相談-4th- 志望大学生との出会い | 大学受験デイズ-GIFT-

相談-4th- 志望大学生との出会い

僕はタワーの高層階にいた。

遠くの方に新宿の都庁が見える。



僕は誰も自分のことを知らない街にまで「何か」を探しに来た。もし何も見つからなければ、今日がこの大学に来た最初で最後の日になる。
そんな感じたくもない予感さえした。

近くのイスに腰掛けて、しばらく都庁を見ていた。
そして自分のプロセスを思い返した。

今日まで多くのことを主体的に学んで、行動してきたつもりだった。それが全部が全部間違いだなんて少しも思っていない。

でも、結果になかなか結び付かない。雑音も多い。

いつもこの東京に自分がいるかのような何かが、僕の住んでいる所まで届けばいいのに。渇いた気持ちが変わるかもしれない。

そう何度も思った。

志望大学のこと、東京のこと、住む場所のこと、学生の言葉、サークル、すごい人間との出会い、夢の実現の仕方。

これらがひとつのカタマリになって、一気に押し寄せてきては、消えた。

目の前に広がる街並みは、何も変わらないままだった。
僕の視界も、同じ都会の空をただただ、映していた。




「こんにちは。もしかして受験生?」





突然、誰かが僕に話しかけてきた。


その男の人は背が高く、どうやらこの大学の学生らしかった。手には大学名が刻まれたクラッチバッグを持っている。

その人は黒い髪に、とても整った顔立ちをしている。東京の人はみんなこうなのだろうか。


彼はにこりと笑った。


「ここ、座ってもいい?」


『あ、はい。どうぞ。』


「今日はオープンキャンパスだよね、何処から来たの?」


自分が来た場所を伝えたあと、その返事に笑顔のまま僕を見ている大学生がとても不思議に思えた。


(なんで僕に話しかけてきたのだろう)



「大学はどう?今日来てみて、何か得られるものがあった?」


回答に一瞬困った顔をしていると、それを大学生が見抜いた様だった。問いが変わった。


「あ、ごめんね、急に話し掛けちゃって。」
『あ、いえ大丈夫です。僕も誰かに話を聞いてもらえたらなって思っていたんです。』

「うんうん、そうだったんだ。俺も今日は大学の図書館で勉強しようと思ってきたら、偶然オープンキャンパスの日だったんだよ。」


(やっぱりここの大学生だったんだ。)


彼はにこにこしている。

「あまりにたくさん来ていたから、少し中を回ってみたんだよ。そしたら、君がいた。」


僕には、この大学生の話し方になんだかとても余裕があって、すごく大人に思えた。


『そうだったんですか。一瞬誰だろうって思いました。』

僕はこの時、結構疲れた声で答えてしまった。


「・・・今、何か悩んでいるみたいだね、俺でよかったら話、聞かせてもらえないかな。」
この時の大学生は笑ってはいたものの、とても真っ直ぐで真剣な眼をしていた。


僕は、言葉を選びながら、今までの出来事や悩みを少しづつ語っていった。

成績が思うように伸びないこと。
雑音に負けそうになること。
全く勉強ができない日があること。
わけもない不安に悩んでしまう自分がいること。


大学生は、じっと僕の顔を見ながら、その話を聞いてくれた。そして、僕が話を終えた時、口を開いた。


「実は俺も、昔こんな風に志望大学のオープンキャンパスに来てさ。そこでこんな風に大学生に話しかけられたんだよ。だから、今の君の気持ち、すごくわかるよ。俺も同じだったんだ。」


(そうだったんだ。)


彼は話を続けた。


「さっき遠くから君を見たら、ちょっと雰囲気が違って見えたから。だから、話しかけてみたんだ。それで君の眼をみたら、何か訴えているように見えたんだよ。そして、話を聞いてみて確信した。あぁ、なんだか昔の自分に似ているなって。」


今の何も持っていない僕と、確かなアイデンティティーを持ったこの大学生の彼と同じだったとはとても思えなかった。

でも、話を聞いて行くうちに、少しづつ強い共感を覚えていった。


「俺も地方から東京に来たんだけれど、地元にいた時はなんとも言えないような渇いた気持ちになっていたよ。
なんていうんだろう。

意味もなく地元をチャリで走り回ってしまうような、そんな気持ち。」


(僕が感じていた気持ちと同じだ。)


「で、何かを変えようと頑張るんだけれど、何かも変わらない。いや、その何かが何なのかさえもわからない。そして気がついたらまた次の日になっている。
人って時間が経てば、お腹は減るし、眠くもなってくる。だからその欲求を満たしてあげたら、また次の日になっている。
いつしかその渇いた気持ちの感じ方も鈍くなっちゃうんだけど、確かにあるんだよね、消えたりはしていないんだ。」
『そうなんです!うまく説明はできないんですが。ホントにそんな気持ちになるんです!』

自然と語尾が強くなった。

その僕の返答と表情から、彼はいろいろと読み取ったのだろう。ふいに彼は笑ってこう言った。


「少しキャンパスを歩こうか。案内するよ。」


さっきと同じ笑顔のまますっと席を立った。


この時、僕は彼の後について行こうと思った。

確かな確信があったわけじゃない。でも、何かが見つかりそうな、そんなとても強い予感がしていたから。


エレベーターが到着しドアが開く。

僕には、それがさっきとは全く違うドアに見えた。


『並みのやり方からは、同じかそれ以下の結果が生まれる。
優れたやり方からは、今までよりも良い結果が生まれる。
卓越したやり方からは、卓越した結果が生まれる。』
ジョン・C・マクスウェル