以前、段ボールで作る、放物面による音の集約装置「聞き耳くん」の記事を書きましたが、あの装置は、わりと公園などに設置されていて、子どもたちが理屈抜きで楽しめるようになっています。
ぼくの家の近くにもそういう公園があり、子どもと行くと必ずここで遊ぶのですが・・・
先日、子どもと2人で試してみたら、もうひとつ性能がよくありませんでした。
通常なら、小さな声でぼそぼそとしゃべっても、その音波が反対側のパラボラの焦点に集中して、きちんと聞こえるのです。
段ボールで作った手作り「聞き耳くん」でも、それができました。
ところが、この公園の「聞き耳くん」装置は、いつの間にか性能が落ちていました。
装置の原理は以前書いた記事「聞き耳くん」に詳しく書きましたが、要するに、ひとつのパラボラ(放物面)の焦点でささやいた声が平面波になり、もうひとつのパラボラで反射したあと、その焦点に集まるため、そこで聞いている人には、すぐ近くでささやかれたように聞こえるわけです。
はるか昔の話になりますが、懺悔の内容が懺悔室から離れた場所で聞こえるという「ささやきの回廊」事件が、とある教会で起きたことがあります。
これは、その回廊全体の構造が楕円形をしており、たまたま懺悔室がその焦点の位置に設置されてしまった事による事件といわれています。もう一つの焦点にささやき声が集まり、懺悔の内容が聞こえてしまったというわけです。
楕円には焦点が2つあり、やはり、焦点から出た波(音波に限りません。光波でも同じです)がもう一つの焦点に集まるのですね。こちらも、数学の人が作った実験装置のことを記事にしてあります。ご覧ください。
「聞き耳くん」の装置は、それを作為的に作った装置ですね。
図に書くと、パラボラで反射した音の斜線(進む様子を矢印で表した線)は、こうなります。
片方のパラボラの焦点から出た音は、いったんパラボラ面に垂直な方向に進む平面波となり、もう片方のパラボラに当たると、その焦点に集まる、という具合です。
段ボールで作る「聞き耳くん」の場合も、二つのパラボラの軸を一致させることが重要でした。逆に言えば、適当に作った段ボール性のパラボラでも、二つのパラボラの軸さえあっていれば、かなりよく機能するということです。
ところが、この公園では・・・
2つのパラボラをそれぞれ撮った写真ですが・・・
写真を並べてみると明かです。
パラボラ面の軸がずれていますね。
どちらも、軸が下の方を向いてしまっていますから、焦点から出た音波は、相手の焦点にうまく集まることができません。
これは、子どもたちがここで遊ぶとき、焦点を示す金属製の部品にぶら下がることがあるので、その重みでだんだんパラボラの向きが傾いていったためだと思われます。
直せるものならと覗いてみたのですが、ごついボルトナットで固定されているので、道具なしで直すことは無理でした。
施設によっては、このパラボラをコンクリートで作り付けにしているところもあります。これなら、パラボラ面がずれることもないですね。
せっかく、科学の知識を生かしたおもしろい遊具なんですから、ちゃんと機能するようにしてほしいものです。
できたら、簡単な説明パネルも欲しいところです。
聞き耳くんと楕円装置の記事は、最後の関連記事のところにリンクを貼ってありますので、興味のある方はそちらもご覧ください。
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