2020年 アメリカ/香港 90分
監督:マックス・バーバコウ
出演:アンディ・サムバーグ、クリスティン・ミリオティ、ピーター・ギャラガー
ストーリー
アメリカ・カリフォルニア州にある砂漠の保養地パーム・スプリングス。妹タラの結婚式で突然スピーチの指名を受け戸惑っていた姉サラに助け舟を出したのは、タラの友人ミスティの彼氏マイルズ。ところが、マイルズと一緒に奇妙な洞窟に入ったせいで、サラは毎日同じ日の朝を迎える“タイムループ”に陥ってしまう…。 ファンタジック・コメディ。≪2人なら、永遠に“今日”でも構わない!?≫
評論・考察・感想
はい、3度の飯より「タイムループ映画が好き」でお馴染みのソフト&ウェットです。何かね、これが「老い」ですかね?
子育て映画好き世代には同感を得られると思いますが、娘がまだ幼くて手のかかる時期なので映画を観る機会が極端に減っているのは事実です。だからこそ貴重な映画を観れる時間を大切にしたい。かといって、2時間30分~から3時間ぐらいの長尺映画は子育てしながらでは難しい。そこで90分ぐらいでササッと見れる映画かつ、”ハズレ映画で時間を無駄にしたくない”の一心で吟味して吟味して選んだ作品が今回の「パーム・スプリングス」でした。作品を観る基準も年齢とともに変わっていきますね。
バイツァ・ダスト
はい、早速ですが、核心に迫りたいと思います。
この映画・・個人的にかなり斬新でしたね。評価されてる理由も見終わった後に重々承知いたしました。
タイムループ映画というのは今までにもいろいろたくさんの作品があったと思います。パッと思いつくだけでも「バタフライ・エフェクト」、「ハッピー・デス・ディ」、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」、僕が以前にこのブログに投稿した「トゥモロー・ウォー」なんかもその部類に当てはまると思います。
いずれもこれらの作品は“過去の行動の最適解を見い出して、最善の未来をつくる”という共通項があり、またそこに焦点が当たっていた気がします。それを主人公達も重々承知で、そのために奮闘し、タイムループから逃れる画が描かれていたと思うんです。
しかし、この「パーム・スプリングス」はちょっと違う。
洞窟の中に入った人だけタイムループが起きるという理屈は分かるが、どういう原理でこのタイムループが起きるかも謎だし、
一番注目すべき点は・・これといってタイムループから脱出する解決策が無いということです。
別に行動を改めたとて、何も変わらない。目が覚めれば全く同じ日が繰り返される。
だから何ていうんですかね?こいつを倒して未来を変えて世界を救うんだ、とか
過去の過ちを訂正して未来を(現在を)変えるんだ!とかではなく
主人公の2人が何でもないただの日常だったり、平凡な明日に希望を見い出す姿が非常に感慨深かったです。
仕事終わりの皆さん。今日もお疲れさまです。
今日も普通に通勤して、仕事して昼食食べて、午後の仕事終わって帰宅して、テレビ見ながらごはん食べて、お風呂入って、寝ていませんか?
週末ならまだしも平日はいつもと何も変わらない昨日と同じ今日を繰り返したと我々は思いがちです。しかしよくよく考えてみると通勤ですれ違う人たちも違うだろうし、食事の中身も違う。それこそテレビだって毎日違う番組を見てるでしょう。
この映画を見ると実は全く同じ日なんて無いんだと悟らされます。
そして全く同じ日が無いからこそ人って生きていけるんだなぁ~ともつくづく思いました。
多分、この映画を見て思う感想は皆同じでしょう。
僕の大好きな漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の一幕に
吉良吉影は静かに暮らしたいというくだりがあります。
激しい「喜び」はいらない・・・
そのかわり深い「絶望」もない・・・・・・・・
「植物の心」のような人生を・・・
わかります?僕もインドア派なので、この気持ち、もの凄いわかるんですよね。
要は・・旅行とか楽しいイベントとか要らないんです。もうサプライズプレゼントとかもらったら最悪ですよね。一番いらない。どうリアクションしていいかもわからないし。というか、サプライズプレゼントもらったことないし。
それであとトラブルやアクシデントとかもいらない。先日、妻が車と車の軽い接触事故を起こしたんですが・・・もうこんなのもいらないんですよね。保険会社に連絡したりするのが面倒くさい、面倒くさい。
とにかく日常をかき乱す大きなイベントが要らないんですよ。何でも。例えば「引っ越し」とか「クリスマス」とかの行事も嫌ですね。
そう、それらが無いと、もちろん「楽しみ」や「喜び」はない。
でもその分、「悲しみ」や「絶望」もないんです。
そんなイベントなどが起こらず、自分の趣味・趣向に没頭できる淡々とした日々を暮らしたい。そんな毎日なら最高だな!
ってことです。
皆様も多少なりともそういう気持ちに共感できるのでは?
つまり人間は様々なイベントやトラブルが起きる混沌を避けたいという本質を少なからず持っていながら、この映画は全く同じ日が続くという混沌を表現していたのです。この一見すると矛盾な状況設定が視聴者の心を捉える今作の魅力ではないでしょうか。
ん?よくよく考えたらキラー・クイーンのバイツァ・ダスト映画じゃん、これ!
(詳しくは「ジョジョの奇妙な冒険 第4部」をご覧ください)
メンタル強すぎ
今作の主人公のマイルズ役はアンディ・サムバーグ。
映画がコメディテイストなので見逃しがちですがよくよく見たら超絶イケメン。
ジム・キャリーを彷彿とさせるコメディ俳優イケメン枠は彼で決まり!
それはさることながら、序盤の彼女とのS〇Xにイかないくだり、感動させられる結婚式でのスピーチ。来客者全員の動きを全て読むダンスシーンなど、今思い返すとタイムループを示唆する細かい仕掛けがてんこ盛りでなかなか素敵でしたね。
しかし、よくよく考えると彼のメンタル凄すぎないか?
マイルズからするともう何万、何千万回の同じ今日であるのに対し、何でずっとあのテンションでいられんねん。
メンタル強すぎだろ!
ヒロインのサラ役はクリスティン・ミリオティ。家族からはそこまで期待されてなく疎外感を心に抱えている冴えない女性役を演じられていました。
好きなシーン
そんなループ現象に巻き込まれてしまったサラ。どうあがいても戻れない1日ループ現象に慣れ、平穏だけを求めていたマイルズ。
最初は戸惑うサラでしたが、そこから2人での楽しみを探し始めます。
マイルズも良かったでしょうね。その場に人はたくさんいれど、このタイムループを共感できる存在が身近にいてくれるのは。
少なからず彼の心の安らぎにはなったと思います。
↑(タイムループを共感できるのはロイもいますが、彼とはうまくやっていけそうにありませんからねw)
でもなんかね、これも結構、人生の教訓になっていたりしているように感じました。
人生って自分で新しい何かを見つける、何かを繰り出す・・・自らが楽しもうと思わないと人生って何も変わらないのではないでしょうか。
何もしなければ、ただただ時が流れるだけ。
彼らのモチベーションは見習うべきですね。
そして何より、僕が度肝を抜かれたのがタイムループから戻るために(毎日同じ日が繰り返されるタイムループを利用して)サラが量子物理学を一から勉強することで脱出の道が開ける、ということでした。地道やなぁ~。毎日毎日こつこつ積み重ねて何年かかるんだ!しかも独学で。(教科書あったけど近くに図書館あったの!?)
しかしこんな映画ありました?今までに!もしかしたら自分たちでタイムループの仕組みを作って~・・・みたいな映画はあったかもしれません。でもそこにはその分野の識者が存在していたはずです。
それを一から・・・・・・
座学から始める!!
良心的な行動で覆ったりする今までのタイムループをディスりつつ、最終的にこういう決断に至ったのでしょう。
斬新かつタイムループを上手く利用した見事な試みでしたが、結局は青春映画さながらの「諦めなければ成功する」的な感じで安易に感じましたけどね。
でも悪くない。結局はありきたりなメッセージが大事だったりするはずです。個人的には何事も継続する力が大事だと思っています。それに勝るものはないでしょう。
英語喋りたいと思っているそこのあなた! 英語の参考書だけ買って満足していませんか?
Youtuberになって収益化を狙っているあなた!定期的に動画を投稿できるプランはありますか?
英語だって、もの凄い効率悪い勉強してても毎日触れてれば喋れるようになると思うし、
Youtubeだって(多少のバズる、バズらないジャンルとかはあると思いますが)本当に面白いコンテンツなら、信念を貫いて投稿し続けていればイケると思うんです、僕。
お笑い芸人だって、大器晩成型とかはあるかもしれませんが本当に才能あるやつは何年かかっても売れるんです。
このブログだって・・・・
このブログだって・・・・
諦めなければ・・・
諦めなければ・・・
いつか・・・・
と、自分に言い聞かせていますw
話は脱線してしまいましたが
でもタイムループから抜け出す方法を見つけ出たサラ。もちろん本編では彼女の勉強している姿はダイジェスト版みたいな扱いでしたが、多分相当の年月を費やしたと思います。それが報われなかったらどうしよう!?と心底思いました。ここまでの努力の全くの無意味さに苛まれる。これが失敗したら絶望しか味わえないと思っていたのでタイムループを脱出できて良かったです。
マイルズの様に人生を1人だけで楽しめる人もいますが、今回感じたのは楽しいことは2人以上での共感が生まれた時に一番の楽しみになるのではないのかな、と思いました。自分の職業さえも何だったか忘れるくらいにまでの年数をループで過ごしているマイルズ。このループで暇つぶしに何度も同じことをやったんですよね。それで飽き飽きもしている。でもその同じことでも2人でやると楽しい。彼の絶望しかなかった未来に光が差し込んだ瞬間でした。
楽しみを共感し合った時の2人の心の底からの
笑顔が本来の姿に見えて素敵でした。
ダンスシーンなんか特に最高!
愛の言葉
ついにタイムループを脱出する方法を見つけたサラ。そこでのやりとりは
彼の本音が爆発します。成功してくれたら嬉しい。でも離れるのは嫌。そして失敗して、彼女がいなくなるのも嫌。何なら2人でいられるならずっとこのループでも構わない。彼の葛藤と踠きが分かります。
ただどうしてもやめないサラ。
そこで放ったマイルズの一言。
「一緒に居られるなら結果はどうだっていい。
失敗したとしても一人で生きるより君と死ぬ方が良い。」
「誰よりも愛してる」など、愛する言葉の最上級はたくさんありますが、
この空間、この状況下での究極の愛の言葉だったように思えます。真面目に愛を語るタイプじゃない奴の不器用な愛の表現が最後はグッときました。
ただタイムループの脱出にマイルズを一緒に誘った際のサラの言葉
「何をやってもここでは全て無意味なの」
が、真理を突いている気がしますね。
人生においてリフレッシュや休息の意味でも「無意味な1日」は多々あって良いと思います。しかし「無意味な人生」にはならない様に我々も気をつけていかなければなりません。
別にこの映画を見て元気や、やる気が出ることはありませんが、
何か人生で迷った時にはこの「パーム・スプリングス」を見て、自分を見つめ直す良い機会にはなるのではないでしょうか。
僕も模索中ですが、「意味のある人生」になるよう努力、邁進していきたいと思います。
それでは!

採点
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️☆☆☆ 7点 (10点満点中)