけて「子供のために親が関わる・支援のための話し合いをする」というのは、時間的にも先生・親両方の都合的にも、まず無理です。よって、そこは子供が中心になって、先生それぞれに困ったことを伝える、という手段を取るしかありません。
家庭でなら、親はいくらでも子の支援に回れます。先生それぞれに相談したい内容をメモや手紙に書き起こす手伝いもできます。困っていることが漠然としてわからないなら、ねばりづよく「わかるまで付き合ってあげるから」と、時間をかけて、家ではアイデアも出てこないから、とペットショップや大きなショッピングモールで文具でも見よう、と散歩にさそってカフェやドーナツを味わいながら「場所を変えて話す」ことで、少し気がまぎれる・アイデアが浮かぶかもしれません。
学校でなんだか上手くいかずストレスで爆発しそうなときは、「ちょっと一回学校をお休みしてリセットする時期だね。」と、一時避難的に思春期外来のカウンセリングを受けられるように「専門家と話せる場所」を準備しておけば、その「ぎりぎりの状態」を一つ、丁寧にしのぐことができます。そうして爆発をしのいで、スクールカウンセラーと、または校長や担任、学年主任とつなぎをつけて、学校で安定してすごしていけるように微調整することもできます。
親族の間で最も必要かな、と言われているのが「中学生には、学校と家以外の居場所が必要」という部分です。yurinoharaさんがおっしゃるように、思春期になると親と話すことが減り、また反抗期などで話し合い以前の話してくれない時期にも突入します。その時に必要なのは「子供が居心地がいいと思う場所」です。
それはカウンセリングや相談先でもいいのですが、より気軽に行ける場所の方が上手く「気分転換」の場所として機能しています。親族の例では
・自由に出入りさせてもらえる小さな学習塾(自習を自由にさせてくれる、先生が話しやすい、世間話をする時間も多いような所)
・習字や将棋、手芸店のミニ習い事講座のような、のんびりした場所
・厳しいタイプのお稽古ではなく、ずっと自分のペースで素振りができる剣道場、ずっと泳いでいられるプール、ずっとヨガをしたりランニングマシーンで走ったりしていられるジム
・勉強が分からないときに自由に出入りしていい寺子屋(市営や区営、NPO団体の所などもあります)
・プログラミング教室(最近、親族の子達の好きな場所として出入りが増えているようです)
・発達支援センターのカウンセリングルーム(中学生になる節目で、より具体的に特性部分から工夫できることなどを子供と1対1で話してくれるような面談形式に変わるため、子どもだけで行けるようになります)
などが多いです。
あと、中学校の生活のパターンを「子ども一人で全部を抱え込まない」形式にしている家庭が多いです。共働き家庭も多いので、親族の場合はいろんな「場所」で子供がサポートを受けられるようにしますが、結果的になんとなく「子ども主体」になっている、という形式を取っています。入門、入塾など手続きは親がしますし、子供ができないことは手助けします(例:全科目の試験範囲を的確に伝えることができなければメモを家庭で一緒につくるなど)が、その「場所内」には親は関知しません。思春期の子の多くが、「居心地の良い自分だけの場所」での親の監視・支配を嫌がるからです。
あともう一つ、「子供が主役となり人生を生きる」準備が始まります。
家庭で親が、時間割や用意や宿題を管理すると「親が頭脳」になり「子が実行・従う」という、子供がサブ、親が主体という状況になるので、これは小学校まではいいのですが、中学になると「義務教育外である高校へ進学する準備」となりますので、人生の選択の一つである進路を自分自身で考えて選んでいける練習としても、「子ども主体」になる準備を少しずつスローですが、していくことになります。ただし、子供の負担になりすぎないようにしています。
最も親族で多くみられるパターンは、
・学校のクラブは余力があるものに参加:「毎日必死に頑張る」はまず無理なので、お試しの最初は「楽そうで興味がまあまあある部活」を選び、帰宅した後に余力が残っているようにする。
・宿題は塾の手を借りる:学校へ行きたくなくなる理由・帰宅後に最も荒れる理由の一つが、「多数の教科から同日に出される複雑な宿題」のせいである、ということがほぼ顕著です。学校で各教科から出された宿題が様々な形式、量も様々なため、把握しきれず混乱したまま帰宅し、脳が混乱状態でまとめられないまま次の日につなげられず、「どうにもできない・自分の手に負えない」感覚から不安や怖さにつながって、「学校自体が嫌」と感じる子は多いと思います。
その元凶である「宿題・学校の学習の管理」が楽になるような手だてを、家庭で用意しておきます。
「宿題を一人でやると量も多く、処理していく方法もわからず、全部の宿題の管理もパニックするから個別指導塾に丸投げしてそこでやる」
「テスト勉強は範囲とテスト日を塾に伝えて、計画立ててもらう」
という子が多いです。よって、中学に入学する前、2、3月ごろから中学の学習の仕方や予習をしたり、入学後は実際の宿題やテスト勉強を塾に丸投げしつつ、「中学の宿題、中学のテスト勉強」のやり方や処理の仕方を教えてもらえることで、身に着けて行きます。1年もたてば落ち着いてきて、塾の回数を減らすことができたり、または集団塾に移動することができる子も出てきます。高校はより落ち着いて過ごせる状態にもなります。
個別指導塾でないとこうした指導は対応してもらえませんが、発達凸凹の子は体調がよく変調しますし、突然寝込んだり、動けなくなったりしますので、曜日変更が可能な個別指導塾などを選んでおくとその対応もしてくれて助かることがあります。ずっと3年、塾に行かないといけないということではなく、「中学の学習教科の多さ、勉強の内容や勉強方法、テスト前の準備の仕方」がわかってくれば、塾を止めて家庭でタブレットやオンライン学習などに切り替えてもよいのです。費用の問題もありますので、その辺は親族も、塾のネームバリューに重きを置かず、居心地が良いところ、柔軟な対応をしてくれるところ、安い場所など、子どもと家計に合わせて探したり工夫しています。
あと、お子さんが中学生活の中で「精神的に」非常に困った場合の避難所、相談所の場所だけは校長先生等と話して決めておかれることをお勧めします。通常は保健室であったり、学習室や相談室、校長室だったりしますが、それは中学の規模や先生の都合などで異なるので、入学前に一度依頼し、入学後に確認(先生の移動があり伝達されていないことが多々あるので)、ということでお子さんを実際に連れて「ここが中学での避難場所」と教えておくことで、お子さんも最後の砦、不安を少し和らげる保険を手に入れることができます。
基本、小学校時代に一つ一つ、何かあっても周囲のサポートや関わりで乗り越えてこられたのであれば、その基礎は「一時期」見失われることはあっても、本当の意味で消滅することはありません。経験は発達凸凹の子には一番、糧になるものです。一時的なショックが引けば、かならず体や脳が覚えている経験は少しずつ活用されていきます。中学入学初期に、万が一、別人のように特性が全開になり荒れたとしても、それは「大きな変化に慣れていないショック状態」であると受け止めて、今まで積み上げたものが消滅したのではないことを、親の方で信じて対応してあげてください。
不安がある、ということはこうした準備をすることができる心理的なスタートとなりますので、それは歓迎すべきことでもあります。ただ、不安なまま過ごすことは人には耐えられないものですので、上記に書いたような「居場所さがし」を、ここなら楽しめるかな、ここなら気軽に行けるかな、ここなら好きになってくれるかな、合いそうかな、と楽しみながら見つけていくようなことをされたら、それで中学生になるお子さんには十分でもあります。逃げ場所のような、隠れ家のような、学校や家庭では補えなくなってきている部分を外で発見する手助けだけ、してあげるといいかと思います。
あとは学習の凸凹は、得意を伸ばすようにしてあげてください。定型のお子さんは不得意科目を塾で履修されることが多いと思いますが、親族の子達の場合、得意科目を履修することが多いです。得意科目がより得意になればなるほど、学習時間は長くなり、学習関係の本を読み・考え・解く時間は長くなり、塾へ行く足取りは軽くなります。
その「ついで」に、中学でにっちもさっちもいかなくなった科目は、短期決戦で長期休暇のみ、集中して取る、などしてしのぐことも多いです。嫌いなことはしたくない・動けなくなる子が多いので、得意科目を延ばせば、じわじわと、不得意科目も底上げされていくことが多いです。その部分を意識して塾や学習をすすめられるといいかと思います。ただし、これは私達の親族の傾向ですので、ごく一つの参考にしてください。
以上、回答とさせていただきます。