里親決定!part4 | 35歳年上の夫は師匠でエイリアン! 

35歳年上の夫は師匠でエイリアン! 

【夫】台湾人 × 【妻】日本人

国際結婚? いえ、惑際結婚ですから!

気がつけば2男1女。

あの男を見ていると、とても同じ人類だとは思えない。
漢方薬を水なしで飲めるなんて
一体どんな味覚をしてるんだ、あのおっさんは。



里親決定!part1
里親決定!part2
里親決定!part3



花ちゃんの里親さんの次にメールを下さった方は、





‟白キジの子を希望しています”





とのこと。






「は? 白キジって何...?」






鳥...?





‟お問い合わせありがとうございます。
 無知で申し訳ありません。どうかお許し頂きたいのですが、
 白キジという表現が分かりませんで...
 写真でいうと何枚目の子でしょうか?”






分からんもんは分からん。
ご本人に直接お訊きした方が早いし、間違いもないだろう。





‟白キジですが、2~4の胸、お腹が白い3匹の事になります。”





里親募集サイトの記事に掲載した写真の2枚目から4枚目。
それなら、太郎ちゃん、次郎ちゃん、ぽんちゃんのことだ。



ああ。そうなのか。
白い毛の部分を “白キジ” と言うのね。



確かに、この3匹はママのチェリーと同じで、体の内側の毛が白い。





‟白キジのオスを1匹希望しています”





3匹ともオスだから問題はない。





‟可能であれば明日にでもお伺いしたいところですが、
そちらのご都合もあるかと 思いますので、ご検討のほど、
どうぞ宜しくお願いします。”







花ちゃんの里親さんに続き、
この方もこちらにおいで下さるとおっしゃる。






「有難いな...」






譲渡契約書などについて確認してみると、






‟全て問題なくOKです。
承知した上での応募ですので、宜しくお願いします。”






頼もしいご返信だった。




やり取りの結果、この方も記事掲載の翌日のお約束となった。

花ちゃんの里親さんが午前11時。

この方には、お昼をまたいだ後、少し時間を空けて頂いて、
午後2時にお越し頂くようお願いした。

この方も金沢からだ。

きっと、土曜日でお仕事がお休みなのだろう。
貴重なお休みの日に、わざわざ遠くからいらして下さる。

もしかしたら、お休みを取って下さるのかもしれないが、
そうだとすれば、なおのこと有難い。








お約束のお時間の少し前。
ご夫婦でお越し下さった。





「○○さんですか?」





お名前を確認した後、うちに入って頂いた。
大変恐縮なことに、このお二人も手土産をお持ち下さっていた。

今回里親になって下さった方、皆さんが手土産を
お持ち下さったことは前にも書いた。

そして。
頂いたお菓子は、どれもとても美味しかった。
手土産を頂いたことは、とてもかたじけない驚きだった。


ただ。何よりも。
私が感動すら覚えたのは、やっぱり皆さんのお気持ちだった。

サイトで写真を見ただけで、間近で会ったこともない
チェリーの子猫たちとの縁を大切に思って下さる皆さんの
そのお気持ちが、本当に私の心に沁みた。

これが有難くなくて、一体何だろう。






「どうぞ。子猫たちを見てください。」






お話によると、お宅では4匹の猫と犬を1匹飼っていらっしゃるとか。
奥さんも猫がお好きなのだが、とにかく旦那さんが猫好きだそうで。

過去には、飼っている猫の出産が気になって仕方なく、
結局その日は仕事を早退。

帰宅して猫の出産に立ち会ったことがあったそうだ。

大の大人が、猫の出産が気がかりで仕事が手につかず
うちに戻ったというのだから、奥さんのおっしゃる通り、
旦那さんはよほどの猫好きなのね。

じゃなければ、もうすでに猫を4匹飼っているのに
里親サイトを覗いたりはしないだろう。

なんでも、旦那さんが昔飼っていた猫に
太郎ちゃんがよく似ているそうで、
それで里親になりたいと思ったとのこと。

それでも、太郎ちゃん以外にも白キジがいるのなら、
自分の目で確かめてから... とお考えになったんじゃないだろうか。






「どの子にする?」






優しそうな奥さんが、こう訊く。


午前中にもらわれていった花ちゃんは、もういない。
このうちに帰ってくることもない。

そして、それは今ここにいる4匹も同じだ。
この子たちは、そのことを知っているんだろうか...?


うちの中で産まれて以来、ずっとうちの中で私たちと一緒に
暮らしてきた子猫たちは、人間を警戒することも、怖がることもない。


4匹で一緒にじゃれ合いながらも、旦那さんが差し出した指を
屈託のない様子で甘噛みしている。






「この子にする。」






旦那さんが決めたのは、やっぱり太郎ちゃんだった。






今度は太郎ちゃんとお別れか...






1回目に1匹。2回目に2匹。3回目に2匹と、
ママのチェリーは、時間差で3回に分けて子猫たちを出産した。

もしかしたら、5匹の中で1番最初に1匹で産まれてきたのは、
この太郎ちゃんじゃなかっただろうか。

他の4匹に比べて、特にたくさん食べているわけでもないのに、
生後1ヶ月頃から、うちの居間でちょこちょこと遊び始めた時にはすでに、
太郎ちゃんのお腹は、みんなよりひと回りころんと大きかった。

そして、もちろん。

このまあるいお腹と、鼻先がちょこんと黒いところが、
太郎ちゃんの最大のチャームポイントだった。

まだ短い脚の上に乗っかったそのお腹が、歩くたびに右へ左へと
ゆさゆさ揺れる姿があまりに可愛らしくて、何度取って喰おうと思ったことか。


1つの羊膜の中で2匹ずつ産まれてきた子たちとは違って、
1匹で産まれてきた分、のびのびと大きく産まれてくることが
できたのが、太郎ちゃんじゃなかったのかなと。

これは私の想像だけど。







「分かりました。それでは、すみませんが、契約書に
 ご署名とハンコをお願いできますか?」







ご夫婦は快く応じてくれた。
印鑑もお持ち下さっていた。

今度は忘れずに、その場で住所も確認させてもらう。
ご提示くださったのは、保険証だった。

契約書に書いて下さったのと同じ住所が印刷されている。
問題はなさそうだ。



この段階までくると、どうしても今日まで太郎ちゃんが
見せてくれた、たくさんの、いっぱいの可愛らしい姿が、
次々と絶え間なく脳裏をよぎる。


太郎ちゃんも、花ちゃんに負けずにお利口な子だった。
トイレも1回で覚えたし、花ちゃん同様、ご飯の催促もとても上手だった。

お腹が空いたら、お腹をゆさゆさしながら
台所にいる私のところへやって来て、
これまた花ちゃん同様、





「ねえねえ。僕、お腹が空いたよ。ご飯が欲しいの。」





私を見上げて、ちゃんと声を出して、こう伝えてくれた。

その姿の、まあ愛らしいこと。
実際に取って喰ってしまわなかった私は偉い。





太郎ちゃんは、マイペースな子だった。

花ちゃんみたいに、





「僕を可愛がってね!」





というアピールは一切しない。






「うぅぅぅぅん。もう! 太郎ちゃん。可愛いわね!」





こう言われても、






「ふーん? へえ? そうですかぁ? そいつぁ良かったねー。」






といった感じ。



きょうだいたちと仲良く遊ぶし、一緒にじゃれ合うし、
団子になって寝るのも好きだけど、でも。

ひとりの時間も存分に楽しむダンディな男子なのだ。




ふと見ると、ベランダの隅で、保護色になって、
ひとりで丸くなって寝入っている太郎ちゃんがいる。

ふと見ると、コンセントの列にもたれかかって、
まるで行き倒れたかのように寝入っている太郎ちゃんがいる。




そんな、どことなく子連れ狼的な雰囲気を醸していた太郎ちゃんは、
きょうだいの中でも、特に毛布に目敏かった。

私が座って膝に毛布をかけると、それに気が付いた
ダンディ太郎が、すかさず動き出す。

みんなで団子になって寝ている中、ひとりだけ顔を上げて、
団子の中から私の膝上の毛布をじいーっと見据えている。

その後の行動は、実に素早い。
完全に気配を消してターゲットの懐に飛び込む。

あらやだ。不思議。

ふと気が付くと、両脚にかかっている毛布の真ん中に
もうすでに丸いお腹が埋もれているのだ。







「あら。太郎ちゃん? 一体、いつの間に!?」




「..............。」







さすがは侍。
無駄口は一切きかないらしい。






「ふ。ふふふふふ... 口を割らぬか。しからば、これを喰らえ!」






バカな飼い主が両脚を揺らし、






「ふははははははは! これが波攻めだ。大波だ! 大波が来たぞー!
 揺れる!揺れるぞー! 大揺れだー! やだ! どうしよう! 吐いちゃうわー!
 どうだ! 参ったか! わはははははははー!」






「................。」








まあね。

これくらいで動じるような、お腹まん丸の助なら、私もね。
ダンディとも侍とも呼びませんよ。ええ。

この侍太郎。
全くたじろがないどころか、1mmたりとも動かない。

というより、完全に無視。
何事もなかったように、大好きな毛布に埋もれたままだ。






「私が悪うございました。」






過去30秒の間に起こったことは、そもそも幻だったことにしよう。








さあ。いよいよお別れだ。

里親さんに抱っこされた太郎ちゃんが、
玄関へと向かう廊下を渡っていく。

太郎ちゃんは、この時もやっぱりマイペースだった。

表情を変えることも、驚いた様子も、
怯えた様子もなく、終始大人しくしていた。






「太郎ちゃん。元気でね。」






玄関まで見送りに出て、こう言った私は、
この時、不覚にも半ば泣いてしまった。

里親さんには本当に申し訳ないことをしてしまった。
今でも、あの時のことを思い出すと申し訳なさが募る。







「寂しいですよね。」






奥さんが、こうおっしゃって下さった。






「はい。でも、可愛いというだけでは育てられませんから。」






奥さんに返事をしたつもりで、実は自分に言い聞かせていたことは
私自身が一番よく知っている。

こう口に出して振り払わなければ、太郎ちゃんと暮らしたいという
未練を捨てきれずに、いつまでもくすぶる。




外に出て、里親さんの車に乗り込んだ後も、
太郎ちゃんはやっぱり太郎ちゃんだった。

そのお陰で、私の胸の痛みは最小限で済んだ。

もしもあの時、太郎ちゃんの表情の中に、少しでも悲しげだったり、
寂し気な様子を見つけていたら、私はきっと、今この瞬間、
泣きながらこの文章を書かなければならなかった。






太郎ちゃん。今日までありがとう。
本当にありがとう。







「太郎ちゃんのこと、どうかよろしくお願いします。」








太郎ちゃんを乗せた里親さんの車が、うちの前の坂を下っていく。






さよならだけが人生だ。






寺山修司の言葉が、ふとよぎる。








先週、里親さんが送ってくれた太郎ちゃんの写真を見て、
私は驚くと同時に、とっても幸せな気持ちになった。

だってだって。

成長した太郎ちゃんの表情や毛並みが、ママのチェリーによーく似てきたから。
本当によく似てきたわね。太郎ちゃん。

もっとも。今はもう太郎ちゃんではないけれど。

チェリーが慈しんできた命が、チェリーの面影を受け継いでいく。
名前が変わっても、それだけは変わらない。






「ほら。チェリーちゃん! 太郎ちゃん、こんなに大きくなったよ!
 チェリーちゃんにそっくりやね!」







里親さんがLINEで送って下さった写真を見せてはいるけど。
果たしてチェリーさん。分かってくれているだろうか...?






花ちゃん同様、里親さんのお宅で、すくすくと成長している太郎侍。

一旦寝入ってしまうと爆睡するそうで、どんなにちょっかいを出されても
されるがままのポーズで寝ているんだとか。


さすがは、生まれながらのマイペース男。
どこで何をしていても、決してブレることはないようだ。






我が家の間取りを知り尽くしている女、チェリー。
毎晩、屋根伝いに寝室のベランダに現れては、入れてくれとせがむ。

まずは鳴く。それでもダメなら、立ち上がって
両前足で網戸を掴んでガタガタと揺さぶる。

チェリーさん。うちは24Hパーキングじゃないんですよ?
夜中の3時に起こすのはやめなさい!

でも。この御仁。

私たちにどれだけ叱られようが、挙句には無視されようが、
あくまでも自分の欲求を貫き通そうとするわけですよ。

何度拒まれても決して諦めない根性。
湧き上がって絶えることのない情熱。

鉄パイプのような固い意志。
地雷を彷彿とさせる破壊性。

こんなチェリーさん。
近頃、我が家では「チェリーかずよ」と呼ばれている。






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ドキドキドキドキ いつもありがとう!! 
ドキドキドキドキ

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