さり「わたしも、やほーって挨拶、一度いってみたくて、です」
ひろじ「いやいや、別のSNSで書いた文章だよ。こっちもずいぶんご無沙汰だから、ちょっとまとめておこうと思って。ほら、前に載せたダ・ヴィンチとノアの洪水とか、火の起源と奇跡の石球とかでも、その記事を引用しただろ?」
しもん「ぼくも。とくにノアの洪水の話は、ぼくも興味があったので」
ひろじ「ああ、しもんくんはよく化石掘りしているもんね」
さり「それで、今回はどんな話なんです?」
ひろじ「そっちのSNSでは科学の話じゃないのもたくさん書いていたんだ。占いとか、民俗学とか、漢字とか占いとか・・・ここは科学の話題を中心に書いているからね。どうしようかと思って。とりあえず、きょうは、科学にちょっと関係する話にしようかな。娘のさきが赤ちゃんだったときの話なんだけど」
さり「あっ、面白そう! さきちゃんって、わたしたちと同い年なんでしょ?」
ひろじ「うん、さりちゃんたちの話を最初に描いた時は、さきとさりちゃんたちは同い年に設定したんだ。まあ、物語の世界の時の経ち方は、現実世界とはちょっと違うから、さきはもう中学生なんだけどね」
さり「わたしたちも本当なら、中学生なんですね。中学生、なってみたいな〜」
ひろじ「それは・・・うん、それはまだ、ナイショの話だから、やめておこう。この話、読んで見る?」
さり「ぜひぜひぜひ!」
ひろじ「じゃあ、どうぞ。こんな感じだよ。オクサンがさきを生んで間もない頃の話だ。読みやすくなるように、段落とか、一部変えたよ」
*** *** ***
生物学的見地
今奥方が子供を産んで入院中なのだが、奥方の姿が見えなくなったと思ったら途端にネコどもが甘える甘える・・・
彼らなりの力学があるらしい。
さて、入院二日目。仕事の関係で全日付き添えなかった。
奥方は手術直後の特別室からもとの個室に移動。(ぼくの時もそうだったが、どの病院でも手術直後は特別室に入れられるようだ)
奥方と付き添いの義母が浮かない顔をしているので聞いてみると、3時間置きに授乳する予定が、真夜中の2時半に授乳してから12時間、寝てばかりで飲もうとしないとのこと。
たしかに看護婦さんが来て授乳のテクニックを見せてくれるのだが、すぐに寝てしまう。
ふと、昔学んだ生物物理学の実験結果に思い当たって、暖かい個室の窓を開け、外の冷たい空気を入れてみた。
とたんに赤ん坊は眠りから覚め、泣き始める。
乳首に口を当てるとすぐ飲み始めた・・・が、すぐに口の動きが止まる。
やはり同様の生物物理学的理由で、赤ん坊を乳首からゆっくり引き離すようにしたところ、赤ん坊はあわててまた吸い始める。
生物学的理由、というのは、ゾウリムシなどの微生物実験の話。
栄養物の与え方と動物の行動の指向性にどのような関連があるかを調べた実験である。
栄養物の濃度に空間的な勾配をつける。(たとえばゾウリムシのいる場所から右へ行くほど濃度が濃くなるようにしておく)
期待されるのは、より美味しいもののある区域へ向かってゾウリムシが動き出すことだったのだが、有意な結果は得られなかったという。
つまり、ゾウリムシはより「美味しい」場所へ向かって動き出さない、ということ。
ではゾウリムシが動くのはどういうときか。
ゾウリムシのいる場所の栄養物濃度を下げると、今度は動き始めるのである。
普通の濃度の区域めざして。
つまり「飢餓から抜け出す」ために、生物は動き始めるのである。
部屋の温度を下げたのは、二つの理由から。
一つは自分の体温と着物などの境界物の温度が同じだと、自分と他者を生理的に区別することができないこと。
これは生物を生物たらしめている基本的概念なので、はずせない。
生物は(基本的に)環境と違う温度となることが基本なのである。(無生物は熱力学の法則に従い、最終的に環境と同じ温度、つまり熱平衡状態に達するが、生物はそうならない)
もう一つは広義の「飢餓」、つまり環境の悪化である。
周囲の温度が下がることで赤ちゃんの体は危険に晒される。
ゾウリムシの行動原理は他の動物にも適用できるはずなので、環境の悪化を肌で感じた赤ん坊は行動を起こすはずである。
いったん乳首に吸い付いた赤ん坊を引き離すのもそれ。
環境の悪化を感じた赤ん坊は、それを防ぐために再び乳を吸い始めたのだから面白い。
ビンゴ!
人間も、生物なんだねえ。
*** *** ***
ひろじ「いや・・・まあ、ぼくの知っている典型的な例がゾウリムシの例だったから・・・」
れん「ひろじさん、この記事書いた時、いろいろいわれませんでした?」
ひろじ「子供とゾウリムシを比べるなんて、とは、知人からいわれたけど・・・まあ、効果があったから、いいじゃない? オクサン、本当に困っていたからね」
さり「生き物は悪い環境から抜け出すために行動するって、なんだか、わかる気がしますです!」
かのん「まあ・・・それは、わたしもそう思うけどさ。いろんな生き物を観察してると、たしかにそんな気もするわ」
ひろじ「かのんちゃんは、生物大好きっ子だもんね」
かのん「うん。時間があれば、緑地とかに行って、いろんな生き物を見てるよ。飽きないんだよね〜」
れん「冷静に、科学的な考察をするなら、たしかにこの結果は興味深いわ。ゾウリムシって聞いて、ちょっと感情的になっちゃったけど」
ひろじ「ここに描いたルールはね、『生物物理』の分野の研究の話だよ。ぼくは、学生の頃、生物物理の研究室にいたんだ。ちょっと事情があって、実験ができる研究室にいたかったので、そこを選んだんだ。でも、生物物理についてはあまり熱心な学生じゃなくて、勝手に相対性理論とか量子力学の本ばかり勉強していたけど・・・」
しもん「生物物理っていうと、生物を物理的に研究するっていうことですか」
ひろじ「うん、だからこの文章のタイトルは<生物学的見地>より<生物物理学的見地>の方がよかったかも」
さり「わたし、科学じゃない話もしてほしいです。どんなことも、興味あるし・・・それに、どこかで、科学につながってる気もするし・・・」
ひろじ「そういわれれば、そうだね。漢字の話題から、科学に関する偽書の問題点をチェックする話(*)も書いたことがあるし。たしかに、何をやっても、科学の話題に繋がるのかもしれない」
さり「じゃ、また来ま〜すです!」
(*)太古代絵巻〜偽書と自然科学を御覧ください。
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