海のほとりのプラネット

義井優 新潮社 2026年6月



 

 

時には立ち止まってもいい。こころの空白を埋めるピースはきっと見つかる。
母を喪い、二人で暮らしていた古い家から出られずにいた希帆のもとを、会ったことのない小学生の義妹が訪れる。戸惑う希帆に彼女は「家事の先生の最終試験がある」と言い、家の掃除をし始めるが……。鎌倉を舞台に、思いがけない出会いを通じて孤独を癒し、一歩ふみ出す人々を描く、R-18文学賞友近賞受賞作など全6篇。



鎌倉を舞台に、人との新しい関わりを描いた連作短編集。


ゴーヤとチーズの精霊馬

母を亡くし、母 と暮らしていた古い家から出られずにいた希帆の元に、父の再婚相手の子ども穂乃花がやってくる。


大人なのに子どものごとく家事のできない希帆と子どもなのに大人のごとく家事のできる穂乃花との交流。


ご奉公日和

実家 を取り壊すことになり、実家の真裏にある莖田家へ挨拶に行くと、姉の借金を返してくれないかと言われる。


 

莖婆と姉はいい関係だったのだなと思った。それを弟が引き継ぐように、莖婆と関係が続いていくのがいい。


晴れ時々、曇天娘

一家で鎌倉に越してきたみどりは、サーフィンを練習する紗奈と出う。紗奈と同じ年の娘-葵は、勤めていた市役所を辞め、漫画家になったことで、関係がこじれていた。


シンドバッドの恋の爪

鎌倉の地に開いたネイルサロンにネイルの相談にのってほしいと高校生の勇斗が来る


スペシャルなちゃぶ台

実家で使っていたちゃぶ台をアパートに持ち込んで使っていたが、がたつきがひどくなる。


家庭科室の三惑星

地学部の深沢君に頼まれて瀬戸さんと穂乃花は地学部の補助部員になるが ……


興味も知識も考え方も違う3人の集まりだけど、いっしょに行動することに意味があるのかも。


人との出会いが、次への一歩となる、希望のみえる物語。

鎌倉の風景とマッチして、ステキな空間を作っていた。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐ 


透明な螺旋

東野圭吾 文藝春秋 2021年9月



 

 

シリーズ第十弾。最新長編。
今、明かされる「ガリレオの真実」。

房総沖で男性の銃殺遺体が見つかった。
失踪した恋人の行方をたどると、関係者として天才物理学者の名が浮上した。
警視庁の刑事・草薙は、横須賀の両親のもとで過ごす湯川学を訪ねる。

「愛する人を守ることは罪なのか」
ガリレオシリーズ最大の秘密が明かされる




東野圭吾さんの作品は、好きで、ずっと読んできたのだが、最近は、人気が高すぎて、しばらく、読むのを躊躇してた。


最後の作品「永遠の記憶」を読むにあたり、ガリレオシリーズで、「沈黙のパレード」「透明な螺旋」は読んでなかったので、この作品を手に取った。


サクサクと読めるのに、中身はしっかりしている。

湯川と草薙、内海との掛け合いもおもしろいところ。


今回は物理学的な要素はなかったような………


湯川は、事件の真相に迫った時、犯罪者に寄りそい説得する、その姿に、人情味を感じた。



母を介護していた湯川の姿に違う一面をみた思いだ。


そして、最後には、湯川の秘密が、あきらかに~



お気に入り度⭐⭐⭐⭐

今を春べと

奥田亜希子 双葉社 2025年10月



 

 

子どもと一緒に参加したかるた教室で、希海は初めてかるたの札を払う。空を切り裂くように飛んだ札。指先に満ちた新鮮なエネルギー……。
その記憶が強く刻まれた希海だが、「もうすぐ40歳になる」「暗記力に自信がない」「子どもがいるから」など、気づけば自分に言い訳ばかりして、競技かるたを始めることにためらっていた。かたや夫は、仕事と趣味の優先順位をつけようとするのだった。果たして希海が選びとった道とは?
今、自分の〈好き〉を手放そうとしている人すべてに捧げる物語。『ちはやふる』漫画家、末次由紀さん推薦!






百人一首、競技かるたのこと、詳しく書かれていて、そのおもしろさや奥深さ を知ることとなった。


息子郁登の付き添いで始めたかるた教室。

小学一年生になった郁登は、かるたより、サッカーに夢中になる。

そんななかで希海は、自分がかるたを続けたいと思うようになる。


まだ小さい小学生の子がいるのに、趣味を持つことは、いけないことなのか。


郁登のサッカー教室を 父親に任せている。郁登は、母親もいっしょに来て応援していてほしいのではないか?

家族との時間を大切 にした方がいいのではないか?


義理の妹の意見 が世間の一般的な考え方なのか?夫の勇介とも口論に。


希海は、どのような決断をしたのか。


 

趣味と家庭、どちらも大切にしたいと思う希海。その葛藤がていねいに描かれていた。


最後のエピローグ。

成長した郁登に、にんまり。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

もしもあなたが小説家だったら人生をどう描くか

森沢明夫 株式会社かんき出版 2026年7月


 

 

「あなたの人生は、一冊の小説です」

もしもあなたが小説家だったら、
自分という主人公にどんな物語を用意しますか?
どんな出会いをさせ、どんな試練を与え、どんな結末へ導きますか?

◇    ◇    ◇

本書は、『虹の岬の喫茶店』『夏美のホタル』など
数々の感動作を生み出してきたベストセラー作家・森沢明夫が、
「人生を物語のようにおもしろくする方法」を綴った一冊です。

「生きにくさは人生の取材をしている証拠」
「敵のいない主人公なんていない」
「人は長所で尊敬され、短所で愛される」
などなど、小説家ならではの視点で切り取る人生のあれこれ。

終始“人生をハッピーエンドに導くには?”を追求する姿勢は
多くの人の心を揺さぶる森沢作品に通じています。

物語が好きな人はもちろん、
要所にちりばめられた技法は
小説創作のヒントになることまちがいなし。

人生論としても、創作論としても楽しめます!



目次】
Part1.取材の章 ここは80億人の主人公がいる世界
Part2.設定の章 キャラクターの魅力を育てる
Part3.設計の章 おもしろい小説は「不幸」から始まる
Part4.執筆の章 出会いが物語を動かす
Part5.推敲の章 結末は書き変えられる




森沢明夫著のこの作品も新着図書にあったので借りてみた。



目次を見ただけで、内容が気になる。

小説を書くかたちで人生をどう生きるかが、描かれている。


特に目新しいことはないけれど、わかりやすくていねいな言葉は、心に響く。

人生論として、心に残る言葉が、たくさんあった。


この年になり、私の人生なんて普通(?)でおもしろくない。と思ったけど、小さな失敗や挫折はたくさんあった。今でこそ、「小さい」と表現できるが、その時は真剣に悩んだ。苦しみを乗り越えた今がある。

それを小説にできるかもしれない。


作者が言いたいのは、これからの人生をどう描くかということ。


〈年齢にかかわらず人は変われる〉

悔いの残らない人生を送りたいと思う。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

天空遊園地まほろば

時を結ぶ花々

浜口倫太郎 ポプラ社 2026年8月



 

 

ようこそ、天空遊園地 まほろばへ。
わたくし当園の案内人、シチカと申します。
ここは、もう二度と会えない、あなたの大切な人と「再会」できる場所。
入園される際に、一つご注意を。
当園では泣くことが禁止されております。
もし泣くと、あなたの大切なものが失われます。
くれぐれもお気をつけください……。

妻を亡くし、花形部署から退いたテレビマン。
親友の異変に気づけなかったことを悔やむ看護師。
将来の夢を見つけるきっかけになった恩師に会いたいと願う男子中学生。
連絡が途絶えて20年経つ文通相手を想い続けるフランス人女性。
大切な存在との「再会」を通して、
残された人々が自分の心と向き合い、未来へ歩み出す姿を描く、
好評シリーズ第2弾!




新着図書の中にあったので借りてみた。

第二弾とあるから、一作目があるのだろうが読んでない。

でも短編集なので問題ないようだ。


記念日のスケートリンク

妻の由香里を亡くし、四歳のひなたを育てる佐伯陸。由香里がいるときは、家庭を顧みず仕事 づけの毎日を送っていた。

由香里とスケートリンクで会う。



ヒーローの急流すべり

友だち結衣の異変に気づかなったことを苦に、ひきこもりになった看護師の橘真帆。

結衣と急流すべりで会う。


宇宙への観覧車

一流大学付属の中高一貫校に通う高橋悠。親の会社の経営状態がよくないので、修学旅行をキャンセルしようとする。

去年担任で、学校をやめた相馬先生と観覧車で会う。


ペンフレンドのフラワーガーデン

フランスに住む日本語教師ソフィーローランは、 日本に旅行に行く。

以前、文通していた水城桜とフラワーガーデンで会う。



亡くなった大切な人と、少しの時間だけど、再会することで、気づきがあり、明日 への希望が生まれるという温かい話だった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐

ファイア-ドーム

辻村深月 小学館 2026年6月



 


人はなぜ大きな事件に魅了されてしまうのか

噂は、軽薄な娯楽だ。

25年前、平穏だったはずの地方都市は、百貨店受付嬢誘拐殺人事件の発生、その報道により揺り動かされ、「噂」という大量の炎が、加害者のみならず被害者にも降り注ぎ、燃えさかった。ようやく静けさを取り戻したかに見える町に燻り続ける因縁が、いま新たな事件を呼び起こす――。
「もう言われてるよ! どうせ、親が殺したんだろうって!」――本文より



 

 

お前の家は、人殺しだ。

真実を知っても、人は忘れていく。

25年前の夏、この町には炎が降り注いだ。百貨店受付嬢誘拐殺人事件という、身近で突然起こった全国レベルのニュースを、誰もがいつまでも終わらせたくなかった。傷ついた人をさらに傷つけてしまった土地に、事件の火の粉は、まだ残っている。夏の日、写生遠足の帰りに姿を消した少年は無事に帰ってくるのか? 25年前の事件には、「まだ明かされていない」事実が本当にあるのか?

「病気なんかで、死ねると思うな」――本文より






大作を読んだなあというのが今の感想。


無責任な噂のこわさを感じる。


25年前に小さな町で起きた大きな事件。

自分の知っている土地 で起きたことに興奮する。

どこからきたかもわからないうわさを信じ、広めてしまう。

今ほどSNSなどのネット環境はない中でも、うわさがひとり歩きしてしまう。


加害者、被害者の家族のことを思うと胸が締め付けられる思いだ。


そんな時を経て、25年後。

ひっそり暮らしていた被害者家族が、再び事件に巻き込まれてしまう。

なんということだろう。


小学校教師、

何も起きなかったら、普通の行動なのに、行方不明になる前の最後に生徒に会ったということで、非難を受け、ネット上で責められる場面は、息苦しさを覚えた。

自分には関係ない立場で、勝手な発言が恐ろしい。

また、悪意はなくても、知らずのうちに、個人情報など、聞かれたら、簡単に話してしまうこともあるのだと感じた。



下巻に入り、事件の真相が あきらかに ~





事件を正確に伝え、誰も傷つかない記事を書こうとする新聞記者の真摯な姿がよかった。


それぞれが、悲しみや苦しみを抱えつつも、前を向こうとしているラストに、明るいきざしを感じた。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐



杉森くんを殺すには

長谷川まりる くもん出版 2023年9月



 

 

―「杉森くんを殺すことにしたの」
高校1年生のヒロは、一大決心をして兄のミトさんに電話をかけた。ヒロは友人の杉森くんを殺すことにしたのだ。そんなヒロにミトさんは「今のうちにやりのこしたことをやっておくこと、裁判所で理由を話すために、どうして杉森くんを殺すことにしたのか、きちんと言葉にしておくこと」という2つの助言をする。具体的な助言に納得したヒロは、ミトさんからのアドバイスをあますことなく実践していくことにするが……。

傷ついた心を、取りもどす物語





「杉森くんを殺すことにしたの」

と物騒な電話から始まる。


杉森くんとは、どんな子だろう?

なぜ殺したいのだろう?

と思って読み始めたが……


高校生のヒロから電話を受けた兄のミトさんは、ヒロに、

「今のうちにやりのこしたことをやっておくこと、裁判所で理由を話すために、どうして杉森くんを殺すことにしたのか、きちんと言葉にしておくこと」と助言する。



ヒロは、やりたいことを行動に移す。同級生の良子さんを誘い、 いっしょにやりたいことをしていく。

また、杉森くんを殺す理由を書いていく。


ヒロは、良子さん、矢口くん、野﨑くんらと過ごすうち、自分の気持ちと向き合い、後悔や悲しみと 向き合う。


心が壊れてしまったヒロに、相談できる兄がいたこと、良子さんという 友だちができたことがヒロを孤立させずにすんだのだと思う。


 題名から想像できるような内容ではなく、とても深い話だった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

魂婚心中

芦沢央 早川書房 2024年6月



 

 

もしも死後結婚のマッチングアプリがあったら? ベストセラー作家が贈るSFミステリ傑作集 死後結婚用マッチングアプリ「KonKon」が普及した社会で、推しのアイドルの秘密のKonKonアカウントを見つけてしまい感情爆発した社会人女性がとんでもない凶行へと驀進してしまう表題作のほか、この現実とちょっとだけ異なる世界の謎と関係性の物語、全六篇!



魂婚心中

未婚のまま死んだ人の来世での幸せを願うための死後結婚。マッチングアプリも開発される。

私は、押しの浅葱ちゃんに夢中になり、浅葱ちゃんと死後結婚したい願望を抱く。


マッチングアプリ、押しという ことを、空想の死後結婚と合わせて、物語を作ってしまうとは!


二十五万分の一

嘘をつくと消えてしまう。嘘をついて消えた人間は他の人の記憶からも消されて、最初からいなかったことになるから、疑問にすら思わない。

私は消えたくないから、ほとんどしゃべらないで過ごしていた。

そんな私が高校生の部活、 鉱物研究会で先輩に出会う。


私がついた最初で最後の嘘。

それは好きな人のことを思ってのこと……




この世界には間違いが 七つある

十畳ほどの部屋に五人がいる。

〈マスター〉が扉を開けると〈ゲーム〉が始まる。見られている間は、決して身動きしてはならない。

そんな部屋で殺人事件がおきる。


そういうことなのね。

この発想がおもしろい。


九月某日の誓い

三条家に奉公することになった操は、お嬢様の久美子さんの遊び相手をするようになった。

二人がいっしょにいたある時、危険が迫った時、助かったのは、ある能力を使ったからではないかという噂が流れる。


操と久美子。

お互いを思う気持ちに感動した。


他に「 ゲーマーの Glitch」「閻魔帳SEC」


最後にオチがあり楽しめたが、ゲームの話には入り込めなかった。


お気に入り度⭐⭐⭐


ひまわりと銃弾

麻宮好 小学館 2026年1月



 

 

関東大震災後の浅草。
太平洋戦争に向かいつつある世情。
それぞれ重い過去を背負って生きている冴子・ハジメ・卓三の三人は細々と演劇で口を糊している。
芸術芸能に対して、警察や軍部による検閲、大衆の冷たい視線がますます厳しくなる中、卓三が兵役に取られた上に、東京大空襲に巻き込まれるふたり。
戦後、奇跡的に生き残ったふたりは、卓三不在のまま、舞台の幕を上げられるのか?
そして、GHQの嫌がらせに、どう抗うのか?
感動の戦争小説。





矯正院を出たハジメは伯父からも、浮浪児になりかけたとき拾ってくれた堂島にも冷たくあしらわれる。

ハジメは、親切に声をかけてくれた牛飯屋で働き始める。そこに客と して来た卓三と知り合い、演劇を始める。富美、冴子が加わり、「 一三座」を作り、野球ネタをするが……


戦争の色が濃くなる。

世間からは、冷たい 目で見られ、検閲も厳しくなる。兵役にとられたり、慰問を迫られたりと演劇を続けることがむつかしくなる。


そんな中で、

「大事な我が家」だと「一三座」を守ろうとしたハジメの強い思いに心うたれる。

それぞれが重い過去を背負っていたからこそ、 この居場所を大切にしたかったのだと思う。


必ず戻ってこいというハジメから卓三への言葉。

卓三と倉田のキャッチボールの約束。

それは果たせるのか?

胸が熱くなった。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐⭐

さらば!店長がバカすぎて

早見和真 角川春樹事務所 2025年9月



 

 

カリスマ書店員・谷原京子は、長いスランプが続いていた。
そんな中、「おもしろい本の話と店長のグチを言い合える」唯一無二の元同僚・磯田さんの結婚式が行われた。
京子の心配をよそに、マイクを握りしめ、颯爽と燕尾服を脱ぎ捨てた山本店長が高らかに歌う――
その一週間後、磯田さんが京子を訪ねてきた。
「谷原さんにはこれからもちゃんと戦い続けてもらわないと困るんです、書店を守ってもらわなきゃ」という彼女の言葉に、京子は複雑な気持ちに駆られる。
ぶっ飛んだ店長や書店を取り巻く厳しい状況と日々闘いながらも、自らの人生と書店の未来を切り開いていこうとする京子だが……



「店長がバカすぎて」


「新!店長がバカすぎて」


に続く第三弾。


今までの登場人物たちに、新しい書店員も加わり、にぎやかな印象。

店長は、あいかわらず、はちゃめちゃに思える。


でも、幼稚園に絵本の読み聞かせに行ってたりして、良いところもある不思議な魅力の持ち主?


「問題。 」とコラボ。

十和ちゃんも登場してる。

武蔵野書店に来る子どもに対しての書店員の京子の接し方が、いいと思った。




京子は、武蔵野書店のこと、自分自身のこと、これからのことに悩みながら、答えを 出していく。


書店が減りつつある中、書店の意味についてのくだりは、よかった。

武蔵野書店は、なくならないでほしい。


アナグラムがいっぱい。

作者は、アナグラムのことも考えて、名前つけてるのか?


これまでと同じような話の展開もあったのに、気づかなかったなあ。


お気に入り度⭐⭐⭐⭐