総務省の「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)について、パブリックコメントを募集していたので、急遽、総務省へメールを送りました。



 「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」最終取りまとめ(案)について。

要旨
 1 フィルタリングの多様化のためにシステムの改善を
 2 ネット犯罪の対策については、経済対策を含めて総合的な観点から実施を
 3 現行法の中で捜査を強化し、新法の必要性を見極めよ
 4 児童ポルノ対策には第三者機関設置を
 5 人権教育とセットにした情報教育を
 6 新たな調査の必要性については評価する

本記

 「2.安心を実現する基本的枠組みの整備」に関して、1)青少年インターネット利用環境整備法(青少年ネット規制法)に基づくフィルタリングの普及促進と、違法情報対策の法制の在り方について考察を行う、2)国際連携推進のための枠組みの構築に向けた方向性を検討する、3)違法・有害情報対策を推進するための様々な連携の在り方ーの三点をあげている。

フィルタリングの多様化を推進

 携帯電話のウェブサービスに関して、依然として単一なフィルタリングしかない。小学1年生と高校3年生が同じフィルタリングサービスを利用している現状は、今後のウェブ利用やメディアリテラシーなどの観点から改善しなければならない。もっと年齢や発達段階、本人がおかれている社会的な状況などに応じたフィルタリングサービスの開発をしなければならない。そのためにも、EMAやI-ROIのような審査機関だけではなく、システムの改善をしなければならない。

ネット犯罪対策は総合的に対策を

 また、様々な連携というが、たとえば、インターネットのウェブサイトをきっかけに犯罪に走った例を見ると、経済不況の影響や不安定な雇用が背景にある事件も数多い。いわゆる「闇の職業安定所」をめぐる様々な事件は、大きな理由としては借金返済があげられる。このように考えると、ネット犯罪の対策は、単に情報をどのようにコントロールしていくか、表現の自由とは何か、といった総務省的な課題のみならず、経済問題や法律問題といった総合施策が必要になる。そうしなければ、犯罪の予備軍は温存されることになり、事件がネットを発端に起きるとしても、次々とかたちを変えて行くに過ぎない。

現行法の効果を見極る必要性

 インターネットと犯罪を考えるとき、新たに法整備が必要かどうかを検討しなければならない。しかし、多くの犯罪は現行法の範囲で防ぐことができるものが多い。または、現行の捜査態勢を強化すればよいものもある。新たな法整備をするとしても、現行法制がどのように機能し、機能しないのかを見極める必要がある。

児童ポルノ対策については第三者機関の設置を

 児童ポルノ対策については、民間の自主的取り組みとして、ブロッキングという手法がとられることが検討されている。このことは、実在する子どものポルノをインターネットで拡大させないという理念のもとで行われるために、一定、評価できる。しかし、ブロッキングされたデータが、真に「児童ポルノ」だったのかどうかをチェックする機関が必要ではないか。あるいは、データをブロッキングされたことを不当に思うユーザーからの苦情を処理する機関が必要であろう。

人権教育とセットにした情報教育を

 利用者教育という点では、初期段階で情報モラル教育やメディアリテラシー教育が必要である。しかし、いじめ、いやがらせ、誹謗中傷については、情報モラルやメディアリテラシーを理解した上でなされることが想定される。つまり、モラルがなくリテラシーもないために、結果としていじめやいやがらせ、誹謗中傷になるケースは、教育で防止できる。しかし、意図的になされた場合は、それ自体を止めることは困難になる。そのため学校教育を利用するにあたっては、単なる「安心・安全」という枠組みではなく、いじめ防止対策、人権教育とセットで行われなければ効果を発揮しないと思われる。

新たな調査の必要性については評価する

 新たな調査の必要性についてだが、「有害情報については、そもそも当該情報を有害とみなす判断の根拠が人により様々なであり、被害の程度を客観的に計測すること自体が困難であるほか、それがインターネット上で流通したことがもたらす影響についても、情報の内容や流通の態様により大きく異なることから、個別の事案に応じたきめ細かな調査・分析が求められる」「ネット利用増大の結果としてしばしば用いられる犯罪率の増加自体についても、科学的な検証が必要である。インターネットを活用した社会活動が増加しているなかで、当該活動全般の増加率よりも明らかに急速なペースでインターネットを利用した犯罪やインターネット上の情報流通による被害が増大しているであればともかく、そうではない場合にまで、犯罪の増加等の社会問題の原因を安易にインターネットに求めることについては、慎重に考えるべきである」としている点は評価できるものとする。



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