里親決定!part6 | 35歳年上の夫は師匠でエイリアン! 

35歳年上の夫は師匠でエイリアン! 

【夫】台湾人 × 【妻】日本人

国際結婚? いえ、惑際結婚ですから!

気がつけば2男1女。

あの男を見ていると、とても同じ人類だとは思えない。
漢方薬を水なしで飲めるなんて
一体どんな味覚をしてるんだ、あのおっさんは。


里親決定!part1
里親決定!part2
里親決定!part3
里親決定!part4
里親決定!part5



午後3時のお約束の後、
次の方とのお約束は4時だった。

お約束の方は4時5分ほど前にうちに到着なさって、
ちょうど3時の方と入れ違う形になった。






「○○さんですか?」





お名前を確認した後、うちに入って頂いた。

メールのやり取りから、女性だということは予め分かっていた。
拝見したところ、多分50代じゃないだろうか。

先程の方の時と同様、居間にいる次郎ちゃん、ぽんちゃん、
ゆめちゃんのところへご案内した。

3匹とも、さっきと同じようにじゃれ合っている。

ご丁寧なことに、この方も手土産をご持参下さっていた。
本当に恐縮なことだ。心からお礼を申し上げた。






「前に飼っていた猫が、1年半くらいで病気で死んだんです。」






子猫たちを見ながら、こうおっしゃった。
その目には涙が光っていたように思う。






「だから、もう猫を飼うのは止めようと思ってたんですけど...」






すごい人だなと思った。

愛する存在を失って、心をひどく痛めた経験を引きずりながら、
それでも、また愛することを選ぶとは。

なんて勇敢な人だろう。

あの涙からすると、まだ傷はきちんと
癒えてないんじゃないだろうか。







人間の心って。
なんて不都合にできてるんだろう。







この時、こうも思った。

猫に限らず、ペットというのは、お金も手間もかかる。
ただ、ご飯を食べさせておけばいいというものではない。

トイレの世話もしなければならない。
動物によっては、散歩もしなければならない。

予防接種。健康診断。去勢や避妊の手術。
しつけ。音や臭いのケア。病気やケガでの通院や入院。

はっきり言って。

動物を飼わなければ、お金は1円だってかからないし、
自分の時間だって1秒も費やす必要はない。

別に。

動物と一緒に暮らさなければ、死ぬわけじゃなし。
どう考えたって、いない方が生活は楽なはずだ。

それでも。
人はやっぱり愛情を注ぐ対象を求める。

その対象が、人であろうが動物であろうが、
他の何かであろうが、要は同じことだと思う。






人って、愛がなかったら生きていけないんだな...






この女性の涙を見て、つくづくこう思った。

どんなに傷ついても、辛い思いをしても、
たとえ泣きはらすような経験をしても、
また愛することを選ばずにはいられないわけだから。

世の中に、心ほど非効率的なものはない。
合理的という言葉から程遠いものもない。

でも、愛すれば損をするなんて、やっぱり思えない。
愛するかどうかを、損得勘定で決めることもできない。






人間の心って。
なんて愛おしくできてるんだろう。

不器用で。計算づくでは動けなくて。

人はみんな、心に無償の愛を
携えて生まれてくるんだろうな...

きっと標準装備なんだろう。





うちにいらした里親さんを見ていると、
私にはそうとしか思えなかった。




この世のすべては陰と陽。
それは愛も同じこと。

愛する喜びが陽だとすれば、失う悲しみは、きっと陰だ。

でも、両極を知って初めて、そのすべてを味わうことができる。
どちらかだけでは、不自然なのだろう。

きっと、心はそのことを知っている。

だからこそ心は、たとえ何があっても、何度でも何度でも、
愛することを果敢に選ぶんじゃないだろうか。

すべてを知り尽くすために。

心ってすごい。
ものすごく勇敢で。強くて。優しくて。寛大で。

そして、愛することに貪欲で。
制限や枠を設けない。

多分、それが心の本質なんじゃないだろうか。
きっと、心は自由そのものだ。

私たちの中にあるものは、実に大したものだと思う。









「どの子にするか、決まったら教えてくださいね。
 慌てなくても大丈夫ですよ。ゆっくり決めてくださいね。」







年上の方に対して失礼だけど、どの子にしようかと
真剣に悩んでらっしゃる姿が、何だか子供みたいで、
とても微笑ましかった。

ちょうど、縁日の出店が立ち並ぶ中、一緒にいる親に




「どれかひとつだけ選びなさい。」




こう言われて、どれにしようかと一生懸命に
考えてる小さな女の子みたいというか...







「それじゃあ、この子にします...」







しばらくして、里親さんが選んだのは次郎ちゃんだった。








そうか。次郎ちゃんか...







次郎ちゃんは、その名の通り、次男坊といった感じの子だった。
どことなくやんちゃで。それがまた可愛いらしくて。

ぽんちゃんとつるんでいることが多かった次郎ちゃん。
ふたりで台所の棚の奥に入って行ったきり、何時間も出てこなかった。

こっちからは姿の見えないところまで入って行くから、
一体どこで何をしてるのか、全く分からなかった。

寝てたのか、いたずらしてたのか...
未だに謎のままだ。





次郎ちゃんは、とてもワイルドな子でもあった。






「トイレ? けっ。ちまちまと男がそんなもん使ってられっか!
 出したいときに出したいところで出すんだよ! それが男ってもんだ!」







まあ。早い話が。
トイレを覚えてくれなかった 笑。

部屋の隅に行って腰を下ろして、
そのまま動かなくなったら要注意。

そこをトイレにしようと企んでいるのは、ほぼ確実だ。
こっちはたまらん。そこは畳だ!







「次郎ちゃん。ダメよ! トイレはこっちー!!!」







慌てて次郎ちゃんを抱き上げて、トイレの中へ。

こんな次郎ちゃんの動きに目を光らせるのが、
その頃の私の大事な日課だった。





譲渡契約書にサインを頂いて、身分証明書も見せて頂いた。
免許証のご住所は、契約書のものと同じだ。

この作業にも、やっと慣れてきた。







さあ。次郎ちゃんともお別れだ。







里親さんに抱っこされて、玄関へ続く廊下を渡っている最中、
次郎ちゃんは、少し声を上げて、身じろいだ。

無理もない。

小さかった子猫たちは、行動範囲がまだとても狭くて、
居間と台所以外の場所へは、ほとんど立ち入ることがなかった。

次郎ちゃんも、廊下へ出るのは、この時が初めてだったのだ。








次郎ちゃん。やっぱり怖いんだろうな。
ごめんね...








里親さんの車の中のキャリーケースに入った後も、
次郎ちゃんは不安そうに鳴いていた。






次郎ちゃん。ごめんね。







胸が痛む。
ママのチェリーの顔が浮かぶ。

でも。これはもう決めたことなのだ。







チェリーちゃん。ごめんね。







里親さんの車がうちの前の坂を下っていくのを
見送るのは、今日はこれで3回目だ。







次郎ちゃん。どうかどうか幸せに。







他に言葉が見つからない。







数日後、名前が「虎次郎 こじろう」に決まったと
里親さんからLINEで連絡が来た。

確か、大学生の息子さんが決めたんじゃなかっただろうか。




ところが。

ひと月くらい経った頃。
里親さんから、こんなメッセージがきた。






〝名前は、結局 呼びやすく反応が良いので「ジロ」になりました。”






この時、どれだけ感動したことか。







〝反応が良いので「ジロ」になりました。”








次郎ちゃんは知っていたのだ。
ちゃんと分かっていたのだ。






「僕は次郎ちゃんだ。」






ということを。

他のきょうだいたちとは違う、
自分だけの名前をちゃんと理解していた。


人と猫。

たとえ同じ言葉を話さなくても、ちゃんと心は繋がっている。
まだ幼い次郎ちゃんが、私にそのことを教えてくれた。





やっぱり、心は自由なのだ。





次郎ちゃん。ありがとう。
忘れないでいてくれて。





おばちゃん。
嬉しくて泣いちゃったじゃないの。






あれから4か月あまり。

すっかりいいあんちゃんへと成長したジロちゃんは、
太郎ちゃん同様、ママのチェリーによく似ている。

里親さんのお宅の家庭菜園で、元気に走り回ってるそうだ。

「我が家の癒し系担当です。」

里親さんからこんなメッセージをもらうと、
猫が持っている不思議な力が愛おしくなる。

犬や猫と暮らしている人は(きっと他の動物もそうだと思うけど)
そうじゃない人に比べて長生きするとか...

やっぱり、愛することが人生の糧なんじゃないかと。








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