悪の教典(2012) | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

三池 崇史監督によるアクションサイコホラー。

爽やかで人望のある高校の英語教師蓮見(ニックネームはハスミン)が、サイコ野郎となってクラスの生徒を殺しまくる。

 

助演陣が豪華なのと、

テンポよく進んでいく展開のおかげで、

時々「?」となるちょっと強引な物語なのだけれども、

最後まで観ることができる。

 

サイコ野郎を演じるのが伊藤英明。

細マッチョで鍛えた身体に役作りの真剣さが伺えます。

 

主人公の生い立ちなど、

興味のあるトピックを小出しにしながらも、

本編ではそのあたりは説明されない。

どうやらスピンオフ作品である、

『悪の教典序章』を観ないとわからないらしい。

 

東大進学希望の生徒のセリフや、

救命脱出袋、AEDの使い方など、

後のクライマックスに向けての伏線の貼り方はうまい。

 

しかし、

吹石満や山田孝之ら教師間の不仲の描写が意外とあっさりしすぎていて興ざめ。

あと、いくら天才的な頭脳を持つ主人公でもそれまでの経緯や舞台となる高校での殺人などを証拠もなく殺してしまうのは無理があるでしょう。

逮捕され、少なくとも鑑定留置処分くらいにはなっているはず。

特に、吹石満が殺されるのは電車の中。

撲殺しておいてそれを首つり自殺に偽装するなんて無理。

 

遺書を偽造して生徒から脱がした靴の下に置き生徒を屋上から突き落として自殺に見せかけるなんていうのも天才にしては安直すぎる手段。

 

クライマックスでは、

それまでのこまごまとした手段をまるで忘れたかのように、

猟銃を使って生徒を殺しまくる。

(実際忘れているのだろう)

このシーンは、

文化祭の準備で徹夜をしている教室内がメインになっていて、

お化け屋敷を作ろうとしているのだけど、その効果は抜群でしたね。

高校の文化祭レベルにしては美術のレベルが高すぎるだろうとツッコミを入れながらも、生徒たちが恐怖の坩堝に落ちていく様子がこれでもかというくらい気合の入った演出と演技で見せてくる。

 

山田孝之との対決ではちょっとしたギャグを挟んだりしてましたね。

 

まったく心の動揺がなく、

当たり前の表情で生徒を殺しまくるハスミンだけど、

もっと表情を変えないでほしかったなあとは思う。

引き金を引く時に殺しの悦楽的な表情が垣間見れてしまうんだなあ。

 

例えば、サイコホラー映画の元祖ともいえる、

ヒッチコック監督の『サイコ』も、

主人公のアンソニー・パーキンスが最後までほぼ無表情だったから怖かったわけで、本作でも主人公は無表情で殺しまくってほしかったなあ。そしたら恐怖も3倍増しくらいになったかも。

 

警察へ通報してから警察が現場に到着するのが遅いってツッコもうと思ったけど、それはウルトラマンが変身してからの3分間が長いとツッコミを入れるのと同じになるのでやめておく。

 

それから劇中時々現れるクリーチャーもいらないし、

ボーガン対猟銃のCGもいらない。

 

「卒業おめでとう」とつぶやいてハスミンは警察に連行されますが、そこで見せる狂気の演技はいいね。

女生徒の二階堂ふみの目が白くなる演出も効果的。

 

いろいろと気になる点はある作品ですが、

見応えはあります。

夏の深夜におススメです。

 

悪の教典 三池宗史監督

2012年11月公開 128分