君の背中に見た夢は

外山薫 KADOKAWA 2024年1月



 

 

小学校受験で試されるのは子供ではありません。家族です。

「この子たちに選択肢を与えてあげられるのは世界で一人、私だけだ」

大手化粧品メーカーで働く新田茜は、ある日従姉妹のさやかの影響で、中学受験回避のための小学校受験に興味を持つように。
テレビ局記者の夫を持ち、世間的にはパワーカップルと呼ばれる茜たちだが、お受験の世界はさらに上の富裕層との戦いだった。
仕事と家庭の両立、協力してくれない夫、かさんでいく教育費、思い通りにならない子供たち。
悩み葛藤しながらも、5歳の娘・結衣を名門小学校に合格させるため、茜はどんどん小学校受験にのめり込んでいく。
その先に見えるものとは――。

東京で過酷なお受験に翻弄される家族の物語!





小学校受験って思ってた以上に大変だあというのが感想。


大手化粧品メーカーに勤める茜は、5歳の結衣と2歳進次郎を保育園に預け、大手化粧品メーカーで働いている。


茜は、小学校受験はお金持ちの専業主婦が行うものと思っていたが、従姉妹のさやかちゃんの話を聞き、小学校受験に興味を持ち始める。



小学校受験をすると決めた茜は、時間も費用も労力も惜しまず使い、

夫に不満があっても、夫婦げんかをしている場合ではないと自分に言い聞かせ、夫を怒らせないように振る舞う。


その頑張りを褒めてあげたいと思う反面、いつか無理が来るのではという思いで読んでいた。


学校にあわせて、テクニックを身に付けるのではなく、まずは基礎的な能力を身につけることに重きを置いている大道時先生の方針は素晴らしいと思う。


この先生に出会えたこと、小学校受験する子の親と友だちになれたこと、まわりの協力があったこと、そして、結衣ちゃんのがんはりがあってこそ、続けられたことだろう。




受験の本番で、模範的な回答ではなく、本心を話す茜の言葉に、なぜか涙が出てしまった。

お父さまとお母さまのどこが好きかという結衣の答も素晴らしい。


子どもは、親の姿をよく見ていると思う。


茜は、自分自身を見直すことができてよかったと思った。


結衣の結果は ……


表紙の裏にその後が描かれていて得した気分!


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐




二人目の私が夜歩く

辻堂ゆめ 中央公論新社 2024年4月



 



昼と夜で、一つの身体を共有する茜と咲子。
しかし「昼」が終わりを告げたとき、予想だにしなかった「夜」の真相が明かされる――。


10代の頃、交通事故で、重い障害を負った咲子の「おはなしボランティア」として話し相手をすることになった高校生の茜。

初対面の人と話すのが得意ではない茜だったが、咲子と話をするうちに咲子に傾倒していく。


咲子のために、自分 の体力が奪われてもいいと思う茜がいじらしかった。


この昼の話は、咲子は、重い障害にもかかわらず前向きで、茜は、咲子との交流で明るくなっていくという明るい話。



ところが夜の話になると、人の悪の部分が見えてくる。

人には、よい面と悪い面の両方を持ち合わせている。

想像もできないような悩みを抱えていることもある。


切なくなる話だ。




今までのちょっとした違和感から、事実にたどりつくのは、さすが、辻堂作品だと思った。



少しの行き違いから交流が絶えてしまうのは悲しいこと。

今からでも勘違い だったことがわかるといいな。


悲しい出来事もあったけれど、

茜は前向きになれてよかったと思う。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐



生殖記 

朝井リョウ 小学館 2024年10月



 

 

とある家電メーカー総務部勤務の尚成は、同僚と二個体で新宿の量販店に来ています。
体組成計を買うため――ではなく、寿命を効率よく消費するために。
この本は、そんなヒトのオス個体に宿る◯◯目線の、おそらく誰も読んだことのない文字列の集積です。





こんな目線で書かれた小説は読んだことがない。主人公の尚成を客観的にみている。
ヒトのオス個体とかいう表現に、最初は 馴染めなかったが、だんだん慣れてきてた。


家電メーカー総務部に務める尚成。
異性愛者で、経済的自立のために働いている。が、 それだけ。
他のことはどうでもいい。

この話がどこに向かって行くのか、不安だったが……

ヒトは自分自身を良きタイミングで新商品化させている。三つの段階のどれかを選んだり組み合わせて新商品化している。〉と書かれていた。
その三つのことはここには書かないが、なるほどと納得できた。


尚成は、そのどれにも当てはまらない。

その尚成が、幸福を得られるのか?

同じ同性愛者でも、後で同性愛者とわかる彼と尚成とは考え方が違う 。それは幼体のころに所属していた共同体との関係性の違いからというのもおもしろいと思った。

異性愛者は、子孫を残せないということで、疎まれる。
もしそれが異性愛者でもできるとしたら……


最後は、尚成の幸福度が上がってよかった!


 この作品は、今までなんとなく 過ごしてきたモヤモヤした感情を言語化してくれる感じだ。

作者の考えにふと、立ち止まる。
いろんな気づきがある。
作者の考え方がぎゅっと詰まった小説だった。



お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐




レイアウトは期日までに

碧野圭 株式会社UNEXT 2024年2月




 



契約を切られた崖っぷちデザイナー × 毀誉褒貶激しい天才装丁家 同い年27歳、凸凹の二人が新大久保に事務所を設立 最強パートナー爆誕⁈



 職を失った赤池めぐみが就職したのは、天才、気まぐれと噂話の絶えない業界の有名人・桐生青のところだった。 憧れていた同年代のスターと一緒に仕事ができると胸がはずんだめぐみが直面したのは、机なしパソコンなし、迫りくる納期と催促の電話、修正に次ぐ修正……。 そして、大きなプロジェクトの依頼が二人に届く。 果たして、二人の仕事は? デザイン事務所と未来は? 






契約社員としてデザインの仕事をしていた赤池めぐみは、契約をうち切られ、職を失う。

職を探していためぐみだが、憧れていた桐生青のSNSに、一緒に仕事をしてくれる人を募集しているのを知り応募する。

飼っていた犬 胡桃と一緒に住み込みで働くことになる。


電話番と猫の世話がめぐみの仕事で、デザインの仕事がしたいというめぐみの期待はずれ。


青は、仕事以外何もできない人だったのだ。

めぐみは、新しい事務所にするための事務用品を集めたり、青の食事を作ったり……


そんなところから話は始まる。


青は、才能のある装丁家だけど、スケジュール 管理や 営業ができない。


めぐみは、 青 のできないところをフォロー し、雑誌等の細かい仕事を受け持つ。



そんなふたりが、お互いの才能を認めて、同じ事務所で、なくてはならない存在になっていく過程がよかった。


猫と犬のいる事務所もいい感じ……



お気に入り度⭐⭐⭐⭐


こぼれ落ちる欠片のために

本多孝好 集英社 2024年11月


 

 

真実を見抜き、罪を償わせる。
たった、それだけ。それだけのことが、なぜこんなにも難しい――?

マンションの一室で発生したある殺人事件の現場に向かった、県警捜査一課の和泉。
そこで出会った女性警官・瀬良の第一印象は、簡単に言えば「最悪」だった。
しかし、上の命令で瀬良とタッグを組み殺人事件を捜査することになり、
和泉は彼女の類い稀な観察力を知ることになる。
二人の懸命な捜査により、事件のかたちは徐々に輪郭を現していくが、
待ち受けていたのは「正しい刑罰」の在り方を問う、予想外の真相だった――。

和泉と瀬良が立ち向かった最初の事件「イージー・ケース」ほか、
事件に関する証言を頑なに拒み続ける容疑者の謎を追う「ノー・リプライ」、
解決の糸口が見えない誘拐事件を描く書き下ろし中編「ホワイト・ポートレイト」を収録。
心揺さぶる結末に息を呑む、圧巻の警察ミステリー!




県警捜査一課の和泉は、新人女性警官の瀬良と組むことになる。


瀬良は、ほとんどしゃべらないが、捜査をするうちに、瀬良は鋭い観察眼を持っていることを知る。


 

犯人がつかまつても、その動機を掘り下げていく。

真相のもう一つ先をいくって感じ。

その真実に心が震える。




 〈加害者を捕まえて 加害者の罪を最大化するのが俺たちの仕事〉という都倉がどんな取り調べをするのかも読みどころ。


「普通」の殺人犯になりたかったという犯人の本音とは?

小学生男児の失踪事件。よく見つけてくれた!


気に入り度⭐⭐⭐⭐

星を編む

凪良ゆう 講談社 2023年11月



 


汝、星のごとく』で語りきれなかった愛の物語
「春に翔ぶ」--瀬戸内の島で出会った櫂と暁海。二人を支える教師・北原が秘めた過去。彼が病院で話しかけられた教え子の菜々が抱えていた問題とは?
「星を編む」--才能という名の星を輝かせるために、魂を燃やす編集者たちの物語。漫画原作者・作家となった櫂を担当した編集者二人が繋いだもの。
「波を渡る」--花火のように煌めく時間を経て、愛の果てにも暁海の人生は続いていく。『汝、星のごとく』の先に描かれる、繋がる未来と新たな愛の形。





汝、星のごとく 」 の続編。

やっと読むことができました。


春に翔ぶ

櫂と暁海の高校の教諭である北原先生の過去の話


北原の両親は慈愛に満ちた尊敬すべき人物。しかし、それが、北原を苦しめていた。

また、生徒の明日見は裕福な家庭で育った。両親は嫌いなわけではないが、両親の期待にこたえることができない。


 世間に認められた人物であっても、その子どもの悩みはつきない。


それにしても、北原先生は、大胆な行動にでたものだ。


星を編む

櫂の遺作を出版させようと奮闘する 出版者の編集長の二階堂と植木の話


作品に対する想いが熱かった。

二階堂と植木の家庭の話もあり、仕事と家庭の両立はむつかしい。

理想と思われた夫が……

残念な気持ちになった。



波を渡る

登場人物たちのその後の話



「汝、星のごとく」は

ひりひりするような恋愛だったように思うけれど、

「星を編む」は読み終わったら、穏やかな気持ちになった。


忘れられない想いはある。

それを無理に消さなくてもよいのだと思う。

お互いを思いやる 気持ちからの離婚騒動も、なにかほほえましい。

 年月を重ねることで、「普通」になっていく夫婦。

手をつなぐふたりをほほえましく思う。


血のつながりを超えた関係も良かった。



お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐



タスキ彼方

額賀澪 小学館 2023年12月



 

 

戦時下と現代の熱い駅伝魂を描く感涙小説

ボストンマラソンの会場で、とある選手から古びたボロボロの日記を受け取った新米駅伝監督・成竹と学生ナンバーワンランナー神原。それは、戦時下に箱根駅伝開催に尽力したとある大学生の日記だった。その日記から過去を覗いた二人が思い知ったのは、美談でも爽やかな青春でもない、戦中戦後の彼らの壮絶な軌跡。そこには「どうしても、箱根駅伝を走ってから死にたい」という切実で一途な学生達の想いが溢れていた。
現代の「当たり前」は昔の人々が死ぬ気で勝ちとってきた想いの積み重ねと知った彼らは・・・・・・・。そして、戦時下の駅伝を調べ、追う彼らに起きた、信じられないような奇跡とは。
先人達の熱い想いが襷として繋がり、、2024年、第100回箱根駅伝は開催される。
熱涙間違いなしの青春スポーツ小説、最高傑作です。






私にとって、毎年箱根駅伝を見るのがお正月の恒例。

いつも楽しみにしている。

だからこそ、この話は、胸にささった。


戦時下、箱根駅伝を開催するために尽力を尽くした人たち。

箱根駅伝を走ってから戦地に赴いた人たち。

走れなかった人たち。

彼らの熱い想いが伝わってくる。

事実に基づいた話なので、よけいに重みを感じた。



現代、パリオリンピックも狙える学生最強ランナーの神原八雲は、駅伝の出場は全く考えてないという。

駅伝監督の成竹一進は、彼を駅伝出場に説得できるのかも読みどころ。



戦時下と現代がつながった時、「おおっ」と驚きの声をあげてしまった。




タスキとは何かという問いに対する答えが、震える。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐


黄色い家

川上未映子 中央公論社2023年11月


 

 

十七歳の夏、親もとを出て「黄色い家」に集った少女たちは、生きていくためにカード犯罪の出し子というシノギに手を染める。危ういバランスで成り立っていた共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解し……。人はなぜ罪を犯すのか。世界が注目する作家が初めて挑む、圧巻のクライム・サスペンス。




が重くなる 話だった。


親に頼れない花は、生きて生活していくことに必死。


 ファミレスで働いた金を母親の男に取られてしまう。

花は、家を出て、母の知り合いの黄美子と暮らし始め、二人でスナック「レモン」を始める。

そこに、花と同年代のふたりが加わる。


しかし、「レモン」が焼失。

花は、「レモン」再開のため、カード詐欺に加担する。



最初は、「レモン」再開のためという目標だったがいつの間にか、お金を集めることに執着してしまう。



4人で仲良く暮らすための行動が、破綻をきたす。


花はリーダーとなり、みんなのためと、いろいろ考えて、行動していた のに……

やるせない気持ち になった。


カード詐欺のやり方も描かれているが、

お金で、麻痺していく感覚がこわいと思った。


気に入り度⭐⭐⭐⭐



あけましておめでとうございます


今年もよろしくお願いします