気力
気力を、取り戻せ。
自分に、言い聞かせていた。
仕事をしている時は、まだよかった。
忙しさの中で、余計な事を考えずに済むからだ。
帰宅する。
すでに妻子が床についていて、俺は何もすることがなく、しばらくソファーにじっとしていた。
その時、絶望感に包まれる。
嫌な考えばかりが頭の中を過ぎるのだった。
ここから逃れる、もっともよい方法は。
いつも、考えが行き着く所は、同じだった。
そして、その考えを振り払い、そのままソファーで、寝た。
どんな方法でもいい。
とにかく、気力を取り戻すことが先決だ、と思う。
以前のような、気持ちはもう、今は無くなってしまったのか。
いや、まだ捨てきれてはいない、と思いたい。
気力を取り戻す方法は。
考えても、よい考えには、思いいたらなかった。
自分に、言い聞かせていた。
仕事をしている時は、まだよかった。
忙しさの中で、余計な事を考えずに済むからだ。
帰宅する。
すでに妻子が床についていて、俺は何もすることがなく、しばらくソファーにじっとしていた。
その時、絶望感に包まれる。
嫌な考えばかりが頭の中を過ぎるのだった。
ここから逃れる、もっともよい方法は。
いつも、考えが行き着く所は、同じだった。
そして、その考えを振り払い、そのままソファーで、寝た。
どんな方法でもいい。
とにかく、気力を取り戻すことが先決だ、と思う。
以前のような、気持ちはもう、今は無くなってしまったのか。
いや、まだ捨てきれてはいない、と思いたい。
気力を取り戻す方法は。
考えても、よい考えには、思いいたらなかった。
ひと言
「どうせ家で遊んでるんだから、あんたが行ってきてよ」
児童手当の手続きだった。
仕事は午後からなので、何とか間に合いそうだった。
転居前の市役所へ行き、必要書類をもらわなければならなかった。
午前中一杯はかかりそうだ。
その他、二、三の雑用も妻から与えられている。
全ての仕事を片付けてから、俺はそのまま書類を携えて、市役所に直行した。
窓口で、思わず、溜息をついた。
なんと、保険証も必要だという。
家に戻った。
迂闊に、保険証を出せと言えば、多分罵りだった。
よくさがせ。そこにあるだろう。
妻の声が聞こえてきそうだった。
ひとしきり、棚を漁った。
ここに無ければ、もう、自力で捜し当てる事は、不可能だった。
他の収納スペースは、妻が個人的に使用している。
仕方がなかった。
俺は言った。
「保険証は何処」
怒鳴り声が返ってきた。
「頭にくるな本当に。あたしがそんなところに、保険証を置いておいた事あるわけ」
妻はぶつぶつと、俺を罵りながら、部屋へ消えた。
「なによ、あの言い方は。本当に、ムカつく」
妻は言いながら、俺の前に保険証を放りだした。
保険証は何処。
そのひと言が、俺を罵る口実だったのか。
仕舞いには、息をしただけで罵られるのか。
とにかく、ここに来て、気力がわかなかった。
喋る事すら、億劫なのだった。
どうしてしまったのか。
辛うじて、仕事は続けている。
このままでは仕事にまで、気力を失ってしまうのか。
そう思うと、俺は微かな恐怖を感じた。
児童手当の手続きだった。
仕事は午後からなので、何とか間に合いそうだった。
転居前の市役所へ行き、必要書類をもらわなければならなかった。
午前中一杯はかかりそうだ。
その他、二、三の雑用も妻から与えられている。
全ての仕事を片付けてから、俺はそのまま書類を携えて、市役所に直行した。
窓口で、思わず、溜息をついた。
なんと、保険証も必要だという。
家に戻った。
迂闊に、保険証を出せと言えば、多分罵りだった。
よくさがせ。そこにあるだろう。
妻の声が聞こえてきそうだった。
ひとしきり、棚を漁った。
ここに無ければ、もう、自力で捜し当てる事は、不可能だった。
他の収納スペースは、妻が個人的に使用している。
仕方がなかった。
俺は言った。
「保険証は何処」
怒鳴り声が返ってきた。
「頭にくるな本当に。あたしがそんなところに、保険証を置いておいた事あるわけ」
妻はぶつぶつと、俺を罵りながら、部屋へ消えた。
「なによ、あの言い方は。本当に、ムカつく」
妻は言いながら、俺の前に保険証を放りだした。
保険証は何処。
そのひと言が、俺を罵る口実だったのか。
仕舞いには、息をしただけで罵られるのか。
とにかく、ここに来て、気力がわかなかった。
喋る事すら、億劫なのだった。
どうしてしまったのか。
辛うじて、仕事は続けている。
このままでは仕事にまで、気力を失ってしまうのか。
そう思うと、俺は微かな恐怖を感じた。
ガス調理器具
朝、物音で目覚めた。
金属の触れ合う鈍い音で、それが何なのか、ほぼ見当がついた。
ガス台に付属する、グリルパンが嵌まらないのだろう。
昨日、妻がそれを外そうとして、悪戦苦闘していた。
その時、心の中に不意に残酷な気分が沸き上がり、俺は見てみぬ振りを決め込んだのだった。
引き抜こうとすると、貯めてある水がこぼれそうになる。
かと言って、傾けないと引っ掛かりを、外すことができない。
ガガタとひとしきり、でかい音を立ていた。
それは、俺に気付かせるためにやっているのだった。
そろそろ、助けてやろうと思い、妻の前に行くと、妻はその苛立ちを隠そうともせずに、俺にぶつけてきた。
本当にイラツク、と一言、言った。
ありがとう。
妻に、そんな言葉を期待する方が、間違いなのだった。
今朝も、昨日と同じく気付かない振りである。
物音の激しさが、妻の苛立ちを表していた。
怒号。
「あんたが外したんでしょ」
見てみると、前面にあるカバーまで外れていた。
何なのか。
思ったのと同時に、妻がそのカバーを、床に叩き付けてきた。
カバーを拾い上げる俺の背中に、妻の罵声。
「あんたは気が付かないかもしれないけど、これ、点滅してるから」
それは、コンロの電池交換を知らせるサインだった。
俺は電池を買うために、家を出た。
金属の触れ合う鈍い音で、それが何なのか、ほぼ見当がついた。
ガス台に付属する、グリルパンが嵌まらないのだろう。
昨日、妻がそれを外そうとして、悪戦苦闘していた。
その時、心の中に不意に残酷な気分が沸き上がり、俺は見てみぬ振りを決め込んだのだった。
引き抜こうとすると、貯めてある水がこぼれそうになる。
かと言って、傾けないと引っ掛かりを、外すことができない。
ガガタとひとしきり、でかい音を立ていた。
それは、俺に気付かせるためにやっているのだった。
そろそろ、助けてやろうと思い、妻の前に行くと、妻はその苛立ちを隠そうともせずに、俺にぶつけてきた。
本当にイラツク、と一言、言った。
ありがとう。
妻に、そんな言葉を期待する方が、間違いなのだった。
今朝も、昨日と同じく気付かない振りである。
物音の激しさが、妻の苛立ちを表していた。
怒号。
「あんたが外したんでしょ」
見てみると、前面にあるカバーまで外れていた。
何なのか。
思ったのと同時に、妻がそのカバーを、床に叩き付けてきた。
カバーを拾い上げる俺の背中に、妻の罵声。
「あんたは気が付かないかもしれないけど、これ、点滅してるから」
それは、コンロの電池交換を知らせるサインだった。
俺は電池を買うために、家を出た。