「住みたい都道府県ランキング2020」では、神奈川県と東京都が昨年と順位を入れ替えたけれど、1,2位になり、以下北海道・沖縄県・京都府となっていたそうだ。
この記事は、今日配信のダイヤモンド・オンライン誌に掲載されていた。その結果は、多少の前後の入れ替わりはあったけれど、12位まで昨年と同じ顔ぶれが並んでいた。
それよりも、この結果を見ると、首都圏では神奈川県、東京都以外に千葉県が9位、埼玉県が15位と上位になっていた。
また関西圏では京都府以外にも、大阪府が7位、兵庫県が8位で奈良県が12位と、こちらも上位に並んでいた。
さらに静岡県(10位)、愛知県(11位)も上位、福岡県も6位ということで、とりあえず沖縄県を除き、大都市とその周辺部が上位を独占していた。
その一方で、東北6県では宮城県が18位になっていたけれど、その他は青森県が33位で、秋田県と岩手県が同率の40位、山形県・福島県が46,47位となっていた。
また日本海側の県というくくり方をしても、新潟県(32位)、富山県(34位)、福井県(43位)、鳥取県(38位)、島根県(30位)と、16位だった石川県を除いて下位に甘んじていた。
この結果を見れば、意識のあり方は明らかだと思う。東北や日本海側は人気がないのだ。宮城県には東北一の大都市・仙台市があり、石川県は観光都市・金沢市がある。
一方、新潟市という政令指定都市があっても、新潟県は真ん中よりも下だった。しかも新幹線を利用すれば、東京との時間距離的な感覚では名古屋・仙台とさほど変わらないにもかかわらず、この結果である。
それに比べて瀬戸内圏の広島県(14位)、岡山県(17位)は、やはり上位圏内になっていた。
この結果について記事の解説では、「新型コロナの影響で3密を避けるために、自然豊かな地域に住みたいという気持ちは高まっているが、一方で生活のために、『ある程度の便利さは欲しい』という気持ちが見え隠れする」としていた。
この解説は、細部にわたるポイントの変化を見た結果から言えることらしいけれど、長野県は自然という点からも、コロナ禍という点からもうなずけるが、沖縄県はコロナ禍でひどい目に遭っていた。
それに北海道だって、札幌市はこの調査が行われた7月頃に、コロナ禍は決して良い状況ではなかった。
ところが沖縄県の場合など、20代では「住みたい」と回答する割合が随分と高かったそうだ。何のことはない、観光気分なのだ。
沖縄県の若年者の失業率や年収などといった、それなりのデータをインプットした上で調査をすれば、きっと結果は随分と変化するだろうと思う。
また自然の豊かさとコロナ禍という視点で、長野県が前年の18位から13位に順位を上げたのなら、長野県と東京都の間に位置する山梨県が前年と変わらず27位だったということが説明できない。
(河口湖/山梨県)
群馬県(46位から40位)や栃木県(36位から39位)も、説明がしにくいということになる。いずれにしても、こんな調査は当てにならないという気分になる。
つまるところ、仕事や生活といったことを考えれば、やはり大都市とその周辺に住みたいし、寒くて雪の多い地域よりも、温暖な場所の方が生活が楽だろうというだけのことだ。
それに、北海道・沖縄県・京都府など、観光地として立地しているがゆえに、それなりにその地域への認知度も高いだろう。
逆に佐賀県(45位)や岐阜県(36位)などは、それぞれ福岡市や名古屋市への通勤圏内の町もあるけれど、全体として地味なイメージに見られがちな県だ。
岐阜県の南・東部の市などでは、名古屋市のベッドタウンとなっている町は多い。だから調査結果も、イメージだけで低くなってしまっている、ということも言えなくない。
つまるところ、調査に回答した人たちの全体的な認知度の問題であって、これが「住みたい」と考える本当の意欲を示しているとは、あまり言えないだろうと思う。
何だかこんな内容のことを、大真面目に大規模なアンケート調査の結果として報告することも、ややピント外れだと思う。
生活や仕事に関する具体的な数字をきちんと示した上で、あなたならどこを選ぶかという調査にするべきではないだろうか。これは単に、〝聞き知った場所〟であれば住みたいという程度の希薄な調査だと思われる。
それにしても、何だかなあと思う。中学校や高校で、もっときちんと地理の授業をするべきではないだろうか。
地図を見て山脈や平野の名前を覚えさせ、農産物や水産物の収獲量を覚えさせるのが地理の勉強ではないと思う。
昔話で恐縮だが、私の高校時代には「人文地理」という教科名だったけれど、その後「地理」へと変化したということだ。
「地理」とは地図を覚えることだという誤解は、そこから始まったのかもしれない。「人文」すなわち、人間と文化と地理的特徴とが掛け合わされてこそ、まともな「地理」の勉強になると思うのだが。