日々を生きる。~大切なものを失って得たもの。 -218ページ目

追い討ち

酷い頭痛による吐き気で、ほとんど動くこともままらなかった。


今までと違って、胸まで痛んだ。

両胸だった。


締め付けられるような感じで、息苦しい。

仕事は無理だと判断し、早々に会社に連絡した。



這うようにして戸締りをし、娘を寝かしつけるところまでやった。

娘を風呂に入れることなど、出来る筈もなかった。



うとうととしていた。



そんな時、妻が帰宅した。

物を叩き付ける音。

それが終わると、足音が、こちらに近づいてくる。



思っていた通り、妻の罵声だった。

「雨戸だけ閉めて、鍵閉めてないところがあるじゃない」


閉めたはずだった。

そう思って、ふと、あることに気がついた。

鍵は閉めたのだが、その鍵を更にロックするための、小さなスイッチ?を入れ忘れたことに気が付いたのだった。


妻の言うことは、聞き流した。

というより、聞く余裕などなかった。


それでも、また罵声だった。



「馬鹿は、嫌いよ」


なんと言われようと、もう、どうでもよかった。

とにかく、早く眠りに落ちたかった。







読者の皆様へ

せっかくコメントをいただいているのに、返事も書けなくてごめんなさい。




休息

それは、ほんの少しの休憩を知らせるメールだった。


今実家にいる。

何か作って食べてくれ。そのうち帰る。


妻からのメールである。

俺はホッとしていた。

一人になれる。

それは、俺にとっては貴重な時間だった。


手早く飯を済ませた。

それだけで、何もする気がなくなった。

ただ茫然としていたが、次第に酒が飲みたくなった。

妻のいないときに、隠れるようにして呑む。


もう、習慣になっていた。

スーパーで、発泡酒を買う。

ディスカウントまで行けばもっと安かったが、遠いのでやめた。

家に戻り、飲み始めると、さらに体が重くなる様な気がした。


そんな時、また携帯が鳴った。

布団をひいておいて。


妻だった。


結局、妻が帰宅したのは夜中だった。

俺がソファーに寝ていた所を叩き起こされた。

「テレビ観たいから、どいてくれる」

俺は二階へ行き、フローリングの上に、座布団を枕にして、そのまま横になった。

寝られるはずもなかった。

二時間後、妻の溜息が聞こえた。

そして、戸を激しく閉める音。


結局、朝まで眠ることができなかった。

曇り空

鳥の鳴き声が聞こえた。

やけに遠く感じる。

それは小さく澄んでいて、車の騒音に掻き消されそうだった。


窓の外。

眺めていても、鳥など見つからなかった。


気付くと、溜息を付いていた。

心の有り様が、俺を蝕んでいるのはわかっていた。

形だけでも明るく振る舞う。

そうすることによって、気持ちそのものも変わってくる。

何かに書いてあったことで、一度試してみたが、たしかに効果はあるのだった。

しかし、妻の様子を思い浮かべると、そんな気持ちも、掻き消えた。


犬の餌の準備のため、階下に降りた。

その時、ちらりと妻の方へ視線を向ける。

後ろ姿で、表情まではわからなかった。


外に出た。

犬の散歩である。

空を見上げると、雲の隙間から少しだけ、日の光りが差し込んでいた。

それでも、灰色の空だった。


立ち止まり、耳をすましても、鳥の鳴き声など聞こえなかった。


遠くに、車の唸る様な音が、微かに聞こえただけだった。