ストーリー
ボンドと彼の上司Mは、ヴェスパーを操っていたミスター・ホワイトを尋問する。彼の背後組織の捜査のためにハイチに飛んだボンドは、カミーユと言う女を通してドミニクという男に接近。ドミニクの表の顔は環境保護に熱心な慈善団体のトップだったが、その裏では危険な陰謀が渦巻いていた…。人気スパイアクション007シリーズ第22作。
評論・考察
さぁ、やってまいりました。ダニエル・クレイグ版ボンドの第2作目。「慰めの報酬」を鑑賞いたしました。
え~と、まずこの作品を見て、驚いた人もいたんじゃないでしょうか。これって普通にストーリーが繋がってたんですね。すみません、無知識なもので。007シリーズは1話完結ものだと思ってましたので、個人的には驚愕しました。前作「カジノロワイヤル」では最後にミスター・ホワイトの家にボンドが押し掛けたとこで終わっていましたので、その後っていう設定なんでしょう。
でもそれを踏まえると・・・・・ボンドって忙しいね!
ミスター・ホワイトへの尋問
ミスター・ホワイトの尋問から始まるこのストーリー。
いきなり好きですね、このシーン。
結論から言わせてもらうと、
「我々の仲間はあらゆる場所に出向いている」とMI6職員のミッチェルの裏切りにより、まんまと逃げられるんですが、結局ここがもの凄い衝撃なんですよ。
「逃げられた」とか「MI6の中にも裏切り者がいる」という衝撃よりも・・・・
「ミスター・ホワイトの背後にはMI6に潜入できるほどのでかくてヤバい組織がいる!」っていう事実を認識させられるんです、ここで。ボンドと我々視聴者は。
そして、こっからはボンドの「巨大闇組織の全体像をどうにか調べたいけど、その組織員をすぐ殺してしまう病」が発病しますw
ル・シッフルの資金を追跡したらある男(組織員)が浮上したので、パナマに直行→ホテルに着いた途端に即、殺していますw
真相を暴くのに時間がかかってしょうがない。でもこれはしょうがないよね。相手も本気で殺しにかかってきてるんだし、そこを生け捕りなんて難しいよ。もう何ならボンドを1人で行かせるMI6上層部の判断に疑問視です。
今回の敵ボスとボンドガール
今回のボスはこの方。ドミニク・グリーン役のマチュー・アマルリック。
今回あまり点数が伸びなかったのは彼の存在感の薄さですかね。
やっぱり、先に前作のル・シッフルを見てしまったので、彼と比べると特徴性、奇異性は少ない。何というか、よくありがちな大富豪の悪い奴ってイメージに落ちつきました。決して悪くないんですが、それが作品自体のどこにも振り切れてない中途半端さに繋がっていったように思います。
ボンドガールもね・・・
メドラーノ将軍への復讐を誓うカミーユ。さすがは綺麗な方ですね。ただ全然ボンドに抱かれない。キスシーンとか、良い雰囲気になる感じもなかったんではないでしょうか?出演時の契約にNGが出てたかは定かではないですが、
これはヴェスパーに対する心の傷を未だに引きずっているボンドがまだ他の女を抱く気になれないんだと思っていました。
そのぐらいヴェスパーを愛していたんだ、と。
・・・・
そしたら抱いてるじゃん!!!
思いっきり抱いてるじゃん!
そして、抱いたやつ殺されてるじゃん!
結局黒か白か分からないマティス
今作を堪能するには前作「カジノロワイヤル」を鑑賞するのがmustとなっています。
そうじゃないとこのCIAのフィリックスが何でボンドを知っているのに嘘をついたとか、非常に細かい設定なんですが把握できないと思います。
そして、このマティスの再登場に歓喜!!
ボンドの「巨大闇組織の全体像をどうにか調べたいけど、その組織員をすぐ殺してしまう病」が発病しすぎて、情報が一切得られませんのでMはさすがに愛想を尽かせます。そこで、カードやパスポートなど止められ、どうしようもなくなったボンドが唯一、信頼できる相手として選んだのがこの「マティス」というのが心に突き刺さりました。
知ってますか?皆さん?
「カジノロワイアル」を見た皆さんならご存じですよね?ル・シッフル事件で「マティスが裏切り者だ」とボンドが上層部に報告したことで、拷問聴収を受けた人です。
マティスの奥さんの来客をもてなす服装の大胆さには目を見張るものがありますが、何だかんだでボンドに対してのすべての許しを受け入れるマティスの心の広さには脱帽です。
マティス、マティス、マティス!
ちゃんとボンドを匿い、現地警察署長と知り合いで敵ボスまでのルートまで導いてくれるマティス。
ああ、マティス、どうしてあなたはマティスなの?
しかし、そんな恩を仇で返すのがジェームズ・ボンド。
彼の身体をを銃弾の盾に使うわ、挙句の果てにはこれだけ世話になりながらマティスのご遺体をゴミ収集所に捨てるボンド。
冷酷無比!
考えたんですが、ここの解釈がイマイチわかりませんでした。現地警察署長がグリーンと繋がっていて、ボンドをハメようとしたのは事実だと思います。そこでマティスが瀕死になっている状況がイマイチわかりませんでした。いやただ単に「ボンドの味方」だと思われたならまだ理解できるんですが、マティスが最後に「お互いを許し合おう」と発言してるんですね。
で、結局「カジノロワイアル」をもう一度見直してみましたが
ル・シッフルが「君の友達のマティスは私の友達でね」ってちゃんと言ってましたね!
つまり、つまり、マティスは「カジノロワイアル」時は本当にクロだった(MI6の拷問にも白状せず、耐えただけ)。
で、ヴェスパーとの繋がりもあったマティス。今作ではヴェスパーとの関係を知るボンドに哀れみを感じ、ボンドがグリーンまでにたどり着くのを導いた結果、ボコボコにされたっていうことだと思います。そう考えると、「カジノ・ロワイヤル」のポーカー時にル・シッフルの癖をボンドが見つけるが、その裏をかかれたのも辻褄が合いますし、そういうことなんでしょう。
この作品を経て、自分が1作目の「カジノロワイヤル」をちゃんと理解していないことを悟りました。
ということで、そっからは飛行機でのアクションあり、建物爆破ありとアクションは凄いんですが、なんか個人的には乗れなかった。
それがやっぱりボスのショボさと「カジノロワイアル」をちゃんと理解していないと楽しめない登場人物、ストーリー構成になったからじゃないでしょうか?1作目とストーリーが繋がっているという007の映画シリーズとしては初めての試みだったでしょうが、それが裏目になった気もします。
あと特にメドラーノ将軍への復讐を誓うカミーユとグリーンを狙うボンドと2人の目的が一致していなかったのも面白みに欠けたな、と。
結局2人は各々敵ボスの基地では単独行動ですもんね。
そしてやっぱり気になったのが「ミスター・ホワイト」です。どう考えったって、あの序盤の巨大組織がグリーンのものとは思えない。グリーンはグリーンの組織で一件落着でまたそれとは違う大きな組織があるのだと感じてます。最後のヴェスパーの彼のとこに行ったくだりも何かスッキリしない。これで終わんの?って感じ。
1作目が良かっただけに、どうしても比較してしまいますが。
要するに、それと比べると全てが中途半端だったのではないでしょうか?
「カジノロワイヤル」の鑑賞を先にお勧めします。
とにかくこれも「マトリックス・リローデッド」と同じ位置づけで、繋ぎの作品の様な気がして完成度には欠ける気がしました。
採点
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️☆☆☆☆ 6点 (10点満点中)
ダニエル・クレイグ版【007シリーズ】