ノスタルジィの巨匠~ジョージ・ロイ・ヒル | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

ジョージ・ロイ・ヒル George Roy Hill 1922年12月20日~2002年12月27日

享年80

大好きな監督さんでした。

イェール大学出身で音楽を学び、

第二次大戦中はパイロットとして従軍した経歴があるという。

 

監督の名前で作品を観に行きたいと思わせてくれる監督でした。

同監督作品は好きな作品だらけですが、

まず最初にスクリーンで鑑賞したのは、

『明日に向かって撃て』(1969)でした。

 

アメリカン・ニューシネマにも分類される本作。

今までの西部劇とは全く違う雰囲気と“雨にぬれても”に代表されるお洒落な音楽。

青春ドラマの側面も持っていました。

セピア調の画面に回想シーンが挟まれていいなあ・・・と感じました。

『俺は泳げないんだ!』のシーンは今観ても爆笑ですね。

 

 

次に観たのが『スティング』(1973)だったかな。

マフィアに殺された師匠の復讐をするためにレッドフォードとニューマンが仕組んだコン・ゲーム。

この作品の鮮やかなどんでん返しは映画史に残りますね。

本作でも音楽が素敵で、

スコット・ジョップリンの『エンターテイナー』をベースにした劇中曲を聴くと、

脊髄反射的に本作を思い出します。

悪役ロネガンを演じたロバート・ショウの憎々しさも良かったですね。

 

音楽を勉強していたことが大きいのだと思いますが、

『モダン・ミリー』(1966)ではミュージカルでも力を見せた。

ありふれたボーイミーツガールの物語の中に、

カーチェイス・アクション・サスペンスの要素を詰め込んだ楽しい物語。

主演のジュリー・アンドリュースも楽しそうに演じていました。

 

 

SF映画にも光るものがありました。

『スローターハウス5』(1972)。

実業家として成功した老人が過去を回想する物語。

第二次大戦の捕虜収容所、飛行機事故の大惨事、

彼自身の暗殺など、ビリーの、時間と空間を超越した体験を幻想的に描いている。

時系列なんて完全に無視していて、

主人公が存在している世界が“今”なのです。

この不思議なタッチは後年の『ガープの世界』に引き継がれたような気がします。

痛快な娯楽作品もうまかった。

ポール・ニューマンを主演に迎えてのプロ・アイスホッケーを描いた物語、

『スラップ・ショット』(1977)も楽しかったな。

乱闘に抗議してストリップを始めるシーンが思い出されます。

この作品でも音楽のセンスが光りますね。

パイロット時代の郷愁が忘れられなかったのだろうか。

『華麗なるヒコーキ野郎』(1975)もよかったですね。

1920年代、

バーンストーマーと呼ばれる曲芸飛行をして生計を立てている男たちの大空に対するロマンを描いた本作。

第一次大戦中にドイツの撃墜王ケスラーと時を超えて一戦を交える主人公のペッパー(ロバート・レッドフォード)の熱い思いが伝わってきました。

 

 

そうかと思えば爽やかなラブ・ストーリーを感傷的なムードたっぷりで描いた、

『リトルロマンス』(1979)なんかも撮ったりした。

劇中映画として『明日に向かって撃て』や『スティング』を遊び心たっぷりで使用して、

映画ファンの心を掴むのが実にうまかった。

夕暮れまでに“ためいき橋”までたどり着けるのかというサスペンス描写もありながら、

とてもロマンティックなキスシーン。

ローレンス・オリビエの助演も楽しく、

私はダイアン・レインに恋しました。

 

 

そして不思議物語、

『ガープの世界』(1982)にも仰天した。

かわいい赤ちゃんのおちんちんがあんなに大アップで写されたオープニングシーンは後にも先にもありません。

このシーンにThe Beatlesの“When I'm Sixty Four”を使用するあたりにもセンスを感じましたね。

子供は欲しいけどそのための男女の煩わしい行為が嫌だったグレン・クローズが、

意識不明で瀕死状態なのに性器だけが勃起している兵士の上にまたがり作った子供ガープ。

そのガープにまつわる数奇な人生を描いた本作もとても面白かった。

レイプに抗議して舌を噛み切ってしまった女性たちとか性転換をしたフットボールの選手とか、

ガープの周りの人間たちが異様だけれど面白い。

 

残念ながら、

ダイアン・キートン主演のスパイアクション映画、

『リトル・ドラマー・ガール』(1984)が未見なのですよ。

舞台女優がパレスチナとイスラエルの争いに巻き込まれてスパイになっていくというストーリーを聞いただけで面白そうですよね。

いつか絶対に観ます!!(劇場は無理でしょうね)

 

どの作品もうれしく楽しく面白く。

そしていつもノスタルジィを感じさせてくれるジョージ・ロイ・ヒル監督。

今でも繰り返し観て、

映画の素晴らしさを教えてくれる監督です。