今日配信の京都新聞オンライン版によれば、京都市内の観光地に若い人が目立つようになっているということだ。ある意味、当たり前のことだと思う。
まず京都市内の有名観光地は、昨春のお花見の時期にコロナの第1波の流行によって、インバウンド(外国人観光客)の姿が消えて以来、今日までまったく回復していない。
(がらんとしてしまった昨秋の「竹林の小径」/嵐山)
一方、京都市内や近場に暮らす高齢者は、やはりコロナの感染が怖いから、たとえお花見だろうと、人混みになりそうな有名な場所にはあえて近付かない。
今年のような時期に、無理に「嵐山」に行くこともなければ、ましてや〝インスタ映え〟ポイントとして有名な「蹴上インクライン」などに近付く必要もない。
仮に同じような地域に行く場合であっても、高齢者の場合は、超有名ポイントから少し離れた〝隠れ名所〟といった場所の情報を、しっかり口コミなどで仕入れて出掛けて行く。
(京都駅八条口から徒歩20分の「六孫王神社」の桜)
若者は〝お花見〟が楽しいのではなく、友人や恋人と〝一緒に行動すること〟が楽しいのだし、せっかく出掛けるなら〝インスタ映え〟するところの方が良いと考える。
そうなると〝桜が咲いていること〟が大事なのではなくて、誰と、どんな場所に出掛けるか、が重要になる。結果的に、そういう場所は一般的な有名観光地であることが多い。
(インクラインで自撮りする若い人たち/昨秋の光景)
という理由から、京都新聞が伝えているように、京都の観光地といっても、誰もが知っているような有名スポットには、若い人が大勢訪れている、ということになってしまう。
その上、今年は桜の開花が早かったから、卒業シーズンに満足に旅行やコンパができなかった若い人たちが、〝ならば近場でお花見でも〟という気持ちになっても不思議ではない。
ということで桜を求めての〝お花見〟ではなく、みんなでワイワイと集まったり、デートを楽しんだりするために、たまたま京都へやってきたという理解で良いのだろう。
そんなことだから、お土産物屋さんも〝インバウンド向け〟のお土産品でもなく、といって大人向けの高価な品でもない、若者受けする安価な品を揃えないといけないだろう。
そうした品物は、一般的に見て売上利益も低くなってしまう。しかも薄利だけど、それほど多売にもならないという、土産物店にとってはあまり嬉しくない状況だと思う。
むしろ「歩き食い」できる食品が、若い人にはもっと受けると思う。ただしアメリカンドッグなどは、さすがに京都の雰囲気にはそぐわないだろう。
むしろ素材に〝抹茶〟が使われていれば、それが京都をイメージさせる。だからソフトクリームやアイスクリーム、クレープやケーキ類など、とにかく緑色をしていれば良い。
また若い人たちは、土産品を持ち帰って誰かにプレゼントしたり、あまり自分の部屋に飾ったりする世代ではないから、その場で消費される飲食物の方が受け入れられやすい。
(嵐電「嵐山」駅構内にはテイクアウトの飲食店が多い)
それ以外なら、持ち歩きにもかさ張らない〝和風〟の小物類などは、若いカップルにすれば、その場でのちょっとしたプレゼント感覚で買い求められるかもしれない。
だから京都新聞の記事でも、嵐山の土産物店では外国人観光客向けから、「かわいさ」と「低価格」を重視し、「数百~千円台のアクセサリーやコスメなどに置き換えた」という。
その結果、「売れ行きは好調」だと書かれていた。ただこの土産物店でも、「今来ていただいているお客さんが、手に取ってくれる商品を考えていく必要がある」と話している。
さらに言えば、「観光客数が回復するまではまだまだ時間がかかる。知恵をしぼって、その時まで耐えなければならない」とも考えている。
もっともコロナ禍になる前の2019年のデータでは、国内日帰り観光客と外国人観光客の国全体での消費金額は、どちらも4兆5千億円弱でほぼ同じだった。
だからあらためて、国内の日帰り客が〝欲しい〟と思うような土産品を開発できるかどうか。もっと言えば、どういった客層にアプローチするかが、これからは問われると思う。
京都に若い人が大勢観光にやって来るのは、今年で言えば一過性・季節性のものだし、消費金額ベースでもそれほど大きな期待はできない。
その上に、コロナ禍の第4波が心配される状況では、中高年の女性をターゲットにした、「そうだ、京都行こう」の後に続くキャンペーンができるような状況でもない。
この状況であれば、日帰り客をどのように取り込めるのかという視点から、「半径3kmの旅」を、〝大人の女性バージョン〟として再構築する必要があるかもしれないと思った。