Day280-ここまでのあらすじ

  コオはメンタルとともに体調を崩し、さらに激しい物忘れに悩まされつつ、年を越した。そして、父が倒れて1年がたった頃、再び高齢者住宅の紹介業者・藤堂から、”父の希望している施設に空きが出る”という連絡をうける。空くのは確定であり、コオはすぐに動き出す。

まずコオは現在の老人保健施設に『すぐにキーパーソンである妹と話し合いを持ってほしい』と連絡をする。

老人保健施設ケースワーカー・浅見、友人響子、高齢者住宅紹介業者・藤堂さらには転居予定だった施設まで巻き込んだ結果、父は

 『莉子のYESはほんとうのYESではないから、入居はできない』という奇妙な主張で新施設入居を見送った。

水の泡になったことで、コオはひとりでやけ酒をのみながら、父は、妹だけが大事なのだ、としみじみと思った。

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 『莉子のYESはほんとうのYESではないから、入居はできない』

おそらくは、莉子からの父の施設入居に賛成する、という返答がケースワーカーを通したものだったせい。直接本人から聞かなかったせいかもしれない。父の奇妙な主張で、ついに2回目の施設入居のチャンスも、流れてしまった。

 

 ずっと施設探しに尽力してくれていた業者.藤堂は、数日前、珍しく厳しい言葉で、これ以上、紹介した施設側に期待だけさせて、またキャンセルというようなことはできない、という事を言っていた。

 当然だ。

 それでもコオにとって唯一の味方だと感じていた藤堂に、突き放すように言われたことは少々こたえた。

 

  コオにはなぜ父が莉子にそんなに遠慮するのかが、理解不能だった。

 父はもう自宅で莉子に世話されているわけではない。

 施設に入居するお金だって父の年金から出ている。

 そして父は、老人ホームに入居したい、と言っている。

 

 (何故?一体、私に何をさせたいの?....)

 やけ酒を一人で飲むほど、コオの気持ちは荒んでいたが、コオがこの間に出会った自己啓発セミナーの体験が、少しずつ、でも確実にコオの考え方を変えていた

 
 
 

 

 

 

 こんにちは、Greerです。ご無沙汰しております

 このブログは友人Kの身に実際起こったことをもとにしており、二人のGreerは共同アカウント名です。

私がKの話を文章にし、Kが修正を入れて投稿するという形になっています。

Breakだけは例外で、一気にKではなく私が投稿してます。たいがいKが一緒です。

 

 ・ 人物名・地名・などの固有名詞は基本、仮名です

 ・ 起こったことはほぼすべて現実ベースです

 ・ 登場人物の仕事・人間関係は身バレを防ぐための脚色あり

他の皆さんのブログと同じく現実ベースのフィクション小説形態で書かせてもらっています。

方針としてしては

 ・ 情報的な部分はできる限り正確に(老人ホームの料金プランとか)

 ・ コオのサイドから書いているので、小説の形態はとっているが、コオ以外の人物の感情は極力描写しない

・・・です

 

短く切って、頻度を上げる投稿をしてみています…

コオが自己啓発セミナーにはいりました(笑)抵抗がある方もたくさんいるでしょう。

実際高額ですしね。

幸いこのセミナーは次の段階次の段階、とお金を際限なく搾り取る形式ではなかった(らしい)ので

良かったですが、大概は次の段階というものがあって、エンドレスで参加することになるようです。

 

自己啓発セミナーって、

むかーし流行したことがあったそうで、その頃って、洗脳に近いやり方だったセミナーも多かったとか。

だから個人的にはやはり嫌い、というより怖いです。

料金も高すぎるし、心に傷を負ってる人の弱みに付け込んでる気がしてしょうがない、

なんて言いうと怒られますかね

 

 

 

 

Day280-ここまでのあらすじ

 コオはメンタルとともに体調を崩し、さらに激しい物忘れに悩まされつつ、年を越した。そして、父が倒れて1年がたった頃、再び高齢者住宅の紹介業者・藤堂から、”施設に空きが出る”という連絡をうける。空くのは確定であり、コオはすぐに動き出す。

まずコオは現在の老人保健施設に『すぐにキーパーソンである妹と話し合いを持ってほしい』と連絡をする。施設のケースワーカーは電話はしているが、例によって、莉子とは繋がらず、コオは”要望文書”という形で莉子を話し合いに呼び出すよう、要求する。コオは友人の響子に、今回の件を莉子を無視して進めてもいいものかどうかを相談し、

”期限を決めて、その間に返信がなければ、コオが手続きを進めるべき””大事なのは、お父さんの意志”とアドバイスを受ける。

老人保健施設のスタッフの対応は遅く、1週間放置のうえ、週末前日の金曜日に”連絡をください”と張り紙を張ってくるというお粗末さであった。

全て水の泡になったことで、コオはひとりでやけ酒をのみながら、父は、妹だけが大事なのだ、としみじみと思った。

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「前を向こうにも・・・もう私は離婚までしてしまいました。もう末期です。そんな私でも何とかなるんでしょうか?」

「大丈夫です!」

コオは、貯めるには数年かかった貯金を使い、参加を決めた。

 

 実際この上廣セミナーは都内の会場に月1回出かけ、ワークを含めたセミナーを6回受ける、そして数回のオンラインカウンセリング、メール相談などが込みになったもので、恐ろしく高額だった。

 ここまで私生活が滅茶苦茶になっていなければ、
決して参加を決めることはなかったろう

 それでも、今コオは参加して、良かった、と思う。

 それは、親のことで苦しむ他の参加者と話す機会があったこと、考え方を変えるための、心のベースの作り方、上廣代表がはじめから目指していた、参加者同士が励ましあったりすることで進み続けること、もちろんそれは役に立たなかったわけではない。
 それとはまったく、別にコオには数回『ある瞬間』が訪れる。

 それは、セミナーに参加したからこそ、起きた瞬間だとコオは思っている。言葉としては、いままでも何度もきいていたり、読んでいたりしたことなのだが、それが突然『腑に落ちる』。そして、コオは自分のステージが変わったのを体感したのだ。

 

 

 

 

Day280-ここまでのあらすじ

 コオはメンタルとともに体調を崩し、さらに激しい物忘れに悩まされつつ、年を越した。そして、父が倒れて1年がたった頃、再び高齢者住宅の紹介業者・藤堂から、”施設に空きが出る”という連絡をうける。空くのは確定であり、コオはすぐに動き出す。

まずコオは現在の老人保健施設に『すぐにキーパーソンである妹と話し合いを持ってほしい』と連絡をする。施設のケースワーカーは電話はしているが、例によって、莉子とは繋がらず、コオは”要望文書”という形で莉子を話し合いに呼び出すよう、要求する。コオは友人の響子に、今回の件を莉子を無視して進めてもいいものかどうかを相談し、

”期限を決めて、その間に返信がなければ、コオが手続きを進めるべき””大事なのは、お父さんの意志”とアドバイスを受ける。

老人保健施設のスタッフの対応は遅く、1週間放置のうえ、週末前日の金曜日に”連絡をください”と張り紙を張ってくるというお粗末さであった。

全て水の泡になったことで、コオはひとりでやけ酒をのみながら、父は、妹だけが大事なのだ、としみじみと思った。

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コオは父の

『心配なのは妹の莉子だけだ、お前は便利屋だ』
 
という言葉に自分でも驚くようなダメージを受け、コオは、自分をどう支えていいのか、もうわからなくなっていた。
そして、この年が明けた頃、ある自己啓発セミナーに参加することになる。
 
自己啓発=うさんくさい

と近づきもしなかったコオが、最初にセミナーの勉強会(要は勧誘のためのイントロダクション)なるものに数千円とはいえ、支払って出かけたのは、やはり、かなり弱っていたからだろう。勉強会の内容は、もちろん、そのセミナーの紹介。

大人になっても親で苦しむ人はたくさんいる。今の自分は過去が作っている。でも、いつまでも過去に支配され続けるのではなく、そこから、前に進むためには助けが必要で、そのためのワーク(とそのセミナーでは言っていた)、その環境を提供する、という趣旨だった。それにはカウンセリングもついていた。

 セミナー代表でもあるカウンセラーは、コオよりも若い男性だった。コオが覚えているのは、スライドを映しながらセミナーの趣旨を話す上廣というその代表が、言った言葉だ。

「親の毒から抜け出して、そこがゴールじゃないんです。その先があるんです。毒から抜けたら今度は前を向いて、自分の人生を生きなくちゃいけない。ぼくはそこまでお手伝いします。」
 

そして、その勉強会の後、上廣代表にコオは尋ねたのだ。

「前を向こうにも・・・もう私は離婚までしてしまいました。もう末期です。そんな私でも何とかなるんでしょうか?」

上廣代表は、特に力強くはなかったけれど、ちゃんとコオの目を見てうなずいた

「大丈夫です!」

コオは、貯めるには数年かかった貯金を使い、参加を決めた。

 

 

 

 

Day280-ここまでのあらすじ

 コオはメンタルとともに体調を崩し、さらに激しい物忘れに悩まされつつ、年を越した。そして、父が倒れて1年がたった頃、再び高齢者住宅の紹介業者・藤堂から、”施設に空きが出る”という連絡をうける。空くのは確定であり、コオはすぐに動き出す。

まずコオは現在の老人保健施設に『すぐにキーパーソンである妹と話し合いを持ってほしい』と連絡をする。施設のケースワーカーは電話はしているが、例によって、莉子とは繋がらず、コオは”要望文書”という形で莉子を話し合いに呼び出すよう、要求する。コオは友人の響子に、今回の件を莉子を無視して進めてもいいものかどうかを相談し、

”期限を決めて、その間に返信がなければ、コオが手続きを進めるべき””大事なのは、お父さんの意志”とアドバイスを受ける。

老人保健施設のスタッフの対応は遅く、1週間放置のうえ、週末前日の金曜日に”連絡をください”と張り紙を張ってくるというお粗末さであった。

全て水の泡になったことで、コオはひとりでやけ酒をのみながら、父は、妹だけが大事なのだ、としみじみと思った。

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 話は少しだけ,さかのぼり、これから3回だけ、コオの話をする。

 年末くらいから、体も、精神的にも壊れはじめていたコオは、毒親、というワードを意識するようになっていた。
 暴力は振るわれたわけではない。それでも親に、特に母からずっと、精神的にダメージをうけていたようだ、と理解していた。理解してきたつもりだった。
 しかし、今回全ての親への感情に蓋をして、父のために動いてきた。にもかかわらず

『心配なのは妹の莉子だけだ、お前は便利屋だ』
 
という言葉に自分でも驚くようなダメージを受け、コオは、自分をどう支えていいのか、もうわからなくなっていた。
そして、この年が明けた頃、ある自己啓発セミナーに参加することになる。
 
 

 

 

 

 

Day280-ここまでのあらすじ

 コオはメンタルとともに体調を崩し、さらに激しい物忘れに悩まされつつ、年を越した。そして、父が倒れて1年がたった頃、再び高齢者住宅の紹介業者・藤堂から、”施設に空きが出る”という連絡をうける。空くのは確定であり、コオはすぐに動き出す。

まずコオは現在の老人保健施設に『すぐにキーパーソンである妹と話し合いを持ってほしい』と連絡をする。施設のケースワーカーは電話はしているが、例によって、莉子とは繋がらず、コオは”要望文書”という形で莉子を話し合いに呼び出すよう、要求する。コオは友人の響子に、今回の件を莉子を無視して進めてもいいものかどうかを相談し、

”期限を決めて、その間に返信がなければ、コオが手続きを進めるべき””大事なのは、お父さんの意志”とアドバイスを受ける。

老人保健施設のスタッフの対応は遅く、1週間放置のうえ、週末前日の金曜日に”連絡をください”と張り紙を張ってくるというお粗末さであった。

全て水の泡になったことで、コオはひとりでやけ酒をのみながら、父は、妹だけが大事なのだ、としみじみと思った。

響子にすべてを携帯から報告した後電話が鳴った。

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 「・・・藤堂です。嶋崎さん、お疲れさまでした…」
 
夜、かかってきた電話は、高齢者住宅紹介業者の藤堂からだった。

 「ああ、藤堂さん。すみません、明日にでもお詫びをしなければ、と思っていました…。」

 すでに頭はじんじんしていて、深酔い、ではないにしてもかなり酔いが回っている、と自覚できるくらいには酔っていた。同時に、お世話になったにもかかわらず、手間をかけさせただけに終わった、藤堂へは礼儀正しく謝罪しなければと思うくらいの理性も、残っていた。
 
 「あの、今回の事、本当にすみませんでした。まさかこんなことになるなんて。」
 「いったい、どうされたんですか?」

実は、コオは数時間前に、携帯が電池切れになりかけていたところで、用件のみで失礼します、と前置き付きで、

”老健のスタッフ把握した妹の意向と、父の把握に齟齬がありました。誠に残念ですが、今回は、スキップさせてください、本当に申し訳ございません。”
 
と謝罪文を送ってあった。もちろん後で、電話はするつもりだった。
 
「もう、父が訳が分からないんです。何の問題も・・・なかったはずなのに。妹のYESが絶対的なYESではない、とかって言って。しかも、施設にはいきたい、というんです。」
「は・・・それは・・・」
 
 藤堂も困惑しているようだった。
 
「もう、私もわけがわからなくて。妹が父に直接OK、と言わなかったからなのもしれません…けど・・・」
「あの、嶋崎さん。次は、妹さんとお父さんがOKといったときにしましょうか」
 
 藤堂はいつものように柔らかな声で、今回は少し気の毒そうに、言った。
 
「すみません、お手数ばっかりおかけして。折角、ここまでお膳立てしていただいたのに。ごめんなさい、この後どうするか、考えさせてください。今日私、そのう、やけ酒飲んじゃってて、正確に考えられてないと思うので。またご連絡させていただきます。
 本当に、本当にすみません。私は、父に移ってほしかった。父も移りたかった、なのにどうしてこうなってしまったかわからないんです。妹の顔色ばかりうかがう父もわからない。やっと、今度こそ、家に帰れる、って、そう思ったのに・・・」
 
泣き出しそうになりなりながら、コオはひたすら謝り、飲んでしまっているので、後日また、とようやく、もう一度言って電話を切った。
 
 
 

 

 

 

 

 

Day280-ここまでのあらすじ

 コオはメンタルとともに体調を崩し、さらに激しい物忘れに悩まされつつ、年を越した。そして、父が倒れて1年がたった頃、再び高齢者住宅の紹介業者・藤堂から、”施設に空きが出る”という連絡をうける。空くのは確定であり、コオはすぐに動き出す。

まずコオは現在の老人保健施設に『すぐにキーパーソンである妹と話し合いを持ってほしい』と連絡をする。施設のケースワーカーは電話はしているが、例によって、莉子とは繋がらず、コオは”要望文書”という形で莉子を話し合いに呼び出すよう、要求する。コオは友人の響子に、今回の件を莉子を無視して進めてもいいものかどうかを相談し、

”期限を決めて、その間に返信がなければ、コオが手続きを進めるべき””大事なのは、お父さんの意志”とアドバイスを受ける。

老人保健施設のスタッフの対応は遅く、1週間放置のうえ、週末前日の金曜日に”連絡をください”と張り紙を張ってくるというお粗末さであった。

全て水の泡になったことで、コオはひとりでやけ酒をのみながら、父は、妹だけが大事なのだ、としみじみと思った。

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 父は、必死に動いた自分の事などどうでもいい、妹の方が大事なのだ。 
 コオはただ、ただ、やりきれなかった。
 自分自身の希望よりも懸命に父のために動き回ったコオよりも、莉子の機嫌を大事にする父が分からなかった。
 
 コオはワインのフラスクをもう一つ追加注文して、飲み始めるた。
 学生の頃散々バカな事をしたので、今は、どれくらい飲んだら、自分がどうなるかそこそこわかる。
 今日は軽く明日が二日酔いになるくらい飲めればいい。でも自分は飲めるけど、二日酔いになりやすいから、
 眠る前に、大量に水を取っておこう。
 
 同時に
 ファミレスでいい歳をした女が一人でガバガバ飲んでるのってどうなんだろう、
 そんなことを考えながらいい具合に脳がしびれてきたころ、
 
 電話が鳴った。
 
 「もしもし…?」

 酔っぱらってるのにな、と思いながらコオは、隅っこの方の一人席だったので、そのまま電話に出た。

 「・・・藤堂です。嶋崎さん、お疲れさまでした…」
 
 

 

 

 

 

 

Day280-ここまでのあらすじ

 コオはメンタルとともに体調を崩し、さらに激しい物忘れに悩まされつつ、年を越した。そして、父が倒れて1年がたった頃、再び高齢者住宅の紹介業者・藤堂から、”施設に空きが出る”という連絡をうける。空くのは確定であり、コオはすぐに動き出す。

まずコオは現在の老人保健施設に『すぐにキーパーソンである妹と話し合いを持ってほしい』と連絡をする。施設のケースワーカーは電話はしているが、例によって、莉子とは繋がらず、コオは”要望文書”という形で莉子を話し合いに呼び出すよう、要求する。コオは友人の響子に、今回の件を莉子を無視して進めてもいいものかどうかを相談し、

”期限を決めて、その間に返信がなければ、コオが手続きを進めるべき””大事なのは、お父さんの意志”とアドバイスを受ける。

老人保健施設のスタッフの対応は遅く、1週間放置のうえ、週末前日の金曜日に”連絡をください”と張り紙を張ってくるというお粗末さであった。

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 いったい、誰が、何がいけなかったというのだろう?
 
 酒を飲むため、
 父の施設から帰ってきて、わざわざ家から自転車でこのファミレスまで出直した。 
 
 父は、 ”あの施設に移りたい” といった。
 そして、ぎりぎりだったけれど、北寿老健のスタッフから ”妹さん、施設移ること、OK出ました!!” と言われた。
 施設側も ”ギリギリ今なら間に合いますよ!手続きしましょう!!” と言ってくれた。
 
 それなのに。
 今度こそ、帰れる、と思ったのに。
 重荷を一つおろせると思ったのに。
 
 コオは、携帯を開いた。
 響子へのメッセージを叩く
 
 コオ: ”響子、せっかく相談に乗ってもらったんだけど、結論から言うと、父が、妹がOKしないうちに入所はどうしてもできないっていってやめることになっっちゃった。”
 響子:”妹の同意も得られたのに?”
 コオ:”直接父と話したんじゃなくて、施設の人とのやり取りで。妹さんからOK出ました、って言われたの”
 響子:”よかったじゃん、何がダメなの?”
 コオ:”それが、父がね、《妹は完全なるYESじゃないようだから、このまま手続き進めるとへそ曲げる》とかいうの”
 響子:”そっちかぁ”
 コオ:”完全なるYESってなんなのってかんじ。心配なのはいつも妹の事だけなわけよ。まぁ、いつものことだけど”
 響子:”そっかぁ”
 
コオはため息をついて会話を終了した。
父は、必死に動いた自分の事などどうでもいいのだ。別に一緒に暮らすわけでもない、妹の方が大事なのだ。 
 
 「いつものことだけど。」
 
コオはワインのフラスクをもう一つ追加注文した。
 
 

 

 

 

 

 

Day280-ここまでのあらすじ

 コオはメンタルとともに体調を崩し、さらに激しい物忘れに悩まされつつ、年を越した。そして、父が倒れて1年がたった頃、再び高齢者住宅の紹介業者・藤堂から、”施設に空きが出る”という連絡をうける。空くのは確定であり、コオはすぐに動き出す。

まずコオは現在の老人保健施設に『すぐにキーパーソンである妹と話し合いを持ってほしい』と連絡をする。施設のケースワーカーは電話はしているが、例によって、莉子とは繋がらず、コオは”要望文書”という形で莉子を話し合いに呼び出すよう、要求する。コオは友人の響子に、今回の件を莉子を無視して進めてもいいものかどうかを相談し、

”期限を決めて、その間に返信がなければ、コオが手続きを進めるべき””大事なのは、お父さんの意志”とアドバイスを受ける。

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 コオはひどく物悲しい思いになりながら、響子に礼を言って別れた。
 
 人生は決断の連続だ。 そして、大人になったら、すべての決断には責任が伴う。
莉子が逃げていたのは、そこだ。いつも・・・そうだったではないか。おとなしやかに黙って流されていれば、周りが決断してくれる。それに従っていけばいい。彼女が自身で選択したものだってあったはずなのに。
 でも、その選んだ道で戦わなければ、結局は同じだ。
 
 選択には、その選択をする、という決断には責任が、伴うのだ。
 
 コオが北寿老人保健施設に連絡を取ったのが月曜日。そして金曜日になっても、莉子からの連絡はなかった。
金曜日には、北寿老健のスタッフが、事情とともに”今日中に連絡をしてほしい”と張り紙を自宅にした、と連絡が来た。
 
 ハッキリ言って、遅い、とコオは思っている。
 
 北寿老人保健施設のスタッフならもちろん知っているのだ。民間老人ホームの空きは、いつまでも待ってはくれない。下手すれば明日中に決断、と言われるくらい、時間との闘いだ。それを、丸々1週間放置して、週末だから、あとは業務外、というのはあまりにもお粗末だ。
 
 困るのは・・・必要な情報がかけたまま、父の老人ホームへの異動を丸投げされているコオであり、
 そして
 
”父の希望した施設が、時間的には普通より少し余裕のある形で事前に知らされた”
 というありがたい話を、
 いったい、台無しにしたのが、誰なのかよくわからない、
 ・・・というお粗末な結末となった。
 
 
 
 
 
 

Day 279までのあらすじのまとめリンク

 

 

Day280-ここまでのあらすじ

 コオはメンタルとともに体調を崩し、さらに激しい物忘れに悩まされつつ、年を越した。そして、父が倒れて1年がたった頃、再び高齢者住宅の紹介業者・藤堂から、”施設に空きが出る”という連絡をうける。空くのは確定であり、コオはすぐに動き出す。

まずコオは現在の老人保健施設に『すぐにキーパーソンである妹と話し合いを持ってほしい』と連絡をする。施設のケースワーカーは電話はしているが、例によって、莉子とは繋がらず、コオは”要望文書”という形で莉子を話し合いに呼び出すよう、要求する。コオは友人の響子に、今回の件を莉子を無視して進めてもいいものかどうかを相談する

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 響子はきっぱり言った。
 
 「やはりさ、お父さんの希望が第1なんじゃない?だからお父さんがOKって言ったならいいんだよ。
その後、年金の振込先移動とかはちょっと大変かもしれないけど。そんで、コオがキーパーソンになるんだよ。」
 「・・・それで問題には・・・」
 「何度も連絡取ろうとして、してこない向こうが悪い。仕方なかった、って言えると思う。」
 「でも…」
 
 コオはグズグズといった。内容は簡単だ。簡単なのだが…
 
 「ともかく期限きりなよ。いついつまでに返事がないようだったらこっちでこうしますって。それでも、返信してこなかったら、OKって意味でしょ?そうしないと、莉子ちゃん、絶対何にもしないと思うけど。」
 
 響子はさらに言った。
 
 「そういう人、いるよ。期限きられないと、決断できないの。どうしても嫌なら、期限内になんか言ってくるだろうし、言ってこないなら、決断はしたくないけど、どうしてもいやってわけじゃないし・・・みたいな感じだと思うから、こっちで決断するのよ。」
 「ああ、決断から逃げてる。」
 「今までの話からすると、私はそう感じるけど?」
 
 ああ、そうか。
 物事には期限がある。期限までに私たちは色々なことを決断しなければならず、
 大人ならば特に、その決断に責任を持たなければならない。
 
 そこか。
 
 そこなのだな。
 そして・・・人生は決断の連続だ。
 コオは物悲しく思った。