紙上法廷

衣刀信吾 光文社 2026年8月



 

 

法曹を中心とした趣味のミステリー愛好サークルが、創立10周年を記念した同人誌にリーガルミステリーの短編を公募する。
・なぜ、内縁を解消するのに入籍する必要があるのか?
・発作を起こした父親を放置した行為は、殺人罪に値するのか?
・死因によって相続人が変わる奇妙な遺言書――自殺か、事故か、殺人か?
・瀕死の被害者は、なぜ死に際に絨毯を気にする伝言を残したのか?
タイプの違う魅力的な謎を備えた四編の応募作に、サークルメンバーからなる選考委員たちは難しい選択を迫られることになる……。
こんなリーガルミステリー読んだことない! 連鎖する謎に導かれた先に待っていたものとは。




ミステリーサークルに応募された作品。


-内縁の妻から、内縁の解消の前に入籍してくれという。なぜ?


-心筋梗塞で倒れた義父を助けなかったのは、殺人罪になるのか。


-『私が自殺したときは⚪⚪に

私が事故死したときは⚪⚪に

私が殺された時は⚪⚪に全遺産を相続させる。』

という遺言書。


-『絨毯が汚れている。綺麗に片付けて』という死にまぎわの電話の意味は?


このような内容の作品、

その短編を読むだけでも、わくわくする。



応募された短編4作品が法律に沿っての内容であり、読み応えがある。


それについての選考委員会での話し合いが、作品を深く理解するのに役立っている。


選ばれたのはどの作品か。


話はここで終わりではなく……

これまでの話のつながりや時系列、人間関係など、ひとつひとつ、細かいところまで検証するような伏線回収。

おもしろい話の構成だった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐


普通の底

月村了衛

講談社 2025年4月



 

 

ある青年から届いた手紙には、幼少期から「普通」を願って生活を送ってきたことが書かれていた。普通の家庭、普通の教育、普通の交友関係。多少の挫折はあっても、彼は「普通」の軌道に乗り続けている--はずだった。今、彼はとても困難な状況にいる。どこでそうなったのか。どうしてそうなったのか。両親が不仲だからか、トー横に行ってしまったからか、それとも大学時代の起業サークルが原因か、それとも重くのしかかる奨学金のせいだろうか。三通の手紙があぶり出すのは、あらゆるものが可視化された現代社会にはびこる精神的幼稚さと、その行く末。 




幼少期から、目立たず、かといって落ちこぼれることもなく、普通を目指して過ごしてきた男の独白。


つらつらと語られる話は、何もおもしろいところはなかったのだが……


最後まで読んで、彼の人生が転落してしまうのを知る。


親ガチャ、奨学金、転職、闇バイト……

現代社会の問題をあぶりだしている。


彼の行いに、つっこみを入れたい部分はたくさんあったが、誰もが闇バイトに手を出してしまう可能性のあるおそろしさを感じた。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐




ふつうの家族

辻堂ゆめ 講談社 2026年3月



 

 

大停電の夜、
玄関で倒れていた見知らぬ青年。
意識朦朧の彼は何者なのか?
招き入れたのは誰?
桜石一家には、全員裏がある。
「あなた」も「私」も、みんな嘘をついている。

「ふつうの家族」に隠された秘密。暗闇の中、照らし出される「過去の記憶」。

湘南の地に一戸建てを構える桜(さくら)石(いし)家。何か特別なところがあるわけではない、絵に描いたような「ふつうの家族」の、はずだった。ある嵐の夜、桜石家に現れたのは一人の若い男。高熱をだして倒れ込んでいた男は家族の誰かが引き入れたに違いない。誰が、なんのためにこんなことをしたのか? 家族が互いに疑念を募らせていくうちに、それぞれ家族には言えなかった「秘密」があぶり出されていく――。




まわりからみたら、ふつうの家族にみえる桜石家。

しかし、ひとりひとりは、悩みを抱えていた。


台風の夜、期せずして集まった 桜石家の4人。

そこに見知らぬ男性が、玄関で倒れていた。


この男性は、いったい誰なのか。

誰が、招き入れたのか。


それぞれが過去を思い出しながら、男性との関わりを探していく。


家族といっても、個人の集まりだから、人に言えない秘密をもつこともあるだろう。それでも、時には、協力しあうことができる。それが家族ではないのだろうか。



台風が通りすぎた時、それぞれが自ら答えを出し、前向きに進もうとする姿がよかった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐


神に愛されていた

木爾チレン 実業之日本社 2023年11月



 

 

若くして小説家デビューを果たし、その美貌と才能で一躍人気作家となった東山冴理。
しかし冴理は人気絶頂のさなか、突然、筆を断った――。
やがて三十年の時が経ち、冴理のもとに、ひとりの女性編集者が執筆依頼に訪れる。
「私には書く権利がないの」
そう断る冴理に、編集者は問う。
「それは三十年前――白川天音先生が亡くなったことに関係があるのでしょうか」
「あなたは、誰かを殺したいと思うほどの絶望を味わったことってあるかしら」
そして、この時を待っていたかのように、冴理は語り始める。
高校文芸部の後輩・白川天音が「天才小説家」として目の前に現れてから、すべての運命が狂っていった過去と、その真実を。
希望と絶望。
羨望と嫉妬。
愛と憎しみ。
書くことに救われ、書くことに傷つけられ、それでも才能を信じて生きた二人の女性作家の物語。





東山冴理が、女性編集者に、なぜ、執筆しなくなったのかを、50年前の中学生だった頃からの話を聞かせる形で、物語は進んでいく。


後半は、白川天音の主観で、中学生だつた頃からの話 。

冴理が語ったあの時、天音は、どのように感じていたかを知ることになる。


あの時、天音は、こんなことを考えていたのかと、見方が変われば、事実が違うようにみえてくる。

すれ違うふたりの関係がもどかしい。


一途な思いが狂った行動を起こしてしまう。


憧れ、尊敬、嫉妬、劣等感……

さまざまな感情がもつれあう。


ふたりは、ここまで、すれ違っていたとは !


天音の明と冴理の暗。

ふたりそろってひとつの物語となっていたのかも。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐




風車と巨人

岩井圭也 集英社 2026年7月



 

 

彼女は、真実を撮っているつもりだった。

「不老因子」の発見で脚光を浴びるがん研究者・嘉山宗弘。
彼を追う人気ドキュメンタリー番組『十一時の肖像』の撮影を始めた三田紗矢子は、やがて嘉山の成果の根幹を揺るがす研究不正疑惑に辿り着く。
否定する大学、告発する医師で証言は食い違う。
それでもカメラを回し続けるなかで、疑いは次第に“真実”の輪郭を帯びていく。
疑いを抱いたまま切り取られた世界は、どこまで現実なのか。

記録と虚構の境界が静かに崩れていく――。




牛尾プロダクションで働く三田 沙矢子は、『十一時の肖像』の企画を任され、『不老因子』を 発見したことで有名な城北大の嘉山教授を取材する。

取材をそつなくこなす嘉山は、生い立ちを明かさない。嘉山と関わりのある教授、学生、秘書などに、嘉山のことを聞いていくうち、三田は、疑問を持ち始める。

嘉山の研究は、信頼のおけるものなのか?
三田は、番組を作ることができるのか?

自分の信念に従っての行動。しかし、その確たる証拠がないとき、どういう行動をとるのか。

嘉山の研究にかける情熱。
三田の報道にかける情熱。
嘉山と三田は、似たもの同士なのかも?

最後、三田の嘉山への提案には驚き!

お気に入り度⭐⭐⭐⭐

一番の恋人

君嶋彼方 角川書店 2024年5月


 

 

『君の顔では泣けない』の著者が描く、恋愛を超える愛の物語

道沢一番という名前は、「何事にも一番になれるように」という父の願いで付けられた。
重荷に感じたこともあったが、父には感謝している。「男らしく生きろ」という父の期待に応えることで一番の人生はうまくいってきたからだ。
しかし二年の交際を経て恋人の千凪にプロポーズしたところ、彼女の返事は「好きだけど、愛したことは一度もない」だった――。
千凪はアロマンティック・アセクシャル(他人に恋愛感情も性的欲求も抱くことがない性質)で、長年、恋愛ができないが故に「普通」の人生を送れないことに悩み、もがいていたのだった。
千凪への思いを捨てられない一番と、普通になりたい千凪。恋愛感情では結ばれない二人にとっての愛の形とは。




一番というのは、名前なのね。
兄は勝利。
勝利に期待していた父親は、勝利が期待はずれだとわかると、今度は一番に男らしさを求める。

そんな一番と千凪は、週末に会う関係だった。
一番は、両親に千凪を紹介するが、結婚の話がでてしまう。

千凪は、これまでの自分の恋愛の違和感から、自分がアロマンティック・アセクシャル(他人に恋愛感情も性的欲求も抱くことからない性質)だと気づく。

一番と千凪の関係は、これからどうなるのか?

一番と千凪の主観で交互に語られる。

普通の恋愛関係でない人たち。
愛の形はいろいろあるというけれど、本人たちにとっては、苦しい問題なのだと思う。

一番と千凪が出した結論とは?


相手のことを思いやる、今の気持ちを大切にしたふたりの決断を応援したい。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

海のほとりのプラネット

義井優 新潮社 2026年6月



 

 

時には立ち止まってもいい。こころの空白を埋めるピースはきっと見つかる。
母を喪い、二人で暮らしていた古い家から出られずにいた希帆のもとを、会ったことのない小学生の義妹が訪れる。戸惑う希帆に彼女は「家事の先生の最終試験がある」と言い、家の掃除をし始めるが……。鎌倉を舞台に、思いがけない出会いを通じて孤独を癒し、一歩ふみ出す人々を描く、R-18文学賞友近賞受賞作など全6篇。



鎌倉を舞台に、人との新しい関わりを描いた連作短編集。


ゴーヤとチーズの精霊馬

母を亡くし、母 と暮らしていた古い家から出られずにいた希帆の元に、父の再婚相手の子ども穂乃花がやってくる。


大人なのに子どものごとく家事のできない希帆と子どもなのに大人のごとく家事のできる穂乃花との交流。


ご奉公日和

実家 を取り壊すことになり、実家の真裏にある莖田家へ挨拶に行くと、姉の借金を返してくれないかと言われる。


 

莖婆と姉はいい関係だったのだなと思った。それを弟が引き継ぐように、莖婆と関係が続いていくのがいい。


晴れ時々、曇天娘

一家で鎌倉に越してきたみどりは、サーフィンを練習する紗奈と出う。紗奈と同じ年の娘-葵は、勤めていた市役所を辞め、漫画家になったことで、関係がこじれていた。


シンドバッドの恋の爪

鎌倉の地に開いたネイルサロンにネイルの相談にのってほしいと高校生の勇斗が来る


スペシャルなちゃぶ台

実家で使っていたちゃぶ台をアパートに持ち込んで使っていたが、がたつきがひどくなる。


家庭科室の三惑星

地学部の深沢君に頼まれて瀬戸さんと穂乃花は地学部の補助部員になるが ……


興味も知識も考え方も違う3人の集まりだけど、いっしょに行動することに意味があるのかも。


人との出会いが、次への一歩となる、希望のみえる物語。

鎌倉の風景とマッチして、ステキな空間を作っていた。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐ 


透明な螺旋

東野圭吾 文藝春秋 2021年9月



 

 

シリーズ第十弾。最新長編。
今、明かされる「ガリレオの真実」。

房総沖で男性の銃殺遺体が見つかった。
失踪した恋人の行方をたどると、関係者として天才物理学者の名が浮上した。
警視庁の刑事・草薙は、横須賀の両親のもとで過ごす湯川学を訪ねる。

「愛する人を守ることは罪なのか」
ガリレオシリーズ最大の秘密が明かされる




東野圭吾さんの作品は、好きで、ずっと読んできたのだが、最近は、人気が高すぎて、しばらく、読むのを躊躇してた。


最後の作品「永遠の記憶」を読むにあたり、ガリレオシリーズで、「沈黙のパレード」「透明な螺旋」は読んでなかったので、この作品を手に取った。


サクサクと読めるのに、中身はしっかりしている。

湯川と草薙、内海との掛け合いもおもしろいところ。


今回は物理学的な要素はなかったような………


湯川は、事件の真相に迫った時、犯罪者に寄りそい説得する、その姿に、人情味を感じた。



母を介護していた湯川の姿に違う一面をみた思いだ。


そして、最後には、湯川の秘密が、あきらかに~



お気に入り度⭐⭐⭐⭐

今を春べと

奥田亜希子 双葉社 2025年10月



 

 

子どもと一緒に参加したかるた教室で、希海は初めてかるたの札を払う。空を切り裂くように飛んだ札。指先に満ちた新鮮なエネルギー……。
その記憶が強く刻まれた希海だが、「もうすぐ40歳になる」「暗記力に自信がない」「子どもがいるから」など、気づけば自分に言い訳ばかりして、競技かるたを始めることにためらっていた。かたや夫は、仕事と趣味の優先順位をつけようとするのだった。果たして希海が選びとった道とは?
今、自分の〈好き〉を手放そうとしている人すべてに捧げる物語。『ちはやふる』漫画家、末次由紀さん推薦!






百人一首、競技かるたのこと、詳しく書かれていて、そのおもしろさや奥深さ を知ることとなった。


息子郁登の付き添いで始めたかるた教室。

小学一年生になった郁登は、かるたより、サッカーに夢中になる。

そんななかで希海は、自分がかるたを続けたいと思うようになる。


まだ小さい小学生の子がいるのに、趣味を持つことは、いけないことなのか。


郁登のサッカー教室を 父親に任せている。郁登は、母親もいっしょに来て応援していてほしいのではないか?

家族との時間を大切 にした方がいいのではないか?


義理の妹の意見 が世間の一般的な考え方なのか?夫の勇介とも口論に。


希海は、どのような決断をしたのか。


 

趣味と家庭、どちらも大切にしたいと思う希海。その葛藤がていねいに描かれていた。


最後のエピローグ。

成長した郁登に、にんまり。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

もしもあなたが小説家だったら人生をどう描くか

森沢明夫 株式会社かんき出版 2026年7月


 

 

「あなたの人生は、一冊の小説です」

もしもあなたが小説家だったら、
自分という主人公にどんな物語を用意しますか?
どんな出会いをさせ、どんな試練を与え、どんな結末へ導きますか?

◇    ◇    ◇

本書は、『虹の岬の喫茶店』『夏美のホタル』など
数々の感動作を生み出してきたベストセラー作家・森沢明夫が、
「人生を物語のようにおもしろくする方法」を綴った一冊です。

「生きにくさは人生の取材をしている証拠」
「敵のいない主人公なんていない」
「人は長所で尊敬され、短所で愛される」
などなど、小説家ならではの視点で切り取る人生のあれこれ。

終始“人生をハッピーエンドに導くには?”を追求する姿勢は
多くの人の心を揺さぶる森沢作品に通じています。

物語が好きな人はもちろん、
要所にちりばめられた技法は
小説創作のヒントになることまちがいなし。

人生論としても、創作論としても楽しめます!



目次】
Part1.取材の章 ここは80億人の主人公がいる世界
Part2.設定の章 キャラクターの魅力を育てる
Part3.設計の章 おもしろい小説は「不幸」から始まる
Part4.執筆の章 出会いが物語を動かす
Part5.推敲の章 結末は書き変えられる




森沢明夫著のこの作品も新着図書にあったので借りてみた。



目次を見ただけで、内容が気になる。

小説を書くかたちで人生をどう生きるかが、描かれている。


特に目新しいことはないけれど、わかりやすくていねいな言葉は、心に響く。

人生論として、心に残る言葉が、たくさんあった。


この年になり、私の人生なんて普通(?)でおもしろくない。と思ったけど、小さな失敗や挫折はたくさんあった。今でこそ、「小さい」と表現できるが、その時は真剣に悩んだ。苦しみを乗り越えた今がある。

それを小説にできるかもしれない。


作者が言いたいのは、これからの人生をどう描くかということ。


〈年齢にかかわらず人は変われる〉

悔いの残らない人生を送りたいと思う。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐