先日、NHKの『チコちゃんに怒られる』を見ていたら、カミナリがなぜぎざぎざになるかというテーマの話がありました。(ぼくのマンガ『さりと12のひみつ』第5話「カミナリのひみつ」では、このぎざぎざ問題については、割愛してあります)
そこで、NHKが誇る最新鋭のカメラでカミナリの映像を超高速度撮影するというシーンがあったのですが、普通のビデオカメラで撮ったのとあまりかわらない映像でした。
ぼくが『さりと12のひみつ』第5話で参考にしたのは、そのNHKの古い番組『ウルトラアイ』が放映した内容で、ずいぶん前に放送されたのですが、そちらの超高速度撮影では、落雷がどのようにして起こるかを、映像が捕らえていました。
冒頭のマンガシーンは、その映像をもとに描いたものです。
『ウルトラアイ』では、人体から「お迎え放電」と呼ばれる放電が生じている様子をカメラがきちんと捕らえていました。この映像は非常に貴重なので、ぼくも、毎年のように、電気の授業で番組の一部を見せています。
当時のカメラと現代のカメラでは性能が段違いのはずですが、結局、番組スタッフが科学に強いかどうかが、こういう映像では決定的な違いとなるのですね。
『ウルトラアイ』の映像はおそらくNHKの膨大なアーカイブの中にあるはずだと思います。うちのビデオで録画したものが残っていますから、家庭用のホームビデオが普及したあとに作られた番組です。当然、NHKにも映像が残っているはず。
『チコちゃん』のスタッフは、その存在自体を知らなかったのでしょうね。不勉強というか、とても残念なことだと思いました。せめて、NHKのスタッフは『ウルトラアイ』の映像のことを知っていてほしかったです。
カミナリがぎざぎざになるのは、絶縁体である空気中をカミナリが通るときに、通りやすいところをショートカットしているからですが、それを実証するための番組実験は「ちょっと違うかな〜」というものでした。
空気中に浮かんでいる金属イオン等を含んだ水滴の密度に応じて、通りやすい道ができて、進路がぎざぎざになる、との説明で、それはいいんですが・・・
金属イオンを含んだ水滴のかわりに、長い金属棒を空中に何本か置き、上からカミナリを地面まで通すという実験は、ちょっと違うんじゃないかな〜〜
マンガでも描いたとおり、カミナリは電場の強いところで空気がイオン化して電流が流れやすくなり、そこで小規模におきる放電がつながることで生じます。
金属棒を置けば、その先端部分の電場は強くなり、当然、カミナリはそこを通ることになるんですが・・・
空気中に浮かんでいる金属イオンを含んだ水滴を選んでカミナリが通るという実験をするなら、金属棒ではなく、金属球で行うべきでしょう。(金属棒は空中に3本程度置かれていましたが、金属球を使う場合、金属球はかなりたくさん用意して、空中に配置しないといけないでしょうが)
理論モデルをなぞった実験としては、非常に疑問の残る実験風景でした。
『チコちゃん』はぼくも大好きな番組で家族とよく見ていますが、理系のネタについては、『ウルトラアイ』やその前の『4つの目』のような徹底した取材がなされていないと、つねづね感じています。(一番それを感じたのは、夜空は何故暗いのかを扱った話で、あまりにも古い時代の説明だったのでびっくりしました)・・・もっとも、文系の分野の専門家から見ると、文系のネタについても、同様な印象があるのかもしれませんが・・・
まあ、娯楽番組なのだから、あまり目くじら立てずに楽しめばいい、というのが、番組を見るときの正しいスタンスなんでしょうね・・・
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