開運童子のブログ -89ページ目

雨のあとに虹 その95

「堀川さんは高村さんと付合っているのかしら?」

ひとみは小百合に言った。

「店長知らなかったのですか?」

小百合は言った。

「詳しい事は知らないのよ。」

ひとみが言うと

「昨日はプレゼントを貰ったらしいですよ。」

小百合は言った。

「そうだったの?」

ひとみは言った。

「かなり進んでいるみたいですよ。」

小百合は言うとひとみは

「それは良い事ね。」

と言った。

「すまないね。」

天門は言った。俊之が天門の事務所を訪れるのは珍しくないのだが年末は来るのは始めてであった。

「この年末の忙しい時に大丈夫ですか?」

俊之は天門に言った。

「高村さんのためならそんな事を言っている場合ではないよ。」

天門は優しく言った。

「いつもすみません。」

俊之は恐縮して言った。

「年明けから節分までの間に大きな変化がある可能性が高いからチャンスを確実に自分のものにした方が良いね。」

天門は言った。

「年明けから節分までですね。」

俊之は言った。

「これからがんばらないとね。」

天門が言うと

「先生の言葉を肝に銘じておきます。」

俊之は言った。天門は俊之を温かいまなざしで見つめていた。思わず俊之も天門と視線を合わせていた。ここにも男の友情がひとつ存在していたのである。

「それからもうひとつだけどね。」

天門が言った。

「はい。」

俊之は言った。

「本命以外の女性には要注意だよ。」

天門が意外な事を言った。

「それは大丈夫ですよ。」

俊之は言った。

「その油断が危険だよ。」

天門が言った。

「僕は女性にもてないですからね。」

俊之が言うと

「本当にもてないかな?」

と天門は言った。

「これをお願いします。」

久美子は女性店員に言った。久美子は母親へのプレゼントを買いに来ていた。

「かしこまりました。」

女性店員はバッグを包装するためにレジへ行った。おしゃれな店で買う品物はすべてを高価に見せる不思議な力があるらしい。久美子はどれを買うか悩んで末にプレゼントの候補はふたつまで絞った。ふたつ両方を買うゆとりはないから久美子は小さなバッグを買った。もうひとつのブローチは残念であるが買わなかった。

「お待たせ致しました。」

女性店員が言った。

「はい。」

久美子は言ってレジへ行って会計を済ませた。

「ありがとうございました。」

女性店員が言って美子に頭を下げた。

「いろいろアドバイスをありがとうございました。」

久美子は女性店員に感謝の気持ちを込めて言った。歩き出す久美子を翔太と関口が離れたところで見ていた

「誰かにプレゼントですね?」

関口が言うと

「お母さんにプレゼントだよ。」

軽く翔太は言った。

 俊之は天門の事務所を後にした。今日はこれで部屋に帰って町内会長の手塚と見回り隊の活動をするのである。今から帰るには少し時間に余裕があった。俊之はのんびりとおしゃれな店を見て回ろうと考えていた。男がひとりで店を見て回るのもたまにはいいものだ。おしゃれな街や店は誰もがおしゃれな気分にさせてくれる不思議な力があった。ウインドウを見て女性のおしゃれな洋服を見ていた時であった。

「高村さん。」

直子に声をかけられた俊之は視線を移した。

「久保田さん。」

俊之が言った。

「直子さんって言って欲しかったのに!」
直子が言うと

「あまり馴れ馴れしいのは良くないと思ってね。」

俊之は言った。

「別に構いませんよ。」

直子は言った。

「それならいいけどね。」

俊之が言うと

「時間があったら珈琲でもどうですか?」

直子が言った。俊之は嬉かったのだが天門の言葉が耳をかすめていた。

「今は何時だったかな?」

俊之は時計を見て言うと

「少しくらいなら良いでしょ?」 

直子が言った。直子の強気な態度に押され気味な俊之であった。そんなふたりが立ち話をしている場所から少し離れたところに久美子が通りかかっていた。俊之の目から久美子は死角になっていた。久美子は俊之と直子を視界に入れた時に思わず立止まった。

「俊さん!」

久美子は言った。

雨のあとに虹 その94

「田崎さん。」

俊之は言うと

「はい!」

緊張感を持ったように田崎は言った。

「明日は矢島の状況を僕に知らせてくれないか?」

俊之が言うと

「もちろんそのつもりですよ。」

田崎は言った。

「すまないけど頼むよ。」

俊之が言うと

「ちゃんと携帯に電話しますよ。」

田崎は言った。

「江紫組って凶暴ですよね?」

みどりは俊之の横で言った。

「噂ではかなり強暴だと聞いているけどね」

俊之は言った。

「先日も新聞に載っていましたよ。」

みどりは心配そうに言った。

「何とかしないといけないね。」

俊之は言った。

「社長は柔道3段ですから何とかなるとは思いますけどね。」

みどりが言うと

「矢島には絶対に手出しをさせないよ。」

俊之は言った。みどりは驚いたように

「高村さんではとてもかなう相手ではないですよ。」

と言った。みどりは俊之では矢島を助けられないと思っていたのだった。

「ありがとう。」

翔太は関口に言って周囲を見た。ここは大きめの公園であるが散歩をする人やジョギングをする人数は少ないようだったのであった。

「任せてください。」

関口は言が言うと

「関口を見直したよ。」

翔太は言った

「兄貴が週に1度だけあの病院で患者を診していますのでね。」

関口が言うと翔太は

「世の中は意外と狭いね。」

と言った。

「これが榊原の病状ですよ。」

関口は言ってカルテを翔太に渡していた。翔太は渡されたカルテを見ながら

「関口のお兄さんにも感謝するよ。」

と言った。

「ありがとうございます。」

関口は言った。

「何かあったらお兄さんのリスクは高いよ。」

翔太が言うと関口は

「大丈夫ですよ。」

と言った。

「それらいいけどね。」

翔太は言った。

「そんな事はないだろう?」

翔太が言うと

「少し解った家族ですけどね。

関口は言った。

「それで榊原はかなり焦っていたようだね?」

翔太は呟いてカルテをポケットにしまった。

「お先に失礼します。」

久美子は言ってタイムカードを押した。

「お疲れ様。」

ひとみが言った。背中を向けた久美子に小百合が

「これからデートでしょ?」

と言った。

「違いますよ。」

久美子は言ったが悪い気はしなかった。久美子は店を出てエスカレーターに乗ると人混みにまぎれていった。年末の賑わいで人々は慌てたように歩いていた。

「お先に失礼します。」

俊之が言った。

「お疲れ様です。」

田崎は言った。

「明日必ず僕に連絡を頼むよ。」

俊之が言うと

「任せてください。」

田崎が言った。

「休日なのにすまないね。」

俊之が言うと

「しっかり社長を監視しますよ。」

田崎は俊之の目を見て言った。

「何時でもいいから電話を待っているよ。」

俊之は言った。矢島建設から外に出た俊之は胸にいっぱい空気を吸込んでいた。駅に向かって歩き出すと今年が終わるのを実感できるほど人々は忙しそうに歩いていた。俊之はこれから天門会う約束があった。俊之は天門に出会ってから徐々に低迷期を脱出する兆候が出てきたのである。混雑している駅はサラリーマンが階段を駆け降りて危険度は増していた。よそ見をしている自転車もいつかは大事故に繋がりかねないほど危険な運転をしていた。そんな危険を俊之はさっと避けていた。ホームに人があふれていて買い物客や帰省客でパニック寸前であった。タイミングよくホームに入って来た電車に乗った俊之は窓の外に目の焦点をあわせていた。

雨のあとに虹 その93

「おはようございます。」

矢島建設の入口に入った俊之は言った。

「おはようございます。」

と警備員の高柳が言った。そして後ろから

「おはようございます。」

田崎が元気よく言った。みどりも

「おはようございます。」

言った。俊之の顔を見て田崎が

「高村さんは江紫組ってご存知ですか?」

と言った。

「江紫組の名前は聞いた事があるよ。」

と言った。

「そうですか?」

と田崎は言った。

「江紫組がどうかしたの?」

俊之は田崎の表情が気になって言った。

「うちの業界はその世界の人たちと絡む時が多いのはご存知ですか?」

田崎は言った。

「大体は知っているよ。」

俊之が言うと

「矢島建設が厄介な事に巻き込まれたみたいです。」

田崎が言った。

「厄介な事ってどんな事なの?」

俊之が言った。

「うちの建設現場で作業をする音がうるさいとクレームがありましてね。」

田崎は言った。

「そんなにうるさかったの?」

俊之が言うと

「そんな事はないですよ。」

田崎が言った。

「その筋の方たちはクレームをつけて迷惑料と言ってお金を取るのが通例です。」

みどりは言った。

「矢島はお金を払うつもりかな?」

俊之が言うと

「まさか。」

みどりが言った。

「明日社長が話をつけに行くらしいですよ。」

田崎は言った。

「今日は挨拶回りしていいますのでね。」

みどりが言った。

「おはようございます。」

久美子はタイムカードを押して言った。

「おはよう。」

ひとみが言った。

「おはよう。」

小百合も言った。小百合はすぐに久美子がつけているイヤリングに気付いて

「これよく似合うね。」

と言った。

「ありがとう。」

久美子は言った。

「昨夜に彼氏からもらったと顔に書いてあるよ」

朝から小百合はテンションが高い小百合が言った。

「あまり大げさに言わないでよ。」

久美子は言が言うと

「羨ましいな。」

小百合は言った。仕事前にしては緊張感がない雰囲気になっていた。

「もう少しで開店の時間だからしっかりしてね。」

ひとみに言われて小百合は

「大丈夫です。」

と言ったが集中力はないようであった。

「まだリストのチェックをしてないですよ。」

久美子は軽く注意をするように小百合に言った。