雨のあとに虹 その95
「堀川さんは高村さんと付合っているのかしら?」
ひとみは小百合に言った。
「店長知らなかったのですか?」
小百合は言った。
「詳しい事は知らないのよ。」
ひとみが言うと
「昨日はプレゼントを貰ったらしいですよ。」
小百合は言った。
「そうだったの?」
ひとみは言った。
「かなり進んでいるみたいですよ。」
小百合は言うとひとみは
「それは良い事ね。」
と言った。
「すまないね。」
天門は言った。俊之が天門の事務所を訪れるのは珍しくないのだが年末は来るのは始めてであった。
「この年末の忙しい時に大丈夫ですか?」
俊之は天門に言った。
「高村さんのためならそんな事を言っている場合ではないよ。」
天門は優しく言った。
「いつもすみません。」
俊之は恐縮して言った。
「年明けから節分までの間に大きな変化がある可能性が高いからチャンスを確実に自分のものにした方が良いね。」
天門は言った。
「年明けから節分までですね。」
俊之は言った。
「これからがんばらないとね。」
天門が言うと
「先生の言葉を肝に銘じておきます。」
俊之は言った。天門は俊之を温かいまなざしで見つめていた。思わず俊之も天門と視線を合わせていた。ここにも男の友情がひとつ存在していたのである。
「それからもうひとつだけどね。」
天門が言った。
「はい。」
俊之は言った。
「本命以外の女性には要注意だよ。」
天門が意外な事を言った。
「それは大丈夫ですよ。」
俊之は言った。
「その油断が危険だよ。」
天門が言った。
「僕は女性にもてないですからね。」
俊之が言うと
「本当にもてないかな?」
と天門は言った。
「これをお願いします。」
久美子は女性店員に言った。久美子は母親へのプレゼントを買いに来ていた。
「かしこまりました。」
女性店員はバッグを包装するためにレジへ行った。おしゃれな店で買う品物はすべてを高価に見せる不思議な力があるらしい。久美子はどれを買うか悩んで末にプレゼントの候補はふたつまで絞った。ふたつ両方を買うゆとりはないから久美子は小さなバッグを買った。もうひとつのブローチは残念であるが買わなかった。
「お待たせ致しました。」
女性店員が言った。
「はい。」
久美子は言ってレジへ行って会計を済ませた。
「ありがとうございました。」
女性店員が言って美子に頭を下げた。
「いろいろアドバイスをありがとうございました。」
久美子は女性店員に感謝の気持ちを込めて言った。歩き出す久美子を翔太と関口が離れたところで見ていた
「誰かにプレゼントですね?」
関口が言うと
「お母さんにプレゼントだよ。」
軽く翔太は言った。
俊之は天門の事務所を後にした。今日はこれで部屋に帰って町内会長の手塚と見回り隊の活動をするのである。今から帰るには少し時間に余裕があった。俊之はのんびりとおしゃれな店を見て回ろうと考えていた。男がひとりで店を見て回るのもたまにはいいものだ。おしゃれな街や店は誰もがおしゃれな気分にさせてくれる不思議な力があった。ウインドウを見て女性のおしゃれな洋服を見ていた時であった。
「高村さん。」
直子に声をかけられた俊之は視線を移した。
「久保田さん。」
俊之が言った。
「直子さんって言って欲しかったのに!」
直子が言うと
「あまり馴れ馴れしいのは良くないと思ってね。」
俊之は言った。
「別に構いませんよ。」
直子は言った。
「それならいいけどね。」
俊之が言うと
「時間があったら珈琲でもどうですか?」
直子が言った。俊之は嬉かったのだが天門の言葉が耳をかすめていた。
「今は何時だったかな?」
俊之は時計を見て言うと
「少しくらいなら良いでしょ?」
直子が言った。直子の強気な態度に押され気味な俊之であった。そんなふたりが立ち話をしている場所から少し離れたところに久美子が通りかかっていた。俊之の目から久美子は死角になっていた。久美子は俊之と直子を視界に入れた時に思わず立止まった。
「俊さん!」
久美子は言った。