玲瓏-Real days-他大学の友人・大学受験・アドバイス・勉強法・コンサルティング
東京工業大学に在学中の親戚と一緒に、受験生に提供できることを色々実施していくことになりました。
どうやらブログを読んでくれたらしく、強力なサポーターができ、とても嬉しく思います。
彼は中高一貫の有名私立高校から東京大学と東京工業大学を受験し、現在は東京工業大学に通っています。
他大学に通う自分の友人たちもブログのことを知っており、読んでくれている受験生に皆で何か協力できればいいなと考えています。
まだ試行錯誤の段階なのですが、手始めに、何か聞きたいこと・アドバイスをもらいたいこと・改善したいことなどアメブロのメッセージで対応したいと思います。
ブログを始めたのも、少しでも夢や目標に近づく努力を応援したい気持ちからでした。昔の僕達自身がしてもらって嬉しかったことでもあるんです。
それでは、目標まで駆け抜けましょう!


白夜-14th-モチベーション・勉強法・大学受験・クラ
約束の日 まで、時間の流れが遅く感じた。
この日の時刻は深夜だった。
起きている時間にしていた勉強に疲れ、机の上にペンを置き、ふと右を向く。
この部屋の東側には、大きな窓が一つある。
1年前は、何の意味もなく、ぼうっと横目で空を眺めた窓だった。
1年後は、この窓から昇りゆく太陽を幾度となく見た。
唐突にゲーテの言葉を思い出す。
『大胆な行動には、天賦の才と魔力が宿る。』
行動を変えるためには、意識を変える必要があり、その変化が最終的に運命を変えていく。
多くを求めれば、それはより大胆になり、やがてリスクを恐れなくなる。リスクを超え始める。
いつしか自分も挑戦するレベルの大学だと考えていた受験校に、本気で合格したいと思い始めていた。それは思い上がりかもしれない。偏差値的にも合格できるかはわからない。
だが逆に、模擬試験の成績にどれほどの決定力があるのだろうか。その数字は、未来を知っているほど重く、絶対的なのだろうか。
そうは思えなかった。
時に不合格になった時のことも考えたりした。受験を決めた時から浪人はしないと誓っていた。
家の都合のこともあったかもしれない。でも、それだけじゃなかった。
限られたチャンスの中で全力を尽くすからこそ、その軌跡が誇りになる。もし人が永遠に生きられたならば、機会も永遠となり、怠惰に堕ちいた時間を送り続けてしまうだろう。
だから今日の1秒1秒にさえも、未来を刻みつける気持ちで問題を解き続けていった。制限ある時の中で、本気で走りたい。ベストを尽くしたい。
時間はもう夜の1時半になっている。
東の窓からは白夜が見えた。今日の晩は月明かりがとても強い。
部屋の電気をすべて消し、窓を開ける。
冷たい夜風を最初に耳から感じると、少し離れた木の影が踊って見えた。
こんな夜には何が起きても不思議じゃない。
もしかしたら、小石が歌い出すかもしれない。
机に向いすぎておかしくなったのだろうか。
言葉にならない予感だけがしている。
インスピレーションは人を動かす。
自分もそれに従い二階から降りて、静かに玄関の扉を開く。
誰もいない空の下に出た。広い芝生の上を歩いて行くと、月の光が自分の影を映しだしていることに気がつく。
自分も立ち止まると影も止まる。
しばらくそれを見て、その影にこう問う。
(何か見える?)
それは何も言わず動きもしない。
諦めて空を見上げると、空気が澄んでいるせいか、星が良く見える。
きっと広い規模で見たら、この大きく感じる世界も、小さな一部にしか見えないのだろう。
だから多分、この今日という一日も、長い一生の中から見たらほんの一瞬なのだと思う。
その一瞬を見た人に、この輝きと同じような気持ちを与えることができるならば、先へと歩いていく意味があるのかもしれない。
ここまで予感に突き動かされてとった行動でもあった。
今も確かな根拠なんて一つもない。
だけど、気がついた人だけに機会はその存在を明かしてくれる。届いた人だけが変われる何かがある。
志望大学生からもらったギフトもその一つ。届けられた言葉もその一つ。きっと長い物語のほんの一部。
ふいに動かなかった影が体を震わせた。
影は素早く家に消える。
小石が歌う声をBGMにしながら、その日は深く眠った。
色彩-13th-冬季・風邪・対策・時間・毎日・繰り返し・一年・センター試験・勉強法・大学受験
『センター試験が近づいてきました。今日も気を引き締めてやっていきます。』
「頑張れ、ここから応援しているよ!マークは10問解くことに俺はマークしていった。参考までに。」
志望大学生 とメールでこんなやり取りをして、部屋のカレンダーを見ると12月になっていた。
ストーブもつけていなかったためか、それとも冬のせいなのか、この部屋はかなり寒い。
携帯を机の上に置き一階に降りる。
ダイニングに行き、銀色の冷たそうな金属を手に取る。その金属に水を入れて二階へと戻る。ストーブの上にそれを乗せて、蒸発した気体を部屋の中に広げていく。
乾燥していた空気が徐々に変わり始めた。ヤカンを使って風邪をひきづらくする自分なりの対策だった。
この時期の時間の流れはとても速い。
受験生は季節の変わり目に誰よりも早く気がつくという。壁にかけられたカレンダーを眺めながら、その言葉が思い出された。
春からの時間の流れをとても速く感じていた。一年がこんなにも早く過ぎていく経験が今までない。
一年前の自分を思い返してみる。いったい何をしていただろうか。
ただリビングでテレビを見たり、ゲームをやったり、マンガを読んだり。
同じことの繰り返し。同じ毎日の連続。
それが、いつのまにか、異なる日々を模索していた。
そして足元には、色の違う時間が流れていた。
今の僕にできること。今の僕がすべきこと。
それは誰が決めるわけでもなく、自分の奥の方から流れてくるものなのであろう。
流れ出た想いが、外側の皮膚を突き動かし、羽ばたかんと躍動するのであろう。
彼女がまだ学校に通い続けていた頃に、CDを貸したことがあった。
「今、良く聴いている曲のCDを貸して欲しい」
そんな会話からだったと思う。
僕は一つのCDを渡した。
それには歌詞が存在しない音楽が入っていた。
いつしか疲れた時は、目をつむり椅子にもたれて、その音楽を聴いた。
今月の24日には彼女と会う約束があった。僕が強引に誘ったものだった。
今の僕にできること。今の僕がすべきこと。
センター試験までの間にすることは決まっていた。
同じことの繰り返し。同じ毎日の連続。
それが今までの軌跡を色濃くすると信じて、今日もその色を重ねていく。
同じ色が重なる度に、新しい色が生まれていく。
混ざり合うことなく、侵されることなく、昨日重なりし色は、色褪せぬこの瞬間の色を創り出す。
未来の自分を願う、その希望から生まれた色。
部屋の白かった息は、透明に変わり見えなくなっていた。
もう暖まっている。
携帯を閉じ、再び机に向かった。


機会-12th-覚悟の度合い・環境や事情・就職・MARCH・早慶・勉強法・大学受験
11月に入り、明け方の息も白くなった頃、学校のクラスでは誰がどの大学を受験するのか、そんな話題で持ちきりだった。
日東駒専・大東亜帝国・関関同立・MARCH・早慶・そして国立。
行きたい大学、挑戦する大学、合格できそうな大学。
人によってその意味合いは異なるだろう。
どの大学であっても10年後に、その時の気持ちが自然と彷彿されるのであれば、誰も否定はできない。
自分は早稲田政経とMARCHを受験校に決めた。
偏差値はさらに上がっていたものの、まだ早稲田は挑戦校の意味合いが強かったと思う。
早稲田はオープンキャンパスで大学の雰囲気を感じ取っていたこともあるが、MARCHを決定つけたのは、もちろん大学生とのやり取りだ。
東京に対する憧れや、熱い気持ち、そして信念に裏打ちされた言葉とクラッチバッグ。
数えればキリがないほどの要素が、自分の気持ちを受験大学に集めた。
太陽光をレンズで一点に集めると燃えるように、目標を突破することをイメージした。
少しでも未来への気持ちが揺れたら敗ける。
敗けないためにすべきことは、自己規律に基づいて毎日を計画的に過ごしていくことではないだろうか。
あれから、自転車の彼女は、家の都合ということでしばらく学校を休む日が続いていた。
心配になってメールや電話で様子を聞いた時は、いつもと変わらない明るい声だった。
でも本当はとても大変なことが彼女の家庭であった。
自分は事情をすべて聞かせてもらっていたのだけれど、もうそこは触れてはいけないテリトリーだと思い、その話題については極力、距離を置いた。
2週間ぶりに彼女が学校に来た。
その日の授業中にメールを送り、放課後一緒に帰ろうと誘った。
二人で自転車を押して歩きながら、少し遠回りをして帰る。
空は太陽が西に傾いていて、雲がとても赤く見えた。
川が流れている小高いサイクリングロードがあったので、そこに登り、芝生に二人で座る。
会話はいつものようになんでもないことから、将来のことなど。
ただ、この日はどことなく空気が違った。
「受験の方はどんな感じ?」
『まあまあだよ。それよりも大丈夫か。』
「うん、ダイジョウブ。ありがと。」
長い沈黙になった。
彼女が口を開く。
「大学とか行けたらすごく楽しいよね、きっと。」
「私もね、本当は大学に行きたかったよ。青学に行ってみたかったな。ムリだろうけど。」
口もとだけ笑っていた。
「このまま地元に残って専門に行くつもりだよ。それで、地元に就職して、いつか結婚して家族を持って・・・。平凡な将来かもしれないよね。」
『そんなことないよ。』
「ううん。でも、それでもいいって思ってる。」
そう言葉を放った時の彼女の顔には、覚悟がにじみ出ていた。
あの澄んだ眼に、オレンジの夕日が強く反射していた。
彼女はそれからしばらく黙っていた。
風が吹く。空の色はこの瞬間にも変わっていた。
彼女がふいに
「ケイ君は、チャンスがあるじゃない?だからそれを使って、目標を掴んで欲しいよ。」と言って、両手でグーを作ってみせた。
いつもと変わらない笑顔で。
いつもと変わらない声と一緒に。
いつもと違った未来を垣間見せた後で。
多分きっと、人には与えられたチャンスを持つ人と、持たない人がいるんだと思う。
そのチャンスがすぐ手の届くところにありながら、それに気がつかないで逃がしてしまう人。
そのチャンスをどんなに欲していても、環境や事情から手に入らない人。
もし自分のチャンスを理解していたら、その希少性を意識できているなら、それを掴み取るべきじゃないだろうか。
それから僕たちはオレンジと青が混ざり合い色が変わった空の下を歩いてお互いの家に帰った。
彼女は翌日から再び学校にあまり来られなくなった。
今の自分にできること。
彼女のためにできること。
あの時はそればかり考えていたと思う。
『機会があらゆる努力の最上の船長なり』
ソポクレス


-11th-テクニック・モチベーション・アイディア・Breakout・合格・勉強法・大学受験
秋になってからはさらに偏差値が再び伸びた。
「62」
今までやり続けてきたことは、間違っていなかった。
そう確信できた。
それでも、これは一時的に数値が上がっただけかもしれないし、もう一度出題範囲を変えれば下がる可能性もある。だから油断はしないように意識しながらRSIに記入した。
ここにきて独自のテクニカル分析したグラフも、さらに磨きもかかっていた。整理するとこうだ。
まず朝に一日のモチベーションレベルを記入する。そして夜に一日のモチベーションレベルを記入する。
一例を挙げると、ある日の朝はあまりやる気がなく一日の開始時の数値を30%とする。そしてその日の寝る前に一日全体のモチベーションを思い返してみて、途中でやる気に変化が起きていた場合はそれを記入する。この場合だと、50%と記録する。
この時に、多めに書いても少なめに書いても仕方なく、他の人に見られる可能性がゼロだったので、正直に書いた。
そこからローソク足という投資のテクニカル分析の手法を取りいれて、30%から50%に白い四角で書く。反対に朝50%から夜30%に下落した時は黒い四角で埋める。そしてその平均を色を変えてRSIに棒線で記入する。(この場合は40%)
これを一日単位の短期時間軸から、一週間の中期時間軸、一か月の長期時間軸と記録する。
それら平均値をグラフに加えることで、デットクロスの危機感を持つべきタイミングとゴールデンクロスを何回繰り返したかがわかる。もちろん反対に何回デッドクロスをしたのかもわかる。
これは、今現在の自分のトレンドが上昇中・下降中・維持可能中かを明確にしてくれた。二つを組み合わせたことで相乗効果を生んでいたのだと思う。
モチベーションが高い状態で一週間、一か月、三か月と上昇トレンドから維持までを続けていけば、それだけ目標に近づいている目安となる。やる気が集中力を生むからだ。
意外と根気のいるこの作業の大部分を一人でやっていたのだが、今考えると完全にアウトソーシング(外部に依頼)して自動でグラフを送ってもらえたら本当に便利だったと思う。そんなことをしている受験生は他に誰もいなかったかもしれないが。
また、これらのテクニカルグラフにおいて、Breakoutという発想があった。そもそもは投資のチャートから学んだのだが、まったく同じことを当てはめることができた。
平均値を出してデータを蓄積していくと、ある一定の越えられないラインが存在していることに気がつく。これに対して、モチベーションのコントロールとタイミングを客観的につかめ始めると意識的に頑張る日が出てくるため、そのラインを超えやすくすることができた。
それこそが、Breakoutであり、昨日までの自分を超えたことになる。
これには定期的に志望大学生とメールのやり取りができたことも関係した。
こういった機会のおかげで定期的なモチベーションの維持にとても貢献してもらえた。
すごく欠かせない機会だったし、誰もが持っていてもいいと思う。
そして、それらの影響を受けた日ほどRSIが上昇した。
最後に、モチベーションには、逃げの動機付けと、肯定の動機付けの二つがあった。
「やらなくちゃいけない」といった否定的な表現は、それは逃げの動機となる。
「怖い」「不安」だからやるでは、RSIで高い状態をキープすることが難しかった。
逆に、「こうなりたい」「自分に勝ちたい」「昨日よりも進みたい」、そんな肯定的な言葉は上昇しやすくかった。
自分の独自のスタイルが完成していくと、気持ちも前向きになれた。
空を見上げる。
雲ひとつない。
東京の空は今、どんな深さの色をしているのだろうか。
向かうべき目的地には今、どんな風をが吹いているのだろうか。
地方の山を吹きぬける風は、あの夏の匂いを含ませて僕を追い越して行った。
『発見に価するものは、案外身近なところにあったりする。ただ、それに気付くかどうかが問題である。』
アイザック・ニュートン


-10th-確率・問題集・朝型・勝利・危機感・作戦・スキル・やる気・大学受験・勉強法
新学期が始まる。
秋からは本番で使えるスキルを身につける訓練に集中した。
志望大学生 からのメールは全部保護にしていた。
彼とのメールで特に役立ったのは、今まで自分が気がつかなかった自身の習慣やクセを掴めることだった。それはRSI【Relative Strength Index=相対力指数】・移動平均線のグラフ化によって最高の効果を生み出した。
モチベーションが下がってきて、落ち込むとわかっている瞬間や日が掴むことができる。移動平均線と組み合わせれば視覚的にデッドクロスするからだ。
それらのサインがあらゆるタイミングを教えてくれた。
たとえば、「今日は今までよりも頑張るべきタイミングの日」や「モチベーションがそろそろ落ちるから暗記に切り替えるのが効果的なタイミングの日」など。
事前に傾向からタイミングが掴めるため、「今週は、モチベーションが少し落ちている傾向(トレンド)だから、自分と対決して勝とう!」と現状を客観的に捉えることができた。
今現在が上昇中の流れにいるのか、下降中の流れにいるのかが把握できる。それによって予めモチベーションの作戦が立てられる。
人は一定の波を繰り返していく。そんな中でもモチベーション維持のタイミングがわかったことがとても効果的だったのかもしれない。原動力エネルギーがなければ何も動き出せないからだ。
この作戦と挑戦の一つ一つが自分の運命を書き換えてくれるはずと信じて進んだ。
学校が終わってからの放課後、家に帰宅してから図書館に行く時もあった。
少しずつ夕方の時間が色濃くなり始めている。
図書館に行く時、クラッチバッグを必ず持っていった。
希望とか未来とか情熱とか、あらゆる気持ちをそこに詰め込んで自転車に飛び乗る。
ペダルを踏むごとに、心にこう呼びかけてみた。
(この挑戦はどんな結果でも、必ず10年後に意味を持つはずだよな)
一方で模擬試験の偏差値が返ってきた。
「59」
以前よりも上がっている。
嬉しかった。だからそんな日ほど、もっと勉強した。
一喜一憂によって簡単にブレてしまうことをRSIを見ればすぐにわかったからだ。
RSIに100%と記入して、平常心を心がけた。
もちろん危機感がなかったわけじゃない。
運に頼って何もしないという無謀な選択肢も頭にちらついたりする。だから恐らく、何事も運の要素が関係ないくらいに、自分を高めなくてはいけないのかもしれない。
「タノム」「オネガイ」が出てきた時点で、何かが足りていないのだ。
神頼みしないマインドが、戦略を生む。
運に依存しない戦略が、勝利を呼び寄せる。
問題集と格闘する時、何度も同じ形式の問題を解いた。
初めて見た問題でも一度目から解けるようになってきていた。
期待値がプラスに転じてきたのだろう。
でも絶対と呼べる確率は、まだまだ遥か向こうだ。
僕は、向こうの確率まで行きたかった。
そして、確率の向こうまで行きたかった。
夕方の気温が寒くなってきたある日、地元の駅で偶然大臣
に会った。
久しぶりだねという会話に混ぜて、起きている時間帯について問う。
「ん、夜9時には寝てるよ。なんか自動的に眠くなる。」とか「朝は4時くらいに目が覚める」と彼は答えた。
ふむふむ。活動する時間帯が朝型なのか。
確かに本番の試験は午前中から始まる。その日を境に、少しづつ朝型にシフトチェンジしていった。
新学期からは彼女との距離も少しづつ近付いていった。
時間が合えば駅まで一緒に帰る。仲の良い友達からは付き合っているのかと聞かれたが、適当にはぐらかした。まだ自分の気持ちをきちんと伝えていないし、彼女の気持ちもはっきり聞いたわけじゃなかったから。
このまますべてを良い方に変えていきながら、受験を突っ切りたい、あの時はそう思っていた。そう願っていた。
叶わないことになってしまうけれど。
-9th-花火大会・時間・夜・速度・光・手・勉強法・東京・大学受験
模擬試験を終え、電車に乗って足早に家に帰宅する。
自転車の彼女
からのメールで、お祭りがある花火会場のそばに19時に待ち合わせた。
ちっとも落ち着かなかったので、洗面台を行ったり来たりしていた。家族から変な目で見られていたが、そんなこと知ったこっちゃない。
花火大会の場所は駅から少し歩いた場所にある。
待ち合わせの時間ちょうどに電車が着く。今日は改札を出てからすごく多くの人たちが会場へと歩いていた。
カップルや親子連れ、友達同士。色んな組み合わせがいた。
今日の僕たちは何になるんだろう。
電車を駆け降り、待ち合わせ場所へ向かった。
そこには彼女がもう待っていた。
彼女は黒地に大きな赤い花が無数に刺繍された浴衣を着てきていた。長い髪の毛を頭の上の方で一つに結っている。彼女は変わらず目が澄んでいた。
『浴衣着てきたんだね。』
「うん。」
『めっちゃ似合っているよ!』
「ありがとう。」
こんな会話を交わした。
実際浴衣がすごく似合っていたし、それを見て一気に緊張してしまった。
とにかく言葉をとても選んでいたようないないような。
彼女の歩くペースに合わせて二人で会場まで向かった。しばらく歩くと屋台がたくさん見えてくる。色とりどりの屋台があるだけで、お祭りに来ているんだという実感が増した。
花火会場までの道は、とても暗く、正面から強いライトが無数に当てられている。
強く発光した光は、同じ方向に歩く人たちを黒く揺らめく残像に変えた。
蜃気楼のように揺れる人影は、世界をスローモーションのように見せる。
隣で同じスピードで歩く僕たちだけを取り残して、世界は違う速度で動いていた。
「なんだか不思議だよね」
『何が?』
「だって、自転車置き場で会ってなかったら今もお互い喋ってないわけだよ。」
『そうだよね。』
「今、誰とも付き合ったりしてないの?」
彼女が唐突に聞いた。
『あ、うん。え、いや、なんだ、受験とかあるよね。だからう~ん、、、でもどうなんだろ。』言葉に詰まる。とにかく言葉を選んでいたようないないような。
「なんで私を誘ったの?」
『ストライクをさ…』
「はいはい、わかったわかった」
「今日本当はバイトあったんだけど、シフト変わってもらったんだ、実はね。」
『ま、ま、マジか。』
「うん、マジだ。」彼女は思いっきり歯を見せて笑った。
花火会場につくとそこにも溢れるくらい人がいた。適当に空いたスペースに座る。
花火はすぐに始まった。
僕達はただただ、その光と黒い空を眺めていた。
時間の流れる速度を忘れる瞬間。
しばらくその光に引き込まれた。
幾度目かの花火上がり、それがはじける瞬間、彼女の横顔を見た。
青や赤や原色が彼女の髪を照らす。そしてあの澄んだ眼をもっと深い色にした。
眼の奥の色は一体何色なんだろうか。
花火がその色を一秒だけ決めては消える。幾度も消えた残像が僕の網膜に溶けた。
眼と眼が合う。
ん?といった顔をして彼女は笑う。
幾度目かの大きな花火が上がった。
視線を落とすと、彼女の右手があった。
気がついたらその手にそっと自分の左手を重ねていた。
無言で彼女がこっちを向く。
眼を凝視している。
何秒過ぎただろう。
その手の向きが内側に変わる。
花火の音が聞こえなくなった。
そのくらい静かだった。
花火が終わったあと、道がぎゅうぎゅうに込んでいたため、
少し時間を潰してから帰ろうということになった。
そのままそこにしばらく座り続けた。
『すごかったね。』
「うん。」
握った手はいつのまにか離していた。
なぜ離してしまったのか自分でもわからない。
駅までの帰り道、妙な沈黙が生まれる。
もう一度手を繋ぎたかったし、繋ぐべきだった。
でもできない。。
わかっていても、感情が支配してしまうときがある。
恐れや不安、それがひとつの見えないカタマリになって、こうも人は簡単に身動きが取れなくなってしまうのか。
駅に到着し電車に乗る。僕たちは別々の駅で降りなければならなかった。
電車内ではたわいもない会話をする。
もっと話したいことは別にある。
もっと伝えたいことは他にある。
心の声は、喉を通して世界に放たなければいけないのだろう。じゃないと、こんなに距離が近くてもそれは存在しないものとなってしまう。
頭でわかっていても心が勝手にブレーキを踏む。いつも感情に支配される自分。
「次に会うのは新学期からだね」
『…だね。長いなぁ』
「すぐだよ」
彼女が先に自分の駅で降りた。
また歯を見せた笑顔で手を振ってくれた。
電車は機械的にドアを閉める。
姿が見えなくなるまで手を振ってくれたことが、踏み出せなかった自分をより後悔させた。
家に帰り、「ただいま」も言わず部屋に入る。
電気はあえてつけなかった。
つけたくない気分だったから。
ベッドに横になる。
言葉が何も出てこない。
ただ出てくるのは、今感じている気持ちだけ。
彼女のことが好きになっていた。
部屋の窓を開けてみる。
見える景色はいつもと変わらない。でも、匂いがどこか違った。
(夏が終わるんだ)
窓の網戸まで全開にする。
かすかにする次の季節の匂いを、思いっきり部屋の中に取り入れた。
その日は夢を見ることなく眠った。


-8th-模擬試験・政治経済・現代文・英語長文・英文法・勉強法・大学受験・クラッチバッグ
模擬試験会場に着いてから試験が始まるまでの間、志望大学生とのメールのやり取りや今までしてきた勉強を
思い出して集中力を高めていた。
現代文の過去問などでも、間違えることが少なくなってきた。よほど思考のプロセスにブレが生じていない限り、今では8割近くキープできていた。
政治経済は一通り全範囲を終えてはいたが、それでもまだまだ考える作業が必要な場面では正解できない。
重要なことは確実に正解する力なのだ。
答えを見てわかったつもりになってはいけないと思った。
そこには心理ギャップが存在していて、知っていたけれど正解までたどり着けなかったことこそ本当に訓練すべきことのはずだ。
英語の長文は毎日過去問レベルからそれ以下の問題を解いていった。まだまだ6割も正解できない。でもやり続けるしかない。解き続けるしかない。
並行して単語帳をメンテナンスし続けたのはすでに習慣になっていた。
英文法は、春から変わらないスタイルで、一冊のうち80%がその場で見て正解できるまで繰り返していった。
そのかいもあり、センター型から記述型まで幅広く対応できるようになった。
経済関連の本を読んでいて、こんな言葉に出会ったことを思い出す。
「ドローダウン」
一例を用いて簡略的に説明するとこうだ。
問・ここに10個のおはじきがあります。今からこれを使って簡単なゲームをします。
このおはじきのうち9個は青色で当たりを意味します。残りの1個は赤色ではずれを意味します。
これらのおはじきを袋の中に入れ、あなたはひとつを選びます。
その選んだものが青ならばプラス10点。赤ならばマイナス50点。選んだおはじきを再び袋の中に戻してシャッフルします。
これを全部で5回繰り返し最も得点の高い人が勝者になります。
さて、連続して3回赤いおはじきを選ぶ確率はいくつでしょうか?
この場合、ゲーム自体の期待値が正ではあるため、繰り返せば繰り返すほどに、得点はプラスされていく。そこに感情は入らない。
ただ、長くこのゲームを繰り返す限り「連続してハズレを引く確率」から逃げ切ることは絶対に不可能でもある。絶対的にそれは存在し続ける。
これがドローダウンである。
試験においてもそうだ。
対策をとってきた箇所が出るとは限らない。そして模擬試験でも連続して悪い点が出続ける場合が、「確率的に」必ず存在している。
通常、ただ単に勉強していないケースもありえるが、ドローダウンもまたあり得る。両者を混同してしまうことによって、モチベーションが削がれてしまったら模擬試験や普段の勉強において【プラスの面<マイナスの面】となり、「その行動をしなかった方が長期的に有利」となってしまう。これでは元も子もない。
このことを学び、次の模試で仮に成績が悪かったとしても、ドローダウンと捉え、なぜ間違えたのかを検証する計画を立てていた。
そこに感情を入れないことが、自分をさらに一歩先に進めてくれると考えて気がついたからだ。これに関しては感情よりも、合理性を選んだ。
開始時間が来る。
模擬試験が始まった。
-7th-・フレームワーク・テクニック・RSI・合格得点・マーク型・設問・解答・勉強法・大学受験
模擬試験まで、毎日とても高い集中力で勉強が続けられた。時間も伸びてきている。
ただ、単純に勉強時間を増やせばいいとは思わなかったし思えなかった。
周りからは「今日は12時間勉強した。」「参考書を2日で終わらせた」といった声が聞こえてきたが、主観と客観とIQ型問題が混ざった場合、一概に時間量で測ることはできないのではないかと思う。
単純に、「本番で解ける力」が欲しかった。
「本番で得点するために問題を解く」ということを、論理立てて分析してみた。
また起こりえる組み合わせを検証する。
これはフレームワークという考え方らしい。
当時そんな名称自体は知らず、ずっと後になってから外資系企業の試験を突破した友人に教えてもらった。
フレームワークは奥が深くとても役に立った。理由は、全体像を掴めば、ごちゃごちゃしていても整理して考えることができるし新しい発見もある。
まず本番で解けるということは何を意味するのか。
それには本番の定義をする必要がある。
本番とは、言うまでもなく本番の試験。すなわち入学試験である。
入学試験には大きく分けて合格と不合格があり、それを決定するのは得点である。
一般的にその得点は各設問に正解していた場合に加算され、不正解の場合は加算されない。つまり得点を多く手に入れる必要がある。
さらにその入学試験には制限時間が設けられており、それは参加者全員に同じ条件として課せられている。
設問の特徴として、筆記型とマーク型があり、センター試験や多くの私立大学の場合マーク型が多い。また設問自体、予測することはできても、予め答えを知っておくことはルール上不可能である。それでは設問どころか試験の存在意義がなくなるためだ。
つまり初めて見た設問でも解けるようにしていなければならない。そしてそれは以前の日記にも書いたように、暗記を一発で当てはめる訓練とは異なるトレーニングであると考えた。
結果として、合格するためには設問を多く正解し、得点を積んでいく必要がある。そのために「その場で正解を導く力」が要求されている。
そのファクターがなければいかなる方法を用いても合格することは論理的には不可能である。ということは、その力を普段から訓練しておくことが合格に近づくためには絶対に必要な力であり、かけた時間に対してのリターンも非常に高いはずである。
当たり前と言えば当たり前なのだが、あくまで分析をしてみることで「考えて」問題に対処したかった。
論理性がここまでの流れの中に感じていたので、もう一歩考えてみた。
では「その場で問題を解く力」を訓練するためにはどうすればいいのだろうか。
答えとして「本番と同じ状況で同じことをすること」が効果的ではないかと考えた。
つまり練習の段階で解けないものが本番で急に解けるようになるとは考えにくいからだ。
そこまでをそう結論つけて、答えを隠してひたすら問題を解く作業により力を注いだ。
その際に、それを選んだ根拠を探した。根拠を紙に書くなりしてプロセスを極力あぶり出す作業に徹する。そうしないと「何となく」といった感情で解答し、正解を選んでしまう確率が常に存在しているし、それを本番までに持ち越すのは不利だと考えたからだ。
また時間の記録も始めていった。
ただ長さを測るだけでは、時間追及にはじまりに惰性に負けて終わりそうだったので、それはやめた。
一日の時間の使い方を意識して、それを志望大学生のアドバイス通りグラフにしていった。勉強した時間よりも、していない時の時間をはじき出し、改善できる箇所を探した。この作業を彼が手伝ってくれたのでとても助かったし、効果は抜群だった。
やり方として、まず短期的時間軸と長期的時間軸の記録をし、それから平均値を測定する。これを数週間続けてグラフにするのだが、線グラフにしたときにおもしろいことに気がついた。
頑張っている時は、短い時間軸の線が、長い時間軸の線を下から突き上げるようにクロスする。
そして調子が悪い時は、短い時間軸の線が長い時間軸の線を上から下にクロスする。これは見ていてとても視覚的にも効果があった。
偶然にも類似したグラフをインターネットの株式チャートで見つけた。
それはテクニカル分析というアプローチのサインであり、移動平均線というものらしい。そしてこれらのクロスを株ではゴールデンクロスと、デッドクロスと呼ぶ。
僕は調子がいい状態のクロスをゴールデンクロス。
調子が悪い時のクロスをデッドクロス。
こう覚えて、勉強以外の時間を少しづつ短縮化していった。
他にも無数のテクニカル分析が存在していた。実際に使っていたおもしろいものを紹介したい。
その一つにRSI
と呼ばれるものがある。
これは加熱率・冷却率を表すサインらしく(厳密には少し異なる)当時の僕は(よし、今日は高いモチベーションで勉強したからRSIは80%だ)と記録し、(今日はかなりスランプ気味でやる気が起きにくいなぁ)という日はRSIは20%と書いた。
これを一日ごとに記入していった。
不思議なことにRSIが高い状態のまま何日も継続することはあまりなく、むしろあるときに必ずと言っていいほど下がる日があった。
これの効果的な点は、事前にある程度モチベーションが下がる日が予測できるのだ。
それによって、ペース配分が調整できたり、下がるとわかっているからこそ暗記科目に徹するなど
かなり臨機応変に対応ができて、凄いものを見つけてこっそり喜んでいた。
投資の世界のテクニカル分析を、勉強に当てはめて考えることはとても面白かった。そして何よりも他の人がやっていないので、すごく楽しんで勉強できた。
模擬試験の日は雨の音で朝7時に目を覚ました。
(花火はやるのかな。)
模試当日の朝に一瞬こう頭をよぎった。でも、今は試験が終わるまではそれに集中しよう。
そして今日の試験が終わったら即行で家に帰って出かける準備をしよう。
雨の中、傘をさして駅まで走った。
『リスクは、自分が何を行っているかを把握していないことに原因がある』


改善-6th-勉強時間・勉強量・グラフ・東京・勉強法・大学受験
あの日から僕は、今までとは違う自分と共に勉強を続けた。
春に大臣からアドバイスしてもらった具体的な勉強のやり方は何も変わっていない。やり方の問題ではなく、心の持ち方が大きく変わったのだと思う。スランプに直面し、それを乗り越えようとさらにアクセルを踏んだ。
オープンキャンパスで出会った志望大学生とはたまにメールで連絡を取り合った。
具体的には、いくつかアドバイスをもらった。
たとえば、
『勉強時間をもっと改善したいのですが、どうするのがいいのでしょうか?』とメールしたとする。
すると、まず正解を簡単には教えてくれなかった。
「今やっている具体的なやり方をまず教えて欲しい。」
『今、なんとなく勉強時間で英語長文を90分自宅で勉強、英文法を60分勉強といった風に記録はしています。この時間をもっと長くできるようにしたいと考えているのですが』
彼は僕自身のスタイルの提示をうながした。そしてそれをよりよいものに改善するためのアドバイスをくれた。
「勉強時間の増減をグラフ化してみるといいんじゃないかな。そして、勉強量の記録も取って、同時にグラフ化するんだ。さらに、時間軸を設定して、1日の平均値と、1週間の平均値、そして1か月の平均値を出すんだ。それをチャートにして、視覚化できるようにする。どんなコンディションの時に、自分の勉強ができていないのかを記録してみるといいんじゃないかな、参考までに。」
このアドバイスの優れた点として、平均値の増減が挙げられると思う。また時間軸と量と平均値によって、従来では見えにくい自分の長所・短所・盲点が見つかる。
このように斬新で僕の個人のスタイルを改善し、さらに進化させたものにしてくれるので、本当に力強かった。
他にもこんなケースもあった。
『勉強をしているときに一瞬チラッと別のことをしたいなと考えてしまう時があります。たとえばギターを弾きたいなと思ってしまったり。集中力を上げるしかないのでしょうか?』
「どんな時に、勉強から別のものに意識が向くのかをカウントして欲しい。すべての行動にはトリガーサインがあるはずだよ。トリガーサインとは、引き金が引かれる状態を示す何かのこと。何らかの要因・原因があって、意識が別のものに向いてしまっているのではないかな。だから、そのサインを察知して、事前にコントロールすることで、意識もまたコントロールできるよ。」
この時、確かに机の上にギターのピックが置いてあって意識がズレてしまったというものだった。モノが媒体となってトリガーサインになるのならば、それを片付ければ、自分の意識をコントロールできる確率が高まる。
僕は未来が正しい方向へゆっくりと傾いていくことを感じていた。たとえそれが人から勘違いと言われたとしても、味方してくれた予感と直観を素直に喜んだ。
来週の模擬試験は、もっと高い偏差値を出してやると身近な目標も設定していた。
夏休みも終わりにさしかかった頃、図書館で勉強をしていた時、コメ山が話しかけてきた。
「やっぱ受験するんだ。」
『そう。気持ちは変わらない。』
「結局東京へ行くんすか。」
『そう。』
「家賃とか高そう~」
『バイトをしながらでも行く価値があると思ってる。』
「最近の大学生ってあんまり活躍していないよね。」
『自分は何でも挑戦していくよ。』
「ふ~ん、でも有名な大学じゃないと意味ないんじゃないんすか。」
『それはおまえが決めることじゃない。』
ここまで無関心な対応でいなしていたので、向こうも相当ムカついたのだろう。
最後にはき捨てるようにこう言っていた。
「俺が通う予定の専門には東大生も通って・・・」
『おまえ、ホント暇だな』
あれからコメ山には一度も会っていない。
家が不動産売買に手を出していたと聞いていたから、時期的にも少し心配だ。
夏休み最後の週末のために、自転車の女の子 にメールした。
彼女はバイトをしていたので週末が空いているかどうかは普段ならわからない。でも事前に何度かしていたメールから、なんとなく土日が空いているような雰囲気を感じ取り(僕も少しづつ空気を読めるようになっていた)花火大会に誘ってみたのだ。
『そういえば今度の土日、花火大会あるよね。』
「ね!あるよね!バイトのシフトをその日は入れなかったんだぁ。」
『自分も模擬試験が終わってから夜暇なんだ。すごくストレートな言い方になっちゃうんだけれど、よかったら一緒に見に行かない?』
「ホントにストレートな言い方だね。うん、いいよ。」
『フォークボールでもストライク狙うよ。』
「じゃあ待ち合わせはまたメールで決めようね。」
フォークボールはスルーされた。
その日は熱帯夜だった。
夏の虫の音が、とても響いていた。
『成功者のやり方を寸分違わず、なぞればきっと彼らと同じ成果をあげられるはずだ。』
アンソニー・ロビンズ

