開運童子のブログ -72ページ目

雨のあとに虹 その136

「私がハンドバッグとブローチで迷っていたらね。」

久美子は言った。

「両方は買えないよね。」

純子は言った。

「長い時間をかけて迷ってハンドバッグを母にプレゼントする事に決めたのね。」

久美子が言うと

「それは仕方がないよね。」

純子は言った。

「あとでそのあきらめたブローチを俊さんがプレゼントしてくれて嬉しかった。

学食で昼食をとりながら久美子は純子に言った。

「高村さんもやる時にはやるね。」

純子は感心したように言った。

「俊さんは鈍感なところがあるから笹川さんが教えたのかもしれない。」

久美子はしっかり見抜いて言った。

「それは可能性が大きいね。」

純子が笑みを浮かべて言った。

「笹川さんはどんな小さな点でも見逃さない鋭いところがあるからね。」

久美子は言った。久美子は翔太の素性を純子に教えるわけにはいかなかった。

「高村さんは謎があるわよね?」

純子は気がついたように言った。

「私も最初は純子と同じに思ったよ。」

久美子が言うと

「実は大物だったりするかもね?」

純子が確信をついて言った。

「今度から総武グループのトップに立つみたいよ。」

久美子が本当の事を言うと

「それはありえないよ。」

純子は言った。

「お呼びですか?」

田所は言って役員室に入って来た。山本は

「座りたまえ。」

と言って田所に椅子を勧めた。

「改まって私に何でしょうか?」

田所はやや緊張気味でいった。山本は田所の目を見て

「田所くんは優秀な人材だと今更ながら気づいたよ。」

山本は田所を安心させるように言った。

「それほどでもないですよ。」

田所は恐縮して言った。

「自分の仕事は余裕で成果を出してまったく関係ない他人の行動も管理する余裕があるとは私も見習いたいよ。」

山本は嫌味を込めて言ったが田所はそれに気づいていないようである。

「それほどでもないですよ。」

田所は照れながら言って山本を見た。山本はさらに追い討ちをかけるように
「そんな優秀な社員に今の仕事をさせておくのは会社にとって大きな損失だと気づいたよ。」

山本が言うと田所は

「私も同じ事を考えていました。」

と言った。山本は

「それなら話が早い。」

と言うと田所は

「取締役もやっと僕を評価してくださいますか?」

田所が言うと

「私も役員だからしっかり見るべき所は見させて貰ったよ。

山本が言うと

「恐縮しています。」

田所が言った。

「それで明日から特命の仕事をしてもらう事にしたよ。

山本は含みを持たせて言った。

「特命とはどんな仕事でしょうか?」

田所は山本の目を見て言うと

「総武グループとの提携交渉責任者だよ。」

山本は爆弾発言を言った。

「僕が交渉責任者ですか?」

田所は嬉しくなって言うと同時に頭は真っ白だった。

「高村くんが在職中に総武とのコネクションがあって交渉していたが退職した時点で白紙に戻っていた案件だよ。」

山本は言った。田所は自分が置かれている立場が解らなくなっていて

「そうですか?」

と言うのがやっとだった。

「年末から総武側から交渉を再開しても良いと言って来きたから再会する予定だよ。

山本は言った。

「私には荷が重いですよ。」

田所が言うと

「うちとしては願ってもないチャンスなのは解るね。」

山本が言うと

「解ります。」

田所は言った。

「しっかり頼むぞ。」

山本は言った。

「私に出来るでしょうか?」

田所は自信なく言うと

「出来なかったら責任をとってもらうだけだよ。」

山本は言った。田所は思わず自分の耳を疑っていた。

「三友商事に悪口だけを言って給料をもらう社員はひとりもいらないからね。」

山本は田所に言った。

雨のあとに虹 その135

三友商事の本社は活気がある部署とない部署がある。山本は沢田に命じて榊原の健康状態の把握に努めていた。どこかに病気があるのなら会社を休ませて治療させなければならない。仕事をしても生命を失っては本末転倒になるからだ。ここ数ヶ月間は監視とも言えるほど動きを細部にわたって観察している貴志と田所の行動も気になっていた。山本は何気ない顔をしてフロアーを見て回った。貴志の席を見ると離籍中である。近くにいた須藤に

「貴志部長はどこにいるの?」

と山本が言った。

「今日も連絡がないみたいです。」

須藤が言った。

「無断欠勤と言うことかね?」

山本が言うと

「週に半分位しか来ていませんね。」

須藤が言った。

「困った奴だ。」

山本は言った。

「これは珍しい事ではありませんよ。」

須藤が言った。山本は続いて隣の部署に行くと田所の声が聞えてきた。

「須藤さんは会社を出たあとは取引先に行かないで映画を見て遊んでいるみたいだよ。」

田所が大きな声で言った。

「そうですか?」

中村は言った。田所の低レベルの話は嫌いであったが返事をしながら自分の仕事に戻っていこうとしていた。

「あのように無能な社員なら会社に要らないですよね。」

田所はわざと大きい声で言った。山本はこの辺で引導を渡さないと職場全体の士気に関わると思ったのである。

「田所課長。」

山本が言うと田所は驚いたように山本を見た。

「あとで私のところへ来てくれ。」

山本はいつになく大きい声で言った。

 俊之は矢島建設を後にすると電車に乗って都心部へ来ていた。今日は数人と交渉しなければならない予定があった。駅に着くと混雑していた。俊之が待合わせの喫茶店に入ると未来は先に来ていた。

「お呼び立てしてすみません。」

俊之は急に時間を作ってもらった未来に恐縮して言った。

「高村さんのお願いなら仕方ないわよ。」

未来は言った。

「そう言われると気が楽になりましたよ。」

俊之が言うと

「仲間だから困った時には当たり前よ。

未来は言った。

「悪い話ではないですけどね。」

俊之が言うと

「急にどうしたの?」

未来は言った。

「結論は急がないから前向きに考えてほしい事がありましてね。」

俊之は言った。

「講義が終わるのが早かったね。」

純子が久美子に言った。

「大川教授の話が面白かったからじゃないの?」

久美子が言った。久美子は講義のやり方が変わって大川教授がこちらの興味を引くしゃべり方をしたのに気づいていた。

「そう言えば今日の大川教授は笑顔だったね。」

純子が言うと

「いつもと違っていたね。」

久美子は言った。

「いつもはむっとしていたのに何か良い事でもあったのかな?」

純子もしっかり観察して言った。

「お昼に行かない?」

ちょうど学食の前に来たところで久美子が言った。

「お腹すいたね。」

純子が混雑している学食を診て言った。久しぶりに見る純子が元気になったのを見て久美子は安心していたのである。

 直子は弘子に電話をかけていた。呼び出し音が鳴るが弘子はでない。呼び出しが長く続いてやっと

弘子が

「はい。」

と言った。

「斉藤さんですか?」

直子が言うと

「斉藤です。」

警戒したような声で弘子は言った。

「久保田直子です。」

直子が言うと急に大声になって

「先日お目にかかった久保田さんね。」

弘子は言った。

「お金の件ですけどね。」

直子が言うと

「決心はついた?」

弘子は単刀直入に言った。

「本当に80万円でうまく行と思って間違いないですか?

直子は言った。80万円という金額は直子にとって大金だからどうしても慎重になは大金だ。慎重になる。
「当たりじゃない。」

弘子は直子を馬鹿にしたように言った。

「それなら心配は要らないですね。」

直子が言うと

「私には強力な人脈あるのよ。」

携帯の向こうで弘子が言った。

「すべて私に任せてくれれば悪いようにはしないわよ。」

弘子は言った。話が終わって携帯を切る弘子は都心の駅ビルの中にいたのである。周囲をどんなに警戒していても関口たち3人が交互に尾行している事までは気付かなかった。

雨のあとに虹 その134

 キャンパスを歩いていた久美子は急いで講義が行われる教室に入った。前方の席が空いていたので座ってすぐに教科書を出して読み始めた久美子である。年末年始はいろいろな出来事があったが今日から通常の授業が始まり大学生活を楽しもうと久美子は考えていた。最近は大学以外での出来事が多かったのでキャンパスを歩くと懐かしく思えるのである。久美子は今日の講義を聴いてしっかりと期末テストに備えるつもりであった。

「おはよう。」

純子が言った。

「純子も元気になってよかったね。」

久美子は正直な気持ちを言った。

「久美子には心配をかけてごめんね。」

純子は言った。

「そんな事は気にしないでよ。」

久美子が言うと

「高村さんや笹川さんにはお世話になったからね。」

純子は感謝の気持ちを込めて言った。

「俊さんは心凄く配していたよ。」

久美子が言うと

「高村さんは良い人よね。」

純子は言った。

「ちゃんと心のケアをしてあげないとダメだって言っていたよ。」

久美子は俊之が言った言葉をそのまま言うと

「高村さんが気を利かせてくれたのには感謝している。」

純子は言った。

「笹川さんたちも協力してくれたね。」

久美子が言うと

「みんなの優しさが精神的な支えになったよ。」

純子が素直な気持ちを言った。

「俊さんに伝えておくね。」

久美子が言うと大川教授が教室に入って来た。見るからに頭が良さそうな学者タイプの大川教授は

「これから本日の講義ははじめます。」

大川教授が言うと久美子も純子も教科書に目を向けていた。

「そういう理由で高村は総武グループのトップに立つ事になった。」

矢島が大きな声をフロアー中に響かせて言った。

「高村さんは凄い出世ですね。」

みどりが小声で言うと

「僕も驚いたよ。」

田崎は言った。

「田崎もしっかり食らいついて行けよ。」

矢島の声がいつも通り大きかった。

「あまり大げさに言うなよ。」

俊之は照れたように言った。

「天下の総武グループだぞ。」

矢島が言うと

「週に1度はここに顔を出しますよ。」

俊之はフロアーに居る全員に言った。

「天下の総武グループとは驚きました。」

田崎は驚くと同時に感心した表情で言った。

「俺たちも天下の矢島建設と言われるようにしようじゃないか!」

矢島は言った。矢島は俊之には負けていないところを見せたいのだ。

「7万人を抱える企業グループのトップに立つと言う事は覚悟がいるよ。」

俊之は言った。

「そうでしょうね。」

田崎が言うと

「7万人の生活がかかっているからね。」

俊之は淡々として言った。

「高村さんはいつも冷静ですね。」

田崎が言うと

「高村もよかったじゃないか?」

矢島は言った。

「僕も驚いているよ。」

俊之が言うと

「俺たちはお前のアドバイス通りに新規事業を進めるからこれからも頼むぞ。」

矢島は俊之の目を見て言った。

「解っているよ。」

俊之が言うと

「お願いします。」

田崎が落着いた雰囲気を出して言った。

「僕も一度やりかけた仕事は最後までやり遂げたいからね。」

俊之はきっぱりと言った。