一から学ぶ東洋医学 No.42 蔵象(6)腎 腎の病証 | 春月の『ちょこっと健康術』

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こんにちは ニコニコ

 

あまりに寒いので、カメのようになってました。 お仕事はしましたけど。 寒い→こもる→動かない→熱エネルギーをつくれない→寒い…ってなるのがわかっていながら、ついつい…。 いけませんね。 昨日の午後は、思い切って、手足を伸ばして、筋肉を動かして、熱エネルギーをつくりましたよ。 今日は、こりもほぐれていて、いい感じです。 やっぱり動かないと…だわ。

 

さて、今回は腎の病証です。 この間、チラッと書いた疑問っていうのは、『全訳 中医基礎理論』にある腎の「蒸留気化」について。 「蒸留」がどこから来たのか調べるにも、出典がわからないから、お手上げに近いです。 イメージとしては何となくわかるんだけど、単に気化じゃダメなのかしらね。 引き続き調査続行します。

 

1 腎病(腎の病証)の病機

 

腎の病機は、腎精・腎気の不足と腎陰・腎陽の不足に大別されます。 他臓は陽気と陰液の状態で大別されてましたけど、腎の場合は、蔵精に対するものと、元陰としての腎陰・元陽としての腎陽に対するものとなります。 

 

精は生理物質のおおもとですから、言ってみれば、腎精は生理物質の根本。 で、腎陰・腎陽は陰陽の根本。 状態の良し悪しが、すぐ全身に影響しそうなことは、想像つきますね。 考えてみれば、腎陰・腎陽も、元は腎精ですから、腎精がすべての根本と言ってもいいのかもしれません。

 

精の生理と病理にあるとおりで、腎精が過剰になることはありません。 腎陽は、肝陽や心陽みたいに、化火することはありません。 ということで、腎の病証は虚証だけで、実証はありません。 

 

(1) 腎精・腎気の不足

 

腎精・腎気の作用のうち、どの機能が減退しているかによって、↓以下のように分けられます。

・ 成長・発育・生殖の機能減退 → 腎精不足証 虚

・ 腎の封蔵・二便に対する固摂の減退 → 腎気不固証 虚

・ 納気の機能減退 → 腎不納気証 虚

 

腎気の作用は、広い意味では腎精の作用でもあります。 他臓では、精は陰液に属していて、陽気とは区別されていますが、腎精と腎気は特別。 そのせいかどうかはわからないけど、中医学では腎精を「腎中精気」と表現しています。 精気は広義の精かもしれませんが、文脈からすると、精と気って感じです。

 

腎気不固証と腎不納気証は、どちらも腎気の不足によるものなので、腎気虚証と総称されます。 

 

(2) 腎陰・腎陽の不足

 

腎陰・腎陽のどちらが不足しているかによって、↓以下のように分けられます。

・ 腎陰の不足 → 腎陰虚証 虚きょねつ

・ 腎陽の不足 → 腎陽虚証 虚きょかん

 

2 腎精・腎気の不足による病証

 

(1) 腎精不足証 虚

 

(a) 病態

腎精が不足して、精の機能が減退した状態。

 

(b) 原因

・ 先天の精の不足

・ 後天の精の不足

・ 大病や久病、加齢による腎精の消耗

・ 房事過多による腎精の消耗

 

(c) 症状

 

① 先天の精の不足による症状

・ 乳幼児期: 発育不全、発達遅滞、成長不良、泉門閉鎖の遅れ

・ 二次性徴期: 男性ではひげが薄い・声変りしない、女性では初潮の遅れ・乳房の発育不良

・ 壮年期: 早老

 

② 生殖機能の失調

・ 男性: 陽萎、早漏、不妊症、性欲減退

・ 女性: 不妊証、不育症、無月経、性欲減退

 

③ 骨・髄・髪の滋養不足

・ 腰膝酸軟、歯のぐらつき

・ 耳鳴り、難聴、視力減退、眩暈、健忘

・ 脱毛、白髪

 

③ 舌脈所見: 舌体痿軟、脈細無力

 

乳幼児の発育不全には五遅(ごち)と五軟(ごなん)があり、腎精不足があると、これらが起こりやすくなると考えられています。

 

五遅

・ 立遅: 満1歳を過ぎても、一人で立っていられない。

・ 行遅: 満1歳を過ぎても、歩けない。

・ 髪遅: 出生時に髪がなく、日がたってもなかなか生えてこない。

・ 歯遅: 生後10か月を過ぎても、歯が生えてこない。

・ 語遅: 4~5歳になっても、しゃべらない。

 

五軟

・ 頭項軟: 首がすわらない。

・ 手軟: 物を持ったり、握ったりできない。

・ 足軟: 立てない。

・ 口軟: 唇が薄くて、噛む力が弱く、常に口からよだれが流れる。

・ 筋肉軟: 筋肉が緩んでいて、動きに力がない。

 

(d) 進行と波及

腎精は生命の根本と言えますから、腎精が不足したままでは、生理物質は不足し、身体は虚弱となって、病気にかかりやすくなり、老化が早まります。 老化が早まるということは、死が近づくということでもあり、手当てと養生が大切。

 

(2) 腎気虚証(腎気不固証・腎不納気証) 虚 

 

(a) 病態

腎気が不足して、腎気の固摂作用が低下した状態(腎気不固)、または納気作用が低下した状態(腎不納気)。

 

(b) 原因

・ 幼年期で、腎精がまだ充足していないために、腎気が十分に機能しない。

・ 老年期で、腎精が衰退して、腎気が十分に機能しない。

・ 房事過多によって、腎気を損傷している。

・ 大病や久病によって、腎気を消耗している。

 

腎精・腎気の充足と身体充実のピークは、「女性は7年、男性は8年で節目が来る?」にあるように、男性で24~32歳、女性で21~28歳とされています。 それ以前は、成長の度合いによって、腎精は不足しがち。 それ以降は、ジワジワと減少傾向。 いずれの場合も、腎気の作用は失調しやすい状態です。

 

(c) 症状

 

① 腎気不固証

・ 固摂作用の低下 → 頻尿で小便清長または遺尿、尿漏れ、滑精または帯下、流産、早産

・ 腎虚 → 顔色が白っぽい、難聴、精神疲労、倦怠感、腰膝酸軟

・ 舌脈所見: 舌質淡、舌苔白、脈沈弱

 

② 腎不納気証

・ 納気の失調 → 喘息、息切れ、呼多吸少、動くと症状が悪化

・ 肺気への影響 → 声が低くて弱い、自汗

・ 腎虚 → 顔色が白っぽい、難聴、精神疲労、倦怠感、腰膝酸軟

・ 舌脈所見: 舌質淡、脈沈弱

 

(d) 進行と波及

・ 子どもの場合は、成長に伴って腎気が充実してくれば、おのずと改善されるが、改善されない場合は腎陽虚証となる。

・ 高齢の場合は、治りにくいため、症状を軽減し、進行を緩やかにするよう手当てする。 進行すれば、腎陽虚証となる。

 

3 腎陰・腎陽の不足による病証

 

(1) 腎陰虚証 虚きょねつ

 

(a) 病態

腎陰が不足して、腎陽を抑制できず、虚熱を生じた状態。

 

(b) 原因

・ 大病、久病、加齢などによる腎陰の消耗

・ 熱病や房事過多による腎陰の損傷

・ 先天の精の不足による体質的な腎陰の不足

・ 他臓の陰虚(肝陰虚、心陰虚、肺陰虚)からの波及

 

(c) 症状

 

① 腎虚症状

・ 腰膝酸軟、耳鳴り、難聴、眩暈

・ 遺精、早漏、不妊症、不育症、崩漏、過少月経、閉経、流産、早産

・ 髪の乾燥

 

② 虚熱症状

・ ほてり、のぼせ、手足心熱または五心煩熱、頬部紅潮

・ 夜間潮熱

・ 盗汗

・ 消痩

・ 皮膚の乾燥、口乾

・ 小便黄、大便乾結

 

③ 舌脈所見: 舌質紅、舌苔少、脈細数

 

(d) 進行と波及

・ 肝陰に波及すると肝腎陰虚証となり、肝陽を抑制できなくなると、肝陽上亢証となる。

・ 肺陰に波及すると肺腎陰虚証、心陰に波及すると心腎陰虚証となる。

・ 腎陰虚によって「水不済火(水と火が助け合うことができない)」が生じると、心腎不交証となる。

 

心陽と腎陰は、内臓の上と下で協力し、互いに助け合う関係にあります。 心陽が腎陰を適度に温めて、その機能を引き出し、腎陰が心陽が亢進し過ぎないように制御していて、それがうまくいっている状態を心腎相交と言います。 腎陰虚が強くなると、その関係が崩れるので、心腎不交となるんですね。

 

(2) 腎陽虚証 虚きょかん

 

(a) 病態

腎陽が不足して、温煦作用が低下し、虚寒が内生した状態。

 

(b) 原因

・ 大病、久病、加齢などによる腎気の消耗

・ 房事過多による腎気の損傷

・ 先天の精の不足による体質的な腎陽の不足

・ 腎気虚(腎気不固、腎不納気)の長期化

・ 他臓の陽虚(心陽虚、脾陽虚)からの波及

 

(c) 症状

 

① 腎虚症状

・ 腰膝酸軟、顔色が白っぽい、眩暈、精神疲労

・ 陽萎、不妊症

・ 夜間尿、下痢、浮腫

 

② 気虚症状

・ 胸悶、息切れ

・ 易疲労、倦怠感、無力感

・ 自汗

・ 活動すると症状悪化

 

③ 虚寒症状

・ 四肢、特に下肢の冷えと痛み

・ 畏寒

 

④ 舌脈所見: 舌質淡胖、舌苔白、脈沈弱

 

(d) 進行と波及

・ 脾陽に波及すると脾腎陽虚証、心陽に波及すると心腎陽虚証となる。

・ 陽の損傷が陰に波及すると、陰陽両虚証となる。

 

腎の病証の場合、基本が腎精にあるので、どれも似たような症状が出ますが、発育・生殖系の症状が強ければ腎精不足、虚熱があれば腎陰虚、虚寒があれば腎陽虚となります。

 

 

一天一笑、今日も笑顔でいい一日にしましょう。

 

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