退職クロスロード

安藤祐介 実業之日本社 2026年2月



 

 

年度末の3月31日、総合メーカー・万屋カンザキ本社ビル。清掃員の守田守は、早朝から退職や異動でごった返す社内を掃き清める作業に追われていた。就職氷河期の挫折を経て、派遣先で粛々と仕事に臨んできた守田は、この日で定年を迎え、会社を去る窓際部長の佐和山義男から突然朝食に誘われる。守田は5年前、図らずも佐和山の自死を阻止した「命の恩人」だったというのだ。バブル期入社の剛腕営業マンで、親分肌と慕われた彼に5年前、何が起きたのか。立場も世代も異なる二人の人生に、佐和山の同期や部下の願いと、因縁のライバル達の思惑が交錯する中で解き明かされる、封印された驚愕の真実とは――





万屋カンザキの定年を迎える佐和山。

今は、パトロール隊長であるが、以前は剛腕営業マンだつた。

以前どんな出来事があったのか?



清掃員の守田 。万屋カンザキの社員の国橋、田代、柳らの視点で描かれる。


バブル期のお金の使い方ってあ然。こんなことか、まかり通ったんだ。

悪いやつが成敗されてよかったね。


働く中でも、人の縁って大切なんだと思う。


まじめに仕事する。それが報われる職場であってほしい。


佐和山の新しい仕事、応援したい。



お気に入り度⭐⭐⭐⭐

俺たちの箱根駅伝

池井戸潤 文藝春秋 2024年4月



 

 


 

 

古豪・明誠学院大学陸上競技部。
箱根駅伝で連覇したこともある名門の名も、今は昔。
本選出場を2年連続で逃したチーム、そして卒業を控えた主将・青葉隼斗にとって、10月の予選会が箱根へのラストチャンスだ。故障を克服し、渾身の走りを見せる隼斗に襲い掛かるのは、「箱根の魔物」……。
隼斗は、明誠学院大学は、箱根路を走ることが出来るのか?

一方、「箱根駅伝」中継を担う大日テレビ・スポーツ局。
プロデューサーの徳重は、編成局長の黒石から降ってきた難題に頭を抱えていた。
「不可能」と言われた箱根中継を成功させた伝説の男から、現代にまで伝わるテレビマンたちの苦悩と奮闘を描く。





この作品が出版されたときは、人気でなかなか読めなくて、最近ドラマ化されると知り、それまでに読んでおこうと手にした。

箱根駅伝は毎年、正月の恒例行事としてテレビ観戦しているので、期待が高まる。


選手達の熱い想い、葛藤。
箱根駅伝を走るというのは、選手にとって特別なことなのだ。
走ることができなかった人の想いも背負って走るということ。

その選手をまとめる監督の存在。
監督の言葉がけひとつで選手の気持ちがこんなにも変わるのか。それが走りに影響する。
選手の性格、能力等、わかっているからこそ、監督の言葉が選手に響くのだろう。

レースは、実際のレースを見ているようで、臨場感があった。


学生連合に焦点を当てているのが目新しい。



選手、監督の話にとどまらず、それを放送するテレビ局の話も興味深い。


辛島の実況、とてもよかった。



お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

モナリザの裏側

一色さゆり 新潮社 2026年5月



 

 

大好きな母親とルーヴル美術館を訪れた女性。パリ留学中に出会ったという父と母の、ある絵にまつわる秘密を知ることに。バブル期の好景気のなか、NYに出張し、ゴッホ「医師ガシェの肖像」のオークションに携わることになったシングルマザー。ムンクの「叫び」の実物を観るために、オスロへと旅立った、会社を辞めた男。名画に導かれ、自らの人生に向き合う人々をあざやかに描く、心温まる5篇の物語。



ムンク「叫び」
会議でうまく話せなくなり、会社に行けなくなり、家に閉じこもってしまった沙弥夫が、実物を見るためオスロへ旅立つ。


マルク「青い馬の塔」

戦時下のドイツにおいて、ナチスによる絵画への迫害に関わる話。


日本人領事館職員は、処分される美術品を守れるか?



ゴッホ「医師ガシェの肖像」

オークションに携ることになった真美。離婚してひとりで育てている中学生の息子とは、うまくいってない。

油谷がどうしても落札 したいわけとは?



マネ「スミレの花束をつけたベルト・モリゾ」

画家をめざす白舟ぼたんと黒川薫子だが、女性が画家をめざすことは、厳しかった。

育ちの違うふたりだが、次第に打ち解ける。



ティツィアーノ「田園の奏楽」

ルーブル美術館を訪れた母と 娘。

母からある秘密を聞く。


ルーブル美術館を貸し切るなんてことできるのかなあなんて思って読んでいたけど、なるほど、そういうことだったのね。




それぞれの絵画を検索して、鑑賞しながら読み進めた。

名画が、人々の人生に関わってきて、自分を見つめ直す。そんなお話だった。

美術品は、本物、偽物関係なく、見た人が、どれだけ心を動かされたかによるのだと感じた。



お気に入り度⭐⭐⭐



DANGER

村山由佳 新潮社 2026年2月



 

 

世界的振付家・久我一臣にインタビューをすることになった、編集者の水野果耶と記者の長瀬一平。久我の半生を辿りつつ、戦前戦後の日本バレエを紹介するつもりだったが、彼が語る壮絶な戦争体験は、二人が思ってもみなかった縁を掘り起こしてゆく。芸術と戦争を通し、過酷な運命に希望を見出す人々に迫った、入魂の輪舞曲(ロンド)。




編集者の水野果耶と記者の長瀬一平は、振付師久我一臣にバレエの取材に行く。どのようにしてバレエを始めたのかや、どの先生についたかの話だったのが、いつしか戦争体験の話となっていく。


久我一臣が語る戦争体験は、あまりに過酷で読むのがつらい。志願して看護婦となった女性達の話も残酷極まりない。

気分がどーんと落ち込んでしまった。それでも先を読まずにはいられなかった。

その途中に、取材している果耶と一平の話がはさまれていて、一息つけた。

思ったことを口にしてしまい、チャラい感じの一平だが、時々みせる鋭い感覚、そして、果耶に対する思いやりが感じられた。


戦時下を生き延びた人の再会には 胸が熱くなる。

久我のバレエの新しい挑戦、果耶の再出発を応援したい。

お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

この世の果ての殺人

荒木あかね 講談社 2022年8月



 

 

小惑星「テロス」が日本に衝突することが発表され、世界は大混乱に陥った。そんなパニックをよそに、小春は淡々とひとり太宰府で自動車の教習を受け続けている。小さな夢を叶えるために。年末、ある教習車のトランクを開けると、滅多刺しにされた女性の死体を発見する。教官で元刑事のイサガワとともに、地球最後の謎解きを始める――。



 

小惑星「テロス」が日本に衝突し、地球がもうすぐ滅びるというのに、自動車 教習所に通う小春というのが、なんともシュールだ。


殺人事件に遭遇した小春は、警察が機能していない中、教官のイサガワと共に調べ始める。


このイサガワは、元警察官で、正義への執着がすごく、小春は振りまわされている感じ。


その途中で出会う、兄弟だけで過ごす人や、中一の少女、逃げ遅れた人たちの避難所で暮らす人たちとも出会う


なかなか面白い展開だった。


地球滅亡を前に、

避難する人、自殺する人もいれば、最後に、悔いの残らないようにしたいという人もいる。

何をしてもいいという殺人鬼も現れる!?


お気に入り度⭐⭐⭐⭐



ギアをあげて、風を鳴らして

平石さなぎ 集英社 2026年3月



 

 

38回小説すばる新人賞受賞作。
小学4年生の吉沢癒知は、宗教団体「荻堂創流会」の近畿支部で「降り子(=創父の生まれ変わり)」として信徒から崇拝されていた。幹部の母からは、神聖な身体を持つ者として、食事や他者との触れ合いを厳しく制限されていたが、自分に寄せられる信徒の信仰心や日々の「儀式」に抵抗をおぼえはじめていた。そんな癒知の前に現れたのは、家庭の事情で何度も転校を繰り

返している渡来クミ。引っ越し当初、近所を散策中に見かけた「めっちゃきれかった」癒知に興味津々。ある日、学校のトイレで遭遇したことをきっかけに、ふたりは距離を縮めていく。そして繋がりを持ったのは癒知とクミだけでなく、母親同士も親交を深めるようになり……。




宗教二世の吉沢癒知は、「荻堂創流会」の近畿支部で「降り子(=創父の生まれ変わり)」として日々を送っていた。

本人の意思とは関係なく、降り子という立場になり、母と触れることもできず、食事も制限されてる。
まだ、小学校には通っていたことが救いかな。
でも、小学校でも、浮いている存在で、特殊学級だった。

その学校に転校してきた渡来クミ。
癒知とクミはケンカから始まった関係だが、次第に打ち解けていく。

宗教……
本人が望んでのことなら、仕方がないのかもしれないが、家族、特に子供に影響があるのは、なんとも理不尽。子供たちは犠牲者だ。

癒知は、降り子としての厳しい規律の中で幸せとはなんだろうと考える。そして、今の生活に疑問を持ち始める。


癒知とクミは、まだ小学生なので、どうすることもできないことはたくさんあるだろうが、それでも大人たちに抵抗しようと、ふたりでの行動に胸が熱くなる。

ふたりで過ごした日々のことは、決して忘れないだろう。

気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

おぼろ迷宮

月村了衛 角川書店 2025年3月


 

 

おんぼろアパート『朧荘』に住む女子大生夏芽は、まるで異次元に迷い込んだかのような不可解な出来事に遭遇する。〈謎〉を解決するのは、隣に住む正体不明の老人、鳴滝。尋常ならざる人脈と驚異の推理力を駆使する彼は一体何者なのか。街にはびこる不可思議な事件の謎を、凸凹コンビがスイーツを食べつつ華麗に解決!






表紙と題名と最初の話から、異世界へ紛れ込んでしまう話かと 思いきや、現実の話だった。

朧荘に住む大学生の夏芽が、隣の住民のおじいさんの鳴滝の力を借りて、謎を解決していく物語。

一話、二話は序章で 三話が、本題。

この鳴滝っていったい何者?
  強面の剛田やゼミの教授も話に絡んできて、謎の解明にあたる。

夏芽と鳴滝のふたり、プリン食べ歩きの人探しは、面白い部分ではあるが、そんないやになるほど食べなくても、聞くだけでもいいのに~とも思う。


事実は……
う~ん、
結果よければそれでいいのか。
釈然としないなあ。


でも、人のつながりを感じ、最後は、 オンボロとも言える朧荘にみんな集まり、いい終わり方だった。

お気に入り度⭐⭐⭐



君と29.5日の月夜を何度でも

清水晴木 スターツ出版 2025年11月



 

 

「うん、見つけた」——ある夜の幕張の海。大学生の藤峰海は不思議な少女・美月に出会いそう言われた。帰る家がないと言う彼女に対し、ひとり暮らしをしていた海は一緒に住むことを提案する。同じ家で暮らしていく中で距離が縮まっていくふたりだったのだが、出会いから1か月後、美月は突然姿を消してしまう。そして、海が次に出会ったのは少し大人びた見た目の美月だった——。29.5日、つまり月の満ち欠けとともに生まれ変わりをしてしまうという美月に、どんな姿の彼女でも愛すると誓う海だったが…。号泣必至、この世界に生きるすべての人に贈る究極の愛の物語。




29.5日で生まれ変わりを繰り返す美月を 海は、ずっと愛することができるのか?

それは、説明文より、年とった美月を想像したが、そうではなかった。


それはどういうことなのかは、読んでもらうことにして……


生まれかわった美月を海は、愛し続けた。


では、美月は、どうなのか?

幕張の海で、美月の「うん、見つけた」という言葉の意味がわかったとき、美月の深い想いを感じた。


ずっと、見守っていたんだな。


愛の物語。


お気に入り度⭐⭐⭐

アフターブルー

朝宮夕 講談社 2025年7月



 

 

納棺師、遺品整理士、生花装飾技能士……葬儀関係のプロ集団「株式会社C・F・C」。
とりわけ損傷の激しい遺体を専門に扱う「二課」は、無残な状態から生前の面影を復元するのがミッション。
事故、事件、自殺ーー二課には毎日のように遺体が運ばれてくる。入学式を明後日に控え線路に正座していた少年、ゴミ屋敷で餓死した男性、幼い我が子を残して事故に遭った母親、飛び降りる瞬間を動画配信していた少女ーー


二課の納棺師たちはその手で、失われた生前のおもかげを復元していく。

愛する人が突然この世を去った時、どうすれば立ち上がれるのか。あの人はなぜ命を絶ったのか。遺された者はどう生きればいいのか。
それぞれに「喪失」を抱えた納棺師たちもまた、明日を生きる微かな光を見出していく。




遺体の破損 の度合いが、激しく、それを生前と近い姿に 戻すというのが「二課」の納棺師の仕事。
どうやって仕事をしているのか、詳しく描かれていて、読んでいるだけでも、吐き気がしてきそう。
思っていたより、グロテスクでハードな仕事だと思った。

それは、
祖母の 「最後に生きていたときのままのふたりに会えてよかった。」という言葉のように、これからも生きていく人にとっての区切りのとしてのお別れの場が必要なのだと思う。

だから、なくてはならない仕事。

 ここで 働く納棺師たちは、それぞれ、過去や自分の嗜好に苦しみを抱えている。

それでも、ここで働いて、助けあい、前を向いていた。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐


謎の香りはパン屋から

土屋うさぎ 宝島社 2025年1月




 

 

大学一年生の市倉小春は漫画家を目指しつつ、大阪府豊中市にあるパン屋〈ノスティモ〉でアルバイトをしていた。あるとき、同じパン屋で働いている親友の由貴子に、一緒に行くはずだったライブビューイングをドタキャンされてしまう。誘ってきたのは彼女のほうなのにどうして?

疑問に思った小春は、彼女の行動を振り返り、意外な真相に辿りつく……。パン屋を舞台とした〈日常の謎〉連作ミステリー!




漫画家を目指す大学生の小春は、パン屋でアルバイトしている。
その小春が日常の謎を解くミステリー。

クロワッサン、フランスパン、シナモロール、チョココルネ、カレーパン……
パンがどれもおいしそう。
そのパンとミステリーがマッチしていて、ほんわかした気分になる。


シナモロールの高校生たちって、青春だなあ。
ご褒美のチョココルネのためにがんばる凜 ちゃんって微笑ましい。
思い出のカレー パンを探す3人の様子がおもしろい。

パンのうんちくもあり、登場人物たちがいきいきしていて、パンのおいしそうな香りが漂ってくるやさしいお話だった。

お気に入り度⭐⭐⭐