雨のあとに虹 その180 | 開運童子のブログ

雨のあとに虹 その180

 田中が運転する社用車が駅前広場で停車すると

「僕はここで降りるからあとはもう大丈夫だよ。」

俊之は田中に言った。

「お気をつけください。」

田中が言うと

「お疲れ様でした。」

俊之は言った。俊之が降りると社用車は静かにスタートした。俊之は駅ビルのエスカレーターを上がって行った。俊之は目指す階で降りてテナントを横切るとトレンドカフェの入口を入った。

「いらっしゃいませ。」

久美子は言ったあとで俊之が立っているのに気付いた。俊之は微笑みながら

「ブレンドをひとつね。」

と言うと

「ブレンドですね。」

久美子は少しぎこちなく言った。それを見た小百合は

「堀川さんの彼氏が来たね。」

と久美子の耳元でささやいていた。

 育子は練習が終わって一息ついていた。携帯を見ると久美子からの着信があった。メッセージを聞くと「笹川さんがそろそろ始めましょうと言っていますよ。」

久美子の声が聞こえた。その内容に微笑みながら

「そろそろはじめても良さそうね。」

育子は言った。

「今日はひとみさんに伝えたい事があってね。」

俊之は久美子に言った。珈琲を飲む俊之に久美子が寄って来た時であった。

「店長に伝えます。」

久美子は素直に言うとひとみのそばに行って耳打ちをした。店内はいつものようにお客が少し空いている時間帯であった。

育子が駅前通りを歩いて行く。練習を早めに終わらせてテストのために勉強をするのだ。育子はスポーツバッグを抱えて信号を待っているとそばに人の気配を感じた。近づいて来たその気配を避けようとした時に

「育子さん。」

とその気配の主である翔太が言った。

「笹川さんじゃないの?」

育子が驚いたように言った。

「そんなに驚かないでくださいよ。」

翔太が言うと

「怪しい気配だったわよ。」

育子は言った。

「そんなに怪しい気配かな?」

翔太が言うと

「最近凶悪な事件が多いから怪しい気配には気をつけないとね。」

育子はとおどけたように言った。

「用心した方が良いけどね。」

翔太が言うと

「それより久美ちゃんから留守電が入っていたけど作戦開始かな?」

育子は言った。

「どんなアイディアか聞かせてくださいよ。」

翔太が言うと

「何処かで食事しながら話そうよ。」

育子が明るく言った。

「榊原さんが癌ですか?」

ひとみは驚いて言った。

「本人は一時的に元気をなくしたようだけど僕があった時には落着いていたよ。」

俊之は言った。

「高村さんも人が良いですよ。」

ひとみが言うと

「どうして?」

俊之は言った。

「ある意味で自分を落入れようとした人に優しく出来るなんて私には出来ないわ。」

ひとみは俊之を見て言った。

「それは考える方向を変えれば良いと思うよ。」

俊之は言った。

「考える方向を変える?」

ひとみが言うと

「そのおかげで久美ちゃんともひとみさんとも会えたのだからね。」

俊之が言うと

「そうですね。」

ひとみは言った。

「一度お見舞いに行ってあげてよ。」

俊之が言うと

「明日にでもお見舞いに行って来ます。」

ひとみは言った。

「そうしてあげてください。」

俊之がひとみと視線を合わせて言った。周囲に人が多くなった気配を感じで

「失礼します。」

ひとみは言ってレジへ戻って行った。

「ありがとうございます。」

小百合が対応する声も聞こえてきた。俊之は珈琲を口に持っていった。