物理サークル2019.5.18報告 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 『さりと12のひみつ』第4話の製作と定期考査問題の作成(3種類!)が時期的に重なり、超タイトなスケジュールのまっただ中での物理サークル5月例会でした。

 

 行くかどうか、正直迷いましたが、えいやっと気合いを入れ、例会に行ってきました。(本当は、例会に行かずに作業をした方が、物理的には楽なのですが・・・でも、行ってよかったです。ネタもたくさんもらったし)

 

 例によって、会での発表を網羅するのではなく、ぼくのごく私的な記録になります。例会の詳細は、やがてアップされる愛知物理サークルのウェブサイトの例会報告をごらんください。

 

 冒頭の写真は、最初の発表、岐阜から参加の石川さんの装置。

 

 分子運動論を目で見る装置です。

 

 前回ぼくが持っていったゴム磁石を用いる実験と同じタイプの実験ですが、あのゴム磁石は今では入手しにくいので、石川さんのこちらの実験の方が作りやすいですね。

 

 分子モデルとして、ゴム磁石のかわりに手芸用のビーズを用いています。分子に運動エネルギーを与えるのは、変圧器の変動磁場の代わりに、スピーカーのコーンの振動を使います。スピーカーの振動数特性があるため、300ヘルツ前後の振動数の時、ビーズの動きがもっとも激しくなります。

 

 装置の構成は次のようになります。

 

 発振器→アンプ→スピーカー→ビーズの運動

 

 ビーズの運動エネルギーが足りないため、今のところ、浮力で浮かせられるのは、軽い物体に限られます。

 

 軽い水風船を膨らませたボールだと、簡単に浮きますが、普通の風船だと重くてだめとか。こちらは、ゴム磁石の実験に軍配が上がりますね。

 

 ゴム磁石の実験と、このビーズの実験を両方見せると、効果抜群だと思いました。

 

 重力の影響により、ビーズの密度が高さに応じて変化しているのがはっきりわかります。分子運動論により浮力が生じるメカニズムを、このモデルはかなり忠実に再現してくれます。以前、紹介したマッサージ機とBB弾(米粒)の装置では説明できなかった部分ですね。

 

 石川さんがもう1セット持ってきていて、欲しい人にあげるというので、まっさきに手を上げました。今年の授業で使えます。

 

 このあと、前回の先進科学塾で使った装置の「お蔵だし」があり、みんな群がりました。このときに使った装置とその実験のあらましについては、先進科学塾の報告記事(下記、関連記事リンクを参照)に書いておきましたので、そちらをご覧ください。

 

 

 こちらはぼくの発表。

 

 「web日本評論」に連載中のマンガ『さりと12のひみつ』第2話「鏡の国のひみつ」に関係した話題を話しました。

 

 物理学の「パリティ」に関わる理論の話です。

 

 たまたま、最近出版された江沢洋先生の『物理の見方・考え方』の冒頭の章で、次のような提言がありました。

 

 「これまで、電磁現象がパリティ対称性を破っているなどと言った人はいない。なぜか?」

 

 これに対する「返歌」として、今回、発表しました。

 

 いつもなら、自分の発表の写真は撮れないのですが、今回は、そのとき議論した黒板が残っていましたので、画像だけ。

 

 発表の内容の詳細は、『さりと12のひみつ』第2話の次の解説記事で、触れたいと思っていますので、ここでは割愛します。少々、お待ちください。

 

 

 これは、林ヒロさんの静電気の発表。

 

 写真は、レンズクリーナー(キクチメガネ)のボトル。カチオン(陽イオン)スプレーです。

 

 

 ラップでくるんだスチロール板に、このカチオンスプレーを振りかけてティッシュで塗りつけ・・・

 

 

 手作りの静電メーター(赤LEDが光るとプラス、青LEDが光るとマイナス)で測ると・・・赤、つまり、プラスに帯電していることがわかります。

 

 最初はスプレーから出るときに帯電すると思ったのですが、そうではありませんでした。

 

 

 こちらは、成相さんから、気柱共鳴の問題提起。

 

 普通におんさを近づけて実験すると、最初の共鳴は4分の1波長よりほんの少し短い位置の水面で共鳴します。ずれた部分は気柱管の開口部より少し上になります。いわゆる、開口端補正ですね。

 

 ところが、この実験を共鳴箱つきの音叉でやると、結果が変わります。共鳴箱からは音叉と同じ振動数の音波が出ているので、気柱管の開口部に共鳴箱を近づけると、共鳴する水面の位置がさらにずれるのです。

 

 共鳴箱を管にぴったり近づけると、4分の1波長の水面のとき、音が大きくなるどころか、音がほとんど聞こえなくなります。

 

 これは、上の写真の実験と同じ。

 

 鳴らした音叉の共鳴箱に、おんさを外した共鳴箱を近づけると、音が消えます。

 

 箱の向きを変えると、効果は弱まるものの、やはり箱を近づけると音が弱くなります。

 

 

 石川さんいわく「これが本当の意味での共鳴だ」・・・一同、ぽか〜ん・・・

 

 2つの共鳴箱の間だけでエネルギーがやりとりされ、外部に漏れてこないので音が聞こえなくなるんですね。

 

 気柱共鳴では、気柱管がおんさを外した共鳴箱の役目をしていたわけです。

 

 石川さんによれば、音叉でなくスピーカーを共鳴箱にぴったりくっつくようにして共鳴実験をすると、水面がぴったり4分の1波長の位置で音が消えるとのこと。

 

 これこそが本来の共鳴現象なので、共鳴は音が消える位置で行うべきだとのお話でした。そうすると、いままで普通にやってきた音叉の共鳴実験や、開口端補正という話は、いったいどうなるのか・・・

 

 成相さんの素朴な疑問が、思わぬ展開につながり、一同、おお〜っとなりました。

 

 

 こちらは飯田さんの振動モーター。後ろにつけた針金を調整すると、軽やかに動きます。

 

 本体は電導消しゴム。消しゴムをいれる場所に、削った割り箸の破片を突っ込んで軸とし、それにダブルクリップを写真のようにずらしてはさんで、偏芯モーターとします。ブラシは、ホテルなどに置いてある使い捨てブラシ。頭だけ切り取って使っています。

 

 これ、子どもは大喜びします。小学生向けの理科遊びに最適では。

 

 

 

 こちらは、臼井師匠の高座「物理楽劇場」演目は、Maxwellの4つの方程式、前編。「物理楽」は「ぶつりらく」ではなく、「ぶつりがく」と呼んでください。

 

先輩「divD=ρのdivはベクトル微分演算子で、読み方はダイバージェンス、数学的意味は発散や」

後輩「MAXわかりません」

 師匠:このMAX(マックス)はMAXWELL(マクスウェル)にかけています。(以下、読み上げながら、逐一ダジャレの解説が入る)

先輩「そう言うと思った。じつは、わしが授業を受けたときもこんな感じやった。その気持ちをまずおまえに伝えたかった。伝わった?」

後輩「じゅうぶん伝わりました」

 

 ・・・てな前説からはじまり、師匠の爆笑高座が始まりました。ここで師匠の演目を全部披露したいところなのですが、一部だけのご紹介。

 

 ・・・うーん・・・たぶん、サークルウェブサイトの例会報告でも、この演目内容の公開はないだろうなあ・・・

 

 前編はdivD=ρがテーマでした。たぶん、あと3演目あると思われますので、次の高座を楽しみに待つこととします。

 

 高座の最後を、少しだけ紹介しておきます。

 

先輩「講義内容を1、2、3・・・と順序立てる。これが教育の美学だ」

後輩「でも警察は110で、消防は119ですよ。美学の順序に違反していますよね」

先輩「110、これはだなあ、『行(1)くぞ! 行(1)くぞ! 犯罪0を目指すぞ!』、119は『行(1)くぞ! 行(1)くぞ! 救(9)助しまくるぞ!』という意味の数字なんだよ。理解した?」

後輩「涙が出てきました。110、119はすばらしいお助け演算子だったのですね。ぼくにはまだまだ学ぶことがたくさんあるのですね」

先輩「共に学んで行こう行こうの物理楽・・・」

 

 ちゃん、ちゃん・・・おあとがよろしいようで・・・

 

 

 こちらは昔の印刷機で使った原紙の裏紙。導電性のある黒い紙です。これをこんなふうに切って定規に貼りつけ、テスターで抵抗値を測ります。なんなんだろう、これ・・・

 

 前田さん、あいかわらず、意表をつくものを持ってきますねえ・・・

 

 興味津々、見ていると・・・

 

 こんなふうに導体紙がのびるように曲げると、抵抗値が大きくなり・・・

 

 

 導体紙が縮むように曲げると、抵抗値が小さくなります。

 

 

 この性質は、そのままひずみ計に使われているとのこと。

 こちらが、その実物の写真です。

 

 

 たしかに、似たような形をした縞模様が見えますね。

 

 つぎは、東京の増子さんが開発した理科教材、多重スリットの実験結果を、井階さんがまとめたもの。

 

 

 上の画面が回折像で、下の写真がスリットの写真。

 スリットの数が多くなると、干渉模様が徐々に回折格子のそれに近づき、光点がシャープになっていくのがわかります。

 

 これがあると、言葉だけで説明するより、説得力がありますね。

 

 さっそく、職場に買ってもらおう・・・もう、販売されているかな?

 

 

 こちらは、銅線の軸にフェライト磁石をいくつかつけた回転子。電流を流すとくるくると勢いよく回りますが・・・

 

 えっ? 銅線? 半分だけ電流が流れるように被膜が必要では?

 

 それは直流の場合。

 

 画面にはありませんが、じつはこれ、交流電源につないでいます。

 

 つまり、交流モーター。

 

 だから、整流子などの工夫は必要なし。

 

 この日は、ここで紹介した倍くらいの発表がありましたが、ぼくがうまく写真に撮れたのはこれだけ。

 

 残りは、ウェブサイトにアップされたものをご覧ください。

 

 2月例会の記録がサークルのウェブサイトに掲載されましたので、リンクを貼っておきます。

 

 

関連記事

 

 

物理サークル2019.5.18報告補足〜静電気はむつかしい!

 

2019.9.28物理サークル報告 その1

愛知物理サークルウェブサイト2月例会記録(外部リンク)

 

理科実験お楽しみ広場2019.4.21報告 その1

理科実験お楽しみ広場2019.4.21報告 その2

 

サイトマップ2β 科学関連イベント報告まとめ

 

さりと12のひみつウェブ連載第2話

さりと12のひみつ第2話「鏡の国」の話 その1

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