清水杜氏彦 双葉社 2020年11月

 

 

1930年代のヨーロッパ。農家の娘モモは、中央政府の農業集団化政策や、大飢饉の発生によって故郷をあとにした。わずかな希望を持って都市に出るが、そこで待っていたのは、住民の相互監視と密告だった―。


過酷な人生。読むのもつらい。
でも、歴史の中で、こんな時代があったことを、忘れてはならないという意味でも、読む価値はある。

農家を
労働者たる「貧農」/中立的立場の「中農」/労働者の敵たる「富農」
という三つの階級にわける。

裕福でもないのに「富農」とされたモモ一家は、「貧農」たちから、憎まれるようになる。
憎まれるように青年同盟が、仕向けたのだ。
農業集団化に向けての卑怯なやり方。

姉は、密偵という罪をでっち上げられ捕まり、父は、匿ったという罪で捕らえられる。
弟は、飢饉のため、なくなる。
故郷に誰もいなくなったモモは、故郷の村を離れる。

食べるものを求めての毎日。
盗みをしないと生きられない生活。

その先に待っていたのは、隠れた敵を見つけて密告する役割を負う任務だった。
密告された人は、人民の敵として排除される。

食べるものがないということは、もちろん生死に関わることだけど、
それ以上に精神的につらかったのではないか。
モモに与えられた仕事は、心を無にしなければ、生きていけなかったのではないないかと思う。


モモは、弟に似た少年ユーリに一緒に来ると声をかけたり、なけなしの食糧を老いた女に分け与えていた青年グラヴを匿ったり・・・・・・・・
ひとりではないことが、モモの気持ちを和らげていたように思う。



モモの逃亡は、いつまで続くのだろう?
ただただ、痛い話の連続だった。

お気に入り度★★★★★
監督 ジェームズ・L・ブルックス
出演 ジャック・ニコルソン, ヘレン・ハント, グレッグ・キニア, キューバ・グッディングJr.
1997年

 

 

甘い恋愛小説で暮らしを立てているが、毒舌家で潔癖性。
そんな中年男のメルビンが、カフェで働くシングル・マザーのキャロルに恋をした。
想いは募る一方なのに、口を開けば暴言ばかり。
果たして偏屈な恋愛小説家にハッピー・エンドは来るのだろうか。



手を洗うごとに石鹸をかえているし、外食の時、使い捨てのナイフとフォークを持参している。
となりの住民の犬の扱い方は煩雑だし、カフェの席を自分の席だからあけるように言ったり・・・・・・・・

序盤のメルビンの様子から、毒舌家で潔癖症なのがわかる。
いやな奴としか言いようがない。

そんなメルビンが恋をする。
相手は、カフェのキャロル。
しかし、気持ちをうまく伝えられない。

その様子は、不器用で、恋を知らない少年のようでもあり、可愛いらしくもあつた。



ゲイの画家との関わりも、なかなか面白く、彼は彼でいろいろあったが、最後には、前向きになれたことよかったと思う。。

お気に入り度★★★★

監督  ボアズ・イェーキン
出演 ジェイソン・ステイサム, キャサリン・チェン, ロバート・ジョン・バーク, レジー・リー
  • 2012年


ニューヨーク。元市警の特命刑事だったルーク・ライトは、今はマイナーな総合格闘技のファイターにまで落ちぶれていた。
八百長試合で誤って相手をKOしてしまった彼は、その試合で大損害を被ったロシアン・マフィアに妻を惨殺されてしまう。
すべてを失いホームレスとなったルークは地下鉄のホームで飛び込み自殺をしようと立っていた時、
一人のおびえた少女が、妻を殺したロシア人の一団に追われているのを目撃する。
彼は追っ手を倒し、少女を救うが、今度は市警の汚職警官グループやチャイニーズ・マフィアまでもが、少女を必死に追ってくる。
その中国人少女メイは、一度覚えた数字を絶対に忘れない天才で、チャイニーズ・マフィアがある暗証番号を覚させていた。
やがてメイが記憶している暗証番号の秘密が明らかになり、少女を巡る争奪戦の裏に
ニューヨーク市長までをも巻き込んだ巨大な陰謀が浮かび上がる。
すべてを知ったルークは、メイの安全を守るため、三派の悪の組織を叩き潰すべく行動を開始する…。



ロシアン・マフィアとチャイニーズ・マフィアの抗争。
そこに汚職警察官が加わり・・・・・・・・

この三つの悪組織と対峙するのが、元市警のルークなのだ。

暗証番号を記憶させた少女メイを守るために、悪と立ち向かうルーク。
ルーク、強かった!

アクションを楽しむ映画。

お気に入り度★★★
伊予原新 新潮社 2020年10月

 

 

不愛想で手際が悪い―。コンビニのベトナム人店員グエンが、就活連敗中の理系大学生、堀川に見せた驚きの真の姿。(『八月の銀の雪』)。子育てに自信をもてないシングルマザーが、博物館勤めの女性に聞いた深海の話。深い海の底で泳ぐ鯨に想いを馳せて…。(『海へ還る日』)。原発の下請け会社を辞め、心赴くまま一人旅をしていた辰朗は、茨城の海岸で凧揚げをする初老の男に出会う。男の父親が太平洋戦争で果たした役目とは。(『十万年の西風』)。科学の揺るぎない真実が、人知れず傷ついた心に希望の灯りをともす全5篇。



月まで三キロ 同じような感じの作品。

八月の銀の雪』『海へ還る日』『十万年の西風』は紹介文があるので略。

アルノーと檸檬』
住宅会社に勤める正樹は、立ち退きを要請している寿美江の家のベランダに迷いこんできたハトについて調べる。

『瑠璃を拾う』
SNSのにあげた写真が、著作権侵害にあたるから削除してくださいというコメントがあり、その写真について調べていくうち、ある人物に思いあたる。




地球の核、クジラの生態、伝書鳩、珪藻、気流・・・・・・・・

私たちには、あまり知られていない自然科学の世界を解くなかで、
人は、見かけで判断してはダメとか、故郷に帰ることを忘れないとか、さまざまなことを気づかせてくれる。

今、迷っている人達は、自然の営みから得るものがあり、それらを研究している人達と関わることで、一歩前に進むことができる。
そんな希望の持てる物語だった。



お気に入り度★★★★★
監督 モルテン・ティルドゥム
出演
ジェニファー・ローレンス
クリス・プラット
マイケル・シーン
ローレンス・フィッシュバーン
ノリス船長:アンディ・ガルシア

 

 

20XX年、新たなる居住地を目指し、5,000人を乗せた豪華宇宙船アヴァロン号が地球を後にした。
目的地の惑星到着まで120年。冬眠装置で眠る乗客の中でなぜか2人の男女だけが90年も早く目覚めてしまう。
地球では出会うはずもなかった、エンジニアのジム(クリス・プラット)と作家のオーロラ(ジェニファー・ローレンス)はまるで孤島のような宇宙船の中で激しい恋に落ちる。
絶望的状況の中でお互いを求め合い、愛し合い、なんとか生きる術を見つけようとするが、予期せぬ出来事が2人の運命を狂わせていく


ジムは、冬眠装置の故障で目覚めてしまうが、目覚めたのは、自分ひとりであることに気づく。
話し相手は、ロボットのバーテンダーのアーサーのみ?
ジムは、ひとりだけで生活を送っていたが、冬眠装置で眠る美しいオーロラのことが気になり、悩んだ末、機械を操作して、彼女を目覚めさせる。

ジムとオーロラは、恋に落ち、ふたりだけの生活を謳歌するが・・・・・・・・

ふたりだけ。
そこで恋に落ちるのは、自然な成り行き!?
しかし、アーサーのある言葉で、険悪な状態に・・・・・・・・
オーロラの気持ちは、よくわかる。

ところが、大きな事故が、ふたりを襲う。
今までの恋愛から一転、アクションものに・・・・・・・・

このようなアクシデントが起きても、ジムだからこそ、切り抜けられたのではないか。

そう思うとジムが目覚めたのは、故障ではなく、故意?
考えすぎか?

お気に入り度★★★★

西崎憲 角川書店 2020年10月


 

 

ぼくはたぶんゲームに向かってパスをだす。なぜならこれはぼくのゲームだからだ。大学受験に失敗し、浪人をしながらアルバイトを転々として暮らしている松永おん。かつて双子の弟がいたことから、自分は半分だけの存在だという意識を持って生きている。ある日、おんは高校時代の友人に誘われ、はじめてフットサルをする。それはおんにとって「まったく新しいなにか」だった。新時代の青春小説。


松永おんは、浪人生で、ひとり暮らし。
特に何かになりたいというわけではなく、大学に行った方がいいという漠然とした理由で大学をめざしている。
受験勉強に一生懸命というわけでもなく、アルバイト先では、おばちゃんたちにうんざりしながら働いている。

高校の友人に誘われてフットサルを始めたり、読書会に参加したり・・・・・・・・



おんは、考える。

自分は、自ら進んで何かをしようとはしない。
人に影響を与えるような人間ではない。

自分にできることはなんだろう。

特別なものはなにもない。
フットサルのけり方や受け方を知ったとしても、
それも誰にでもできること・・・・・・・・



特別な何かが必要なわけではないのではないのだと思う。
人にとって無駄に思えることでも、その人本人に価値があることなら、それでいいのではないか。

まだ、将来が決まったわけではない不安定な状態だけど、
おんが、今、フットサルが必要だと思えるなら、
それは、とても大事なことに思えた。

お気に入り度★★★★
監督 金子修介
出演
田野優花(AKB48)
石橋杏奈
白洲迅
中尾明慶
落合モトキ
加藤諒
木下隆行
大倉孝二
渡辺徹
浅田美代子
西村まさ彦

 

 

両親の離婚危機に直面した大学生の美唯。
2017年の現代から1991年バブル崩壊直後にタイムスリップしてしまった彼女は、
そこで若き日の両親と出会い、二人の恋を成就させるべく、
何とその時代にAKB48の楽曲を持ち込んで、アイドル・グループASG16を母親たちと結成した!



バック・トゥ・ザ・フュチャー」と「アラジンと魔法のランプ」を合わせたような映画。

バブル期にタイムスリップしてしまった美唯は、両親の仲を取り持つため、アイドルグループを結成する。
自分の若い頃のお母さんといっしょにグループを組んでAKBを真似て歌い踊る美唯らの姿があった。

お父さん、この頃、いい男だったのね。

お気に入り度★★★

坂上泉 文藝春秋 2020年8月




昭和29年、大阪城付近で政治家秘書が頭を麻袋で覆われた刺殺体となって見つかる。大阪市警視庁が騒然とするなか、若手の新城は初めての殺人事件捜査に意気込むが、上層部の思惑により国警から派遣された警察官僚の守屋と組みはめに。帝大卒のエリートなのに聞き込みもできない守屋に、中卒叩き上げの新城は厄介者を押し付けられたと苛立ちを募らせるが―。はぐれ者バディVS猟奇殺人犯、戦後大阪の「闇」を圧倒的リアリティで描き切る傑作長編


地元警察の新城は、警察官僚の守屋と組んで捜査するが、守屋の高飛車な態度にイライラする。
このふたりが組んでの捜査がどのように進んでいくのか?

章の最初に語られる俺の人生。
幼なじみの幸三と共に満州へ渡り、村の建設と作物の作付けを始める。
俺は、どんな人生を送るのか?

連続殺人の犯人の目的は?


捜査が進むうち、
新城は、雑談の中から事情を引き出すのがうまいと、守屋かわかり、
守屋は、警察がどうあるべきか、考えたうえでスジ通す人と、新城がわかる。
お互いを認めるところがよかった。
今になってみれば、いいコンビだったといえよう。

戦後の大阪の闇をあぶり出した物語で読み応えがあった。

お気に入り度★★★★★
監督 サリム・アキル
出演 ホイットニー・ヒューストン、ジョーダン・スパークス カルメン・エジョーゴ  ティカ・サンプター 
2012年


ホイットニー・ヒューストン最後の主演作!1960年代、モータウン全盛時代のニューヨーク。スターを夢見るシスター、ドロレス、スパークルの仲良し3姉妹は、母エマの心配をよそに、成功への階段を順調に上り始めていた。だが、予期せぬ事件から3人は解散に追い込まれていく。そんな中、才能を内に秘めていたスパークルは、母エマの後押しを支えに、1人のシンガーとして舞台に立つことを決意する…。


歌が最高によかった。

三人姉妹の長女シスターがセクシーで、センターで歌っていたから、彼女が主役かと思ったけど、
映画の題名がスパークルだもの。スパークルが主役。

スパークルは、最初は、シスターのバッグで歌っていた。
歌は好きだけど、裏方でいいと思っていた。
でも、控えめだけど、曲作りもするし、歌唱力もある。
ラスト、自信を持って歌う姿は、輝いていた。

ホイットニー・ヒューストンは、母親役。
保守的な考えだけど、娘を心配する母親を好演していた。

お気に入り度★★★★
三上延 メディアワークス文庫 2020年7月


ビブリア古書堂に舞い込んだ新たな相談事。それは、この世に存在していないはずの本―横溝正史の幻の作品が何者かに盗まれたという奇妙なものだった。どこか様子がおかしい女店主と訪れたのは、元華族に連なる旧家の邸宅。老いた女主の死をきっかけに忽然と消えた古書。その謎に迫るうち、半世紀以上絡み合う一家の因縁が浮かび上がる。深まる疑念と迷宮入りする事件。ほどけなかった糸は、長い時を超え、やがて事の真相を紡ぎ始める―。


サブタイトルまで読まないと以前の事件手帖かと思った。

栞子に子ども扉子までいて、ずいぶん年月が経っている。
扉子は、栞子似で本好き。そして、推理も得意!?
とても素敵な女の子に成長していた。

扉子が祖母から、大輔の「マイブック」を見せてほしいと言う。

その「マイブック」に書かれているのは、横溝正史に関係した謎。
横溝正史は、有名な作家だけど、読んだことがない。
でも、彼にまつわる謎解き、面白かった。

そして、栞子と大輔の生活が垣間見えて、微笑ましい気持ちになった。

お気に入り度★★★★