開運童子のブログ -57ページ目

雨のあとに虹 その181

「たまにはこういう所に来てもいいかなと思ってね。」

俊之は久美子に言った。以前に矢島に連れてこられたすし屋である。

「落着いていて高級感があるけどここ高いですよね?」

久美子は心配になって言うと

「今月から収入が増えたから大丈夫だよ。」

俊之は決して謙虚さを忘れずに言った。

「それなら少しは贅沢をしても許されますよね。」

久美子は言った。久美子がバイトで貰う給料では来られそうもない店であった。

「久美ちゃんが好きなものを頼んでいいよ。」
俊之はメニューを久美子に見せて言った。

「何でも俊さんと同じものでいいです。」

久美子は言った。

「遅くなったけど大丈夫?」

翔太が育子に言うと

「大丈夫よ!」

育子は言った。

「高村さんと育子さんの出会いって偶然だったと聞いたよ。」

翔太が言うと

「運命的でもあるかな?」

育子は言った。

育子の寮への帰り道を歩きながら会話が弾んでいた。

「先ほどの笹川さんと同じの気配を感じたからね。」

育子は言った。

「高村さんにかい?」

翔太が不思議そうに言った。

「信号で待ちしていた私のそばでその気配が止まった時だったな。」

育子が言うと

「痴漢と間違えて手首を押さえようされたのが高村さんだった。」

翔太は言った。

「正解。」

育子が言うと

「なるほどね。」

翔太は言った。

「高村さんにさっと避けられて僕に何か用ですかと言われました。」

育子が言うと

「高村さんに何を感じたの?」

翔太は育子の目を見て言った。

「軽い身のこなしで拳法をしているのは解ったよ。」

育子が言うと

「さすが育子さんだ。」

翔太は言った。

「同じ格闘技をしている者としてどこか解り合えた部分があったみたいね。」

と育子が言うと

「それで恋愛感情より友情が芽生えた。」

翔太は言った。

「そうかもね。」

育子が言うと

「タイミングを逃したね?」

翔太は言った。

「恋愛をする時期をいつの間にか逃して気がついたら高村さんは久美ちゃんと出会っていた。」

育子が言うと

「同じ格闘技を志すものとしての友情は僕にも解るよ。」

翔太は言った。翔太と育子は恋人同士のようであった。

「今度の休みは何処かに出かけようよ。」

俊之は久美子に言った。久美子は箸を持つ手の力が抜けそうなほどの驚きもあったが嬉しかったのである。俊之と何処かへきちんとした形で出かけることは少なかったのだ。

「本当ですか?」

久美子は嬉しさを隠せないで言った。

「何処か行きたい所はあるかい?」

俊之が言うと

「今はシーズンオフだけど海に行って見たいな。」

久美子は言った。

「海もたまにはいいね。」

俊之が言うと

「誰もいない海は素敵ですよ。」

久美子は言った。

「海に行こうよ。」

俊之は久美子を見て言った。

「誰も居ない海辺をふたりで歩いてみたい。」

久美子は嬉しそうに言った。

雨のあとに虹 その180

 田中が運転する社用車が駅前広場で停車すると

「僕はここで降りるからあとはもう大丈夫だよ。」

俊之は田中に言った。

「お気をつけください。」

田中が言うと

「お疲れ様でした。」

俊之は言った。俊之が降りると社用車は静かにスタートした。俊之は駅ビルのエスカレーターを上がって行った。俊之は目指す階で降りてテナントを横切るとトレンドカフェの入口を入った。

「いらっしゃいませ。」

久美子は言ったあとで俊之が立っているのに気付いた。俊之は微笑みながら

「ブレンドをひとつね。」

と言うと

「ブレンドですね。」

久美子は少しぎこちなく言った。それを見た小百合は

「堀川さんの彼氏が来たね。」

と久美子の耳元でささやいていた。

 育子は練習が終わって一息ついていた。携帯を見ると久美子からの着信があった。メッセージを聞くと「笹川さんがそろそろ始めましょうと言っていますよ。」

久美子の声が聞こえた。その内容に微笑みながら

「そろそろはじめても良さそうね。」

育子は言った。

「今日はひとみさんに伝えたい事があってね。」

俊之は久美子に言った。珈琲を飲む俊之に久美子が寄って来た時であった。

「店長に伝えます。」

久美子は素直に言うとひとみのそばに行って耳打ちをした。店内はいつものようにお客が少し空いている時間帯であった。

育子が駅前通りを歩いて行く。練習を早めに終わらせてテストのために勉強をするのだ。育子はスポーツバッグを抱えて信号を待っているとそばに人の気配を感じた。近づいて来たその気配を避けようとした時に

「育子さん。」

とその気配の主である翔太が言った。

「笹川さんじゃないの?」

育子が驚いたように言った。

「そんなに驚かないでくださいよ。」

翔太が言うと

「怪しい気配だったわよ。」

育子は言った。

「そんなに怪しい気配かな?」

翔太が言うと

「最近凶悪な事件が多いから怪しい気配には気をつけないとね。」

育子はとおどけたように言った。

「用心した方が良いけどね。」

翔太が言うと

「それより久美ちゃんから留守電が入っていたけど作戦開始かな?」

育子は言った。

「どんなアイディアか聞かせてくださいよ。」

翔太が言うと

「何処かで食事しながら話そうよ。」

育子が明るく言った。

「榊原さんが癌ですか?」

ひとみは驚いて言った。

「本人は一時的に元気をなくしたようだけど僕があった時には落着いていたよ。」

俊之は言った。

「高村さんも人が良いですよ。」

ひとみが言うと

「どうして?」

俊之は言った。

「ある意味で自分を落入れようとした人に優しく出来るなんて私には出来ないわ。」

ひとみは俊之を見て言った。

「それは考える方向を変えれば良いと思うよ。」

俊之は言った。

「考える方向を変える?」

ひとみが言うと

「そのおかげで久美ちゃんともひとみさんとも会えたのだからね。」

俊之が言うと

「そうですね。」

ひとみは言った。

「一度お見舞いに行ってあげてよ。」

俊之が言うと

「明日にでもお見舞いに行って来ます。」

ひとみは言った。

「そうしてあげてください。」

俊之がひとみと視線を合わせて言った。周囲に人が多くなった気配を感じで

「失礼します。」

ひとみは言ってレジへ戻って行った。

「ありがとうございます。」

小百合が対応する声も聞こえてきた。俊之は珈琲を口に持っていった。

雨のあとに虹 その179

「お話は嬉しいですけど1年もカナダに行くのは無理ですよ。」

久美子は言った。

「そうよね?」

ひとみが言うと

「大学も休むわけにも行かないですしね。」

久美子は言った。久美子が言いたい事はひとみも理解していたが久美子に何も聞かずにひとみが勝手に断るわけにもいかなかった。ひとみは便宜上確認しているだけであった。

「別に断っても構わないわよ。」

ひとみは優しく言った。

「わがままを言ってすみません。」

久美子はひとみにすまないという気持ちで言った。

「別にいいのよ。」

ひとみが言うと

「お話は嬉しかったです。」

久美子は言った。

「それにしても堀川さんは凄いわね。」

ひとみ言うと

「凄いですか?」

久美子は言った。

「うちの社長の目に留まるなんてめったにないからね。」

ひとみが言うと

「そうだったのすか?」

久美子は言った。

「深水社長は総武のトップに立つ高村さんには負けるけどね。」

ひとみは正直な気持ちを言った。そろそろふたりの休憩時間が終わろうとしていた。

「薬師寺さんの交渉力で現時点ではそこまでの提携にしてほしい。」

俊之が言うと

「解りました。」

恵子は言った。

「総武全体が提携する事は得策ではないと思っているよ。」

俊之は恵子に言った。

「ご支持通りに交渉します。」

恵子は言った。

「あとは僕の方で段取りをつけるからそのあとで細かく支持します。」

俊之が言うと

「かしこまりました。」

恵子は返事をして社長室を出て行った。ふたりの会話を聞いていた陽子が

「この内容でよろしいですか?」

と言って俊之が出した指示の内容をまとめた用紙を出した。

「その内容でお願いします。」

俊之は言った。

「もう少し時間をください。」

翔太が直子に言った。

「それは構わないですよ。」

直子は言った。

「あと数週間で決着をつけます。」

翔太が言うと

「急がなくて良いですよ。」

直子は言った。

「決着がつけば警察に突出せるからそれまで我慢してください。」

翔太が言うと

「何だかドラマの撮影みたいで面白いわね。」

直子は言って笑った。