開運童子のブログ -82ページ目

雨のあとに虹 その116

「榊原さんもそうですけどね。」

久美子は言った。

「何ですか?」

翔太が言うと

「その貴志さんも田所さんも許せない。」

久美子は言った。

「私も同じ気持ちですよ。」

翔太が言うと

「何人の人生が狂ったと思っているの!」

久美子が怒って言った。

「そうですよね。」

翔太が言うと

「死者まで出しているのよ。」

久美子が言った。

俊之はもちろん翔太もひとみも関口たち若者も久美子の迫力に圧倒されそうであった。

「僕もそう思います。」

関口も周囲を見ながら言った。その時に沈黙を破って俊之の携帯が再び鳴ったのである。

「いけない。」

俊之が言った。

「どうかしましたか?」

翔太が言うと

「育子さんにメールを返信していなかった。」

俊之は携帯を見ながら言った。

「お正月と言っても楽しいのは子供くらいで大人になるとそうはいかないな。」

矢島はリビングで寛ぎながら妻の早苗に言った。

「仕方がいないですよ。」

早苗は言った。早苗はさめた言い方に聞こえるが早苗は冷静なだけで決して冷たいわけではない。

「今更凧上げしてもしょうがないからな。」

矢島は言った。

「上げてみたら?」

早苗が言うと

「やめておこう。」

矢島は言った。

「何か飲みますか?」

早苗が言うと矢島が

「ビールにするか。」

と言った。その時玄関でチャイムが鳴った。

「お客さんね。」

早苗が言いながら玄関に行ってドアを開けると緊張した田崎が立っていた。

「新年おめでとうございます。」

田崎は勤めて明るく言った。

「育子さん。」

俊之は電話で言った。

「新年おめでとう。」

育子は心配したような声で言った。

「申し訳なかったね。」

俊之が言うと

「それは構わないけどね」

育子は言った。

「ご心配には及ばなかったよ。」

俊之は言った。

「それなら安心だわ。」

育子が言うと

「少しだけ危なかったよ。」

俊之が言うと

「私の霊感は当たるからね。」

育子が笑いながら言った。

「今度会った時にゆっくり話すよ。」

俊之は言った。

「高村さんが無事ならそれでいいよ。」

育子が言うと

「そのうちに食事でもご馳走させてよ。」

俊之は言った。

「そんな事は気にしなくていいよ。」

育子が言うと俊之は

「心配してくれる人が居るのはありがたい事だよ。」

と言った。俊之は育子への感謝の気持ちを言ってから電話を切った。翔太は和んだ雰囲気の周囲を見て

「緊張したら疲れましたね。」

と言った。

「今日は元日なのに疲れましたね。」

関口が言った。

「うまいものでも食べに行きませんか?」

翔太が言うと

「いいですね。」

久美子が言った。

「それではみなさん行きましょう。」

翔太が言うと

「怒ったらお腹が空いたみたい。」

久美子が言った。

「石倉さんも一緒にね。」

俊之がひとみに言った。一同は喫茶店を出て歩き出していた。久美子は俊之の手を取って強く握り締めてきた。俊之は驚いて久美子の方を見たが久美子は

「俊さんの悪いくせは自分ひとりで全部背負い込む事ね。」

と大人っぽく言った。

雨のあとに虹 その115

「女性の名前は白仁春香さんです。」

翔太は言った。

「写真を見ると春香さんは気品がありますね。」

久美子が言うと

「春香さんは総武グループのトップである白仁正樹さんの娘さんです。」

翔太が言うと

「その女性は向島春香という名前ではありませんでしたか?」

ひとみが言うと

「事情があって白仁姓を名乗ったのはこの3年のことです。」

翔太が言った。

「春香さんは正樹社長とお妾さんとの間に生まれました。」

先ほどから黙っていた俊之が言った。

「アメリカのプレミアム大学を卒業してからロンドンのリチャード大学で講師をしている時に高村さんと出会ったそうです。」

翔太が言った。

「三友商事のロンドン支店で取引があったメディカルエレクトリック社のケン・ダッドリー氏から紹介されてね。」

俊之は言った。

「春香さんが高村さんの新しい恋人ではなかったの?」

ひとみが言うと

「異国で出会った同じ日本人として高村さんは春香さんの良き相談相手であったそうです。」

翔太が言った。

「それは同じ仲間のような感覚でしょうね?」

久美子が言うと

「そうだと思います。」

翔太が言った。

「そんな事情があったなんて知らなかった。」

ひとみが言うと

「春香さんは高村さんのおかげで正樹さんに心を開くようになって向島姓から白仁姓苗字を変えています。」

翔太は言った。

「翔ちゃんがそこまで知っていたとは意外だったよ。」

俊之が言うと

「すぐにすべてをお話できる日が来ます。」

翔太は言った。

「この写真は悪意を持った誰かが無理やりにこじつけたと考えられませんか?」

久美子が言うと

「さすが久美子さんですね。」

翔太は言った。

「私は利用されただけだったの?」

ひとみが言うと

「悪意を持った榊原が都合のいいように利用しただけです。」

翔太が言った。

「ひどいやり方ですね。」

久美子は言った。

「翔ちゃん。」

俊之が言うと

「何でしょうか?」

翔太は言った。

「僕は斉藤弘子が麗子さんを騙して何かしていたところまでは掴んだ。」

と言った。

「そこまで解れば凄いですよ。」

翔太は言った。

「それ以上はまだ解かっていない。」

俊之が静かに言った。

「高村さんは三友商事に在籍していたのではなかなか真相は掴めないから退職された。」

翔太が言った。

「仕事をしながらでは無理だったよ。」

俊之が言うと

「三友商事の部長と言えば世間では注目されていますからね。」

翔太は言った。

「だから辞めざるを得なかった。」

俊之は言った。

「えっ!」

ひとみは言って言葉を呑んだ。

「高村さんは麗子さんへの禊のために恵まれない子供たちがいる施設などへの活動もおろそかにはしていません。」

翔太が言った。

「それでクリスマスにあすなろ会でパーティをしたのね。」

久美子は言った。

「高村さんが石倉さんの言うような悪い人なら目の前にいる高村さんではないはずです。」

翔太が言った。少しの時間だけ沈黙が流れて誰も言葉を発しなかった。

「真相はすぐに解りそうなの?」

ひとみが言うと翔太は

「すぐには無理かもしません。」

翔太は言った。

「それなら一緒に解明しましょう。」

ひとみは言った。

「そうしましょうよ。」

久美子は俊之とひとみと翔太の顔を見比べて言った。

「私でお手伝いできるかしら?」

ひとみが言うと

「ぜひお願いします。」

翔太は言った。

「榊原さんに簡単に騙される女よ。」

ひとみが言うと

「今度はこちらから騙せばどうですか?」

翔太は言った。

雨のあとに虹 その114

「入江麗子さんは高村さんが三友商事に在籍中に派遣会社から三友商事に来ていました。」

翔太は言った。俊之とひとみは無言で聞いていたが久美子は

「優秀な派遣さんのようですね?」

と言った。

空いていたファミレスで珈琲を飲みながらの会話であった。関口たちは黙って聞いていた。

「そのようでした。」

翔太は言った

「当時は高村さんが課長として責任者を任されていたのよね?」

ひとみが言った。

「30人ほどの課を任されていました。」

俊之は言った。

「榊原は高村さんが転勤した後の課長の座を狙っていました。」

翔太は言った。

「それはどんな画策ですか?」

久美子は言った。

「麗子さんを高村さんと親密になるように仕向けたのです。」

翔太が言うと

「麗子さんも利用されたのね?」

ひとみは言った。

「最初は榊原の言いなりで俊之に接していた麗子さんだったようです。」

翔太が言うと

「それは途中で麗子さんが言いなりにならなかったと言うことですか?」

久美子が言うと

「麗子さんはしだいに高村さんに引かれていったようです。」

翔太が言うと

「榊原さんは話していた事とは全然違うわ。」

ひとみは言った。

「榊原と言う人は何を望んで麗子さんを俊さんに近づけたのかしら?」

久美子が言うと

「会社の機密事項を聞き出して高村さんに漏洩の責任を執らせる事だと思います。」

翔太は言った。

「そういう事だったの?」

ひとみは言った。

「そうまでして出世がしたいの?」

久美子が言うと

「出世のためなら何でもする男が多いのよ。

ひとみは言った。

「やがて高村さんはロンドン支店長として転勤しました。」

翔太は言った。

「その部分は私も聞いています。」

ひとみが言うと

「麗子さんは高村さんに遅れてロンドンに行く予定だったのです。」

翔太が言うと

「それが自然な結論ですよね。」

久美子は言った。

「ところがある時にマンションで転落死しているのを発見されたのです。」

翔太が言った。

「マンションで転落ですか?」

久美子は驚いて言うと翔太は

「そうです。」

と言った。

「それは高村さんから捨てられたためでしょ?」

ひとみは言った。

「それは違います。」

翔太は言った。

「そんなに簡単に自殺するものでしょうか?」

久美子は言った。

「久美子さんも僕と同じ疑問を持ちましたか?」

翔太は言った。

「施設で苦労して育った人が物事を確認もしないで自殺するなんてありえないです。」

久美子は言った。

「警察は自殺と事件や事故と可能性を拡大して捜査をしていますが未だにはっきりと解明できていません。」

翔太は言った。ひとみは自分のバッグから写真を取り出して

「この写真が浮気の動かぬ証拠だと榊原さんは言っています。」

と言った。ひとみが取出した写真は俊之と春香がロンドンの市街を親しそうに歩いている姿が写っていた。俊之の横には立っているのは紛れもなく12年前の春香であった。

「春香さんはロンドン郊外で出会った女性です。」

俊之は言った。