ファイザーは1月14日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経口薬パクスロビド(くすり×リテラシー2021年12月17日)を厚労省に申請したと発表しました(ファイザー2022年1月14日)。オミクロン株(B.1.1.529、くすり×リテラシー2021年12月8日12月24日12月31日2022年1月5日1月7日1月7日)が全国で急拡大しているので、(あくまで企業側にとって)タイミングとしてはバッチリです。

 

岸田首相は年頭会見(くすり×リテラシー2022年1月4日)でパクスロビドについて「2月のできるだけ早くに実用化を目指す」と明言していますので、1カ月以内に特例承認されるのではないでしょうか。ただし、1カ月後もオミクロン株が増え続けているかは何とも言えませんが(くすり×リテラシー2022年1月12日)。

 

ファイザーのリリースによると申請の根拠は、パクスロミドとプラセボを比較した国際共同第2/3相EPIC-HR試験(NCT04960202)の結果(Pfizer2021年12月22日)です。症状発現3日以内に投与した場合、28日目までに入院または死亡したのは、パクスロビド群0.7%(5人/697人)、プラセボ群6.5%(44人/682人)で、パクスロビド群で89%少なく、症状発現後5日以内の投与でもパクスロビド群0.8%(8人/1039人)、プラセボ群6.3%(66人/1046人)と、パクスロビド群で88%少ないという結果でした。ただこの結果からも分かる通り、デルタ株が主体であった頃の試験でプラセボ群でも入院や死亡に至ったのは1割もいないのですから、オミクロン株だと入院に至る割合はさらに減ると予想され、新薬をほんとうに必要とする人が果たしてどのくらいいるのか、個人的にはやや疑問です。

 

一方で、先に特例承認され既に投与が始まっているモルヌピラビル(商品名ラゲブリオ、くすり×リテラシー2021年12月18日)は、動物実験で催奇形性が報告されているため男女ともに避妊が必要な点で意外に面倒くさい(欧米の新薬開発動向第1031回2021年12月25日)ので、パクスロビドが特例承認されたら重宝がられるかもしれません。