初夏-2nd-起きている時に見る夢・オープンキャンパス・夏休みの過ごし方・勉強法・大学受験・ | 大学受験デイズ-GIFT-

初夏-2nd-起きている時に見る夢・オープンキャンパス・夏休みの過ごし方・勉強法・大学受験・

a86e49e8.jpg 熱い体育館での終業式を終え、夏休みが始まった。
受験生にとって、夏という季節は特別な意味を持つ。
それは、変化の時期でもあり、成長の時期でもあり、我慢の時期でもある。

もちろん、成長させるのは勉強だけではない。
夢にも栄養を与えて成長させるべきだし、未来のイメージもより鮮やかにさせたい。そして、もちろん誰かとの関係も。

夏休みを使って、地方から東京に出て行こうと思っていた。それは、大学で行われるオープンキャンパスに参加するためであった。
どこまで自分を成長させることができるかはわからなかったが、地元から一度外に出てみることで、客観的になりたいと思っていた。

オープンキャンパスに行くのは、いくつかの候補の中から検討した。
成績に大きな変化はなかったものの、まだまだ上昇する前の閾値だと信じていたため、広い選択肢の中から、徐々に絞りこむ。

差別化した時のポイントは、将来の自分が何になりたいのか、大学でどんな勉強をしたいのか、何を手に入れたいのかなどを基準に、いくつか列挙していった。

学部は経済学部を希望した。
以前から少しずつ始めていた経済への興味が強くなり、この世界をもっと深く探求したいと思うようになっていたからだ。だから、選択科目もすんなり政治経済を選んだ。

この頃、英語は単語帳を使って、毎日空き時間に暗記をしていった。小さな刺激を脳に与え続けることを意識した。
長文は流れの中で意味をフォローしつつ、理解していく。電子辞書を引きながらも、確実に正解できるように心がけた。
まさに大臣が教えてくれたように、暗記で対応できない箇所のヒネリを解きほぐす作業だ。

文法はストレートな暗記タイプとそうでないヒネリの検出が必要なタイプがあることを知った。
時にそれが長文の中で出題されることもある。
問題集でまずは暗記タイプを「知らない→知っている・知っていた」に分類する作業を始めた。

現代文は、受験科目の中でも群を抜いてできがよかった。主観を交えることなく、筆者の主張を理解すること。そして、それを客観的な選択肢に当てはめるということ。このときに、バイアスがかからないように意識した。

古文は英語と勉強方法が類似していたこともあり、文法と単語の同時進行し、ある程度読めるなと感じたら問題集や過去問に挑戦していった。

「人は取得選択の中で生きている。ならば自分のキャパシティーを広げることと、選択肢を広げることから始めてみるのがいいのではないか。そして、次に合理的な選択をすることへと進めばいい。」

自分自身の言葉には重みがある。いつか自分の言葉が救ってくれる時があるなら、昔の自分に感謝したい。


夏休み中、自転車の彼女とは友達グループ同士で遊んだ。みんなで友達の家に泊まりで遊びに行き、夜は花火をし、明け方ごろまで語り合う。

何について語り合ったかといえば、当然、誰が好きから、将来の夢まで。きっとこの年頃の、この時期に話す内容は、全世界共通なんじゃないかなと思う。

夜中に、僕達は友達の家の庭に出た。

男女3:3の友達同士で語り合った時間は、夢なのか現実なのかわからない空間だった。
雰囲気を出すために、ローソクを使い、みんながそれを取り囲むように円になる。
ひ
みんなこの時ほど真面目な顔をしたときはなかったと思う。


誰もが語る将来の夢やビジョン、そして自分自身の姿に、現実の足かせなどは1mmも入り込む余地が無かった。
重力とも呼べる足かせがなければ、人の想いは無限に広がる。
自然と何処までも、時にそれは地平線も越せるくらいまで広がるかもしれない。

一人一人の顔がオレンジの原色に照らされ、その口から本音の言霊が生まれる。
世界に放たれた言霊は、その姿を永遠のものにするために、宿主を探す。

僕達のもとに生まれた小さなその存在は、生まれた直後は瀕死の状態に近い。

だから、徹底的に見守ってあげなければならない。
どこが悪いのか、どこをもっと良く改善できるのか。

生まれたての夢を守りたい。これは本能に近かった。
むしろ、本能を超える「使命」に近いかもしれない。
そう直感的に感じ取っていた。


話題が好きな人の暴露になった時、僕達の空気は一瞬で別の色に変わった。
僕も変わっていたと思う。

その時は彼女のことが好きかどうかはわからないけれど、他の人よりも考えている時間が長かった。
彼女の番よりも速く、僕が答えなければいけない時が来た。


「好きな人、暴露しちゃえ!」

なんだかみんなの視線が刺さる。

正直になんて答えればいいのかわからなかった。

「え、あ、いないよ。」
としか答えられなかった。

その後もしつこく追求されたが、適当にあしらった。
本当に空気を読んでいなかったと思う。

後になってわかったことは、多分あの時の僕は、彼女前で適当な嘘をつきたくなかったんだと思う。
仮にそれが、僕自身が気がついていない気持ちを、奥の方に仕舞いこんでしまったとしても。


次の次に、自転車の彼女の番が回ってきた。

僕は、体の体勢を整える仕草をしてごまかしながら、彼女の顔をそっと見た。

円の周りがとても静かになった。
夏の虫の鳴き声が聞こえた。

「私も、好きな人はいないんだ。微妙に気になってる人はいるんだけれどね。」

だれだれ? どのひと? いるでしょ?
こんな質問がすぐに何処からか出た。
色々と周りは追求していたが、彼女は笑って、

「じゃあ、もう一周したらね。」

と言い、次々!というアクションで、次へと周った。
並び方は男女バラバラだったため、隣も女の子だった。
その女友達は、同じグループ内に好きな男友達がいて、かなり照れていた。
どうやら、このことを女子全員が知っていて、知らなかったの男達は「?」という顔をしていた。

それからの時間は、一気に一組のカップルを作る雰囲気になってしまった。

最終的には、その女友達が告白寸前まで行って、その話題は終わった。
男の方も、その子の気持ちには気がついていたと思う。
残りの僕達は、場の空気を読んで、また別の話題へと切り替えた。

どのくらい話しただろう。

今でもはっきりと覚えているのは、赤い空間の中での彼女の横顔がとてもきれいで、目が以前と変わらずに透き通っていたことだ。

明かりが眼の中を乱反射させているかのように、それはきらきらと光っていた。
ローソクの灯は、長さだけが変わり、初めと変わらない灯で僕達をずっと照らしていた。

夏の夜は、夢を生んだ僕達をどこか違う世界に連れて行くのかもしれない。


まだ、この季節は始まったばかりだった。




『青春の夢に忠実であれ。』
シラー

『青春は短い。宝石の如くにしてそれを惜しめ。』
倉田百三

『力強さは使命感を持つところから生まれる。』
松下幸之助

~加速~

247a054a.jpg 夏の朝が明けた。
遠くに青く見える山が、透き通った風を運んでくる。

午前中から、僕は勉強を開始した。

この時間は、集中力を多く必要とする科目を重点的に訓練する。

まずは英語と現代文だ。

僕の場合、現代文は得意科目ということもあってか、各大学の過去問が掲載されている問題集を一日に少しづつ解いていった。

正解した所よりも、間違えた解答の思考プロセスを修正することを意識する。
やはり、間違えたことには「理由」が存在しているはずだし、仮に参考書を使ったとしても、現代文ほど暗記一発で「解けない」科目はないと思う。

このことの繰り返しは、現代文の解答を選び出す力を、飛躍的に高めた。

英語は、長めのセンテンスがまとまった文章を読むことで、頭を慣れさせていった。

いきなり長い文章が読めるはずがないだろうとは予測していたので、この訓練を何度も繰り返してからステップアップを図るつもりでいた。


(繰り返して訓練、繰り返して訓練。)
心の中で、そっと唱えてみる。


いつも意識することで、行動にも変化が表れてくる。



集中力が切れて、いまいち正解を読んでもわからない時は、暗記の勉強に切り替えてリフレッシュをはかった。


暗記は小さい衝撃を繰り返し与えることで忘れにくくなる。それを経験的に学んでいたので、この時に単語や熟語、そして政治経済の基礎的な知識を入れていった。


集中して解答する科目をレフトウイングに、
暗記して覚える科目をライトウイングに。

この夏の間に、自分という飛行機の滑走路を加速させていく。


退屈になった時の休憩方法も、色々と試行錯誤してみた。
音楽を聴いたり、マンガを読んだり、外を歩いてみたり。
できそうなことはなんでも試してみて、自分にあった休憩スタイルを確立しようとした。
候補のいくつかをローテンションしてみるのが、自分にとっては一番効果的だった。
飽きさせないこと、自分自身をコントロールして、支配すること。

訓練で身に付けられると、やっているうちに思い始めていた。

夏休みの毎日は、驚くようなスピードで過ぎて行く。
集中できているのならば、それは嬉しいことなのだろうが、青春の一日がなんだか消えてしまっている感じがして、一日の終わりは少しだけ寂しかった。

8月に入り、いよいよオープンキャンパスの日が来た。
見に行くのは、早稲田大学とMARCHの二つに絞った。

今の自分にはどちらもとても受かりそうにないが、受かるところを受験したいとも思わなかった。
将来の自分のためになる場所で、自分のために頑張れる大学と学部に進みたかったからだ。

日程の関係上、夏の後半にもう一度東京に足を運ぶことになる。


家を出て駅に着く。
電車 考えごとをする暇もなく、唐突にホームに電車が来た。
僕は、開いたドアに右足から踏み込んだ。



『馬の行きたい方向に馬を走らせるには
手間も労力も要らない。 』
エイブラハム・リンカーン




~渋谷~


電車を乗り換え、僕は渋谷に到着する。

駅から出て、テレビでよく見るあのスクランブル交差点に僕はいた。
スクランブル交差点

空は快晴で、太陽の熱によって、地面がゆらゆらとして揺れて見えた。
その光景がなんだかこの街に呼ばれているように見え、目的の大学に行く前に、
この街を少し見て回ろうと僕は考えた。


情報が発信させれていく街。
絶えず人が押し寄せる街。
人々が何かを探しに来る街。

そう、今の僕の様に。


この街では、僕は一人だった。


誰かとすれ違っては消えていく。
みんなが皆、自分の人生を歩いて行く。

もう永遠に会うことのない人が99%以上なのだろう。

そのことがとても不思議に感じられた。
どこかで「めぐり逢い」や「必然」というものを、僕は信じていたから。



それから、しばらくこの灼熱の街を彷徨う。

歩きながら、東京の大学に通い、この街で過ごす自分のことを創造してみた。

不安もあるけれど、きっと楽しい。

まだ出会ったことのない人、きっと自分の人生に大きな影響を与えてくれる人。
僕も必ず人に影響を与えられる人になりたい。
そして、誰かに救いを与えられる人であるべきだ。


夢を掴む街。
かなえる街。


いつしかこの街のイメージが、そう変わっていた。

~必然~

早稲田のオープンキャンパスに着いたとき、そこには信じられないくらいの人がいた。

(ここに来ている人達がみんな受験するのかな・・・)

ここは僕にとっては大きな挑戦校であり、合格できる可能性もほとんどない。
でもだからと言って、簡単に志望した大学を諦めたくなかった。

なぜなら自分を突き動かす原動力は、未来の自分自身を創造した時に生まれるのではないかと思っていたから。

キャンパスの中では、志望大学生=早大生がいろいろとガイドをしていた。
彼らは今の自分にとって、それは憧れの人であり、なりたい自分の象徴でもあった。

(話しかけて、今の不安な気持ちを聞いてもらえたらな。。。)

あの自転車の彼女の時のように、ここで声を出せたなら、どれほどよかったか。

それができずに、僕は一人で歩き続けた。

それから少し彷徨った挙句、図書館の方にたどり着いた。そこでは、クラッチバッグを持って勉強しに行く学生が見える。

大学名が刻まれたアイデンティティーの象徴。

(あれを持って、志望した大学に通いたい。)

その後、夕暮れのキャンパスを後にし、再び長い時間をかけて、帰路についた。

帰りの電車の中で、英単語帳と英語長文を読みながら考える。

今日、自分の足で目的地まで行ったこと。それは「必然」だ。そこには偶然が入りこむ余地なんてない。自分の足で、新たな道を歩こうとすることは、決して偶然じゃない。


そっと夜の電車の窓を見る。
だんだんと街灯の数も減ってきた。

もうすぐ家に着く。

ふと窓に映った自分自身と目が合う。

(1年後、この人はどこで何をしているのだろう。)

今日は不安な気持ちを少し増やして、家に持ち帰ってきてしまった気もした。

少し疲れているのかもしれない。


電車はそんな僕の気持ちとは無関係に目的地まで走って行った。
電車夜








後日、MARCHのオープンキャンパスでは、もう一つの「必然」が僕を待っていた。



『進歩は偶然の出来事ではなく、必然である。』
ハーバート=スペンサー