映画評論Vol.20 「007/ ノー・タイム・トゥ・ダイ」【ダニエル・ボンドの集大成】 | ソフト&ウェットの全力シネマ!

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観た映画、本、マンガ、音楽を勝手に評論したり、お勧めしたりする個人的な備忘録も兼ね備えたブログ。全力で書き続けます。

あくまでももそこは個人の意見、感想ですのでお手柔らかに。

 

 

2021年 アメリカ 164分

 

 

監督:キャリー・ジョージ・フクナガ

出演:ダニエル・クレイグ、ラミ・マレック、レア・セドゥ

 

 ストーリー

MI-6(英国情報部)00(ダブルオー)エージェントから退いたボンドは、愛するマドレーヌと共にジャマイカで平穏な日々を過ごしていた。しかし、CIAの旧友フィリックスの依頼で誘拐された科学者を救出するため現役復帰。正体不明の黒幕は、謎の計画に向けて最先端の技術と設備を整えつつあった…。人気スパイアクション007シリーズ第25作。

 

 

 

 

 

  ​評論・考察・解説・感想

 さぁ、ついにやってまいりました。ダニエル・クレイグ最後のジェームズ・ボンドということで話題になった「007/ ノー・タイム・トゥ・ダイ」。最速でAmazon primeで配信されていましたので鑑賞いたしました。Vol.20はこれで行きましょう。

 

子育てと仕事が忙しく、空いてる時間が夜10時以降の僕にとっては、子供がもうちょっと大きくなるまでは映画館に行く余裕もありません。

なので新作を最速で配信してくれるアマプラさんには感謝です。本当にありがとう!!!夜な夜な見させてもらいました。アマプラ最高!!

それでは、ゆっくり解説しながら見ていきたいと思います。


 

  絶望するボンド

 

 

 ヴェスパーの墓参りという目的でボンドが訪れた町。偶然にもその日は過去の秘密や願い事を紙に書いて焼き、過去を忘れ、未来に進むという意味合いが込められた風習を行う日でした。マドレーヌは能面男を、ボンドはヴェズパーとの思い出からの決別をはかり、これから2人で前に進んでいくという非常に愛情深いシーンでしたね、序盤は。そこで「家族」というボンドにも守るものが出来て、男としてさらに強くなるみたいな感じかなぁ~と勝手に捉えていましたが・・・・

 

全然違いましたねw

状況は一変。

墓は爆破されるわ、命は狙われるわで、てんやわんや。

 

 

 バイクで壁登ってジャンプするシーンは必見です。ものすごい興奮しました。

家で一人で見ながら思わず「うわっっ!!!」と声出ちゃいました。

 

プチ情報として、このバイクスタントを成功させるために740万円分のコーラをばら撒いたそうです(地面をネバネバにして滑らないようにするため)。

 

やはり洋画はとんでもないスケールで撮影しますね、見応え充分。

 

しかしやるせない。

「マドレーヌの父親はスペクターだぞ」

の一言に現実を突きつけられるジェームズ・ボンド。

見てください、これ。↓

 

 

町に到着するまでのドライブ中の車内。

幸せな未来しか見えてない羨ましい限りのお似合いカップル。

 

 

そして、マドレーヌが裏切ったかもしれないと悟った時のジェームズ・ボンド↓

 

 

 この車内での2人の表情の対比が序盤からのこの映画の過酷さを物語っていました。

せっかく過去を振り切り、ヴェスパーに代わり本気で愛する女性を見つけたボンド。

それなのに、それなのに・・・・

「やっぱり、お前もか!」というブルータス感半端ない。

車内でのボンドの顔が絶望に満ちた何とも言えない表情だったのが心に突き刺さりました。

ジェームズ・ボンドは幸せになっちゃいけないの?

神よ、どうかボンドを幸せにしてあげて。

うん、さすがにもう報われてもいいんじゃないかな?

 

ハッピーエンドが嫌いな僕ですが、今回だけはハッピーエンドが見たいと心底願いました。


電車で別れるボンドの表情とマドレーヌの泣き顔も鮮明に残ってる。オープニングから切ないよ。

 

 

  ​CIAのお仕事と現役007

 

 

  5年後。MI6を引退して余生を過ごしていたボンドにあのCIAのフィリックスが会いに来ます。「カジノロワイヤル」で一緒にポーカーやっての付き合いからですから結構長いですね。彼も要所要所で登場してきて、シリーズには欠かせない存在となりました。

 

 依頼の内容はと言うと・・・

 オブルチェフという男が、細菌ラボから拉致されてキューバに入国したのを確認したんだけど〜

 キューバでスペクターの集会があるんだよね。
怪しいと思わない?調べてくれない?ボンドにしか出来ないのよ〜!
やってくれへん?
ボンドー!!

サムネイル

 ってことでした。

 MI6ではなくCIAの仕事ですし、自分でやれよ感はMAXですが、

 スペクターが存在している以上は自分に安楽な日々は無いのかもと悟ったのでしょう。結局引き受け受けちゃう心優しいボンドでした。

 

(まぁ、そうしないとストーリー進まないってのもあるけど)

 

 そんな中、新キャラ続々。ジェームズ・ボンド引退後に007を背負っているノーミ。要は現役007。あれだけ活躍したのだから永久欠番だろと勝手に思っていた本人と僕らも度肝を抜かれます。細菌が盗まれたときにMの「007を呼べ」は彼女の事を指していたのですね。アクションあり、仕事の有能さ、先輩に対しての生意気さしかり007にふさわしい逸材だとわかりました。

 

 

 そしてなんといっても彼女。キューバでのスペクター集会に潜入の協力者として登場するパロマ役のアナ・デ・アルマス。

アナ・デ・アルマス」なんて名前からしてエロいですが・・・

彼女の格好がセクシーー--!

スタイルも良いしエロい。エロい。

 

こんなのとか・・。

 

 

背中もガッバー開いています。

 

服の身体被覆率25%ぐらいかな?ここまで来たらもう乳首見えていいじゃん!なんて思ったりします。

 エロに惑わされがちですが、CIA職員として実力はあるけどまだまだ現場には不慣れで緊張しいというぎこちない演技は素晴らしかったと思います。アクションも見事にこなし、今後こういう需要が増えそうなアルマスさん。

 演出も良かった。ずっとキスできそうな、抱ける雰囲気ながら一切それを許さない。仕事は仕事と割り切る主体性のあるパロマ。これが男が女を抱きたいならいつでも抱けるみたいな風潮(特にボンドにおいては)を根底から覆す、現代の女性の地位やジェンダー問題に配慮した演出だったのではないでしょうか。

余談ですが、どっかで見たことあるなぁ~とずっと考えてたら「ナイブス・アウト」の看護師役やっていました。

 

image

 「ナイブス・アウト」ではエロ要素なんか一切感じなかったのに、雰囲気が全然違ってびっくり。

【人は見た目が100パーセント】なんてドラマもありましたが、まさにそれを感じさせるアナ・デ・アルマス。幅広い役をこなせるというということも証明しました。

 ダニエル・クレイグとは実は2度目の競演だったんですね。

 

  スペクター集会

オブリチェフを追い、スペクター集会まで潜入したまでは良かったボンド。

しかしそこで驚愕します。

 

驚愕ポイント①

スペクターの集会に監禁されているはずのブロフェルドが仕切っている

 

 刑務所から義眼型カメラを通してですが。

 

驚愕ポイント②

ジェームズ・ボンドが潜入してるのバレバレ

 

これに関しては前回からバレバレですし、顔バレしてんのに変装しないボンドが悪い。

 

驚愕③

スペクターの全滅

 

これに関してはゆっくり次の項で説明しましょう。

 

  ヘラクレス計画



 理解していただきたいのは、まずヘラクレス計画はMの主導で計画された兵器研究だということです。拉致されたオブルチェフはMの指示の下で開発を行なっていました。


ナノボット:皮膚接触で体内に入り込む極小バイオロボット


このナノボットにはDNAがプログラムされ、特定の人物を標的とします。

標的とされた者以外には害を与えない。

だから特定の人しか発病しないという機能を備えた細菌兵器と非常に相性が良いわけですね。

つまり、強大な敵がいたとしても、彼らのDNAプログラムさえ入れとけば彼らだけを排除できる。


 この兵器は人命を救い、部下の安全を守るものというMの信念のもと、正義のために使う予定のものでした。


 もちろんオブルチェフとMしか知らない極秘計画のはずが、そこはスペクター。

いろんなところに会員がいるはずですから、その情報をいち早く察知するわけですね。


そしてそれを手に入れたスペクターはブロフェルドの指示でボンドをキューバに誘導し、スペクター集会でのボンド殺害計画を練るのです。


ここまでは分かりました?


しかし、そこで待ったをかけたのがもう一つのサフィン率いる組織。彼らはスペクターに家族を殺された過去をもち、スペクターへの復讐心からスペクター会員の全滅を望む組織でした。


このスペクターのボンド殺害計画を横取りし、オブルチェフを手玉に取り、細菌兵器で発病する人間をボンド以外のスペクター会員のDNAプログラムに書き換え、スペクター会員のみの殺害が実行されたのでした。


そして、その兵器は奪われたまま。


そうすると、それはどう使われるか?


応用すればプログラムするDNAを組み替え、民俗全体をも標的にすることができる。正義のために使えばこれほど画期的な兵器はありませんが、ひとたび悪い奴らの手に渡ればDNA レベルで殺戮を分断できる脅威の細菌兵器になるわけです。


そしてこの兵器の肝が皮膚接触感染だということです。


それが体内に入ると皮膚接触感染により人間自体が兵器になる。


もちろんこれをスペクターだけに使うならそれもそれで良いのでしょうが、政治家を殺すことだってできるし、民俗、国家レベルでさえも消滅することができる。これを手に入れることによって人の死を司る力をも手にいれ、世界を支配できちゃうのですね。


これがスペクター集会での概要です。


  サフィン



 冒頭1時間10分を経過して初めて素顔登場のサフィン(ラミ・マレック)。

 歴代シリーズの悪役と比べると個人的には1番異常と感じました。ル・シッフル、グリーンはどちらかというと“お金が1番”タイプ。


 シルヴァはMI6の復讐心から。ブロフェルドは世界を牛耳るためにいろんな手を使うも、それなりに常識があった(そうかな?)タイプだと思います。


 それがこのサフィンは


サムネイル
 

​人は認めようとしないが、実は心の中で望んでる。
言われるままに生き、死ぬことを。
忘れ去られるように死ぬことを。
それを与える使命の人間が私だ。
私たちは世界をよくしようと人を殺してる。
それをもっと効率よく一気に片づければ世界は進化する。

と。


だから何百万という命を殺しますよ、と。


えっ、えっ、なに言ってんの?

怖い、怖い、怖い、怖い!


そう、理由がとんでもない。狂気としか思えない。

もしかしたら彼が激情タイプの人間なら衝動的にそういうことも口走るかもしれません。


それが非常に落ち着いた口調で話すもんだから余計に奇妙さが際立ちます。狂気に満ちてるんですよね。


このサフィンと対峙して

​(自分は)大切なものを根こそぎ奪われた。
誰にも幸せを手にするチャンスが与えられるべきだ
誰でもね。

サムネイル

というボンドの言葉は、サフィンを説得しながらも

自分に言い聞かせているようで、僕も心が傷みました。お前なんだよ、幸せになってほしいのは!


 でもこのシーンが非常に深い。サフィンがボンドを自分と同じだ、みたいな事を言うんですよね。つまり、手段の違いだけでMI6のボンドが殺してきたことと一緒なんですけど〜。世界を良くしようとする目的は一緒なはずで、あなたは正しくて、僕は悪いんですかー?


ってことなんです。


深い。深い。深すぎて溺れそう。


 僕らはボンド目線しか見てないからね。答えは出ない。サフィン目線のスピンオフをどうか制作お願いします。


 そんな緊迫したシリアスな場面ですが、ボンドの反撃に畳の底が開いて逃げるサフィンに爆笑w


 あれ、コントじゃんw


 あのアジトを設計する段階で最初から考えてたってことでしょ。サフィンの親父の時からこのシステムあったってことでしょ。何目的であれ作っとんねん!、と思うと、なんかめっちゃ面白かったです。


  ​ボンドの最後



 最後は・・・・・シビれました。

まさか最後にこういう展開が待っているとは。

引退したはずのボンドが最後の任務に関わったのは、MI6の要望というよりかは


マドレーヌと娘の2人を助けたい


全てを終わらせて2人と静かに過ごしたい


という個人的な理由の比重が高かったと思います。

多分、これが終わればMI6に続けてくれと勧誘されても断り、本気の引退。マドレーヌと娘との本当の意味での幸せがすぐそこに待っていたと思うんです。


 それなのに、それなのに・・・・



 ここまでくると島を爆破する危機なんてどうでもいい。

今まで幾度となく困難を乗り越えてきたボンドですから正直、多分やろうと思えば乗り越えれたでしょう。


 サフィンとの死闘で感染したボンド。


 これ以降、ボンドが手で触れる相手は必ず死ぬ。瞬時の死を招くとなります。


1番恐れていた人間兵器にボンドがなってしまうのですね。・・・残酷、無慈悲。

 ボンド自体は多分死なない。でもボンドに触れる人々は死んでいく。マドレーヌも娘も。つまり感染した時点で“ボンドに幸せは訪れない”のが確定した瞬間でもありました。その後の何も考えずにサフィンを銃殺する脱力感。実はあそこがボンドの悲しみを1番表してたシーンかもしれません。


 しかしこんな結末ある?

 脱出したところでマドレーヌを含め、誰にも会えない。

 それを悟ったボンドは自らの死を選択するのでした。電話で愛を伝えられたことがせめてもの救い。


悲しすぎるよー、ボンド。



No Time To Die じゃなかったのかよーー!!


  ​最後に

 ついにダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドも終焉を迎えました。

 「カジノ・ロワイアル」で当時は全くの無名のダニエル・クレイグをいきなり起用し、否定的な意見が多数のところを黙らせ、歓喜に変えたのも制作スタッフの努力及び、ダニエル・クレイグの演技の魅力に映画ファンが惚れたからではないでしょうか。


ガチの007ファンからは賛否両論あるようですが・・・


よく年配の方がショーン・コネリーのジェームズ・ボンドが良かったというのを良く聞きます。でもそれもそのはず。その人のボンド像がショーン・コネリーなはずですから。


僕はシリーズを通して全部見た007は今回が初めてでした。だから僕のボンド像はダニエル・クレイグなので、僕も年取ったら若い人達に言うと思います。


ダニエル・クレイグ版のジェームズ・ボンドが良かった

と。


 これ以降も別の俳優がジェームズ・ボンドを演じる007シリーズが制作されるでしょう。それがまたチャラかったりしたら僕も受け付けないかもしれません。



 今シリーズのジェームズ・ボンドのテーマとしては基本的に“今までのボンド像を根本的に覆す”というのがあったと思います。


ボンドがガチ恋愛して1人の女性を愛す設定だとか、そのためにあまり女性を抱いてない、とか・・・etc


その最たるものが今回のボンドの娘の登場だったり、ボンドの死を描いた点ではないでしょうか。テーマをブレずに貫き通し、見事によくまとめ完結に至ったと思います。


集大成ってこれだなって思う出来でした。


感動した!


しかし15年間もの長い間、僕らに夢を見させて頂きありがとうございました。本当にお疲れ様でした。



ありがとう、ジェームズ・ボンド!

ありがとう、ダニエル・クレイグ!


 TODAY'S
 
​採点

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️☆☆  8点 (10点満点中)




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