とっぴ「あのさ、月の影響で潮汐が起こるっていうけど、海面って、月のある方へ盛り上がるかと思ったら、そうでもないよね」
ミオ「潮汐の理屈はニュートンが万有引力のことを発表した『プリンキピア』にも説明がある。ニュートンもいまとっぴのいったことには気がついていて、それについて書いているよ」
ミオ「本来は月のある方向とその逆の方向が満潮になるはずだけど、海の水が動くのに時間がかかるので、それから6時間くらい満潮になる時刻がずれるんだって」
しもん「ええと、たしか、ガリレオさんも潮汐のことを書いていたんじゃなかったですかね? でも、ぼくのメモでは、月のことは書いてなかったような」
ミオ「ガリレオは『天文対話』を本当は潮汐について、みたいなタイトルの本にしようと思っていたといわれるよ。それは間違いだから、ときの教皇がタイトルを変えるようにアドバイスしたって話があるくらいだ」
あかね「ええっ? 教皇って、ガリレオを宗教裁判にかけた人でしょ? そっちの人の方が正しかったってこと?」
ミオ「少なくとも潮汐の原因に関してはね。地動説にしたって、コペルニクスが初めてというわけでもないし」
さり「えーっ、そうなんですか?」
ミオ「ギリシャ時代には大地が丸いなんて研究者の間では常識で、地球の半径を測ったエラトステネスって人もいたし、地動説はアリスタルコスさんが主張している。じつはプトレマイオスの地球中心の天動説モデルのほうが後なんだ」
とっぴ「ええ〜っ!」
さり「昔の人の方が正しいことをいっていたんです?」
ミオ「そうなるね。そういうの、いっぱいあるよ。ちょっと、紹介しようか?」
一同「うん!」
ミオ「じゃあ、メモっぽくまとめておこうか。今回はちょっぴり紹介するだけでいい?」
潮汐の原因
・バビロニアのセレウコスは、月が地球の海に作用する引力について語り、ポセイドニオスは潮が地球のまわりを回る月と関係があることを指摘した。(紀元前2〜1世紀)
・ドイツのケプラーは、潮の干満の原因を月の影響とし、ガリレオが宗教裁判にかけられたときの教皇バルベリーニもまた、原因は月の影響と考えていた。しかし、ガリレオ・ガリレイは潮汐の原因は月でなく、地球の複雑な運動だと考えた。(16〜17世紀)
地動説
・中国の岐伯は、黄帝に、地球は宇宙の中を漂っている、といった。(紀元前26世紀)
・ギリシャのアリスタルコスは、地動説を唱え、月の大きさが地球の1/3であり、地球から月までの距離は地球半径の59倍と計算した。(紀元前3世紀)
・ポーランドのコペルニクスは、地球は太陽のまわりを回っていると主張した。(16世紀)
アフリカの雪山
・ギリシャのヘロドトスは、ナイル川の河川の源は融けた雪であるという説を紹介した。(紀元前5世紀)
・アフリカ探検で赤道に雲をいただいた山脈があることがわかったとき、王立地理学会の会員は赤道に雪があるはずはないと笑った。(19世紀)
美術
・スペインのアルタミラ、フランスのラスコーなどの洞窟にクロマニョン人が描いた動物画(1万年以上前)は、古代エジプト・バビロニア・ギリシャ人たちが描いた絵(数千年前)より写実的である。
隕石
・ギリシャ・アポロニアのディオゲネスは、流星は宇宙の中を移動し、しばしば地球に落ちてくる、といった。(紀元前5世紀)
・フランスのラヴォアジェは、空から石が降ってくることはありえない、なぜなら空には石がないから、といった。(18世紀)
蒸気機関
・ギリシャ・アレクサンドリアのヘロンは、蒸気エンジンを作った。(紀元前2世紀〜紀元後3世紀/生没年不詳)
・イギリスのニューコメンは、実用的な蒸気機関を発明し、ワットはそれを改良した。(18世紀)
あかね「どうして、こういう知識が失われちゃったのかしら」
ミオ「古代ギリシャ時代は理論的なことを追求する文明だったけど、ローマ時代はそれを実生活に応用する文明になったし、キリスト教を国教にしてからは、聖書の教えに合わない知識はどんどん失われていった。ギリシャ時代の知識は、いったん中近東に流れて、そこで発展し、ルネサンスの頃にヨーロッパに逆輸入された。コペルニクスやガリレオの時代はその後の話だからね」
あかね「じゃあ、2000年近く、科学は停滞していたってこと?」
ミオ「そうなるね。科学の時代は、みんなが思っている以上に歴史が短いんだ」
しもん「宗教のせいっていいきることもできませんね。キリスト教会が大きな影響を与えたのはヨーロッパ圏です。アジアの文化圏で科学が時間をかけて科学が発展してもよかったのに、うまくいってませんよね。古代の中国には羅針盤も火薬も、紙もあったのに」
さり「なんか、おもしろいです! ヨーロッパではその後、あっという間に科学が発展したんでしょ? どんな秘密があるんだろ」
ミオ「それは、おいおい見えてくると思うよ。今日はこのへんでね。ぼく、これからちょっとお仕事だから。じゃね、また、バイバ〜イ」
とっぴ「あっ、連れてってよ!」
さり「わたしも!」
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