放課後に死者は戻る

秋吉理香子 双葉社

2014年11月



 

 


病院で目が覚めると、冴えないオタクだった僕の見た目は、イケメンの姿に変わっていた。
そうだ、教室の机に入れられた手紙で呼び出され、僕は誰かに崖から突き落とされたのだった……
助けに入ったイケメンと一緒に。
退院した僕は、元いたクラスに転校生として潜入した。
一体、誰が僕を殺したのか?
僕は、僕を殺したクラスメイト探しを始める――。切なさと驚きに満ちたラストが待ち受ける、傑作長編ミステリー。



手紙で呼びだされ、 崖から突き落とされる。
その時、声をかけ、助けに来てくれた人も転落する。
病院で、目をさますと知らない体になっていた。

退院後、僕のいた学校に転校し、犯人探しを始める。

いったい誰が僕を突き落としたのか?

地味だった僕だが、イケメンになったことで、生徒の見る目が違う。

以前までは、避けていた人たちとも話をしてみれば、いい人だってことがわかってくる。
自分も見た目で判断していたのだと 気づく。
高校生の青春ものとしてもおもしろかった。

途中、母親も先生も友達も信じられない 場面があり、困惑してたけど……

犯人は…

そういうことだったのね。

お気に入り度⭐⭐⭐

9月1日の朝へ

椰月美智子 双葉社 2025年8月



 

 

高永家の子供たちは四兄妹。中学の新米教師で正義感の強い長男、いわゆる美容男子である高三の次男、スカートを穿いて進学校に通う高一の三男、いちばん如才なく兄たちのことを観察している中二の末娘たちだ。
父親は再婚しているけれど、離婚した「ママ」も気ままに子供たちに会いに来る。そんなフクザツな家庭で過ごす四兄妹が夏休みを経て、新学期の「9月1日」を迎えるまでを描いた青春家族小説。9月1日、それは学校に通う子どもたちにとって、とても大きな意味をもつ日――。




父親の離婚により、

生みの親「ママ」

継母「玲子ちゃん」

祖母「おかーさん 」

と3人の母を持つ高永家の子どもたち4人 善羽、智親、武蔵、民。


それぞれの夏休みを過ごし、9月1日を迎えることになる。



 リストカットをくり返す同級生。


いじめ、SNSの炎上。


中学生の自殺。

自殺するちゃんとした理由(?)があれば納得できるのか?

両親もだけど、弟の気持ちを考えるとつらい。


女装や化粧する男子。

それは個性だとわかっていても、まだまだ、世間では受け入れられず、好奇の目で見てしまう人も多いだろう。


さまざまな困難に直面するけれど、仲のよい友達や理解してくれる家族がいることが救いだと思った。



9月1日は18歳以下の自殺者が一番多い日。


生きて9月1日を迎えること、それが大切なこと。




人はいつでも変われる。)

〈人生なんてあっという間なのかもしれない。

楽しまなきゃ損だ。

おもしろがらなきゃ損だ。

ワクワクしなきゃ損だ。〉


お気に入り度⭐⭐⭐⭐



ネバーランドの向こう側

佐原ひかり PHP研究所 2025年7月



 

 

文化センターで働く30歳の実日子。実家で何不自由ない生活を送っていたが、両親が交通事故で亡くなり、母方の叔母と同居することに。箱入り娘で、家事ができず、世間知らずな実日子と合理主義の叔母は全く波長が合わず、実日子は人生初めての一人暮らしを決意するが……。
新居であるメゾン・ド・ミドリで出会った大学生サイトーくんや声優の新田さん、お見合い相手の椎名さんとの交流の中で、実日子は少しずつ強くなっていく。

大人になり切れない大人の葛藤と進歩を描く、ハートフルストーリー。




30歳の実日子は、両親の過保護のもと、 両親に依存する生活を送っていたが、両親が交通事故で他界。一人になった実日子の家に叔母がやってくる。何もできない実日子に、叔母は指示する。実日子は両親の家を乗っ取られた気持ちになる。

実日子の成長が描かれている。


お見舞い相手の椎名さん。自分磨きに忙しく、結婚する気持ちはないようだが、実日子の相談にのってくれる。
いい関係だと思った。


ひとり暮らしをするところから始まり、新居での隣人たちとの関係や、小学生の郁ちゃんと遊んだり、おばあさんたちとの交流を通して、ずいぶん行動力が ついたと思う。

人とのかかわりが、実日子を成長させたのだと思った。

お気に入り度⭐⭐⭐⭐

真珠配列

岩井圭也 早川書房 2025年10月



 

 

2029年、北京。常軌を逸した速さで進行する癌で有力者の息子が死亡した。これは仕組まれた連続殺人なのか? 刑事偵査総隊の刑事アーロンは、ウイグル人の遺伝子エンジニア、マリクとともに捜査を行なう。やがてアーロンとマリクは、生命科学上の闇に直面し……




2029年の北京を舞台にしたSF。


常軌を逸した速さで進行する癌で有力者の息子が死亡したことから、刑事アーロンが、この捜査にあたる。


ウイグル人の遺伝子エンジニア、マリクを紹介されるが、彼はアーロンに横柄な態度をとる。マルクは信頼のおける人物なのか?


アーロンとマルクの関係性が変化していくのが読みどころ。



アーロンとマルクが、国家が行う機密をあばいていく話だと思って読んでいったのだが……


見事に裏切られた。


アーロンのラストの行為は、信じられない。

アーロン自身反対していたし、マルクの苦悩も知ってたのに~



お気に入り度⭐⭐⭐


龍の守る町

砥上裕將 講談社 2025年11月



 

 

魚鷹が見守る町で、秋月龍朗は最高の消防士だった。五年前のあの日、濁流が町と彼の心に、癒えない傷跡を刻むまでは。現場を追われ、辿り着いた指令室。そこは、同じ痛みを抱える仲間たちと、声だけで命を繋ぐ場所。炎の中から命を救ってきたその手で、男は今、受話器を握る。

町と、そして自分自身の再生をかけた静かな闘いが、いま始まる。





消防士として自分の危険も顧みず、救助にあたる消防士たち。
助けられた命もあれば助けられなかった命もある。

最高の消防士と言われた秋月龍朗は、助けられなかった命のことで、 水がトラウマとなっていた。

現場から離れ、指令室で働くことに ~


PCの操作に慣れず、電話に出るのも戸惑う秋月だったが、指令室の仲間と打ち解け、指令室の重要性を認識していく。


指令室では、

気が動転している通報者から、必要事項を聞きだし、なにが重要か、瞬時に判断し、救助隊員に伝える。1秒を争う、重要な部署だ。



緊張する内容であるが、

樋口さんの作るおいしそうなお菓子や犬のマメなど、ほっこりする場面もあった。


汗をごまかすために腕立てや懸垂する秋月にクスッと笑える場面も~。


みんながそれぞれ自分を磨いて、自分に与えられた仕事を一生懸命やるから最高の仕事ができるんだ。それでやっと誰かを助けられる。誰かを助けるために、隣にいる誰かを助ける。そうやつて最高の仕事を作っていくんだ一番なんてない。最高があるだけだよ〉


現場で働く消防士も指令室で働く人たちも、人を助けようとする熱い想いに感動した。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

白魔の檻

山口未桜 東京創元社 2025年8月





 


研修医の春田は実習のため北海道へ行くことになり、過疎地医療協力で派遣される城崎と、温泉湖の近くにある山奥の病院へと向かう。ところが二人が辿り着いた直後、病院一帯は濃霧に覆われて誰も出入りができない状況になってしまう。そんな中、院内で病院スタッフが変死体となって発見される。さらに翌朝に発生した大地震の影響で、病院の周囲には硫化水素ガスが流れ込んでしまう。そして、霧とガスにより孤立した病院で不可能犯罪が発生して──。過疎地医療の現実と、災害下で患者を守り共に生き抜こうとする医療従事者たちの極限を描いた本格ミステリ。



禁忌の子

活躍した、感情を持たない医師城崎と研修医の春田が事件を解決に導く。


濃い霧、地震。

閉ざされた病院。クローズドサークル。

硫化水素が徐々に下から押し寄せてくる恐怖。見えないものだけに余計に怖い。


そんな中で 起きた殺人事件。

4W1H

いつ、だれが、どこで、なぜ、どのようにして殺人は行われたのか?

過疎地医療協力で派遣された城崎が真相にせまっていく。


恐ろしい行いもあったけど、それにも意味があったのね。

置き配がこんな形で使われるとは!


謎解きとは別に、

過酷な労働環境で働く過疎地での 医療従事者たちの現状がそこにあった。


命を削って人を助けても貰えるのは感謝状一枚で、何か起こったら 叩かれるのは俺たちだ〉


そして、
どんな状況下にあっても、最善を尽くして、患者を守ろうとする医療従事者の姿には頭がさがる思いだ。

お気に入り度⭐⭐⭐⭐


逆転正義

下村敦史 幻冬舎 2023年8月



 

 

もくじ:
「見て見ぬふり」教室のいじめ。僕は見て見ぬふりなんかできない!
「保護」コンビニの前で佇む制服姿の女性。彼女を一人にはできない!
完黙」麻薬の売人。麻薬取締官に口を割るわけにはいかない!

「ストーカー」人を殺めたトイレに男を入れてはいけない!
「罪の相続」罪のない俺の息子が殺されたなんて許せない!
「死は朝、はばたく」刑務所から出てきたら普通の生活を送っていいのか!




どれも、思っているのとは違う結末が 待っていて、正義が逆転する短編集だ。

見て見ぬふり」

いじめがあっても、見て見ぬふりをするの人が多い中、僕は行動に出た。

先生に訴えるが先生は何もしようとしない。


ネットで裁くことは、正義なのか?




保護」

行くあてのない彼女を家に連れてくる。

一緒に生活を始めるが……


同意があっても、17歳の未成年との行為は罪になる?


完黙」

麻薬の売人が裁判でも、完全黙秘した理由は?


「ストーカー」

ストーカーに悩まされていた女性。トイレで誰を殺めたのか。


「罪の相続」

先祖が犯した罪を相続せねばならないのか。


「死は朝、はばたく」

刑務所から出てきた人目当てに金を強請る少年たち。


この話は死刑問題にも迫っている。




どれも、ミスリードしてしまう。だまされる ことが楽しい。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

カフェの帰り道

嶋津輝 東京創元社 2025年11月



 

 

時代を映す鏡であった仕事「女給」を通し、
大正から昭和を生きた市井の女性の人生を描き出す。
『襷がけの二人」著者、心ふるえる最新作。

東京・上野の片隅にある、あまり流行(はや)っていない「カフェー西行」。食堂や喫茶も兼ねた近隣住民の憩いの場には、客をもてなす個性豊かな女給がいた。竹久夢二風の化粧で注目を集めるタイ子、小説修業が上手くいかず焦るセイ、嘘つきだが面倒見のいい美登里を、大胆な嘘で驚かせる年上の新米・園子。彼女たちは「西行」で朗らかに働き、それぞれの道を見つけて去って行ったが……。大正から昭和にかけ、女給として働いた“百年前のわたしたちの物語”。




カフェ西行で働く女給たちの連作短編集。

竹久夢二に似ているという噂から、夢二に似せた化粧して人気を得たタイ子。


たわいもない嘘をつく、面倒見のいい美登里。


 女給募集に応募してきた、太った中年の園子。



さまざまな職を経験した後、カフェ西行の女給に戻ったセイ。

そんな女給たちの日常がいとおしい。

今まで家にこもっていた中年の園子が、「女給募集 十九歳」という求人に、  応募した勇気をたたえたい。   

女給として働くのは、お金のためではあるだろうけど、憧れの格好をしたい、この格好をみてほしい、自分という存在を誰かに認めてほしいという気持ちは、現代にも通じるのかもしれない。

後半は、戦争が色濃く、兵役に召集され、その家族の苦悩が描かれる。

子を想う親心を思うと切ない。

マスターのおおらかな人柄がよく、カフェ西行で過ごすゆったりした時間を貴重に思った。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐



こまどりたちが歌うなら

寺地はるな 集英社 2024年3月



 

 

前職の人間関係や職場環境に疲れ果て退職した茉子は、親戚の伸吾が社長を務める小さな製菓会社「吉成製菓」に転職する。
父の跡を継いで社長に就任した頼りない伸吾、誰よりも業務を知っているのに訳あってパートとして働く亀田さん。やたらと声が大きく態度も大きい江島さん、その部下でいつも怒られてばかりの正置さん、畑違いの有名企業から転職してきた千葉さん……。
それぞれの人生を歩んできた面々と働き始めた茉子は、サービス残業や女性スタッフによるお茶くみなど、会社の中の「見えないルール」が見過ごせず、声をあげていくが――。
一人一人違う”私たち”が関わり合い、働いて、生きていくことのかけがえのなさが胸に響く感動長編!




茉子はコネで製菓会社に転職するが、そこでは男女差別やパワハラが日常だった。

茉子は、納得できないことに声を上げていく。

強い心の持ち主かと思ったけど、実は以前 勤めていた会社で、もめ事があり、黙っていたことを悔いていたのだと知る。


「だいじょうぶ?」って聞かれたら、だいじょうぶでなくても「だいじょうぶ」って答えるしかないのかなあ。
だいじょうぶって聞く時は相手の返事をあんまり信用したらあかんし、だいじょうぶって答える時は、ほんまにだいじょうぶな時だけにせなあかん」

江島は部下の正置に大声でどなっていた。仕事ができる江島だが、パワハラはダメ。
しかし、彼にも意外な一面があり……

有名企業から転職してきた千葉さん。客のクレームに対して言い返した時は、スカッとした。

亀田さんは、今はパートだけど、会社のこと、働く人たちのこと、よく理解している印象だった。

社長の伸吾は頼りないけれど、話をよく聞いてくれる。
それぞれができることで協力し合い、伸吾社長のもとでやっていけたらいいなと思った。

お気に入り度⭐⭐⭐

神都の証人

大門剛明 講談社 2025年6月



 

 

昭和18年。戦時下、「神都」と称される伊勢で、弁護士の吾妻太一は苦悩していた。
官憲による人権侵害がはびこり、司法は死んだも同然。
弁護士は正業にあらずと、子どもたちにさえ蔑まれていた。
だが、一人の少女・波子との出会いが、吾妻の運命を変える。
彼女の父は、一家惨殺事件で死刑判決を受けた囚人だった。
「お父ちゃんを助けて」
波子の訴えを受け、吾妻は究極の手段に打って出る。
無罪の証拠を得るため、自らも犯罪者として裁かれる覚悟をして――。
だがそれは、長い戦いの始まりに過ぎなかった。




戦時中起きた冤罪事件。

無実を信じる娘の波子。

弁護士の吾妻が、無罪を証明しようとするところから物語は始まる。


自分が罪を犯してまでも、ある確証を取ろうとする吾妻に、強い意志を感じる。

しかし……

吾妻は、途中でこの事件から離れざるをえなくなってしまう。


この冤罪事件は、他の人に引き継がれていく。


 さまざまな人たちの深い人生がそこにあった。


再審請求が認められるまで、これほど長い時間を要したとは!

1度決定された判決を覆すことのむつかしさを感じた。



そして、思わぬラストに驚愕!


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐