残月記

小田雅久仁 双葉社 2021年11月






 

 近未来の日本、悪名高き独裁政治下。 世を震撼させている感染症「月昂」に冒された男の宿命と、その傍らでひっそりと生きる女との一途な愛を描ききった表題作ほか、二作収録。 「月」をモチーフに、著者の底知れぬ想像力が構築した異世界。 足を踏み入れたら最後、イメージの渦に吞み込まれ、もう現実には戻れない――。 最も新刊が待たれた作家、飛躍の一作!



そして月がふりかえる

ある日、もうひとつの世界に行ってしまい、もとの世界では、見知らぬ人が、自分の家族といっしょにいた・・・・・・・・


おそろしい。


月景石

叔母の桂子さんは、石を集めていた。その中の月景石を枕の下に入れて眠ると月に行けると言う。

澄香は、夢で、胸に月景石を抱いたイシダキになっていた・・・・・・・・


残月記

月昂という病気になった男女の物語。


月昂者に満月の夜に武器を与え殺し合いを演じる。

それを見学する。なんと悪趣味何だろう。


冬芽は、闘士として戦うことでしか、生きる道はなかった。

勝った日には、勲婦の女を抱ける。


老人施設で働いていた瑠香は、私の人生にはまだ何かあるはずと勲婦となった。

冬芽は、勝つたびに瑠香を選んでいた。


30の試合と45の夜を迎えたら、ふたりで暮らせるはずだった。しかし・・・・・・・・


残酷な運命でありながら、ずっと瑠香を思い続け、木像を掘っている冬芽の姿を想像すると切なくなる。

冬芽の崇高な愛を感じた。




月のもうひとつの世界にどっぷりはまりこんだ印象。

空想の話は、苦手だが、冬芽の愛に引き寄せられた。


お気に入り度★★★★

監督 ガス・ヴァン・サント

出演

ロビン・ウィリアムス, マット・デイモン, ベン・アフレック

1997


 

 

新星マット・デイモンとベン・アフレックが共同で脚本を書き、見事にアカデミー脚本賞をさらったさわやかな感動作である。 ウィル・ハンティングは、生まれつき天才的な頭脳に恵まれながらも、幼児期の虐待のトラウマにより周囲に固く心を閉ざし、荒れた日々を送る青年であった。そんな彼が、ロビン・ウィリアムズ演じる精神分析医マクガイアと出会い、カウンセリングを受け始める。しかしウィルの心の空洞は暗く深く、容易に心を開くことはなかった。一方マクガイアも最愛の妻を亡くし、その悲しみから逃れられずに苦しんでいるのだった。 癒されない心をもつ人間同志が、もがき苦しみながらも理解しあい、再生の道に歩みだしていく姿が熱い感動を呼ぶ。マット・ディモンがウィルのナィーブな個性にピッタリで、みずみずしい魅力を放っている。(星乃つづり)




以前にも見たことがあるが、なん度見てもいい映画だ。


ウィルは、優れた才能を持ちながら、過去に受けた虐待のトラウマから立ち直れず、肉体労働を仕事とし、暴力沙汰を繰り返していた。

そんウィルが精神科医のマクガイアのセラピーを受ける。

マクガイアも妻の死を受け入れられずにいた。


ウィルは、最初何も話さなかった。

だが、同じような心の傷を感じとったのか、次第に打ち解けていく。


「君は悪くない。」「君は悪くない。」とウィルにむかってマクガイアが言う場面は泣ける。


恋人のことが好きでも、自分に自信が持てなかったウィルは、「嫌いだ。」と言ってしまう。

しかし、後悔を残さないために・・・・

ラストは、良かったなあ。


また、友達、、の才能を素直に認めていて、彼を応援しようとする姿がよい。


話すことで気持ちが通じあう。

トラウマを克服できれば、新しい道がみえてくる。

好きな作品。


お気に入り度★★★★★





夏が破れる
新庄耕 小学館 2022年4月

 

 

いじめをきっかけに不登校となっていた中学生の進は、親の勧めで夏の2ヶ月を沖縄の離島で過ごすことになった。美しい海の前に建つ豪奢な家で、つかの間心を癒す進だったが、日々課される「修練」の過酷さは徐々にエスカレートしていく。夜中に聞こえる不可解な悲鳴、儀式に使われたかのような部屋、消えた少女、豚小屋で異臭を放つ肉片。進は命がけの脱走を図るが……。狂気をおびた大人の欲望が、進の運命を歪めていく。底無しの闇に、あなたは耐えられるか。 作家の橘玲氏も大絶賛!積水ハウスの事件をモデルにした『地面師たち』で業界内外を震撼させた著者が、意を決して挑んだ新たなサスペンス・スリラー!中学生の不登校率が過去最多となった今、我々が目指すべき出口は、はたしてこの世界にあるのだろうか!?



中学不登校の進。

母親の勧めで、夏休みに沖縄の孤島に行く。

迎えに来てくれた優子はやさしく、好きなことをして過ごせばいいという。
しかし、宿泊規則の書類にサインしてほしいと言うが、難しい用語や堅苦しい言葉ばかりで書かれた13にも及ぶ誓約書だった。


新刊が図書館にあったので、内容も知らずに借りた本。
いや~な感じが漂う。
こういう話、苦手だ。
途中で読むのをやめようかと思ったが、進のことが心配で、最後まで読んでしまった。

「早く、早く、逃げて」と進に声をかけながらの読書。

ラストにわかる事実、これは、ショックだろうな。

お気に入り度★★★

監督 深川栄洋

出演 大泉 洋, 本上まなみ, 深川栄洋, 小日向文世, 岡田将生, 風吹ジュン


 

 今日も食卓に、明るい声が響く。ここは道南・せたな町。海が見える牧場で酪農を営む亘理は、 妻のこと絵、一人娘の潮莉とのしあわせな家族3人暮らし。自然に寄り添った食を追求する仲間たちに囲まれ、 厳しくも美しい大地で楽しい日々を送っている。 亘理の夢は、自分の牧場の牛乳で、この地でしか食べられないチーズを作ること。 でも師匠のチーズ職人・大谷にはまだ追いつけず、落ち込んだり奮起したりの繰り返しだ。 ある時、札幌から訪れた有名シェフ・朝田に自分たちの食材を激賞され、亘理は一つのアイデアを思いつく。 それは、せたなの おいしいもの を広く届けるため、一日限定のレストランを開くことだった。 だが、納得ゆくチーズが完成せず思い悩んでいたある日、突然大谷が倒れ……。




北海道が舞台、大泉洋が主演となれば・・・・

「ぶどうの涙」 


「しあわせのパン」 


物語を思い出す。

雰囲気の似ている作品だ。



北海道で、牧場を営み、チーズ作りをしている亘理。

挫折することも、仲間と言い争いすることもある。

しかし、家族や仲間に見守れ、乗り越えていく。



自然の恵みを大切にした料理・・・・

野菜も魚も牛乳もチーズもおいしそう。


土地の人たち、仲間のあたたかさを感じさせる作品だ。


お気に入り度★★★

さよならに反する現象
乙一 角川書店 2022年4月







       私が家政婦を務めるのは、死んだ人間が来る家―。「家政婦」。心霊写真に写りたい、幽霊が出会ったのは心霊写真を作ることが趣味の青年だった。「悠川さんは写りたい」。リストラされたことを言えない父親の、家族に秘密のアルバイトとは―。「そしてクマになる」。イヤミの邸宅ではたらいていたカラ松が死体となって発見された。犯人はこの家の中にいる!?「なごみ探偵おそ松さん・リターンズ」。星野源「フィルム」にインスパイアされて生まれたショートショート。「フィルム」。


現実と幻想の間をさまよっているような短編集。

「そしてクマになる」
リストラされた男が着ぐるみのアルバイト。
おかしな幻想の世界に入っていく。
着ぐるみを着ていても、動きでわかるもの!?
悲しさの後にやさしさがあった。

「なごみ探偵おそ松さん・リターンズ」
おそ松くん・・・・ザンス!という言葉使い、なつかしい。
おそ松くん探偵が事件を解決!

「家政婦」「悠川さんは写りたい」
死んだ人がみえてもいないようにふるまう。
生死の境をさまよっている人が見えたりするが、それ自体はこわくない。
やさしささえ感じる話なのに、最後の一行で凍り付く。


「フィルム」
生死の境をさまよっている人が見た幻想。

やさしさあり、こわさあり、せつなさあり、不思議な世界に入り込んだ感じ。

お気に入り度★★★★

監督アンドレア・ディ・ステファノ

出演ジョエル・キナマン, ロザムンド・パイク, コモン, アナ・デ・アルマス, クライブ・オーウェン 

2019年


 

 北欧の犯罪小説を「ジョン・ウィック」シリーズのプロデューサーが映画化したサスペンス。自由と引き換えにFBIの情報屋になったピート。最後の任務は、麻薬取引現場にFBI捜査官を導き、組織を壊滅させること。だが、取引現場でトラブルが発生し…。 



FBIの情報屋になったピート。

麻薬取引現場に潜入するも、予期せぬ事態となる。

作戦が失敗したので、刑務所に戻って内部の麻薬取引を調べろと強制的に命令される。



FBIは、こんなに簡単に切り捨ててしまうの?


孤立したピートは刑務所から、脱出することができるのか?


どんな方法で脱出するのか、ドキドキの展開だった。


お気に入り度★★★






深緑野分 文藝春秋 2022年4月






戦後ハリウッドの映画界でもがき、爪痕を残そうと奮闘した特殊造形師・マチルダ。 脚光を浴びながら、自身の才能を信じ切れず葛藤する、現代ロンドンのCGクリエイター・ヴィヴィアン。 CGの嵐が吹き荒れるなか、映画に魅せられた2人の魂が、時を越えて共鳴する。 特殊効果の“魔法”によって、“夢”を生み出すことに人生を賭した2人の女性クリエイター。その愛と真実の物語。




前半、マチルダが主人公。
特殊メイクや造形を手掛けるヴェンゴスの弟子となり、実力を発揮していく。映画の仕事を手掛けるも、スタッフロール(エンドロール)には会社の名前で、個人名はない。そんな時代だった。

マチルダは自分の作品に自信を持っていたからこそコンピューターCGはにせものだと思っていた。しかし、モーリーンにCGの映像を見せられた時、衝撃を受ける。
モーリーンも、マチルダも映画を愛していた。モーリーンは、いっしょに映画を作っていきたかったのだろう。しかし・・・・
結果として、リーヴを奪っておきながら、無邪気にマチルダの前にあらわれるモーリーンを許せない気持ち、わかるなあ。


後半はヴィヴが主人公。
アニメーターとして、才能を発揮するも、行き詰まっていた。
そんなとき、「レジェンド・オブ・ストレンジャー」のリメイクを作ることになる。

リメイクって、むつかしいと思う。オリジナルがヒットした作品だと余計に。
オリジナルに敬意を表したいい作品にしてほしいと思う。

モーリーンがヴィヴに接触してくる理由とは?


映画を愛するクリエーターの物語。
形は違えど、映画にかける情熱は、同じように熱い。

映画を作る過程も詳しく書かれていて、
ひとつの映画ができるまでには、多くの人たちが関わり、
たいへんな想いが結集されてできているのだと、改めて思った。

スタッフロールに名前が載ることは、誇りなんだろうな。

お気に入り度★★★★★

監督 JAバヨナ

出演

シガニー・ウィーバー, フェリシティ・ジョーンズ, トビー・ケベル, ルイス・マクドゥーガル, リーアム・ニーソン(怪物の声)

2017年

 

 12歳の少年コナーは、難しい病を抱えた母親と2人で裏窓から教会の墓地がみえる家に住み、毎夜悪夢にうなされていた。 ある夜、コナーのもとに怪物がやって来て告げる。 「今から、私はお前に3つの【真実の物語】を話す。4つ目の物語は、お前が話せ。」しかも怪物は、コナーが隠している“真実"を語れと迫るのだ。 頑なに拒むコナー。しかしコナーの抵抗など意にも介さず、その日を境に夜ごと怪物は現れ物語の幕が上がる―。



ママは病気で入退院を繰り返していた。

パパは時々会いに来てくれるが、新しい家族がいた。

おばあちゃんは厳しく、そりがあわない。

学校ではいじめられる。



ひとつもいいことがない少年コナーのもとに、大きな木の怪物が来る。




コナーが、ママの死を受け入れるまでの葛藤を描いている。

怪物の話は、不条理や真実の裏側の話を描いていて興味深い。


怪物は、コナーに「真実を話せ」と言う。


コナーが何で苦しんでいたのかが明らかに・・・・

コナーの心の叫びは、切ない。



お気に入り度★★★★


伊岡瞬 文藝春秋 2022年1月





 

 1968年、静岡県千里見町に近づく台風は、五十年に一度とも百年に一度とも言われる豪雨をもたらしていた。。住んでいるところが危険区域に指定された有村一家は、小さい赤ん坊がいることもあり、親戚の家に避難を決めるが……。

それから20年後、千里見町で『清風館』という旅館を営む清田母娘の前に、坂井裕二と名乗る大学生が現れる。坂井は約一年ぶりの客だった。




坂井裕二の数奇な人生・・・・・・・・

自分の意志に関係なく動いている。

しかし、彼は真面目に生きているのだ。。


同じような境遇の矢木沢了が裕二に接触してくる。

裕二は、彼の言葉を信じないが、自分の過去等について調べ始める。



一方、清風館の娘清田千遥は、父親の死を受け入れないでいた。

千遥の母親が営む旅館に坂井が宿泊にきたことから、ふたりに接点が生まれる。



さまざまな出来事が、ひとつにまとまるラストは、圧巻。

いろいろあったけど、今は、幸せそうで良かった。


お気に入り度★★★★


監督マーリ・セルヴァラージ

出演

カディル, アーナンディ, ヨーギ・バーブ, リジェーシュ, ハリ・クリシュナン

 

 ストーリー 弁護士になるという希望を胸に法科大学に進学したパリエルム・ペルマールは、同じクラスの女子学生・ジョーと仲良くなる。 ある日パリエルムはジョーから彼女の姉の結婚式に招かれて式場に出かけていくが、そこに待ち受けていたのはカースト制度における不可触民(ダリト)出身である彼とジョーの交際に反対する、父親と親戚らからの激しい罵倒と凄惨な暴力であった。理不尽なカースト差別に直面したパリエルムが、自らの存在への苦悩と自分を慕ってくれるジョーへの想い、そのはざまで下した決断とはー。



衝撃作。


最初のカルッピという名の犬が殺されるシーンがある。

犬好きな人は見ない方がいい。

もうつらくて見ていられなかった。

けど、これが、後半、重要な場面となる。



カースト制度にも含まれない、それ以下の階級の人たちに対するひどい差別・・・・


人が亡くなる事件がおきても、警察が調べるわけでもなく、簡単に処理されていく。



パリエルムは、同じ大学生のジョーに英語を教えてもらったことから、彼女と親しくなる。

しかし、ジョーの父と親戚から、ダリト出身であるパリエルムは、ひどい仕打ちを受ける。


あんな屈辱をうけても、ジョーにそのことを話さなかったのは、ジョーにとっての父は大切な人だから。

ジョーの笑顔を守りたいと思ってのこと。


それを知らないジョーは、急に冷たくなったパリエルムに怒りをぶつける。


お互い想い合っているのに、そんなふたりの姿を見るのは、痛々しい。



大学に呼び出されたパリエルムの父への仕打ちも見ていられなかった。




パリエルムはのとった行動とは?


自分を奮い立たせ、毅然とした態度をとる。

ジョーに何も話さず、秘密を守り通したパリエルムは、強い人だ。


お気に入り度★★★★★