こども家庭庁の委託事業「こどもの自殺の多角的な要因分析に関する調査研究報告書」について、(1)と(2)で取り上げなていない部分について。

 

 まず、文科省の問題行動・不登校等調査では、児童生徒の自殺について「自殺した児童生徒が置かれていた状況(国公私立)」の項目がある。そこでは毎年約6割が「不明」になっている。この点について、以下のように触れている。

 

 

 

 収集した資料では31%が「原因動機」が不明とされている。そもそも、基本調査は「原因・動機」を直接的に聞いていないはず。仮に、「自殺した児童生徒が置かれていた状況(国公私立)」を「原因・動機」にしたとしても、収集した資料での31%と、全体の約6割との数値が合わない。これをどう考えるのか。「不明」だからこそ、学校や学校設置者が資料提供を協力しなかったと言えるのかもしれない。学校が作成する基本調査だが、初期段階で「原因・動機」が明確にならないことがわかり、収集した資料でも、「原因・動機」についての記載がないのは58%だったことを考えると、全体の9割が言及がない。これは基本調査の性格上、仕方がない部分であり、これは批判することも難しい。

 

 そもそも基本調査は、統一フォーマットではなく、自由記述であるため、統計としてまとめること自体に無理がある。基本調査をどう読み解くのかについてが課題だが、以下のようにまとめとして書かれている。こうした見立てができるとしたら、基本調査を前提とした分析にどのくらい意味があるのか。もちろん、学校や学校設置者の初期認識を探るのなら、それなりの意味があるかもしれない。しかし、あくまでも、児童生徒が所属していた学校の主起き段階の認識である。こどもの自殺対策として、今後、具体的になにをしていけばよいのか、を前提とした場合は、意味が薄まるのだろう。

 

 にもかかわらず、以下のような「考察」になっている。

 

 たしかに、警察の自殺統計や救急搬送データだけでは把握できない部分は、基本調査ではわかり得る。しかし、詳細調査やCDRの資料が収集しきれていないため、どこまで有用かはこの段階では判断できない。また、実際に亡くなってしまったこどもと、ハイリスクと考えられることも(おそらくは自殺企図者、自殺未遂者、自傷行為を繰り返す人たち)とは必ずしも一致しない。この辺りはきちんと見極めなければならない。