私が現在関わっている「定住外国人支援」のNPO団体が、京都市東山区役所から委託を受けて、飲食店や商店が外国人観光客と応接する際に役立つように、「おもてなしガイドブック」作成の協力をしている。
このNPO団体のネットワークを使って、外国人が体験した「困った」や「びっくりした」という経験談などを集めて、お店の側から見た時の対応方法などのヒント集にしよう、という試みである。
(事業者と外国人の交流会/東山区役所)
それはそれで良いことなのだが、その中でお店に「Wi-Fi」を導入する必要性の説明は、やっぱり示すべきだろうということになった。さて、ここで私も困った。飲食店の店主や商店の経営者などには、私と同世代くらいの方も少なくない。
そうした年齢層の方の中には、根っからのアナログ人間も多いわけである。デジタル・ネイティブの対極にいる人たちである。こうした方も、時代が時代だから、さすがに「携帯電話」は持っておられる。
つまり、ポケットサイズの「電話」を持ち歩いておられる。この場合、多くの方は「ガラケー」派であり、あくまで〝電話をするための道具″なのだ。この方々に向かって、Wi-Fiの話をすることの困難さに気付いたのだ。
スマートフォンやタブレットは、電話というよりも超小型コンピュータであり、インターネットを利用する通信機器なのだ。あくまで、情報をやり取りするために利用するものだ。
ガラケー派も、ショートメールくらいなら、使っている人は多いだろう。では、ガラケーと言えども、メールのやり取りができるのはなぜなのか、ということになる。ガラケー派の多くは、そういう機能が付いているからだ、と考えるだろう。
それは正しい。ただし、その機能をサポートしているのが「通信技術」だということは考えない。電話がかけられるのだからメールだって届く、という考え方になる。
そうには違いない。そうなのだが、それではスマホが通信機器だという発想にはならない。外国人が、通信機器としてスマホを日本で使おうとすれば、どういうことになるかという発想にはならない。
だって、例えばドコモならドコモのガラケーを持って海外旅行をしても、出掛ける前に手続きさえしておけば、海外から日本へもガラケーで通話ができるから、全てがそんなものだと思ってしまう。
その人に向かって、「外国人観光客向けサービス」として「Wi-Fiの導入」と言った時、何が起こるだろうか。出発前に自分が契約している通信会社との手続きを忘れたのか、くらいに思ってしまわないだろうか。
そんな場合に、「なぜ〝うちの店″が、そんなものに加入しないといけないのか」と聞かれたら、その仕組みを説明するのに、ガイドブックのページ数をどれほど要するだろう。そう思って、考え込んでしまった。
最近、中国のフヮーウェイを巡って、色々なことが起こっている。同社のトップの長女で、自身も最高幹部の女性が、カナダで逮捕されたこととか、フヮーウェイ製品をアメリカやヨーロッパの国々が閉め出そうとしている話とか。
これは、スヮーウェイ製品を使えば、その製品を使って行われた通信が。全て中国政府に筒抜けになる恐れがあるから、ということになっている。中国の法律では、通信によって知り得た情報は全て国家が管理することになっているから。
もう一方で、次世代通信ネットワーク技術である「5G」に関しては、フヮーウェイが一歩抜きん出ているとも言われている。現在使われている「4G」と比較すれば、100倍の通信速度だという。
これが実用化目前になって来ており、現在の通信会社のネットワーク・システムを「5G」に置き換えるには、巨額の投資が必要だと言われている。そのために世界の通信会社間で、合従連衡の動きまで起こりつつあるということだ。
技術の詳細などは、私には全く分からない。だが自動車の自動運転などでは、反応が100倍速くなれば、1秒かかっていたことが0.01秒で制御可能になり、より精密なコントロールが可能になる。つまり自動運転の機能性が格段に良くなる。
そうなれば、「5G」を搭載している自動車と、現状の「4G」のままの自動車では、自動運転車を売ろうと思えば、もう勝負はあったも同然になる。極端に言えば、ぶつかるかぶつからないかの差が出るのだから。というような時代なのである。
そんな時に、Wi-Fiというシステムの必要性を、私などがどのように解説すればよいのか。ガラケーだって、〝最近は″常に快適に通話ができるように〝なった″、と考えている世代に向かって、「あのー、Wi-Fiの話なんですが」と恐る恐る話しかけるのだから。
ガラケーではなく、「ガラパゴス島に暮らしている」人に向かって語りかけるのだ。Wi-Fiの必要性を説くために。さあどうしたものだろうかと、今、ガイドブックの文章作成に取り掛かって、大いに悩ましい問題と直面している。
私には、Wi-Fiの詳しい仕組みなどはもちろんわからないけれど、さて何と説明をしたら、システムに参加することの必要性くらいは、理解してもらえるのだろうか。
そもそもは、私にもわからないことだらけなのに、〝習わぬ経を読む″心境になっている。