大学受験デイズ-GIFT- -3ページ目

使命-5th-ギフト・クラッチバッグ・勉強法・大学受験

大学生とキャンパスを回っているとき、僕はここに通っている自分を想像してみた。


偏差値的には届かない大学。
今の自分のままでは手が届かない大学。


歩きながら、大学生は熱のこもった言葉を、隣にいる僕に発し続けてくれた。
それは僕がどこか曇った眼をしていたからだったかもしれない。


「いつでも夢や目標を達成するのに、障害は付き物だよ。何かに挫けそうになったら、偉大な人物は多くの否定をされ続けて銅像になったことを思い返して欲しい。」


僕の反応を見ながら、彼は言葉を臨機応変に選んでいったようだった。


「肯定されることも成長には必要だと思う。否定されることも達成には必要なんじゃないかな。それは、自分が頑張っているから、他人の目につくんだよ。」


「もし君が、自分のことをよく知らない人から否定されるならば、それは自分自身が努力して輝いて見えるからじゃないかな。もし辛くなったら、そう気持ちを切り替えるといいよ。」


確かに否定的な人間は、その人個人が持つアイデンティティーを超える何かを相手が追い求めるからこそ、それをバッシングするのだろう。


彼が熱い言葉をぶつけてきてくれたにも関わらず、自分の視線は足元に落ちていた。


そしてこう言った。


『でも、不安や否定やマイナスの感情に、すぐに揺らいでしまう自分がいます。無理なのかもしれません。』


彼が立ち止まった。
僕の方に体を向ける。




「ならなおさら夢を貫こうよ!合格を掴みとろう!!今の自分を超えてやろう!!!」


「俺も一人じゃ何もできなかった。だけど、自分の仲間で居てくれる人がいるからこそ、闘える。今だって一人じゃないんだよ。君も、俺も、一人じゃない。」


この言葉を放った時の大学生は、僕の眼をまっすぐに見ていた。

何かを僕に訴えているような眼だ。


その眼を見た時、自分の気持ちが湧き上がってきた。
がむしゃらに目標を目指していた時の気持ちだ。


あの頃の感情の中にも、不安な気持ちはずっと抱えていたし、今もひとりで東京に来たことも何処かで強がっていたが不安で一杯だった。

合格なんてできない、それもうすうす感じていた。

夢を見ているんだ、そう思い込もうとしたこともあった。







でも、、、どうしても諦めきれなかった自分がいた。







僕はただただ、頑張っている自分に素直になりたかった。

今までもだらしない自分のことがずっと嫌いだった。

何かに全力で夢中になれない自分がずっとずっと嫌いだった。


でも、今は熱く夢を追いかけている自分のことをやっと受け入れられるようになってきたんだ。

やっと初めて自分を認められるようになってきたんだ。


誰かに、否定されてもいい。

人に、馬鹿だと笑われてもいい。


諦めて笑うなら、傷ついても泣く方がいい。

そしてなにより今の自分の気持ちを信じたい!


素直な感情が、全身に駆け回った。

どのくらい時間が経過したのかはわからない。
多分数秒だろう。


少し震えた声でこう答えた。

『先輩の言葉、本当に胸にきました。今の自分の気持ちに素直になって、最後まで挑戦し続けます。最後まで、やり遂げます。』


これは自分自身に対する誓いだった。先輩という言葉は自然と出た。


「約束だね。」

正門まで歩き、別れの時が近づいていた。僕たちも打ち解けていた。

『来年、目指した大学に合格して、欲しかったクラッチバッグを持って大学に通います。』


すると彼が、
「これ持って行きなよ。今の自分自身の気持ちと宣言を忘れないために。そして、これを見るたびに、今の気持ちを思い出して欲しいんだ。」
と僕にクラッチバッグを渡してくれた。


「今の自分の気持ちだけは絶対に忘れちゃダメだよ!それを持って、夢を掴む自分に約束しなくちゃだね。」


「そして、もし合格できなくても、10年後にこれを見たとき、必ず、言葉にできない気持ちになるよ。その感動できる心も、贈り物だよ。ギフトだと思うんだ。」


言葉が胸に突き刺さる。来て良かったと心から思えた。


感じた気持ちは素直に口に出せず、こう返していた。


『ギフトって贈り物って意味ですよね?』


「ギフトって二つの意味があるんだよ。ひとつは贈り物。
そしてもう一つは、
天から与えられた才能。」


クラッチバッグをそっと見つめる。


きっと彼もまたここまで来るのに、僕にはわからないくらいの経験があるのだろう。

それを初めて会った自分に渡してくれる、そんな優しさに涙が出そうになった。

お互いの名前も知らない。

ただ落ち込んだ心を励ますためだけに、そのためだけに動いてくれた。

その行動に、深く感動し泣きそうになった。


「今、その熱い気持ちになった自分がいたってことが、大きな誇りだし、将来の財産やかけがえのない思い出になるよ。それは熱くなっている今にしか、手に入らないものじゃないかな。」


僕の手にそっと渡してくれたクラッチバッグは、とても重く感じた。

この中は決してカラじゃない。




「俺も、もっと頑張ろうって気持ちになれたよ、ありがとう。」


彼がそっと右手を差し出してくれた。




(感謝するのは、僕の方です)


言葉が出せなかった。

だから心の中で何度も繰り返し言った。


僕も右手をそっと差し出す。


固い握手の手から、僕自身に何かが伝わってきたように感じた。


彼は最初と同じやさしい笑顔で笑いかけてくれた。
僕も笑った。


最後に僕たちは連絡先を交換して別れた。


この特別な出会いには、大きな感動があった。
そしてそれは希望となり、再び情熱を燃やし始めた。



言葉が勇気をくれ、クラッチバッグが誓いを支えてくれることになる。


信念は、必ず伝わる。
そこに距離はいらない。




帰り道、見知らぬ東京のターミナルで僕は新幹線を待っていた。流線形をした乗り物が入ってくる。入口のドアに自分の姿が写った。

そこには消えない気持ちと誓いを手に入れた自分自身がいた。



「成功を決定づけるのは『本能』である。
偉大な人を偉人たらしめるのは、分析力ではなく、追いつめられた時の直感なのだ』
ガルリ・カスパロフ

先輩・後輩・社会人-Real days-焦り・年齢・希望・諦めない気持ち・東京・勉強法・大学受験

おはようございます。

あまりに4日間以上忙しくて更新が途絶えてしまいました。

今日の夜から再び続きをまとめたので、日記にしたいと思います。


尊敬する人をテーマに先に普通の日記を書いてみました。


尊敬する人、誰もが一人またはそれ以上いるのではないでしょうか。

それが時に友人であったり、先生であったり、先輩であったり。

僕にも尊敬する人がいます。

先輩・後輩に関わらず、社会人の方もいらっしゃいます。


年齢はまったく関係なく、その人個人が持っているスキル(学生の域を超えて、社会的に通用する技術・概念的なものであるケースもある)が、とても秀逸していた場合、人を引き寄せていくと僕は思っています。


通常レベル・平均値から卓越してたスキルを「コアスキル」として学びました。

コアスキルを持つ者は、その能力自体、誰からも奪われることがなく、また失うこともないため、コアスキルホルダー達と、能力のトレードができると思います。


その技術がそっくりそのまま手に入るわけではないのですが、一定の基準地までは必ず行きます。それが会社経営だったり、資産運用だったり、時に音楽であったり。

独学で学んでいくよりも、卓越した者から直接話を聞くことや質問をぶつけることは、初期段階において非常に効果的だと思いました。

理由はとてもシンプルで、「方向性を誤らないから」。

僕自身がそうでした。


「これからの世界は、90%の人間が10%の富を分け合い、10%の人間が90%の富を独占する」

こう富裕層の方に教えていただいたことがあります。


それがいいのか悪いのかは別として、世界はゼロサムで構成されているのではないかなと思うんです。

すなはち、誰かの損は誰かの得であり、誰かの利益は誰かの損失であると。(幸福や不幸は全く別であり、全員での共有が可能だと考えています)


受験もそのゼロサムゲームの一環ではないでしょうか。


与えられたパイ(合格者数)が一定であるために、システム的に仕方ない面があるのですが、やはり競争のなかにあると思います。


受験を通過したあと、大学に入ってからは自身のコアスキルを磨き、コアスキルのトレードによって10%の中に入っていくことで、道はさらに開けていくと思います。可能性の種は危険性からのリスクヘッジになり、可能性が可能性を生んでいきます。


今日も寒いのですが、目的まで突っ走りましょうっ!


受験勉強の存在意義-Real days- 限界・感情・意志・東京・勉強法・大学受験

それは、自分が行きたいと思った環境に行くこと。
それだけだと思います。


そのために自分自身の限界を知り、今の自分を超えることが必要なのではないかなと僕は考えています。


大学に行って意味がある?したいこともないのに無駄じゃないの?
そう思う人もたくさんいるかもしれません。


昔、似た質問を年上の親戚にしたことがありました。


返ってきた返事は、「勉強しなくちゃいけないという考え方自体がおかしいかもしれないよ。」でした。

強制はされていないわけだし、自分が本当にしたいことは、誰からも何も言われなくてもしているもの。

確かに、自分に発生するすべての欲求もそうですよね。

自分の中にある、「こうなりたい」「もっと…」といったそんな気持ちに呼びかけてみると変われるんじゃないかとその時思いました。


その人は今もボストンのハーバード大学に留学しています。

それは本人が勉強・研究を、少しでも良い環境でしたいという単純な思いから取った行動でした。


「こうしたい」や「こうなりたい」から「これが欲しい」に至るまでの単純な思いは、夢や目標を追う気持ちに似て、とても純度が高く、強い感情だと思います。


誰でも持っている内側から発せられる意志の力。

そして純度が高く尊い感情。


磨き続けていきたいですよね。



毎日-Real days-目標・夢・憧れ・大学院・勉強法・東京・大学受験

ちょっと一休みで、たまに回想とは違う日記を書いてみたいと思います。


現実の僕は、少し忙しい毎日のなかにいたりします。

大学院進学を視野に入れていることから勉強ばかりの毎日なのですが、少しでも充実させたくて、そして何かを変えたくて走り回っています。


あれから「自転車の女の子が気になる」といった声を聞かせてもらいました。
思い出しながら書いている事もあるのですが、もっと早く更新できればいいなと思います。

以前撮った朝の空の写真を載せます。

空はいいですよね。1秒ごとに見える世界が変わっていくから。


『世に生を得るは、事を成すにあり。』
坂本竜馬

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リンクフリーです。ご自由にどうぞ。


多くの方からの影響を受けたいと考えています。

よろしくお願いします。

相談-4th- 志望大学生との出会い

僕はタワーの高層階にいた。

遠くの方に新宿の都庁が見える。



僕は誰も自分のことを知らない街にまで「何か」を探しに来た。もし何も見つからなければ、今日がこの大学に来た最初で最後の日になる。
そんな感じたくもない予感さえした。

近くのイスに腰掛けて、しばらく都庁を見ていた。
そして自分のプロセスを思い返した。

今日まで多くのことを主体的に学んで、行動してきたつもりだった。それが全部が全部間違いだなんて少しも思っていない。

でも、結果になかなか結び付かない。雑音も多い。

いつもこの東京に自分がいるかのような何かが、僕の住んでいる所まで届けばいいのに。渇いた気持ちが変わるかもしれない。

そう何度も思った。

志望大学のこと、東京のこと、住む場所のこと、学生の言葉、サークル、すごい人間との出会い、夢の実現の仕方。

これらがひとつのカタマリになって、一気に押し寄せてきては、消えた。

目の前に広がる街並みは、何も変わらないままだった。
僕の視界も、同じ都会の空をただただ、映していた。




「こんにちは。もしかして受験生?」





突然、誰かが僕に話しかけてきた。


その男の人は背が高く、どうやらこの大学の学生らしかった。手には大学名が刻まれたクラッチバッグを持っている。

その人は黒い髪に、とても整った顔立ちをしている。東京の人はみんなこうなのだろうか。


彼はにこりと笑った。


「ここ、座ってもいい?」


『あ、はい。どうぞ。』


「今日はオープンキャンパスだよね、何処から来たの?」


自分が来た場所を伝えたあと、その返事に笑顔のまま僕を見ている大学生がとても不思議に思えた。


(なんで僕に話しかけてきたのだろう)



「大学はどう?今日来てみて、何か得られるものがあった?」


回答に一瞬困った顔をしていると、それを大学生が見抜いた様だった。問いが変わった。


「あ、ごめんね、急に話し掛けちゃって。」
『あ、いえ大丈夫です。僕も誰かに話を聞いてもらえたらなって思っていたんです。』

「うんうん、そうだったんだ。俺も今日は大学の図書館で勉強しようと思ってきたら、偶然オープンキャンパスの日だったんだよ。」


(やっぱりここの大学生だったんだ。)


彼はにこにこしている。

「あまりにたくさん来ていたから、少し中を回ってみたんだよ。そしたら、君がいた。」


僕には、この大学生の話し方になんだかとても余裕があって、すごく大人に思えた。


『そうだったんですか。一瞬誰だろうって思いました。』

僕はこの時、結構疲れた声で答えてしまった。


「・・・今、何か悩んでいるみたいだね、俺でよかったら話、聞かせてもらえないかな。」
この時の大学生は笑ってはいたものの、とても真っ直ぐで真剣な眼をしていた。


僕は、言葉を選びながら、今までの出来事や悩みを少しづつ語っていった。

成績が思うように伸びないこと。
雑音に負けそうになること。
全く勉強ができない日があること。
わけもない不安に悩んでしまう自分がいること。


大学生は、じっと僕の顔を見ながら、その話を聞いてくれた。そして、僕が話を終えた時、口を開いた。


「実は俺も、昔こんな風に志望大学のオープンキャンパスに来てさ。そこでこんな風に大学生に話しかけられたんだよ。だから、今の君の気持ち、すごくわかるよ。俺も同じだったんだ。」


(そうだったんだ。)


彼は話を続けた。


「さっき遠くから君を見たら、ちょっと雰囲気が違って見えたから。だから、話しかけてみたんだ。それで君の眼をみたら、何か訴えているように見えたんだよ。そして、話を聞いてみて確信した。あぁ、なんだか昔の自分に似ているなって。」


今の何も持っていない僕と、確かなアイデンティティーを持ったこの大学生の彼と同じだったとはとても思えなかった。

でも、話を聞いて行くうちに、少しづつ強い共感を覚えていった。


「俺も地方から東京に来たんだけれど、地元にいた時はなんとも言えないような渇いた気持ちになっていたよ。
なんていうんだろう。

意味もなく地元をチャリで走り回ってしまうような、そんな気持ち。」


(僕が感じていた気持ちと同じだ。)


「で、何かを変えようと頑張るんだけれど、何かも変わらない。いや、その何かが何なのかさえもわからない。そして気がついたらまた次の日になっている。
人って時間が経てば、お腹は減るし、眠くもなってくる。だからその欲求を満たしてあげたら、また次の日になっている。
いつしかその渇いた気持ちの感じ方も鈍くなっちゃうんだけど、確かにあるんだよね、消えたりはしていないんだ。」
『そうなんです!うまく説明はできないんですが。ホントにそんな気持ちになるんです!』

自然と語尾が強くなった。

その僕の返答と表情から、彼はいろいろと読み取ったのだろう。ふいに彼は笑ってこう言った。


「少しキャンパスを歩こうか。案内するよ。」


さっきと同じ笑顔のまますっと席を立った。


この時、僕は彼の後について行こうと思った。

確かな確信があったわけじゃない。でも、何かが見つかりそうな、そんなとても強い予感がしていたから。


エレベーターが到着しドアが開く。

僕には、それがさっきとは全く違うドアに見えた。


『並みのやり方からは、同じかそれ以下の結果が生まれる。
優れたやり方からは、今までよりも良い結果が生まれる。
卓越したやり方からは、卓越した結果が生まれる。』
ジョン・C・マクスウェル

不安-3rd-雑音・偏差値・ストレス・時間・クラッチバッグ・勉強法・大学受験

もう一度東京へ旅立つ前、毎日計画を立てて勉強を続けた。

夏休みのサイクルは、毎日ほぼ決まっていた。


起きたら、すぐに単語帳をパラパラと眺め、昨日覚えた英文法のチェックをする。時間にしてはとても短いが、記憶の定着には大きな効果を発揮した。

朝の太陽も僕に味方していてくれた気がする。



午前中の半分は、現代文の過去問を解くことに集中した。


理由は以前にも書いたとおり、集中の度合いが最も高く、ヒネリを解く訓練が必要だからである。主な材料として、志望大学の過去問や大学入試レベルの現代文を解き、思考のプロセスを強化する。


この訓練を何度も徹底的にやりこむことに集中した。


このときに漢字などの暗記型で得点できなくても1mmも気にしなかった。その理由は配点比率からである。

漢字で現代文の得点や順位に差がつくとは思えない。
もしあるとすれば極めてハイレベルな者同士だろうが、入試は総合力が問われる。

そのため、現代文だけでは合格できないし、ましてや漢字だけでは決定しない。



他に訓練すべき科目があることを僕はなんとなく感じていた。



現代文のあとは、英文法と英語長文の練習をした。

英文法を知らなければ、長文は解けない。


この夏が終わるまでに、文法は有名な問題集で、80%近くの正解が出せたら次の問題集に移るという訓練をした。

同じ問題が出なくても、今解ければ本番でも解ける確率が高い。逆に、今解けずに本番で突然解けるようになるのだろうか。


長文は、単語を毎日コンスタントにやっていたこともあって、知らない単語の数はかなり減っていた。

それでも、知らないものは当然毎回出てくるし、特に名詞の形容詞化など、頭をONにしていなければわからないようなことで最初はつまずいていた。

だが、それも途中から慣れる。訓練し続けることによって、変化が出ることは理解していたからだ。



政治経済の勉強は、有名な参考書・問題集で自学自習した。


時事問題の対策においては予備校の単科を利用した。

用語集で、ほとんどの意味を暗記するようにもしたが、それだけでは得点できなかった。

やはり、自分自身にまで浸みこませなければ、バラバラの単語は効果を発揮しない。当然得点にも繋がらなくなってしまう。

だから、問題集を解き、暗記し、流れを追い、トータルバランスでの完成をどの科目でも目指した。




夏休みの午後は、地元の図書館にも頻繁に足を運んだ。




そこは古くても大きめの図書館だった。
図書館にくると不思議と集中する気分になる。


たまに地元の大学生らしき人たちも勉強していた。
クラッチバッグがないので、どこの大学生かはわからないのだが、読んでいる本と雰囲気からそう思っていた。


ここで中学の時のクラスメイトに会う。あまり会いたくはないタイプの同級生だったのだが・・・


あだ名はコメ山と言った。


日に焼けた肌の色は黒く、ギョロりとした目が印象的で、無駄に活発なやつだ。

昔から他人のことにやたら干渉的で、他人の夢などに何かしらの否定をすることが多かった。
恐らく否定することで、自身の安定化を図っているのかもしれないが、正直迷惑だった。



そんなコメ山は僕を図書館で見て色々と探りを入れてきた。


瞬間的に耳障りな言葉が連発される。


「おいっす。え、大学受験するの?」


「東京?ふ~ん」


「大学行って意味あるんすか?」


「何か夢があるとか?」


「俺は専門行くよ。資格取れば何千万と儲かるかもだし。」


「俺が行く専門には東大生も通っているんだ。」


と、まぁだいたいこんな感じだ。


でもこの時の僕は、大きく成績が上昇しているわけでもなく、確固たるアイデンティティーも確立していなかったので、こんな無神経な言葉に揺れた。



無神経な言葉は、不安を掻き立てる。



メンタルの訓練が、僕には足りてなかったんだとこの時思った。
しばらくそれを引きずってしまったから。

以前にも書いたように、勉強だけでは解決できない問題や不安がある。

時にその言葉が、勝敗を大きく分けてしまうのではないかと思う。


人は言葉に良くも悪くも揺られ、言葉一つで、人生が大きく変わる瞬間が確かにある。
僕が必ず日記ごとに強い言葉を贈るのも、この理由からである。


問題の発生は、コメ山のケースだけではないと思う。
コメ山のような発生源は、いつどこで形を変えて現れるかわからないからだ。


時にそれが電車の中で聞こえた会話だったり、本屋の参考書コーナーであったり、噂話だったり。
さまざまなところで、予期せぬことは常に起こりうる。


その日、コメ山が消えてからも、僕の頭はフラストレーションで揺らいでいた。

不安は放置しておくと、雪だるま式に独りでに大きくなっていってしまう。

オープンキャンパスまで、まだ日がある。

その日までの時間を無駄にしたくはなかった。

でも、勉強に集中できない。。。


行き場をなくしたベクトルは、僕を学校付近の河原まで走らせた。

そこで川の流れをぼうっとただ見ていた。


何時間くらい見ていただろう。
夕方でも夏の暑さはまだ続いている。


太陽がようやく傾き、夕暮れがやっと感じられ始めた。
その時、オレンジ色の夕日の方から見たことのある人が、こちらへ歩いてきた。






自転車の彼女 だ!





メールなどはしていたものの会うのはあの夜以来だ。

僕は彼女の方へ手を振り上げた。



『精神の不安は生のしるしである』
カール・メニンジャー


『勉強する事は自分の無知を徐々に発見していく事である。』
ウェル デュラント



自転車の彼女と、そのまま川が見れる土手に座り込んだ。

夏のせいもあってか、夕焼けの空に飛行機雲が飛んでいる。
夕日が川に反射してキラキラ輝いていた。


「受験勉強、調子どう?」
彼女が聞いてきた。


『うん、まあまあかな。』


「ケイ君、いつも勉強頑張っているし、きっと合格できるよ。」


『あ、うん。。ありがとう。』


「目標に向かっていけること、凄くうらやましいなぁ。私はなんとなく専門に進むんだ。でも、いつか大きな夢や目標とか見つけて叶えるね!」


『できるよ、絶対! 俺も、もっと頑張る。』


ふいに彼女に今付き合っている人はいるのか聞いてみたくなった。
よし、思い切って聞いてみよう。



『今付き合っている人とかいるの?』


「え、あ、いないケド。」


『ま、ま、マジか。』


この時今までの中で一番彼女のことを意識していた。ずいぶんと間抜けな自分だった。
ここからもっと話を膨らませることもできない。


もっと距離が近づけるのは、少し先のこととなる。その日はまた手を大きく振って帰った。


受験に恋愛は必要なのだろうか。
僕にはわからなかった。


でも、一緒にいるとすごく楽しかった。
彼女が僕のことをどう考えているのかはわからないけれど、今は笑い合っている。そんなこの時間だけ大切にしたかった。



翌日からは、感情面での闘いだった。



「不安の克服は、真の集中からできる」と参考書には書いてあるものの、それがなんのことなのかはよくわからない。

そんな時、6月に予備校の現役クラスで受けた模試の成績が返ってきた。





「偏差値50」





(は!? なんで!? あんなに勉強したのに。)

そんなにすぐに成績に反映されるとは思っていなかったが、以前と大して変わっていない自分が嫌だった。加えて、努力をしていたはずの時間が、とても否定された気がして精神的に今までで一番キツかった。



現実を突きつけられていた。



模試の数字が、「大学の高望みなんかするな」と大声で言っているようだった。



窓口から返却されたその紙を勢いよくカバンに詰め込んで、その日は1秒も勉強しなかった。

こんな気持ちのときは、何をやってもつまらなかった。



同じ感情を引きずったまま何日かが過ぎて行った。



前のような退屈な日常に戻っていく感じがし、それに抵抗する気持ちと動かない身体との拮抗の日々だったと思う。



母親からは「顔色すごく悪いけれど、大丈夫?」と言われた。
地元にいた僕は、余りに精神的にくたびれ、大きく変われる「何か」を強烈に探し始めていた。



そして、再び東京に行く日が来た。



長い時間かけて乗り継ぎ、渋谷に着く。
今日はここで降りずに目的のMARCHのオープンキャンパスに向かった。


キャンパスに着くとまた大勢の受験生がエスカレーターやエレベーターなどで、ごったがえしていた。
すいていたエレベーターの方に向い、ドアが開くのを待つ。


これから僕は一体いくつのドアを待ち、いくつのドアを開いていくのだろう。いや、今の僕に、ドアは開くことができるだろうか。


エレベーターが到着した機会的な音が鳴る。

ドアがゆっくりと開いた。




『朝が昼の証を示すごとく、幼き時代は成人の証となる。』
ジョン・ミルトン 

初夏-2nd-起きている時に見る夢・オープンキャンパス・夏休みの過ごし方・勉強法・大学受験・

a86e49e8.jpg 熱い体育館での終業式を終え、夏休みが始まった。
受験生にとって、夏という季節は特別な意味を持つ。
それは、変化の時期でもあり、成長の時期でもあり、我慢の時期でもある。

もちろん、成長させるのは勉強だけではない。
夢にも栄養を与えて成長させるべきだし、未来のイメージもより鮮やかにさせたい。そして、もちろん誰かとの関係も。

夏休みを使って、地方から東京に出て行こうと思っていた。それは、大学で行われるオープンキャンパスに参加するためであった。
どこまで自分を成長させることができるかはわからなかったが、地元から一度外に出てみることで、客観的になりたいと思っていた。

オープンキャンパスに行くのは、いくつかの候補の中から検討した。
成績に大きな変化はなかったものの、まだまだ上昇する前の閾値だと信じていたため、広い選択肢の中から、徐々に絞りこむ。

差別化した時のポイントは、将来の自分が何になりたいのか、大学でどんな勉強をしたいのか、何を手に入れたいのかなどを基準に、いくつか列挙していった。

学部は経済学部を希望した。
以前から少しずつ始めていた経済への興味が強くなり、この世界をもっと深く探求したいと思うようになっていたからだ。だから、選択科目もすんなり政治経済を選んだ。

この頃、英語は単語帳を使って、毎日空き時間に暗記をしていった。小さな刺激を脳に与え続けることを意識した。
長文は流れの中で意味をフォローしつつ、理解していく。電子辞書を引きながらも、確実に正解できるように心がけた。
まさに大臣が教えてくれたように、暗記で対応できない箇所のヒネリを解きほぐす作業だ。

文法はストレートな暗記タイプとそうでないヒネリの検出が必要なタイプがあることを知った。
時にそれが長文の中で出題されることもある。
問題集でまずは暗記タイプを「知らない→知っている・知っていた」に分類する作業を始めた。

現代文は、受験科目の中でも群を抜いてできがよかった。主観を交えることなく、筆者の主張を理解すること。そして、それを客観的な選択肢に当てはめるということ。このときに、バイアスがかからないように意識した。

古文は英語と勉強方法が類似していたこともあり、文法と単語の同時進行し、ある程度読めるなと感じたら問題集や過去問に挑戦していった。

「人は取得選択の中で生きている。ならば自分のキャパシティーを広げることと、選択肢を広げることから始めてみるのがいいのではないか。そして、次に合理的な選択をすることへと進めばいい。」

自分自身の言葉には重みがある。いつか自分の言葉が救ってくれる時があるなら、昔の自分に感謝したい。


夏休み中、自転車の彼女とは友達グループ同士で遊んだ。みんなで友達の家に泊まりで遊びに行き、夜は花火をし、明け方ごろまで語り合う。

何について語り合ったかといえば、当然、誰が好きから、将来の夢まで。きっとこの年頃の、この時期に話す内容は、全世界共通なんじゃないかなと思う。

夜中に、僕達は友達の家の庭に出た。

男女3:3の友達同士で語り合った時間は、夢なのか現実なのかわからない空間だった。
雰囲気を出すために、ローソクを使い、みんながそれを取り囲むように円になる。
ひ
みんなこの時ほど真面目な顔をしたときはなかったと思う。


誰もが語る将来の夢やビジョン、そして自分自身の姿に、現実の足かせなどは1mmも入り込む余地が無かった。
重力とも呼べる足かせがなければ、人の想いは無限に広がる。
自然と何処までも、時にそれは地平線も越せるくらいまで広がるかもしれない。

一人一人の顔がオレンジの原色に照らされ、その口から本音の言霊が生まれる。
世界に放たれた言霊は、その姿を永遠のものにするために、宿主を探す。

僕達のもとに生まれた小さなその存在は、生まれた直後は瀕死の状態に近い。

だから、徹底的に見守ってあげなければならない。
どこが悪いのか、どこをもっと良く改善できるのか。

生まれたての夢を守りたい。これは本能に近かった。
むしろ、本能を超える「使命」に近いかもしれない。
そう直感的に感じ取っていた。


話題が好きな人の暴露になった時、僕達の空気は一瞬で別の色に変わった。
僕も変わっていたと思う。

その時は彼女のことが好きかどうかはわからないけれど、他の人よりも考えている時間が長かった。
彼女の番よりも速く、僕が答えなければいけない時が来た。


「好きな人、暴露しちゃえ!」

なんだかみんなの視線が刺さる。

正直になんて答えればいいのかわからなかった。

「え、あ、いないよ。」
としか答えられなかった。

その後もしつこく追求されたが、適当にあしらった。
本当に空気を読んでいなかったと思う。

後になってわかったことは、多分あの時の僕は、彼女前で適当な嘘をつきたくなかったんだと思う。
仮にそれが、僕自身が気がついていない気持ちを、奥の方に仕舞いこんでしまったとしても。


次の次に、自転車の彼女の番が回ってきた。

僕は、体の体勢を整える仕草をしてごまかしながら、彼女の顔をそっと見た。

円の周りがとても静かになった。
夏の虫の鳴き声が聞こえた。

「私も、好きな人はいないんだ。微妙に気になってる人はいるんだけれどね。」

だれだれ? どのひと? いるでしょ?
こんな質問がすぐに何処からか出た。
色々と周りは追求していたが、彼女は笑って、

「じゃあ、もう一周したらね。」

と言い、次々!というアクションで、次へと周った。
並び方は男女バラバラだったため、隣も女の子だった。
その女友達は、同じグループ内に好きな男友達がいて、かなり照れていた。
どうやら、このことを女子全員が知っていて、知らなかったの男達は「?」という顔をしていた。

それからの時間は、一気に一組のカップルを作る雰囲気になってしまった。

最終的には、その女友達が告白寸前まで行って、その話題は終わった。
男の方も、その子の気持ちには気がついていたと思う。
残りの僕達は、場の空気を読んで、また別の話題へと切り替えた。

どのくらい話しただろう。

今でもはっきりと覚えているのは、赤い空間の中での彼女の横顔がとてもきれいで、目が以前と変わらずに透き通っていたことだ。

明かりが眼の中を乱反射させているかのように、それはきらきらと光っていた。
ローソクの灯は、長さだけが変わり、初めと変わらない灯で僕達をずっと照らしていた。

夏の夜は、夢を生んだ僕達をどこか違う世界に連れて行くのかもしれない。


まだ、この季節は始まったばかりだった。




『青春の夢に忠実であれ。』
シラー

『青春は短い。宝石の如くにしてそれを惜しめ。』
倉田百三

『力強さは使命感を持つところから生まれる。』
松下幸之助

~加速~

247a054a.jpg 夏の朝が明けた。
遠くに青く見える山が、透き通った風を運んでくる。

午前中から、僕は勉強を開始した。

この時間は、集中力を多く必要とする科目を重点的に訓練する。

まずは英語と現代文だ。

僕の場合、現代文は得意科目ということもあってか、各大学の過去問が掲載されている問題集を一日に少しづつ解いていった。

正解した所よりも、間違えた解答の思考プロセスを修正することを意識する。
やはり、間違えたことには「理由」が存在しているはずだし、仮に参考書を使ったとしても、現代文ほど暗記一発で「解けない」科目はないと思う。

このことの繰り返しは、現代文の解答を選び出す力を、飛躍的に高めた。

英語は、長めのセンテンスがまとまった文章を読むことで、頭を慣れさせていった。

いきなり長い文章が読めるはずがないだろうとは予測していたので、この訓練を何度も繰り返してからステップアップを図るつもりでいた。


(繰り返して訓練、繰り返して訓練。)
心の中で、そっと唱えてみる。


いつも意識することで、行動にも変化が表れてくる。



集中力が切れて、いまいち正解を読んでもわからない時は、暗記の勉強に切り替えてリフレッシュをはかった。


暗記は小さい衝撃を繰り返し与えることで忘れにくくなる。それを経験的に学んでいたので、この時に単語や熟語、そして政治経済の基礎的な知識を入れていった。


集中して解答する科目をレフトウイングに、
暗記して覚える科目をライトウイングに。

この夏の間に、自分という飛行機の滑走路を加速させていく。


退屈になった時の休憩方法も、色々と試行錯誤してみた。
音楽を聴いたり、マンガを読んだり、外を歩いてみたり。
できそうなことはなんでも試してみて、自分にあった休憩スタイルを確立しようとした。
候補のいくつかをローテンションしてみるのが、自分にとっては一番効果的だった。
飽きさせないこと、自分自身をコントロールして、支配すること。

訓練で身に付けられると、やっているうちに思い始めていた。

夏休みの毎日は、驚くようなスピードで過ぎて行く。
集中できているのならば、それは嬉しいことなのだろうが、青春の一日がなんだか消えてしまっている感じがして、一日の終わりは少しだけ寂しかった。

8月に入り、いよいよオープンキャンパスの日が来た。
見に行くのは、早稲田大学とMARCHの二つに絞った。

今の自分にはどちらもとても受かりそうにないが、受かるところを受験したいとも思わなかった。
将来の自分のためになる場所で、自分のために頑張れる大学と学部に進みたかったからだ。

日程の関係上、夏の後半にもう一度東京に足を運ぶことになる。


家を出て駅に着く。
電車 考えごとをする暇もなく、唐突にホームに電車が来た。
僕は、開いたドアに右足から踏み込んだ。



『馬の行きたい方向に馬を走らせるには
手間も労力も要らない。 』
エイブラハム・リンカーン




~渋谷~


電車を乗り換え、僕は渋谷に到着する。

駅から出て、テレビでよく見るあのスクランブル交差点に僕はいた。
スクランブル交差点

空は快晴で、太陽の熱によって、地面がゆらゆらとして揺れて見えた。
その光景がなんだかこの街に呼ばれているように見え、目的の大学に行く前に、
この街を少し見て回ろうと僕は考えた。


情報が発信させれていく街。
絶えず人が押し寄せる街。
人々が何かを探しに来る街。

そう、今の僕の様に。


この街では、僕は一人だった。


誰かとすれ違っては消えていく。
みんなが皆、自分の人生を歩いて行く。

もう永遠に会うことのない人が99%以上なのだろう。

そのことがとても不思議に感じられた。
どこかで「めぐり逢い」や「必然」というものを、僕は信じていたから。



それから、しばらくこの灼熱の街を彷徨う。

歩きながら、東京の大学に通い、この街で過ごす自分のことを創造してみた。

不安もあるけれど、きっと楽しい。

まだ出会ったことのない人、きっと自分の人生に大きな影響を与えてくれる人。
僕も必ず人に影響を与えられる人になりたい。
そして、誰かに救いを与えられる人であるべきだ。


夢を掴む街。
かなえる街。


いつしかこの街のイメージが、そう変わっていた。

~必然~

早稲田のオープンキャンパスに着いたとき、そこには信じられないくらいの人がいた。

(ここに来ている人達がみんな受験するのかな・・・)

ここは僕にとっては大きな挑戦校であり、合格できる可能性もほとんどない。
でもだからと言って、簡単に志望した大学を諦めたくなかった。

なぜなら自分を突き動かす原動力は、未来の自分自身を創造した時に生まれるのではないかと思っていたから。

キャンパスの中では、志望大学生=早大生がいろいろとガイドをしていた。
彼らは今の自分にとって、それは憧れの人であり、なりたい自分の象徴でもあった。

(話しかけて、今の不安な気持ちを聞いてもらえたらな。。。)

あの自転車の彼女の時のように、ここで声を出せたなら、どれほどよかったか。

それができずに、僕は一人で歩き続けた。

それから少し彷徨った挙句、図書館の方にたどり着いた。そこでは、クラッチバッグを持って勉強しに行く学生が見える。

大学名が刻まれたアイデンティティーの象徴。

(あれを持って、志望した大学に通いたい。)

その後、夕暮れのキャンパスを後にし、再び長い時間をかけて、帰路についた。

帰りの電車の中で、英単語帳と英語長文を読みながら考える。

今日、自分の足で目的地まで行ったこと。それは「必然」だ。そこには偶然が入りこむ余地なんてない。自分の足で、新たな道を歩こうとすることは、決して偶然じゃない。


そっと夜の電車の窓を見る。
だんだんと街灯の数も減ってきた。

もうすぐ家に着く。

ふと窓に映った自分自身と目が合う。

(1年後、この人はどこで何をしているのだろう。)

今日は不安な気持ちを少し増やして、家に持ち帰ってきてしまった気もした。

少し疲れているのかもしれない。


電車はそんな僕の気持ちとは無関係に目的地まで走って行った。
電車夜








後日、MARCHのオープンキャンパスでは、もう一つの「必然」が僕を待っていた。



『進歩は偶然の出来事ではなく、必然である。』
ハーバート=スペンサー 

予感-1st-受験の開始・東京から伝えられること・勉強法・大学受験

~予感~
あの日々の熱かった気持ちを思い返しながら、このブログを作成していこう。


受験で困っている人・今不安になっている人。

自分達にしかできないことを、提供したい。

Webなら距離は関係ない。

東京から発信できること。

今の僕が発信できること。

すべてが変わる予感。

すべてを変えられる予感。

昔も感じた予感に、今は身を委ねてみよう。


『運命のなかに偶然はない。人間はある運命に出会う以前に、
自分がそれを作っている。』
ウィルソン



~退屈~

退屈な日常から、話は始まる。


地方の高校に通っていた僕は、学校では退屈な時間を過ごしていた。

変わらない友達、同じような授業、同じ電車に乗って、同じ駅から、同じ家に帰る。

それはそれでいいのかもしれないけれど、ふとこんな考えが頭をよぎる。



「将来サラリーマンになったら、今日の延長線上に、明日があるのかな」



思えば、昔はもっといつも自分の周りに熱い「何か」があったように思う。
時にそれが友達だったり、部活だったり、苦い片思いだったり。



ただ、今は毎日が何か渇いていた。心を「何か」で満たしたかった。そして、ぼんやりと見えている道を変えたかったのかもしれない。


この時はまだ自分が大きな流れの中にいることに気がつくはずもなかった。


『人は、運命を避けようとして選んだ道で、しばしば運命に出会う。』
ラ・フォンテーヌ



~東京~

高校は地方の普通の学校にいた。

学校の周りは山に囲まれていて、駅から自転車で15分くらい走らせるとようやく見えてくる。
そんな田舎で僕は高校生をしていた。


高校に入学した時は、大学に行こうかそれとも専門にしようか、そんな選択肢の間を行ったりきたりしていたと思う。


もし受験する場合の志望校についても、漠然と東京方面かなとは思っていたものの、明確にあったわけではない。そしてどこかの大学を希望しても、そこに合格できる力があったわけでもない。


ただ、漠然と「東京」と感じていた。

そこは田舎者の僕にとって、まだ知らない世界であり、単純にスゴイと思える人がたくさん住んでいるイメージがあった。


そんなイメージが、東京の大学に行きたいという気持ちをより強いものにした。


他にもう一つ。
ある記憶が、それを助長させた。


それは、以前東京に旅行に行った時、大学生達が持っていた不思議な持ち物のことだ。


色とりどりのそれは、本などを入れるビニール製のバッグのようなもので、アルファベットで大学の名前が刻んであった。


名称をクラッチバッグというらしい。


キャンパスに通う学生の多くが持っていたため印象がより強められた。

大学名は力強く表記され、自分にとってそれはとても魅力的なものに映った。


キャンパスに通う大学生の姿はとても輝いて見えた。
アイデンティティーを胸と腕に持ってキャンパスに消える姿にいつしか憧れを持っていたのだと思う。


自分も単純にそんな仲間入りがしたかった。


受験に対する強烈なモチベーションを持ち始めたのは、この頃が最初だったのかもしれない。
クラッチバッグの記憶が、僕のインスピレーションと、そこに通う自分をイメージするきっかけになった。


大学生になりたい、あの頃はいつの間にかそう思い始めていた。


『人間は自己の運命を創造するのであって、 これを迎えるものではない。』
ヴィルマン



~大臣~

僕の受験勉強開始時点の偏差値は50なかったと思う。

それまで色んな勉強法というものを試してきたが、これと言って大きな成果が出たものはなかった。

暗中模索・試行錯誤の果てに、一つの答えが見つかった。


「できる人間に聞くのがいいんじゃないか。質問をしてアドバイスをもらいたい!」


僕には一人の親友がいた。
親友だからと言ってこんな言い方は控えるべきだが、彼は漫画などに出てくる「デキる」と感じる雰囲気ではなかった。どちらかというとお笑い芸人タイプだったし、いつもボーっとしているイメージさえあった。


しかし、実際の彼はとにかく頭がキレた。
加えて集中力がものすごく高い。

そんな彼のあだ名は、大臣だった。


彼は後に東京大学・文科二類に現役合格する。


僕は大臣に、いくつか具体的な質問をし回答とアドバイスを求めてみた。

1・「睡眠時間は多く取っているのかどうか」
2・「リラックスや息抜きってどうしている?」
3・「受験は暗記をたくさんすることで対応できるのか?」


大臣からの回答はこうだった。


1・睡眠はたくさん取る。人によって長さは異なるが、リフレッシュできているかどうかが重要。


【理由】眠い状態での勉強は高いレベルでの集中力を生み出さないから。


2・絶対的な息抜きを、常に何処かに組み込んでいる。


【理由】頭の切り換える訓練と、脳を休めることがトータル的に見ていい。
つまり作業量に関して、短期的な時間軸ではなく長期的な時間軸で効率を右肩上がりにすればいい。


3・受験は基本的に、暗記で解けるタイプの問題と、その場で捻られている問題がある。
絶対的に取りこぼしてはいけないのは暗記で解くタイプであり、
大きく合格に近づくために後者のタイプをモノにする必要がある。


【理由】暗記だけで合格できるならば、赤本を辞書や参考書を使ってみて満点が取れるかを試してみるといい。暗記のみで合格できるならば、理論上は可能なはずだ。
だって本番では許されない解答を調べることができるのだから。それでも、それが無理ということは、一種のヒネリの様なものが加わっていて、それを解けない受験生に差がつくシステムはずだ。


やはり大臣の頭はキレていた。
また、この流れからも見てわかるように、大臣には常に「理由」「根拠」があった。
確率的に考えても、試験中制限時間ぎりぎりまで「理由」や「根拠」を探していたんだと僕は思った。


3番目についての主張内容を、わかりやすい一例を挙げて説明したいと思う。

【問題】以下の5つの中で仲間はずれを一つ選択してください。


A…81


B…29


C…63


D…92


E…70


これは簡単なIQテストから抜粋した。
この問題に関して主張したいことは、暗記が介入する余地がないという点だ。

確率的に、どれを選択しても正解できるのは20%である。
しかし長期的に見ても「カン」だけでは、「明確な根拠」を持っている人に勝てないため、常に「明確な根拠」を探すことの大切さを彼は主張していた。


大臣とは、それからも時々メールや電話などでやり取りを続けた。もちろん、利用する形にだけはしたくなかったから対価として僕が提供できることはした。

やはり、どちらかが利用するだけでは、関係が続かなくなるものだし、お互いにとって良い影響を与え続ける関係であり続けたいとの信念もあった。

対価が発生すれば、覚悟が生まれ、より前進したくなる。


大臣はそれから東大を目標に掲げ迷うことなく進んで行った。自分はまだ志望大学さえ決めかねている状態だったが、彼から得たことは大きな変革の一歩であった。



『学べば学ぶほど、自分が何も知らなかった事に気づく、
気づけば気づくほどまた学びたくなる。』
アルベルト・アインシュタイン


~変化~


それからの日々は何かが少しづつ確実に変わっていった。

問題を感覚で処理せずに、「明確な根拠」とその「思考プロセスの創造」を意識的に訓練していくことを念頭においた。


IQテストの例題にあったように、感覚で選択肢を選ぶのではなく、明確な根拠を探す理由を訓練していった。

あの問題においては、左右の数字の絶対値が7で構成されていることに気がつかなければならない。
すると正解は一つだけ絶対値が3の「C」である。


ここには、「なんとなく」という概念が入る余地がない。
明確な根拠が存在している。


学校に通学する時間を使って、同時進行で暗記の勉強も進めていった。
重視したことは「知っているか、知らないか。」


初めてその問題を見た時に、それを知らなければ解くことは難しい。
しかし一度出た問題ならば、それを知っていればすぐに解くことができる。
また人は誰でも一度見ただけでは忘れてしまうため、
「同じことを繰り返す」という小さな刺激を与えるづけることで、深く定着していく。

試行錯誤を抜けた後に感じる確かな手ごたえ。

少しづつだが、問題が解ける機会が増えていった。



退屈だった毎日の中で感じ始めた確かな「変化」。
この感覚を大切にした。



一方、人間関係でも「変化」が起きる。



学校で僕は、一人の女の子と出会った。


その子は、色が白く、髪は肩よりも少し長いくらい。
全体的にスラッとしていて、目がとても澄んでいたことが印象的だった。


彼女と初めて話をしたのは、学校の自転車置き場だった。

授業が終わって帰ろうとした時、僕が停めた自転車のところに、女の子が何かしている。





疑問に思いゆっくり近づいて見てみると、どうやら自分の自転車が出せずに試行錯誤しているようだ。


自分の自転車と彼女の自転車が、誰かの自転車の強引な置き方によって車体が挟まっている。



『どうしたの?大丈夫?』


この時は何も考えずにただ話かけていた。


「あ、大丈夫です。」


『いいよ、借してみて。』


ガチャガチャしていたら、二人の自転車は外れた。


「ありがとう」


『よかったね。』



最初の会話はこんな感じだった。


それからは友達の友達であることもわかり、自然と話すようになっていた。

話す会話は様々だったが、高校3年ということもあって、受験の話が多かった。
ある時の会話で、僕は大学に行きたいと話すと、どの大学?地方?学部は?将来は?とこんな感じの質問が一気に飛んできた。彼女は専門学校に進む予定という。


僕自身、この頃は勉強の変化を楽しみ始めた時期であり、彼女が知っている大学は程遠いと思っていたが、彼女と会話を繰り返していく中で、曖昧だった志望大学のビジョンもぼんやりとまとまっていった。


『東京の私立大学に行きたいって考えてる。できれば浪人しないで現役で行きたいんだ。』


「そっか、頑張ってね。応援するよ。」
彼女は歯
を見せて笑っていた。笑うと目じりが少し下がる。

午後の授業中、僕は考えていた。
彼女のこともそうだし、宣言した自分の未来の二つについて。



(不安。)



そんな言葉が頭の中を何度もよぎる。

正直、地方では東京や志望大学の情報もあまり伝わってこない。地方と都内では情報が回って来なさ過ぎる。
デジタルデバイドという言葉があるように、情報格差が東京と地方では大きく存在していると感じた。


(やっと勉強でも変化を感じ始めてきているのに。)


この時、勉強するだけでは解決できない問題があることを初めて知った。


夏休みなどには志望大学のことを知るオープンキャンパスがあるが、半日でどれほどのものを得ることができるのだろうか。仮にもし都合が悪くて行けなかった場合は、どうすればいいのだろう。


その日の帰り道は、自転車を飛ばして駅まで向かった。
不安の二文字をふっ飛ばすつもりでペダルを踏みこむ。


正面の夕日はまだ高い。

季節は、夏に入ろうとしていた。



『変化こそ、機会の母である。』
中内功


『青春とは人生のある期間ではなく心の持ち方を言う。 』
サムエル・ウルマン