開運童子のブログ -104ページ目

雨のあとに虹 その50

「それではパトロール隊の方はよろしくお願いします。」

手塚が言った。町会本部からの帰り道である。

「会長が人を捕まえようとしないでください。」

俊之は言った。

「捕まえるのはダメかね?」

手塚が言うと

「捕まえるのは警察の仕事ですよ。」

俊之は忠告の意味で言った。

「高村さんがもっと注意してくださいよ。」

絹枝は言った。

「糸田さんまで厳しいね。」

手塚が言うと

「会長はすぐに無理をするだからですよ。」

絹枝が言った。

「いや大丈夫だよ。」

手塚は言った。

「それだからダメなのよ。」

絹枝は言った。

「私はこう見えても若い奴には負けないよ。」

手塚は元気よく言った。

「みんな会長の事を心配して言っているのに!」

絹枝が言うが

「高村さんだってボディガードしてあげるから大丈夫だよ。」

手塚は言った。手塚はいつも元気で頼りがいがあるのである。

「それでも無理はダメですよ。」

俊之は言った。ちょうど交差点まで来た時に

「それではお疲れ様でした。」

手塚は言って元気良く言った。

「お疲れ様でした。」

俊之が言い絹枝も

「お疲れ様でした。」

と言った。手塚は元気よく自宅の方に帰って行った。

「高村さん。」

絹枝が言うと

「はい!」

俊之は絹枝を見て言った。

「今夜はおでんをたくさん作ったので食べていかない?」

絹枝は言った。絹枝はマンションの隣に一家で住んでいて旦那さんも娘さんも俊之は良く知っているがこういう誘いには気が引けるのである。

「ありがとうございます。」

俊之が言うと

「寄っていらっしゃいよ。」

絹枝は言った。

「せっかくですど今夜はもうひとつしないといけない事がありましてね。」

俊之は言った。

「それは残念ね。」

絹枝が言った。

「すみません。」

俊之が言うと

「また今度ね。」

絹枝は言った。

「その時にはお願いします。」

俊之は言った。

「私はこのまま帰りますね。」

絹枝が言うと

「僕はちょっと寄る所がありますのですみません。」

俊之は言った。

「それでは暑かれ様でした。」

絹枝は言ってマンションの方へ帰って行った。俊之はパトロール隊の巡回コースでも見ておこうと駅への道を歩き出した。大通りは人通りがあるが横道に入ると以外にも寂しいのである。

「女性のひとり歩きは危険だからここもコースに入れておこう。」

俊之は独り言を言った。その時である

「高村さんじゃないですか?」

横から来た男に声をかけられたのでその方を見ると寄った田崎が立っていた。

雨のあとに虹 その49

 久美子は部屋に着いてテレビを見たが頭の中で俊之の事を考えていた。俊之は自分の事をどう思っているのだろうか?夜遅い時間でも自分を迎えに来てくれた。そして勢いもあったのだがそのまま男女の関係になった。俊之は遊びで自分と深い中になったのだろうか?そんな事はないと思う。そう思いたい。20歳の久美子は大人のある意味での悪の部分をあまり知らない。人を見る目も無いかもしれない。でも、自分の目に映っている俊之は決して人の心をもてあそぶ男には見えなかった。ひとみが俊之を誤解していると思うのは久美子の女としての感もあるのだ。

「高村さんが来てくれるとは嬉しいね。」

町内会長の手塚は言った。久しぶりに俊之が町会の本部に顔を出したのだ。

「今日ミーティングしておかないと対応が遅れると思いましてね。」

俊之は言った。

「高村さんはすぐに実行よね?」

絹枝が横から言った。

「近々にみなさんが集まれる日からパトロール隊を結成しましょう。」

俊之は言った。

「そうしたいと思っているよ。」

手塚が言った。

「定期的に巡回して下着泥棒と痴漢の被害を少しでもなくさないといけないですよ。」

俊之は言った。

「高村さんは良い事を言うわね。」

絹枝は言った。

「特にこの年末はクリスマスや忘年会で女性も無防備ですからね」

俊之は言った。俊之の提案は適格であった。手塚も絹枝も異存はなく町内のみんなが順番にパトロールする事によって地域住民が協力して危機意識を高めるのは良い事なのであった。

「今度は別の事を考えてくれ!」

榊原は沢田に言うと沢田は

「はい。」

とだけ言った。

「石倉ひとみもこれ以上は役に立たない。」

榊原は言った。

「そんなに早く結論を出して良いのですか?」

沢田は言ううが

「高村を追い詰めるどころか逆に恋人を提供している。」

榊原は言った。

「それは不可抗力ですよ。」

沢田が言うと

「俺には時間があまり残されていないんだ。」

榊原は言った。病的な榊原の顔は本当に病に犯されているように健康的ではないく病的な顔であった。 沢田が

「我々の動きが山本取締役に知れたら後が厄介ですよ。」

と言うと

「気するな!」

榊原は言った。

「あまり余計な事をしない方が良いのではありませんか?」

と言す沢田を榊原が

「年内は動かないさ。」

と言った。

「こんな事をしていて成果が望めるのですか?」

沢田が言うと

「年が明けたら一気に高村を葬り去る。」

榊原は取り付かれたように言った。

「部長!冷静になってください。」

沢田は言ったが

「来年はあいつも終わりになる。」

榊原は言った。このような状態が続けば仕事とは言えこれ以上は榊原和馬という上司に関わりたくないと沢田は思い始めていた。

雨のあとに虹 その48

「お姉ちゃんはイブに帰って来るかな?」

堀川詩織は母親の堀川知子に言った。

「久美子はアルバイトでイブは帰れないって電話があったよ。」

知子が言うと

「イブは帰れないの?」

詩織は言った。

「正月なら帰れるみたいよ。」

知子が言った。

「イブにアルバイトってお姉ちゃんも大変だね。」

詩織が言った。

「詩織も年が明ければ高校3年になるのよ」

知子が言うと

「もうすぐ大人の生活の仲間入りだね。」

詩織が言った。

「高村さんですか?」

俊之の携帯の向こうで桑田は言った。

「そうです。」

俊之が言う。

「天門先生の紹介で電話をさせていただいています。」

桑田が言うと

「天門先生からお話は聞いています。」

俊之は言った。

「連絡が遅くなってすみません。」

桑田が言った。

「僕の方はいつでも予定を調整できますよ。」

俊之は言った。

「実は他の人を先に取材をさせていただいていましてね。」

桑田は言った。

「取材は人数が多いから大変でしょう?」

俊之が言うと

「そんな事はないですよ。」

桑田は言った。

「僕でよろしければ出来るだけの事はさせていただきます。」

俊之が言うと

「高村さんはラストでかっこよく書く予定ですから期待していてください。」

桑田が元気よく言った。

「そうですか?」

翔太は都心のビル群の谷間で電話をしていた。翔太の横には関口も居て翔太を見ている。

「年が明けたらいよいよ帰国だから楽しみだわ。」

電話の向こうで白仁春香が言った。

「それは待ち遠しいです。」

翔太は言った。

「高村さんは元気にしているかしら?」

春香は言った。

「高村さんはいつものように元気です。」

翔太は言った。

「高村さんの誤解を解く目途はどうなの?」

春香が言うと

「遅くても年明けにははっきりさせるつもりです。」

翔太は言った。

「帰国したらすぐに会いましょう。」

春香が言う。

「それでは年明けのご帰国をお待ちしておりますよ。」

翔太は言って電話を切った。

「笹川さん!」

関口が言うと

「年内に片付けないといけない事がひとつあったぞ。」

と言った。関口は翔太が言いたい事を悟っていた。次の瞬間には翔太と関口は人混みの中をすばやく走って消えて行った。

 ひとみは考えていた。入江麗子が亡くなったのは俊之がロンドンに赴任した時に他に女性が出来て麗子を棄てた事が原因だと榊原から聞かされてきた。榊原の説明に真実味が多く含まれていた。だから当初からそれを疑わずに高村俊之という男を憎み続けてきた。俊之には逆に棄てられた悲しさを思い知らせるつもりで久美子に俊之と親しくなるように言った。そんなに単純に結果が出るものではないのは解っていた。

「恨みは今でも忘れない。」

ひとみは呟いていた。ここに来て誤算がふたつあった。ひとつは思ったより久美子が俊之に対して好意的である事だった。そしてもうひとつはひとみ自身も俊之がそんなに悪い男には見えなくなる時が多くあるのだ。周囲の店員に俊之の事をそれとなく聞いても

「良い人だと思いますよ」

と全員が同じく俊之には好意的である。それなら久美子を突飛ばすように近所の主婦に頼んだあの時からの自分の行動には意味が無いように思えてきたのだった。