『殺人の追憶』(2003)や『母なる証明』(2009)『パラサイト・半地下の家族』(2019)のポン・ジュノ監督のモンスターパニック映画。
薬品を漢江に垂れ流しが原因と思われる巨大生物が河川敷に現れる。
観光客らがパニックになる中、
カンドゥ(ソン・ガンホ)の娘が怪物に捕獲されてしまう。
カンドゥの父親を始め兄弟たちは怪物と接触したということで、
娘の葬式も満足に上げられないまま、
ウィルス病棟に隔離される。
しかしある時、
微弱な電波で娘からカンドゥに生きていると携帯電話に連絡が入る。
一家はカンドゥの娘を救出するために病棟を脱走するのだが・・・
怪物はエイリアンのバリエーションだし、
ストーリー的に単純な物語なので120分の尺が持つのかなという不安がありましたが、
娘奪還作戦を時折コメディ場面を入れた冒険活劇風な味付けをしたことでなかなか面白い作品となりました。
この手の作品では、
前半にくどいくらい人間関係や背景を描いて退屈することが多いのですが、
本作はその辺を必要最小限にしていきなりモンスター登場となるところがいいですね。
ウィルスへの偏見との闘いというサイドストーリーも、
米国への皮肉が込められていて面白い。
娘の父親役をソン・ガンホを演じているのだが、
いつも居眠りばかりしている呑気な中年男。
頭は似合わない金髪。
その金髪が自らのピンチを招いたりする。
娘を助けようと手を引っ張るがよその子供の手を引っ張ってしまったりして、
弟や妹には役立たずと言われたりしているが、
父親には愛されている。
そのガンホが娘のために血相を変えて娘を助けに行くシーンが見せ場でありストーリーの本流です。
怪物は捕獲した人間を下水管に保管しておく性質があるらしく、
娘は息をひそめてそこに隠れているのだが、
その下水から脱出しようとするシーンもサスペンスたっぷりでなかなか楽しめる。
一家のうちで目を引いたのが、
カンドゥの妹を演じたぺ・ドゥナ。
アーチェリーの銅メダリストで勇敢だけどちょっと天然なところのある役。
この前年には僕の好きな、
『リンダ・リンダ・リンダ』(2005)にも出演していたんですよね。
韓国人留学生役が印象的でした。
ポン・ジュノ監督だからただのモンスターパニックものには終わらせない。
当時の政権批判や米軍批判が込められているところに、
反骨精神がきらりと光る。
クライマックスがちょっと甘くなってしまったり、
展開が都合よすぎるなと思うところがあったところが個人的には減点なのですが、
最後まで見せきる力を持っているなと感じました。
面白いです。
『グエムル 漢江の怪物』괴물(2006)
ポン・ジュノ監督作品 120分