スター
駅地下のコンコース
ひとりきりで歩く
まっすぐに前を見て
真ん中を堂々と
行き交う人も
華やかなお店も
目に入らない
ただ 死ぬほど
焦がれていたから
あなたの言葉に
笑顔に
息が止まるほどの願いが
涙になって頬を伝う
気が付けば 声を上げて
泣いている私がいた
この涙を拭って
あなたのキスで
一粒残らず
枯れ果てるまで
もし 叶うのなら
もし 叶うのなら
もう あなたの言葉も
笑顔も求めない
お願い
あの唇の暖かさを
もう一度
不思議なものね
あのときの私は
恐れるものなど
何もなかった
誰に見られても
どう思われても
構わなかった
これが生きるということなのね
覚悟と祈りを身にまとって
息が止まるほどの願いが
私をスターにしてくれた
傷心だからこそ勇敢な
無敵のヒーローに
この涙を拭って
あなたのキスで
悲しみよりも
喜びの涙を
もし 許されるのなら
もし 許されるのなら
あなたの涙も
拭ってあげたい
この唇で
だから お願い
その目を開けて
もう一度
あの瞬間
私は確かに生きていた
誰かの恋人ではなく
誰かのためでもなく
ただ 自分の人生を
自分のためだけに
あなたを想いながらも
悲しくて
泣きたくなったとき
孤独に
吸い込まれそうなとき
あの日のスターが
私の中で輝き出すの
闇夜を彩る星のように
きらきらと
誰も何も
怖くはないのだと
この涙を拭って
あなたのキスで
弱気な束の間の
スターのために
もう 大丈夫
もう 大丈夫
あなたの唇で
そう伝えてほしい
お願い
あの唇の温もりを
もう一度
【注釈】
台北のバス停で倒れているところを発見され、
病院に搬送された私の夫は、
ずっと昏睡状態のままでした。
そんな中、1日2回のICUでの面会が、
待ち遠しくも、恐ろしくもありました。
次の面会の時には、
良くなっているかもしれない。
いや、悪くなっていたら
どうしよう。
「危篤だ」って言われたら
どうしよう。
「もう大丈夫だよ」
ある日。
台北駅の地下コンコースを歩きながら、
夫が昏睡状態から覚め、ベッドから起き上がり、
私を見てこう話すところを想像してみました。
そうすると、涙が溢れ、
次に喉に蓋をされたような感覚を覚え、
息ができなくなりました。
昼間のコンコースには、
たくさんの人が行き交っています。
私は顔中、涙と鼻水で
ぐちゃぐちゃなのですが、
もう誰にどう思われても、
構いませんでした。
怪しげで危ない人が歩いていると、
通報されても構わなかった。
だって、夫が回復したのだから!
あの時の私には、
怖いものなど何もなかった。
人生最大の希望と喜びは、
人を無敵にする。
まるで、スーパーマリオの
スター状態。
全身をキラキラ輝かせながら、
すべてを跳ね返して進むヒーロー。
ただし。
スターでいられるのは、
ほんの束の間。
コンコースを出て病院に戻る頃には、
また祈り始める。
あれほど真剣に
生きた日々はない。
何かを死ぬほど
願ったことも。
きっと、あれが私の青春だった。
当時39歳。
初夏の台北。
遅ればせながらやってきた挙句、
きれいな花など、ついぞ咲かせられずに過ぎ去った、
私の青い春、いえ、空だけは青かった夏を謳った詩です。
あの頃。
私の心とは正反対に、来る日も来る日も
鮮やかに晴れ渡る空を見ながら、
太陽なんて、バズーカ砲で撃ち落とせたら
どんなにいいだろうと思っていました。
※追記
いや。
今回の詩は
こっ恥ずかしいわ...
でも。
全部ぶちまける曝け出すことに


