理科実験お楽しみ広場2019.4.21報告 その2 | ひろじの物理ブログ ミオくんとなんでも科学探究隊

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 前回も書きましたが、飯田さんのレポートの関係で、ぼくもひととおりの実験を持っていった方がいいかなと思い、予定になかった実験発表をすることになりました。

 

 

 そもそもの始まりがわからないと、飯田さんのレポートもわかりにくいだろうなあと・・・思っていたのですが、飯田さんも思いは同じだったみたい。

 

 自分のレポートの直前に、ぼくの実験紹介を入れて欲しいとの要望を受けました。

 

 イラストのように、BB弾にマッサージ機で振動を与え、ピンポン球が浮かぶ実験は、もともと仮説実験授業で有名なあのIさんが発案した実験です。(ひょっとしたら、それ以前に、科教協で発表された実験だったのかもしれません。鈴久さんが物理サークルで紹介したお話はそれほど衝撃的でした。Iさんって、他人の研究をあたかも自分の研究のように語るというところでは、エジソンや、以前物理サークルにいたKさんによく似ているなあ・・・)

 

 ちょっと、話がわき道にずれたので、軌道修正(笑)・・・

 

 飯田さんの発表の前に、ぼくがかんたんな実験の経緯を紹介しました。

 

 BB弾や米粒を入れた容器内にピンポン球を沈め、容器をマッサージ機で振動させると、ピンポン球が浮かんできます。これを、分子が運動するために浮力が生まれるというモデル実験とすることが、よく行われていました。ぼくも、新任の頃から、あまり深く考えずに利用してきました。

 

 しかし、ある時期から、ちがうんじゃないかなと思うようになりました。

 

 それは、分子運動論モデルを自分で考え直したときに思いました。

 

 同じ温度なら、分子の熱運動の速さは同じです。とすると、水中の物体にぶつかってくる分子の衝撃が、物体の上面と下面で変わるはずはない、ということです。

 

 空気から受ける浮力を考える場合、それは目に見える形でわかります。空気分子の密度が、高さにより変化するんですね。

 

 したがって、物体の上面と下面にぶつかってくる水分子(空気中の場合は空気を構成する酸素分子や窒素分子など)の密度もちがい、それによって、物体の受ける衝撃の差ができて、上向きの浮力が生まれるというのが、正しいのではないか・・・

 

 さらに、これと並行して、『物理の散歩道』という本で、豆粒の動きのヒントを得ました。

 

 要するに、BB弾や米粒を振動させる実験装置で、ピンポン球が浮かんでくる仕組みは、浮力ではなく、もっとべつの仕組みである、ということです。

 

 これらのモデルでは、粒が物体にぶつかる衝撃より、粒と物体の間に働く摩擦力や抗力の方が影響が大きく働くのです。

 

 これは、『ブラジルナッツ効果』といわれるそうです。

 

 大きな粒子と小さな粒子が混ざっている状態で、振動が与えられると、大きな粒子と小さな粒子のあいだにあるスキマに小さな粒子が入りこみ、その結果、大きな粒子が浮かんでいくという現象です。

 

 そこで、本来の浮力モデルに近い実験として、『いきいき物理わくわく実験』に林ヒロさんが書いたゴム磁石による浮力モデル実験(冒頭のイラストの実験)を紹介したいなと思った次第。

 

 この実験、林ヒロさんが開発した当時は、誰にでも簡単に再現できました。(ぼくも、見よう見まねですぐに成功しました)

 

 ところが、今はそれが不可能。当時のゴム磁石は、表面がN極、裏面がS極といった具合に、ゴム板の面の表裏が単純な作りになっていました。これをハサミで細かく切れば、小さなNS磁石が大量に得られたのですね。

 

 でも、今売られているゴム磁石板は、鉄板への吸着力を高めるために非常に細かい縞模様状に、NSが交互に磁化されています。

 

 したがって、それをハサミで細かく切っても、NSの単極磁石にはならず、多極磁石になってしまうんですね。

 

 これをイラストの実験装置に使うと、変動磁場に対する反応が弱く、イラストのように飛び回りません。ぷるぷると震える程度です。

 

 これでは、実験になりませんね・・・

 

 ぼくの職場の自然科学部が、昨年の研究発表でこの実験が必要になり、顧問の先生が理科教材業者に相談し、なんと、昔と同じ単純に磁化されたゴム磁石版を手に入れました。20センチ×30センチ程度で、3,000円くらいしたそうです。

 

 でも、それを使うと、イラストのようにうまく行きました。

 

 自然科学部はもうこの材料を使わないので、必要な人にさしあげてくださいと、顧問の先生から材料を渡されていたので、今日は欲しい方におわけしました。

 

 おっと、前置きが長くなりましたので、飯田さんのレポートに移ります。

 

 

 緑色の風船の中には、水が入っています。ばねばかりの読みは50グラム弱。これを水中に沈めたら、いくらになるか、という質問から始まりました。

 

 

 さて、どうでしょう。カメラで撮った映像を画面に映しましたが・・・正直、画面が揺れて見づらかったです(笑)・・・

 

 この状態で、ばねばかりは0グラム。大方の予想通りです。

 

 飯田さんは、さらに問いかけます。

 

「じゃあ、これをアズキ豆でやったら、同じ結果になるでしょうか。50グラムくらいのアズキをビニール袋に入れて、アズキ豆の入った容器に入れて、振動を与えます」

 

 

 さて、どうなるでしょうか?

 

 水風船の実験と同じなら、小豆の袋は、浮かんでこず、そのままの位置に止まります。

 

 実際の実験結果は・・・

 

 ・・・・

 

 ・・・・

 

 

 下から撮った画像でわかりにくいのですが、アズキ豆の海に沈めたアズキ豆袋が、浮かんでくる実験になりました。

 

 なんと、アズキ袋は、浮かんでくるんですね!

 

 この実験、マッサージ機の振動だと不規則なので、他の実験用に飯田さんが次作した強力な振動装置を使っています。装置の流用は、実験を重ねている人だけの強みですね。

 

 

 飯田さんが、そもそもこの実験をしたきっかけは・・・という説明があり、上のような画面が・・・

 

 『いきいき物理わくわく実験』に描いたイラスト(このブログ用に色をつけたものをダウンロードされたようです。うれしい)ですね。真ん中の「浮力の分だけ軽くなる」というところに「?」がつけてありますが、これは、ぼくがブログで付け加えたものです。

 

 「?」をつけたのは、そうなるとは思えなかったからですし、このブログでも実験結果を示しました。

 

 

 

 飯田さんの執念というか、ものすごいデータの集積。

 

 

 飯田さんいわく、「いろいろ調べて、結局、粉体は奥深い」・・・

 

 

 

 最後の画像が、飯田さんの現時点の結論。

 

 ぼくは(たぶんスギさんも)「粉体の運動による浮力効果」という一点に関しては、賛同しかねないでいます。

 

 

 

 同じく、飯田さんが紹介した光の3原色実験。以前、物理サークルで紹介したものです。

 

 光源は、LEDが直線的に並んだもの。最近流行の「LED蛍光灯」と似たタイプですかね。

 

 

 この方式だと、点光源に比べ、影の色が鮮やか。

 

 くわしくは、ぼくたちの本『いきいき物理わくわく実験』をご覧ください。

 

 

 こちらは新しい理科教材。1つのシートに、3つ窓、5つ窓、10窓のスリットが刻んであり、複数のスリットによる回折像が見えます。

 

 増子さんのアイディアで開発していたもの。完成したらしく、理科教材の会社から送られてきたそうです。

 

 スリットが増えると、回折格子の干渉縞に近づいていきます。

 

 

 ステレオカメラ・・・ステレオ用のメガネで直接液晶画面を見ることもできます。

 

 

 スギさんのガーナでの「いきわく実験」報告。

 

 上からのお達しでは、まさしく「いきわく」的な実験を推奨されている(最初の画面)のですが、現場の教師は、延々と講義するのが好きで、実験を生徒とやって楽しむ教師はスギさんだけだそうな。

 

 先生になるための学校で教えているので、こういう実験を体験することで、なにかしらの変化が生まれるといいですね。

 

 他にも、花粉管がのびる仕組みを研究した高校生のレポート紹介(紹介は伊藤政さん)や、簡単にできるマイクロビット(だったかな?)のプログラムの話など、いろいろありましたが、ぜんぶメモってないので、このほかの発表については、参加者の方から直接お聞きください。

 

 あ、そうそう、昼食を買いに行って戻ってきたときに乗ったエレベーターで、田中さんたちが体重計と手作りデジタル装置をつないで、エレベーター内での体重の変化を調べていました。たまたま、でくわして、その実験を見ることができて、ラッキーだったかな。

 

 

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