東京都児童福祉審議会が「虐待を受けた子どもたちへのケア体制のあり方」を発表しました(参照サイト)。虐待を受けた子どもたちへの対応が不十分だという認識のもとに、充実策を発表しました。



 虐待を受けた子どもへのケア体制の概念としては、よく整理されたものだと思います。単なる体制の整備にとどまらず、人材確保の課題もふれられています。方向性についても、



1) 安全で安心できる家庭的な養育環境の提供



2) 早期のケア



3) 治療的養育の提供



4) 家庭の養育機能の回復と子どもの自立を見据えた支援



5) 子どもの生活を支える援助者のスキルアップ



 といったものを打ち出しています。提言の内容は、それなりに、現行法のもとではよくできているとは思います。



 ただ、現実問題として、虐待を受けた子どもをどのように認知するか、つまりどのように見つけていくのかといった面は触れていません。また、現行法では親権が強いために、そうした法的な課題についても述べられていないなど、多くの課題も残しています。



 どうしても私は、虐待を受けた子どもをどのように発見していくのかを気にしてしまいます。取材でもそうですが、子どもたちの中には、誰にも相談できていませんし、虐待を受けている状態が「普通」と思ってしまうこともあるのです。そうした子どもたちをどのように見つけていけばよいのでしょうか。

 

 見つけた場合、即、相談機関に通告すればよいのかどうかも迷います(現行法では、通告義務があります。児童福祉法第25条、児童虐待防止法第6条)。地域によっては、その親に手を出せない理由(政治的な理由、あるいは、風習的なもの)があったりします。手を出せない理由を知っている子どもたちもいます。下手に通告して、中途半端な対応がされてしまうと、かえって子どもたちの立場が不利になります。



 証拠も求められるでしょうが、確定的証拠といったものがあるケースは少ないかもしれません。グレーゾーンで生きている子どもたちが多くいます。こうした子どもたちの中には、自殺願望を抱いたり、自傷行為をしてしまうケースも多いでしょう。



 提言にあるようなケア体制が整備されたとして、その体制によってケアされる前の子どもたちをどのように見守っていくべきか、ともに悩んでいくべきか、ともに生きていくべきか。