カンヌ国際映画祭ではパルムドール賞を受賞し、アカデミー賞では作品賞を受賞。
アジア映画初の快挙を達成した、ポン・ジュノ監督の作品。
ソウルの半地下にある安アパートに住むギテク(ソン・ガンホ)を主とした貧しい一家四人。
ある日、長男ギウが友人のかわりに大企業社長パク宅の娘の家庭教師をすることになる。
頭はいいが経済的な理由で大学に入学していない彼は、
妹のギジョンの作った精密な偽の卒業証書を持って面接に挑み、英語の家庭教師に採用される。
パク家の長男ダソンの描いた奇妙な絵に気付いたギウは、身分を偽らせて妹ギジュンをダソンの絵画教師としてパク夫人に紹介し、ギジュンも採用される。
パク家に先代の持ち主からずっと仕えていた家政婦を、巧妙な手段を使い追い出して、後釜にギテクの妻が収まる。
こうして次第にパク家にパラサイト(寄生)していくギテク一家。
主人のギテクまで、パク家の運転手としてパク家に入り込むことに成功。
パク一家が家族全員でキャンプに行くことになったその晩、
ギテク一家が大きなリビングで酒盛りを始め楽しい時を過ごす。
その時、
インターホンが鳴り追い出したはずの前の家政婦がやってきた。
そして・・・
ここまでの展開は実にテンポもよく、
一人ずつパク家にパラサイトしていく様子は心地よく感じたりします。
しかし、このインターホンのシーンから、
作品の性質が180度変わり、
ホラーサスペンスになるところが見事ですね。
韓国の富豪宅には必ずあるという核シェルターを兼ねた地下室の秘密には触れないでおきましょう。
ギテク一家が身なりを整えてどんなに上流家庭に入り込もうとしても、身体に沁みついた臭いだけはどうにもならないのが悲しいですね。
愛想よくふるまってくれるパク家の人々も、
ギテク一家が共通して持っている臭いにはあからさまに顔をしかめる。
そんな何気ないシーンが殺人の引き金になる伏線の貼り方もうまいよね。
韓国の格差社会を感じさせるセットも見事だ。
ギテク家は半地下にあるために、
酔っぱらいの立小便をうけたり、車で撒かれる除虫剤まみれになったりする。
大雨で下水が逆流し、便器から汚水が噴き出すシーンは名場面になり得る。
一方のパク家の家の豪華なこと。
広いリビングに大きい採光。
豊富な食材に有り余るほどの酒。
ホームパーティーが余裕で開ける大きな庭にはテントを張ることもできる。
雷鳴の轟く中、
この大きな窓から見る大雨のシーンは、
とても美しいのと同時に、
パク家の裕福さとギテク家の貧しさの象徴となる。
この雨でギテク家は浸水し、
体育館での避難生活を送らなくてはならなくなるのだから。
ラストの解釈は100%観客に委ねられる。
ギテク家の将来は観客の想像次第。
ここでの雪のシーンも美しいから、
この家族の将来はひょっとして明るいかなと思わせるのだが、
どうだろう。
パラサイト半地下の家族 (2019)
ポン・ジュノ監督作品 132分
2019年12月限定公開
2020年1月一般公開