さき「わあ、最終回だ。・・・この最初のコマ、雨降ってるんだよね?」
さき「やっぱり、一日戻ってるし、女の子いなくなってるし。バグ・・・この世界のほころびが修正されてる・・・ってこと? このびしょびしょのマフラーのコマだけ、別のコマと離れてるし」
ひろじ「そこまで見ますか」
さき「最後のページのたくさんの木は、ひょっとして、一本一本が人の意識・・・?」
ひろじ「・・・」
さき「普通は丸いフキダシが溶けちゃったみたいに落ちていくでしょ? これは貢の意識が溶けて落ちていくってこと?」
ひろじ「・・・よく、わかったね・・・」
さき「なんか、わかるの。最後のページ、すごい孤独感を感じるし」
ひろじ「この最後のページの絵が、この作品の答なんだ。この世界は貢がつくったものなのか、女の子がつくったものなのか、それとも神がつくったものなのか、それの答。ぼくが中高生のときに得た結論が最終ページ。でも、それを文章で描かずに、絵で示した。安易に文章にすると、ああそうなのね、みたいに、軽くなっちゃうから。この作品は、いいたいことを伝えるマンガじゃなくて、疑問の深さと苦悩を感じてもらうように構成したから。あえて、やすっぽい答を提示しないようにしたんだ」
さき「マフラーの絵が、それを、すごく、感じる。この世界は貢の世界で、女の子は幻だったのかなあ。でも、女の子の世界があって、そこでは貢が消えているのかも。もしかしたら、二人とも消えた世界があるのかも」
ひろじ「そんなふうに考えてもらえたのは嬉しいよ。そういう感想は、当時は誰からももらえなかったからね。前に書いたけど、どういう経緯か、とある新聞の文化コラムにこの作品が取り上げられて、<最近の大学生はマンガで考えるらしい>と批評された。でも、さきがいうみたいに、深く掘り下げた批評じゃなかったからね。なんかよくわからない、という感想だったかな」
さき「おもしろいよ、このマンガ! ねえ、この作品の続編があるんでしょ?
ひろじ「ああ、『存在への道標』という長編だよ。どういうわけか、ぼくが描いた作品の中で、一番人気があって、同人誌即売会に出したら、出した分が完売してしまった。もう、手元には2、3冊しか残っていない」
さき「それも、読みたい」
ひろじ「当時は中身より、それに登場する謎キャラが美形なんで、それで女子に人気が出たのかなと思っていたけど。さきの感想を聞くと、そうじゃなく、中身に共感してくれた人がけっこういたんじゃないかと思うようになったよ。当時、それに気がつけばよかったんだろうけど」
さき「それ、ちらっとだけ、見せて! (キャラの絵を見て)あ〜、これはキャラだけでも人気でるよ。もう好きって感じのキャラデザインだもん。この目!」
ひろじ「当時、読者にさきみたいな人がいてくれたらなあ・・・」
さき「でも、それも自信があったんでしょ?」
ひろじ「うん。いっしょに同人をしていた仲間からは、誰一人共感してもらえなかったし、失敗作だという人までいたんだけど、ぼくはすごく自信をもっていて、誰がなんといおうと、この作品は自分の最高傑作だ、と豪語していたかな。同人誌即売会で完売したので、それが裏付けられた形になって、仲間はみんな唖然としていたけど。まあ、ぼく自身も、なんでこんなに人気があったのか、わからなかったけどね」
さき「これはね、顔出ししていないディズムさんの自画像を、わたしの想像で勝手に描いたイメージイラストなの。本人から<いいね>もらったよ。ネットでは<捏造>って言葉を使うけど、捏造っていう本当の意味とは違って、勝手に描きましたっていうような意味の軽い言葉だよ」
ひろじ「捏造画と書くと、なんか重い感じになるけど、そういう意味じゃないんだ。ネット用語は難しいな」
さき「ディズムさんのTRPGは他の人とは違って、誰がプレイヤーになるかで、その人の個性が強く出て、違う感じになるのがいいの。名越さんが出てる別のTRPGもあるから、いっしょに見て」
ひろじ「(いっしょに見て)・・・なるほど、川犬さんのTRPGとはずいぶん違うね。スジナシに似た、即興芝居的な面が強い」
さき「芝居っていうより、その人の個性が強く出るのがいいんだよ」
ひろじ「ディズムさんのTRPGが好きなら、たぶんスジナシも面白く見られると思うけど、あれは動画サイトにはなかったような・・・それに、登場するアクターによっては、グダグダになっちゃうこともあるからねえ。すごく感動的な物語になることもあるし、ぐちゃぐちゃになることもある。そういう意味では、ディズムさんのTRPGは誰が来てもそれなりのエンディングを迎えることができるから、やっぱり即興芝居とは違うかな。ロールプレイという点では同じだけど」
さき「見てほしい動画がいっぱいあるんだよ」
ひろじ「オッケー、時間があるときに、いっしょに見ようかな」
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