かつて観た作品を何かの衝動で再見したくなる時があります。
今回そんな気持ちになったのが、
1967年制作、マイク・ニコルズ監督の『卒業』。
ずいぶん久しぶりの鑑賞となったのですが、
思ってた印象とだいぶ変わっていてびっくりしました。
昔鑑賞した時は、
キラキラと陽光が反射する中、
プールにぷかぷかと浮かぶ主人公ベンの姿に青春の揺らめきを感じたものでした。
そこに、サイモンとガーファンクルの音楽が被るものですからとてもスタイリッシュにみえました。
そして今回の再見です。
当時は全体の雰囲気に流されて登場人物の一人一人に焦点が合っていなかったことを痛感しました。
なんとなく青春の憂鬱の影に押しつぶされた印象が強くて主人公ベンを身近に感じることができなかった。
でも、今回ベンの人間的な部分を改めて感じることができて、
メッセージ性よりももっと軽いコメディ寄りの人間ドラマとして楽しむことができました。
例えばベンがロビンソン夫人に誘惑されるシーン。
あそこは完全にコメディだったのですね。
ベンが童貞だったということを前提とした大人のコメディ。
昔はロビンソン夫人の貫禄と存在感と色気に圧倒されて、
ベンの気持ちを汲み取ることができなかったのだなあと思いました。
思えばベンの卒業パーティーのシーンで、
ベンが潜水服のような恰好をして登場するシーンも笑えるシーンだったんだ。
シニカルだけど。
そして、ロビンソン夫人とエレーンの関係についても、
今回じっくりと観てなるほどと納得しました。
なぜ、ベンがエレーンに接近するのをあれほどロビンソン夫人は恐れるのか。
ベンがエレーンを追ってサンフランシスコを車で走り回るのですが、
その車がカッコイイんですよね。
外車に詳しくないので車種まではわかりませんけどカッコよかった。
そしてクライマックスの花嫁強奪シーン。
このシーンの印象は変わってなかったですね。
とてもストレートに盛り上げてくれました。
そして結婚式場の教会から逃げ出した二人はバスに乗り込むのですが、
100%幸せな表情ではなく不安を帯びた笑顔なんですね。
そこを意識して観ると、マイク・ニコルズ監督の演出が冴えていたことがわかります。
多分あの二人は順風満帆という訳にはいかないであろうことを予測させてのエンディング。
やはり見事でした。
2009年9月6日レビュー分です。
『卒業』The Graduate(1967)
マイク・ニコルズ監督 105分