ストーリー
国家予算1500万ドルを賭けたカジノ。それが、ジェームズ・ボンド最初の任務だ。ターゲットは、世界中のテロリストの資金運用を手掛けるル・シッフル。ボンドのパートナーは、監視役として送り込まれた美女ヴェスパー。最初は彼女を信用しなかったボンドだが、彼女の勇気と思いやりの深さに心を奪われていく…。人気スパイアクション007シリーズ第21作。
評論・考察
007最新作でダニエル・クレイグが演じる最後のジェームズ・ボンド作品でもある「007 / ノー・タイム・トゥ・ダイ」が日本時間10月8日から公開になりました。前作の「スペクター」からもう6年の歳月(コロナ禍の影響もあったのでしょう)を経ており全く内容を覚えていません。今回鑑賞したカジノロワイヤルも公開が15年前ですかぁ〜。覚えているわけありませんね。
備忘録としてこのブログを始めたばかりだし、ミーハーな私はこれを機会にもう一度最初から振り返るしかないと意気込み、今回に至りました。ちょうど「ノー・タイム・トゥ・ダイ」の公開に合わせて、Amazon primeでこれまでの歴代007が(多分、全て)配信されておりますので、興味ある方は是非ご覧ください。
アマプラの配信終了がどのタイミングになるかは分かりませんので、それまでは「スペクター」まで頑張りたいと思います。
ジェームズ・ボンド
これ、改めて見て驚きだったのは、ジェームズ・ボンドがコードネームの007(ダブルオー)になりたてほやほやのストーリーなんですね。どうやって「007」になったのかなど細かく描かれていました。だからと言って誰一人として「007」とは呼ばなかったのが印象的です。Mに至ってはずっと「ボンド!ボンド!」呼んでましたからね。
1番僕の中でこの作品を見て感じたのは今回同様、幼少期に見たピアース・ブロスナン版の007のボンド像も全く記憶になかったことです。だから今回のダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドがまさに僕の映画人生のボンド像を決定づける重要な作品となりました、はい。
「女をいつでも抱ける」というイメージは一緒でしたが・・同類映画としてミッション・インポッシッブルの様に綿密に計画を立てて行動するのではなく、何か行き当たりばったりで危険を冒すも、結局は最善の選択をして仕事をこなし、生き延びている、というイメージに落ち着きました。いわゆる破天荒ですね。
そして この作品にはジェームズ・ボンドもそうですが、キャラクターに人間味が溢れています。
冒頭のシーンなんかもそう。アクロバティックに移動し、パルクールアクションで駆け抜ける敵に対して(パルクールアクションができない)ボンドは壁をただただ突き破ったり、ただただハシゴを一生懸命に登ったり・・したりする男臭さが非常に好きでした。ジェームズ・ボンドも完璧ではないということがかなり序盤で発表されたので、こちらも親近感湧きますね。
結構ね、好きなシーンは多めでした。
ボンドガールのヴェスパーはボンドの監視役とお金を管理する役目としてボンドに付いていきます。ずっと上から目線でボンドの仕事に対しての取り組み方などを批判し、彼を下に見ているヴェスパーですが、潜入先のホテルで初めて自分の仕事が危険と隣り合わせなんだと感じるのです。命を落とす危険性を痛感し、シャワールームで怯えてる様はヴェスパーの恐怖を描写できてて好きでした。こういう細かな感情の描写がこの映画の人間味に繋がっているんだと思います。
そのあと、「指に付いた血が落ちないの」というヴェスパーに対して
ヴェスパーの指をペロペロむしゃぶりついて舐めまわして「これで大丈夫」というボンド。
これ、ボンドがやっているからカッコイイのであって、僕らがやったらただの変態ですからね。引かれますからね。ミッションを遂行する前に逮捕されますからね。皆さん気を付けましょう。
そしてヴェスパーは気づくのです。
こんな、いつ命を落としてもおかしくない危険と隣り合わせなのに女を抱き、平然と仕事をこなすボンドは「サイコパス」だと。
いや、違う、違う!
そこで初めてボンドをリスペクトするのですね。現にあそこからはボンドを咎める発言はなかったように思いました。
ル・シッフル
今回のボスであるル・シッフルも最高ですね。非常に異様。特別、超能力が使えるとかではないですが、天才的なポーカーセンスと赤い涙で尋常じゃない雰囲気が漂っています。残虐に人を殺したり、のほほんと冷静にポーカーをしているように見え、感情を感じさせませんが、ホテルの部屋にに戻った時の彼もまた命と引き換えに仕事をこなしているという、非常に人間臭さが出ているのが好きです。ボンドにとってもそうかもしれませんが、今回のこのポーカーは彼にとっても命を懸けた大一番なのです。キャラとしてももの凄い存在感を放っていましたね。マッツ・ミケルセンという役者さんですか。最高でした。覚えておきましょう。
空売り
テーマは「空売り」
資金調達係のル・シッフル。彼は、武力組織に資金を投資してもらいそれを莫大に増やして、その一部を報酬としてもらうという役割です。で、その資金の増やし方が「空売り」ということです。株価が今後どうなるか、そりゃあ皆わかっていたら最高ですよね。
ル・シッフルは航空会社の株を空売りし、空港でディミトリオスが雇った輩にテロで爆破を起こさせ、新作の飛行機を爆破。これにより意図的な株価の暴落を起こさせ、儲けようとしたところを・・・皆さんもご覧になりましたよね、ジェームズ・ボンドが阻止したわけです。空売りの場合は株価が下がれば儲かりますが、上がれば上がるほど損失が大きくなります。
どういうことかと言いますと、上図をご覧ください。
1株3000円の株を100株借りて売ります(空売り)。 すると3000×100=30万円が一時的に手元に入りますね。
すると最初に売った株は借りているわけですから返さなくてはいけません。
そして株価が暴落し、2500円で100株買います。すると、2500×100=25万円 になります。
同じ100株ですが、株価が下がったことにより5万円手元に残ります。これが空売りで儲ける原理です。
そこで逆に、ル・シッフル同様、株価が上がってしまった場合を考えてみましょう。
1株3000円の株を100株借りて売ります(空売り)。 3000×100=30万円が一時的に手元に入りますね。
今回も最初に売った株は借りているわけですから返さなくてはいけません。
そして株価が上がり、1株4000円になったとします。 すると4000×100=40万円になります。100株取り戻すのに10万円余計に使っていますから損失になりますね。
理解できたでしょうか?この空売りは売る株数と、株価の上げによっては損失の上限はありません。
本編ではル・シッフルは 1億120万6000ドルの損をしました。(約114億8500万円)
死にたくなりますね!
Mとの関係性
Mとの関係性も非常に分かりやすかったです。
Mがボンドに対してとにかく甘いんですよね。序盤の大使館爆破、命令を無視し、MのIDでMI-6のPCログインしてから勝手に行動しても一切お咎めなし。実の息子かなぁと裏の背景を深読みしちゃうぐらいの甘々さ。
ボンドに弱みを握られているか、ボンドに既に抱かれているかのどっちかでしょう。人妻が好きだとボンドも言ってましたもんね。そうじゃないと成り立たない関係性。とにかくMがボンドのことをかなり信頼しているのは伝わりました。
「ドM」の称号
しかし、すごいですよね。国家予算を担保に、いくら資金が財務省の後ろ盾であろうがテロ集団に莫大なお金をを垂れ流すリスクを冒しながら、堂々とポーカーをやり続けるボンドのメンタル。自分のお金じゃないから気楽というのもあるかも知りませんね。確かにタダ酒ほど美味いものはありませんから。よっぽどサイコパスじゃないとこのプレッシャーには耐えられないでしょう。でもそのボンドが途中でル・シッフルにポーカーを負けて「あと500万ドル必要だ」とにヴェスパーに請求するも断られ、ルシッフルを殺害しようとするまで感情を露わにしたボンドは非常に貴重ではなかったでしょうか。いつも冷静沈着だと思っていたので。非常にシリアスな展開ながら狂気じみていました。ここにも彼の人間味が溢れていました。
そして何より金玉のシーンですよね。あそこ面白いですよね。
「やめろ、そこじゃない。もっと右!右だ!」
言ってましたよ、ボンドw喜んでましたよ!
「007(ダブルオー)」の称号ではなくて「M」に昇格してもいいぐらいのドMぶりは圧巻でした。
僕なら金玉ギュッと握られただけですぐ秘密吐きそうです。ボンドの根性、見直しました。
ボンドが唯一愛した女
個人的に何人もの女を抱いていたイメージの強いボンドでしたが、意外にもそんなに抱いてなかったですね。最初のディミトリオスの妻は抱き未遂ですからね。そうなると今作で抱いた女はこのヴェスパーただ1人。
「少ないなぁ~!」とも思いながらもそれがボンドからのヴェスパーに対しての愛が本物だったということが伝わってきた瞬間でもありました。
だからこそ最後が切ない。
そう今回のボンドガールのヴェスパーはボンドが唯一愛した女性と言っても過言ではないでしょうか。
彼女を愛することでMI-6さえも辞める決意ができたボンド。しかし、自分が初めて心底まで愛した女性のまさかの裏切り!
国家予算でポーカーしても平気なメンタルのボンドですが、ここで彼のメンタルが初めて動くんですね。彼女が黒なのはわかっているけど、ただただヴェスパーが好きだから助けたい。それでも彼女を助けられず、自暴自棄、人間不信になったことでしょう。全くの白のマティスに尋問を続けろと言ったのも、もう誰も信用できなくなったんでしょうね。彼にとっての唯一の救いが、あやふやに描かれていたボンドの金玉拷問時に助かったのはヴェスパーがお金を渡すと取引したからだと知らされたことです。彼女はテロ組織の一員でしたが、自分の死も近いことを知り、彼だけは助け出そうとしたのです。
それよりマティスが何も救われていないのが気になるw
007になりたてのミッションでこんなことがあってはもう人を信用できなくなりますね。人を愛せなくなりますよね。
これまでの僕の中でのボンド像は「片っ端から女を抱く」みたいなイメージでしたが、実はこういう過去があったということであれば何か納得できたのは僕だけでしょうか。女性とは体だけの関係で深くはならないという、この辛い経験を経てボンドの性格が形成されていったのでないかと思っています。
ジェームズ・ボンドの素を知るのに不可欠な1本の映画であることには間違いないでしょう。皆さんもこの機にご鑑賞あれ。
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採点
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️☆☆ 8点 (10点満点中)